涙が止まらない、イライラ、不安…落ち着く方法は?

情緒不安定を治すには?原因・症状・対処法を解説

白濱龍太郎さん
監修者
RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック 院長
白濱龍太郎

公開日:2023.04.11

更新日:2024.01.25

悲しみや落ち込み、イライラや不安……。情緒不安定は、多くの人が一度は経験するもの。ただ、その状態が長く続く場合は対処が必要です。病院に行く前に自分でできることは? 情緒不安定の原因や症状、心が安定しないときの対処法について解説します。

「情緒不安定」とはどんな状態?

情緒不安定の意味って?どんな状態?

情緒不安定とは、心が安定せず、感情の起伏が激しくなる状態のことを意味します。

悲しい気持ちになったり、気分の落ち込みを感じる一方、ちょっとしたことで「イライラする」「怒りっぽくなる」などの攻撃的な気分になったりもします。

情緒不安定は病気(疾患)ではない

情緒不安定な状態そのものは、病気や障害ではありません。

ですが、精神疾患などなんらかの病気が原因で情緒不安定になっている可能性も考えられます。また、情緒不安定な状態が続いたり悪化すると、精神疾患につながってしまうことがあります。

情緒不安定は、多くの人が一度は経験するもの。何か嫌なことがあった日など、一時的に情緒不安定になるだけなら、問題がないことがほとんどです。

しかし、情緒不安定が数週間〜数か月など長く続く場合や、毎年同じタイミングで情緒不安定になるといった場合は、一度病院を受診してみるといいでしょう。

情緒不安定の症状

情緒不安定の症状

ここからは、情緒不安定で見られる症状をご紹介します。

わけもなく悲しい気分になる

特に悲しくなるような出来事が起こったわけでもないのに、理由もなく悲しい気分になる、憂鬱になるなどは、情緒不安定の症状の一つです。

今までは気にしたことのなかったような些細なことも、情緒不安定な状態のときには大袈裟に、悲観的に考えてしまうことがあります。

急に涙が出てくる・涙が止まらない

仕事中や家事、買い物の最中など、悲しいと思っていないときにわけもなく突然涙が出たり、急に涙が止まらなくなるなども、情緒不安定のときに見られる症状です。

直接的な理由がないのに涙が出るのは、気付かないうちに大きなストレスや精神的な負担が積み重なっているからかもしれません。膨らんだストレスや不安を少しでも解消しようと涙を流しているとも考えられています。

自分ではストレスの自覚がない場合でも、心の中ではストレスが膨らんでいる可能性もあるため、注意しましょう。

イライラする・怒りっぽくなる

情緒不安定のときは、原因はよくわからないのにイライラしたり、普段なら怒ったりしないようなことで怒ってしまうことがあります。

誰かにイライラや怒りをぶつけたことで、さらなる落ち込みにつながることもあります。

その他の症状

その他にも、情緒不安定のときには以下のような症状が見られることがあります。

  • 夜なかなか寝付けなくなった
  • 朝起きられなくなった
  • やる気が出ない、気力がわかない
  • 集中できなくなった
  • 食欲が減少、または、増加した など

情緒不安定に男女差はある?

女性の場合、個人差が大きいものの、女性ホルモンのバランスの変化が精神面にも影響すると考えられています。

ただ、生理・更年期などの有無を除けば、情緒不安定になる原因に大きな男女差はないといわれています。

情緒不安定になる原因

情緒不安定になる原因

情緒不安定になる原因は大きく「身体的要因」「精神的要因」「外部要因」「病気やケガの影響」に分けられます。

身体的要因

身体的要因としては、以下のようなものがあります。

  • カフェインやアルコール、ニコチンなどの影響
  • 生活リズムの乱れ
  • 更年期や生理によるホルモンバランスの変化

カフェインやアルコールの影響

コーヒーやエナジードリンクなどに含まれるカフェインはやる気を出す作用もあるものの、自律神経や睡眠にも影響を及ぼすといわれています。カフェインの許容量は人それぞれ異なるため、気付かないうちに過剰摂取になり、気分に影響を及ぼしてしまうことも。

また、タバコに含まれるニコチンには自律神経のバランスに悪影響を与えます。

生活リズムの乱れ

睡眠不足などの生活リズムの乱れも、情緒不安定につながります。睡眠は体の疲れだけでなく、脳の疲れを取るためにも欠かせないものです。ベストな睡眠時間は人によって異なりますが、目安としては6〜8時間ほどは眠るようにするといいでしょう。

睡眠不足の状態が続くと、集中力や免疫力の低下を招き、さらなるトラブルや不調につながる可能性があります。

更年期や生理によるホルモンバランスの変化

女性の場合、更年期や生理によるホルモンバランスの変化(PMS/月経前症候群)も、情緒不安定を引き起こす原因です。精神的な症状が特につらい場合は、月経前不快気分障害(PMDD)の可能性も考えられるでしょう。

更年期には卵巣機能が低下し、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が大きく減少します。これが、情緒不安定や不安感、気力がわかない、現実感がない、戸惑いを感じるなどの精神症状につながることもあります。

更年期の年代の女性は子どもの自立、夫婦関係の問題の顕在化、自分の健康の不安、両親の介護や死など大きな変化が重なるため、心にも負担が掛かりやすい環境です。

精神的要因

精神的な要因としては、ストレスが挙げられます。

人間関係の悩みや心身の不調、ショックな出来事や落ち込む出来事などでストレスを受けると、情緒不安定につながるケースも。

ストレスは心身にさまざまな悪影響を及ぼしますが、「つらいのは自分だけじゃない」と我慢してしまったり、ストレスフルな状態が日常になり感覚が麻痺してしまっていると、ストレスが限界に達しても見逃してしまう可能性があります。

