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- 「動脈硬化」を予防する、食事のポイントとは?
悪玉と呼ばれるLDLコレステロールが増え過ぎると、動脈硬化を引き起こし心筋梗塞などの原因になるため、日々の食事に気を付けている人は多いと思います。でもコレステロール摂取量より大切なことがあると、ニコークリニック院長の田中裕幸さんは言います。
教えてくれた人:田中裕幸さん(循環器専門医)
たなか・ひろゆき ニコークリニック院長。1954(昭和29)年生まれ。長崎大学医学部卒業。九州大学医学部皮膚科、久留米大学第三内科(循環器)を経て、医療法人ニコークリニック開業。日本性差医学・医療学会評議員、更年期と加齢のヘルスケア学会幹事、女性医療ネットワーク理事などを務める。著書に『男は40代、女は50代から悪玉コレステロールの罠にはまるな』(青萠堂刊)。
コレステロールの摂取量に制限はない?
日本では長い間、コレステロールは悪者にされ、スーパーなどには「コレステロールゼロ」などとうたった食品が並んでいます。ところが、2015年から日本でコレステロールの摂取制限がなくなったことをご存じでしたか?
「そもそもコレステロールは食事で取り込まれたもの以外に、糖質からも作られます。コレステロールの摂取が少なければ、肝臓でコレステロールの合成が進み、摂取が多ければ、肝臓での合成が抑えられます」と田中さん。
コレステロール含有量の高いものを食べても、低いものを食べても、血中のコレステロール値はほとんど変わらないという調査結果も出ています。
「以前、テレビの健康番組などで1日のコレステロール摂取量を300mg以下にするよう盛んに言われていましたが、あれはある意味“ウソ”。重要なのは、コレステロールを取る・取らないではなく、食べるものの質なのです」
動脈硬化予防:コレステロール改善にはリノール酸を避けることから
では動脈硬化を防ぐために、食事で何に気を付ければよいのでしょう。田中さんの調査では、食事に含まれる脂肪のうちリノール酸が多いと、LDLコレステロールが上昇し、動脈硬化が進みやすくなることがわかったといいます。
「リノール酸は、肉の脂にも含まれますが、最も多く含まれているのは植物油です。患者さんの食事指導で『魚を増やし、肉と植物油を控えてください』と言うと、ほぼ確実にLDLコレステロールが低下します」と田中さん。リノール酸は、植物油以外にも、マヨネーズやパン、菓子類などに多く含まれるので、好きな人は注意しましょう。
「逆に積極的に取りたいのが、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)、エゴマ油といったオメガ3系の脂肪酸です。コレステロールの質がよくなり、「血管年齢」を若返らせることができるため、動脈硬化の改善につながります。『コレステロール改善は食事から、特に油から。コレステロールは制限しなくていい』と覚えておきましょう」
動脈硬化予防:血管年齢を若返らせる5つの食事ポイント
ポイント1:調理に使う油は植物油を避ける
リノール酸の摂取が多い食生活を続けていると、血栓ができやすくなり、動脈硬化を促す重大なリスクとなります。加熱調理には、リノール酸の多い植物油を避け、比較的リノール酸の少ないオリーブオイルを使うと、LDLコレステロールを上げることはありません。サラダのドレッシングなど加熱調理しない場合には、オメガ3系のエゴマ油やアマニ油がおすすめです。
ポイント2:パンや菓子類の見えない油に注意する
トランス脂肪酸は、LDLコレステロールを増やして血管をもろくし、過剰摂取すると動脈硬化や心疾患のリスクを高めます。トランス脂肪酸は、揚げ物やパン、お菓子などに多く含まれています。パンや菓子類を買うときは、原材料に植物油脂、マーガリン、ショートニングとあるものは避けましょう。
ポイント3:週2回は魚料理、または刺し身を毎日食べる
マグロ、青魚など油の多い魚を積極的に食べましょう。EPAやDHAの摂取量を増やすことが、血管の若返りにつながります。魚料理を最低でも週2回、または刺し身を毎日8切れ食べることをおすすめします。調理法は生が一番ですが、煮たり蒸したりした場合は、汁ごと落ちた油も食べましょう。
ポイント4:肉類は赤身を選び、脂を控える
牛肉や豚肉の脂身には、リノール酸が多く含まれています。とはいえ、肉は良質なたんぱく源でもあるので、赤身を選ぶなど工夫して食べるようにしましょう。ポイント3で、魚の油はしっかり食べるように伝えましたが、肉の場合は逆です。なるべく脂を落として食べるように心掛けてください。
ポイント5:卵は油を使わずに調理すれば、むしろ食べるべき
女性では卵の摂取によりLDLコレステロールが上昇するという研究結果がありますが、それは卵の調理法が大きく影響していると考えられます。油を使う卵焼きや炒り卵は控え、ゆで卵や生卵で食べましょう。
卵は貴重な必須アミノ酸の供給源なので、調理法に気を付け、むしろ積極的に取るべきです。卵の栄養や卵レシピもチェックして、健康な生活を心掛けましょう。
取材・文=五十嵐香奈(ハルメク編集部)
※この記事は雑誌「ハルメク」2019年4月号に掲載した記事を再編集しています。
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