明日なるかもしれない怖い病気特集#3
いざというとき慌てない!心筋梗塞から命を守る救急法
いざというとき慌てない!心筋梗塞から命を守る救急法
更新日:2023年12月07日
公開日:2022年08月23日
教えてくれたのは、上妻謙さん(こうづま・けん)さん

帝京大学医学部 循環器内科教授。1991年、東北大学医学部卒業。三井記念病院、エラスムス大学(オランダ)留学などを経て、2013年から現職。専門は虚血性心疾患、カテーテル治療など。監修著書に『詳しくわかる狭心症・心筋梗塞の治療と安心生活』(主婦と生活社刊)。
5分で生存率は半分に!救急車を呼び、心臓マッサージを
突然、意識を失って倒れたら、一刻も早い救急処置が必要です。家族の命を守るためにも対処法を頭に入れておきましょう。
下のグラフは、停止した心臓に電気ショック(除細動)を実施するまでの時間と生存率との関係を示したものです。1分ごとに生存率は約10%低下し、5分後には50%に。まさに時間との勝負です。
3分後なら7割、5分後には5割……。生きて退院できる確率は、電気ショックをかけるまでの時間によって決まります。
「すぐに救急車を呼び、到着までの間、心臓マッサージを。実際、これで命拾いをした人がたくさんいるのです。近くに人がいれば、AED(自動体外式除細動器)も探してもらいましょう」と、帝京大学医学部循環器内科教授の上妻謙さんは話します。消防署などで救命講習会を受講しておくのもおすすめです。

AEDは自動で電気ショックを行ってくれる救命のための医療機器。日頃から設置場所を確認しておくと安心です。
もしも家族が突然倒れたら……命を守る、救急処置の仕方
AEDや救急車が来るまでの救急処置は、次の手順で行います。
■1.反応があるか確認する

倒れた人の肩を軽くたたきながら「大丈夫ですか!」と大きな声で呼びかけ、反応があるかどうか確認します。
■2.助けを呼び、119番通報とAEDの手配をする

反応がなければ「誰か来て!」と助けを求め、救急車とAEDの手配を依頼します。誰もいない場合は自分で119番通報を。
■3.気道を確保する

指であご先を上げ、頭を軽く後ろにのけぞらせて、空気が肺に入りやすい姿勢にします。
■4.心臓マッサージを行う

胸の中央に片手の付け根を置き、もう片方の手を重ねて組みます。ひじを真っすぐ伸ばし、体重をかけて強く圧迫。1分間に100回の速いテンポで続けましょう。
病院で適切な治療を受け、再発を防ぐ

119番通報をして救急車が到着するまでの所要時間は地域によって異なりますが、平均は約10分(総務省消防庁「令和6年版 救急・救助の現況」の公表より)。
救急隊員が現場でAEDなどを使った救命処置を行い、その後、病院に搬送されます。
「病院では、冠動脈の血流を再開させるカテーテル治療を迅速に行います。発症から90分以内にこの治療を始めるのが救命の条件。もっと早く60分以内なら理想的」と上妻さん。
■病院で行うカテーテル治療

カテーテル治療では、直径2ミリほどの細い管(カテーテル)を太ももや腕の血管から挿入し、血栓が詰まった冠動脈へ入れます。そしてバルーンで血管内を広げ、ステントと呼ばれる金属でできた網目状の筒を留置します。
・1.狭窄部にステントとバルーンを挿入する
太ももなどの血管からカテーテルを入れ、ステントとバルーンを冠動脈の狭窄部位へ。局所麻酔をしているので痛みはほとんどありません。
・2.バルーンを膨らませ、ステントを広げる

バルーンを膨らませて血管内を押し広げ、折りたたまれていたステントを開きます。ステントを血管壁に押し当てるようにして留置します。
・3.バルーンとカテーテルを引き抜く

バルーンをしぼませて、カテーテルごと引き抜きます。血管壁に留置したステントからは薬剤が少しずつ溶け出して、再狭窄(きょうさく)を防ぎます。
「ステントを入れると、その部分に炎症反応が起こって細胞が増殖し、血管が再び狭くなることがあります。そこで現在最も多く使われているのが、薬剤溶出性ステント。ステントに塗られた薬剤がじわじわ溶け出して、再狭窄が起こるのを防ぎます」と上妻さん。
退院後は定期的に通院して薬物治療を続け、心筋梗塞の再発を予防します。食事や運動など、前回紹介した心臓を守る生活習慣を心掛けることも大切です。
再発予防と社会復帰のための「心臓リハビリ」

治療後は、再発予防と社会復帰のための「心臓リハビリ」を行います。...