外部要因

外部要因としては、季節や環境の変化が挙げられます。

特定の季節や、季節の変わり目に情緒不安定になりやすい人もいます。季節の変わり目は、寒暖差だけでなく気圧の変化なども起こるため、これが影響して体調不調につながるのです。

 「冬になると気持ちが落ち込む気がする」「寒くてやる気が起きない」など、寒い季節の気分の落ち込みは「冬季うつ(ウィンター・ブルー)」や「季節性うつ病」、「季節性感情障害(SAD)」と呼ばれます。

一般的なうつ病の場合、食欲低下・不眠気味・体重減少などが見られる傾向がありますが、冬季うつ病の場合は逆で、過食・過眠・体重増加などが見られることが多いようです。

また、子どもの独立、転職、親の介護の開始など、自分を取り巻く環境の変化によって、情緒不安定になることもあります。嬉しい変化でも心には負担がかかっていることもあるため、無理はしないことが大切です。

病気やケガの影響

うつ病や双極性障害、統合失調症、不安症、パニック障害、自律神経失調症など精神疾患の症状の一つとして、情緒不安定が起こることもあります。疾患によっては気分の変化が激しく、気持ちが安定しないこともあります。

心的外傷後ストレス障害(PTSD)、アルツハイマー型認知症でも、情緒不安定が見られます。

また、身体疾患やケガなどの痛みで眠れない日が続いたり、痛みそのものへの苦痛や不安によるストレスが情緒不安定につながるケースも。

日本人女性の閉経年齢は平均50歳前後といわれていますが、40歳以前に月経が3か月以上来なくなり、卵巣機能が低下する「早発卵巣不全(早発閉経)」の場合も情緒不安定が起こることがあります。

情緒不安定の治療法や薬

情緒不安定は病気ではないため、決まった治療法や薬はありません。病院では、認知行動療法といった心理療法など、一人一人の症状に合わせてさまざまな治療を行います。

うつ病など精神的な病気が原因で情緒不安定になっている場合は、抗うつ薬などを使った薬物療法を行うこともあります。

うつ病は女性の方が男性より1.7倍〜2倍多く、女性の社会進出が進むにつれ、この男女差は大きくなっているといわれています。

情緒不安定になったときの対処法

情緒不安定になったときの対処法

ここからは、情緒不安定になったときの対処法をご紹介します。

セルフモニタリング

セルフモニタリングとは、自分で自分の状態を観察することを指します。

「自分は十分、自分の状態を把握している」と思っていても、忙しい毎日の中で自分の気持ちや体調の変化に気づけていない可能性があり、セルフモニタリングは簡単に思えて意外と難しいものです。

セルフモニタリングで大切なのは、自分にどんなストレスがあるのか「気づく」こと。

ほんの些細なことでもいいので、ストレスの原因になっていそうなことを記録したり、紙に書き出すと、自分が情緒不安定になるタイミングがわかるようになります。

セルフモニタリングは練習を重ねることでスキルアップするともいわれているため、何度か繰り返してみるのもおすすめです。

自律神経を整えることを意識する

自律神経の乱れは、情緒不安定につながります。自律神経とは、体の機能を24時間体制でコントロールする神経のこと。

普段は、心身を活動的にする「交感神経」とリラックスさせる「副交感神経」がバランスを取りながら人間の活動を支えていますが、このバランスが崩れると、情緒不安定になるなどさまざまな悪影響が出てしまいます。

スマホやパソコンの画面から出るブルーライトは交感神経を活性化させてしまうため、寝る前に見ると睡眠の質を低下させてしまう可能性があります。寝る前のスマホ利用はなるべく避けるようにしましょう。

ストレッチやヨガなどでリラックスして、副交感神経を優位にするのもおすすめです。

血液検査で栄養状態をチェックする

栄養バランスの偏った食事が、メンタル面での不調につながっている可能性も考えられます。

ほとんどの成分は通常の血液検査で調べられるため、栄養素の状態をチェックしてみましょう。不足している栄養素があれば、食事やサプリメントなどで補うことで対策できます。

早めに病院に相談する

「病院に行くほどではない」「まだ大丈夫」と我慢したり、忙しくてなかなか病院に足を運べないことがあるかもしれませんが、我慢を続けていると悪化してしまう可能性があります。

情緒不安定が悪化すると、うつ病などの精神疾患を発症してしまうこともあり、そうなると治療にある程度長い時間が必要になります。

我慢し過ぎず、早めにメンタルクリニックや心療内科に相談することが大切です。

身近な人が情緒不安定な場合の接し方は?

身近な人が情緒不安定なときは、接し方に迷ってしまうものですよね。

相手の気持ちが不安定なときは、どんなアドバイスもネガティブに受け取られてしまう可能性があります。そのため、具体的な解決策やアドバイスをするよりも、不安な気持ちを受け止めて、共感を示すことが大切といわれています。

情緒不安定でつらいときは無理しないことが大切

情緒不安定とは、感情の起伏が激しい精神状態のことを指します。誰でも一度は経験することがあり、珍しいことではないものの、情緒不安定が数週間〜数か月など、長期間続く場合は注意が必要です。

放置してしまうと悪化につながる可能性もあるため、我慢し過ぎずに病院を受診しましょう。

取材先・監修者プロフィール:白濱龍太郎さん

RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック 院長 白濱龍太郎さん

しらはま・りゅうたろう RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック 院長。2002年、筑波大学医学群医学類卒業。東京医科歯科大学大学院統合呼吸器病学修了。東京共済病院、東京医科歯科大学附属病院を経て、13年にクリニックを開設。日本睡眠学会専門医。『誰でも簡単にぐっすり眠れるようになる方法』(アスコム刊)をはじめ著書多数。

※この記事は2023年4月の記事を再編集して掲載しています。

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