血管外科医が教える下肢静脈瘤 予防・改善講座
2024.12.242024年03月27日
高血圧の予防・改善には生活習慣の見直しが必須!
血圧を下げるには?女性が50代からやるべき対処法
50代になると、血圧が高くなる女性が多いのはなぜなのか、その原因や放置するリスク、やるべき5つの対処法を詳しくご紹介!高血圧は動脈硬化や心筋梗塞などの病気の原因となる可能性があります。命に関わる事態を防ぐためにも、早めに対処しましょう。
50代の女性は血圧が高くなる?原因は更年期!?
高血圧というと男性に多いと思われがちですが、50代頃になると更年期に伴って血圧が高い女性が急激に増えてくることはあまり知られていません。
更年期によくみられる症状としては、めまいや動悸、ホットフラッシュ、頭痛などがあり、これらは主に女性ホルモン「エストロゲン」の低下によるものです。
それと同様に、50代頃の更年期の高血圧もエストロゲンの低下が影響しています。
エストロゲンが低下すると、血管の柔軟性の維持や、ナトリウムの体外への排泄を促す一酸化窒素を産生している「血管内皮(血管の内側部分をつくっている細胞)」の働きが弱くなります。
すると血管の柔軟性が低下して、本来は体外へ排出されるべきナトリウムも体内にとどまってしまうのです。
そこからさらにエストロゲンが低下して男性ホルモンが優位な状態になると、自律神経のうち臓器や器官などの働きを向上させる機能をもつ交感神経の働きが活発になるほか、「レニン」というホルモンによって血圧の上昇が促進されるため、血圧が上がりやすくなります。
また、更年期の高血圧は、血圧が不安定で変動しやすいのが特徴です。
若い頃から血圧が低い女性や、健康診断でずっと正常だったという女性でも、更年期になると高血圧になる可能性が大いにあります。血圧を測って高かった場合は、「たまたま高かっただけ」と軽く考えないようにしましょう。
妊娠中に高血圧を経験した人や、更年期症状としてホットフラッシュに悩んでいる人は、特に更年期高血圧になりやすいため注意が必要です。
高血圧を放置するリスク
基本的に、高血圧でも自覚症状はほとんどありません。そのため、健康診断や病院などで測定して初めて気付くことも多々あります。
しかし「普段症状があるわけではないからと症状がないから」とそのまま放置してしまうと、めまいや動悸、ほてり、頭痛、不安感などの症状が現れるだけでなく、以下の病気になる可能性があるため注意しましょう。
更年期によって血圧が高い状態が続くと、「動脈硬化」を引き起こすことがあります。
動脈硬化とは、動脈の壁にコレステロールがたまり、硬くなったり狭くなったりして本来の構造が壊れて血流が悪くなった状態のこと。ひと言でいうと「動脈の老化」です。
脂質異常症や糖尿病などと同じく動脈硬化を進める生活習慣病の一つで、血管の太さに関係なく起こる可能性があります。
恐ろしいことに、動脈硬化が起こっても自覚症状はほとんどなく、気付かないうちに進行して血管だけでなく脳や心臓にまでダメージを与えてしまいます。
ある日突然血管が詰まり、心筋梗塞や脳卒中などの命に関わる重大な病気になる可能性もあるため、自覚症状がないからといって放置しないことが大切です。
上述の通り、動脈硬化には自覚症状がありません。定期的に健康診断を受けるか、医療機関で検査を受けるようにしましょう。
血圧を下げるには?女性が50代からやるべきこと
50代になって急に血圧が高くなると、一時的なものだと思って放置してしまいがちです。
通常は更年期を過ぎるとともに治っていきますが、上昇と下降を繰り返していると慢性的な高血圧に移行しかねないため注意が必要です。
ここでは、血圧を下げるために50代以降の女性がやるべきことをご紹介します。
食生活の見直しをする
更年期による血圧の変化に気付いたら、食生活を見直すことが重要です。
まずは高血圧を予防・改善するための食事の基本でもある「塩分を減らす」ことから始めてみましょう。
日本高血圧学会が公表している「高血圧治療ガイドライン 2019」によると、高血圧予防・改善のための塩分摂取量の目安は、1日6g未満。
ご飯のお供に佃煮やふりかけを食べている人やベーコン、ウインナーなどの肉加工品、ちくわやかまぼこなどを好んで食べる人、ラーメンやうどんなどを汁まで飲み干す人は塩分を取り過ぎている可能性があります。
食事を作る際に使っている塩分の量を正確に測るのは大変なので、まずは食事の味付けを薄めにしたり、味噌汁やラーメンは具だけ食べて汁を残したり、塩がまぶしてあるフライドポテトやポテトチップスなどを控えたりすることから始めるのがおすすめです。
醤油や味噌などの使用量を減らし、スパイスや香味野菜、お酢など、味のアクセントとなるものを使って調理すると、塩分を減らしてもおいしくいただけます。
それに加えて、血圧を下げる効果のあるカリウムやマグネシウム、カルシウムなどのミネラルを多く含む食品や、体内での塩分の吸収を抑える働きなどがある食物繊維を積極的に取り入れ、バランスの取れた食事を心がけましょう。
適度な運動を習慣にする
高血圧の予防・改善には、適度な運動が有効です。
更年期以降は、筋肉量の急激な減少によってカロリーが消化しにくくなり、肥満になる可能性も高まります。
それに伴って高血圧になるリスクも高まるため、適度な運動を心がけて筋肉量が減らないよう努めましょう。
おすすめはウォーキングなどの有酸素運動です。
「ウォーキングはたくさん歩かないと意味がない」と思われがちですが、東京都健康長寿医療センター研究所・青栁幸利さんによると、高血圧症の予防には「1日8000歩、20分速歩き」がベストだそう。
8000歩といっても、普通に生活する中で、スーパーに買い物へ行ったり家の中で家事をしたりなど、無意識に歩く時間も含んでいるため、あえてウォーキングのための時間を作る必要はありません。
ただし、ダラダラ歩くだけでなく、何とか会話できる程度の速さで背筋を伸ばして腕を大きく振り、ひざが伸びるくらい大股で歩くことが重要です。特に大股で歩くことを意識しましょう。
十分な睡眠時間と質のよい眠りを確保する
50代の女性は、仕事や子どもの世話、家事、親の介護などさまざまなことがあり常に忙しいため、どうしても睡眠時間が不足してしまいます。
睡眠時間が短いと、交感神経が活性化して血圧が上昇するため、高血圧になりやすくなります。
忙しいと自分の体のことは後回しにしてしまいがちですが、毎日7時間半を目安にしっかりと眠るようにしましょう。
また、睡眠の質を向上させるために、就寝2〜3時間前には食事や運動、入浴などを済ませることも大切です。副交感神経が優位になるよう、寝る直前までスマホやパソコンを見るのも控えましょう。
タバコやアルコールを控える
タバコに含まれるニコチンは、血管を収縮して血圧を上昇させます。
交感神経を刺激して心拍数を増加させたり、血管の内側の細胞を傷つけて動脈硬化の進行を促したりすることもあるため、一日も早く禁煙に取り組むのがおすすめです。
自分が吸っていなくても、喫煙している人の近くにいるだけで高血圧のリスクが高まります。
また、アルコールは少量であれば血管を広げて血圧を下げてくれますが、飲み過ぎると逆に血圧を上げてしまうため、飲酒量には注意が必要です。
血圧を上げないためにも、男性で1日にビール中瓶1本以下、女性でビール中瓶1/2本以下にして、週に1回以上は飲酒をしない日を設けるようにしましょう。
女性の場合、男性よりも肝臓が小さく体内の水分も少ないため、男性と比べて少ない量が適量となります。
ストレスを適度に発散する
更年期はエストロゲンの乱高下により、ちょっとしたことで気分が変化したりイライラしたりしがち。
メンタルが不安定になると、そのゆらぎが血圧を上昇させる原因となるため注意しましょう。
ストレスを減らして心身ともに健やかに過ごせるよう、自分に合ったストレス発散法を見つけてリフレッシュすることが大切です。
例えば、友達とカラオケや買い物に行ったりカフェでおしゃべりをしたり、好きな音楽を楽しんだりなどして上手にストレスを解消しましょう。
適度な運動は、ストレスを解消するだけでなく肥満の予防にもなるため特におすすめです。
血圧測定を習慣にする
50代頃の女性に起こりやすい更年期高血圧は、血圧が変動しやすいため、日頃から家庭での血圧測定を習慣にすることが重要です。
血圧の測定は、朝と夜の決まった時間に座って行うことが推奨されています。
それに加えて頭痛やめまいなどの症状があるときも血圧を測って記録しておくと、血圧が変動するパターンを把握できます。
家庭で測定できる血圧計は、主に上腕部で測定する「上腕式」と手首で測定する「手首式」の2種類。
手首式の血圧計は上腕式と比べて値が不正確なこともあるため、上腕式を選ぶのがおすすめです。
病院で適切な治療を受ける
更年期高血圧が疑われる場合は、まずは病院を受診することが大切です。
病院で更年期高血圧と診断されると、まず食生活や運動習慣などについての指導を受け、生活習慣の見直しなどのセルフケアを行います。それでも目標値まで血圧が下がらない場合は、降圧薬による治療が選択されます。
血圧が乱高下する更年期高血圧に対して降圧薬を使用すると、血圧が下がり過ぎてしまう可能性もありますが、さまざまな種類の降圧薬の中から体の状態に合わせた適切な薬を処方してくれるため、医師の指示に従ってきちんと治療を行いましょう。
更年期高血圧の予防・改善は生活習慣の見直しが基本!
女性は50代頃になると、更年期によってエストロゲンが急激に減少し、それに伴って血圧も上がりやすくなります。
更年期高血圧の特徴は、血圧が不安定で変動しやすいこと。血圧が高いときもあれば低いときもあるため、あまり気にせずに生活していると、いつの間にか慢性的な高血圧になる可能性もあります。
50代になると子どもの進路や就職、自分の仕事のこと、夫・パートナーとの関係、親の介護、毎日の家事、経済的な不安など悩みが尽きず、血圧の変動が起こりやすいですが、なかなか病院へ行く時間が取れないこともあるかもしれません。
しかし、「ちょっと血圧が高いくらい大丈夫」と放置してしまうと、命に関わる病気に発展してしまう恐れもあるため、更年期高血圧の可能性がある場合は早めに病院を受診しましょう。
監修者プロフィール:加藤大也さん
たいや内科クリニック院長。1997年、藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)卒業後、同大学院医学研究科内分泌・代謝内科学修了。2003年4月から同大学医学部内分泌・代謝内科助手を務める。2010年5月、JA愛知厚生連豊田厚生病院内分泌代謝科病棟部長などを経て2022年5月、たいや内科クリニックを開院。藤田医科大学医学部客員講師・医学博士・糖尿病専門医・総合内科専門医・甲状腺専門医。糖尿病、生活習慣病を中心に、日々診療に取り組む。患者さん目線で分かり易い説明がモットー。
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