更年期の敵「冷え」と「のぼせ」を和らげる50代の温活

更年期の敵「冷え」と「のぼせ」を和らげる50代の温活

公開日:2025年11月28日

更年期の敵「冷え」と「のぼせ」を和らげる50代の温活

手足は冷たいのに顔だけほてる「冷えのぼせ」は、体の中で「冷え」と「のぼせ」が同時に起こる複雑な状態。やみくもに冷やしたり温めたりすると逆効果になることもあります。鍼灸師、国際薬膳師の岡尾知子さんに、東洋医学の視点から対策を伺います。

岡尾知子
監修者
岡尾知子
監修者 岡尾知子 つぼみ堂はりきゅう院院長・鍼灸師・国際薬膳師

冷えのぼせは「腎」の機能低下

冷えのぼせは「腎」の機能低下
Luce / PIXTA

冬につらい体の冷え。特に更年期では、「顔は汗をかくほど熱いのに、手足は冷たい」といった「冷えのぼせ」に悩まされる人が増えます。

国際薬膳師の岡尾さんによると、東洋医学では五臓の「腎」の機能が低下することで、冷えのぼせが起こると考えられているのだそう。

「腎には、体を温める力の“陽気”と、熱を冷ましたり潤したりする力の“陰気”が蓄えられています。加齢とともに腎の陰気が低下すると、熱を冷ます力が弱くなって陽気がこもり、上に昇りやすくなります。その結果、顔はほてって熱いのに、お腹から下は冷たいといった冷えのぼせが起こるわけです」(岡尾さん)

こうした、冷ます力が低下した状態を東洋医学では「陰虚」、陰虚によって起こる熱症状を「虚熱」と言います。

「手足が冷えていると『自分は冷え性だ』と思いがちですが、陰虚タイプの人は純粋な冷え性ではないと考えておいた方が賢明です。冷えが気になるからと、辛い料理を食べすぎたり、熱いお風呂に浸かりすぎたり、激しい運動をしすぎたりすると、余計に熱がこもってホットフラッシュやのぼせの症状がひどくなることもあります」(岡尾さん)

冷えのぼせに効果的な温め方とは?

冷えのぼせに効果的な温め方とは?
ぽてぽて / PIXTA

冷えのぼせの対策では、血流を良くすることが大切。その一助となるのが体を温めることですが、温めすぎはのぼせや多汗を招くことがあるので、温め方にちょっとした工夫が必要です。

「考え方としては、『温めて血流をよくする』ではなく、『血流をよくして全身に熱を行き渡らせる』イメージです」(岡尾さん)

そこで岡尾さんに、冷えのぼせに効果的な温め方を教えてもらいました!

■体幹(下腹部)を中心に温める
体幹には、生命活動に必要な臓器が存在します。体温調節機能は、体幹の深部体温を保つことを優先させるので、ここが冷えると末端に熱が行きにくくなるのです。

そこで温めたいのが下腹部です。衣類で温めるなら腹巻がおすすめ。ただし、温感効果の強いもので温めすぎると逆に熱がこもりやすくなる恐れがあるので、吸湿性・放湿性に優れた綿(コットン)、ウール、シルクなどの素材から選びましょう。

■半身浴でお腹から下を温める
入浴は全身を温め、体の緊張を取ってくれるので、血流をよくするのに効果的。しかしここでも、温めすぎには注意です。

「半身浴ならお腹から下を温めるので、温めすぎを防ぎながら血流を促せます。目安は、40℃前後のお湯に20分くらい。半身浴が苦手な方は、重炭酸入浴剤を入れたお湯で全身浴を行うと、短時間でも血行促進効果が期待でき、ぬるめのお湯でも全身がしっかり温まりますよ」(岡尾さん)

■軽い運動で血流をアップ
運動には、血流を良くして全身に熱を行き渡らせる効果があります。長時間同じ姿勢でいると血流が滞るので、すき間時間などを利用して積極的に体を動かしましょう。

おすすめなのは、体幹や太ももの大きな筋肉、血液を心臓に戻すポンプの役割を持つふくらはぎを鍛える運動です。具体的には、スクワットや階段を使った昇降運動、かかとを上げ下げする運動などがあります。

冷えのぼせに効果的な温め方とは?
mw / PIXTA

「かかとを上げ下げする運動は、椅子などに座ったままでも、立って行ってもふくらはぎの筋肉を刺激できます。立って行うと、股関節が伸びることで下半身の血流促進にもつながりますし、太ももやお尻といった大きな筋肉も刺激できるので、歯みがきや洗い物など、立って行う日常動作のついでに取り入れてもいいですね」(岡尾さん)

手の冷えがつらい人は、手指を丁寧に伸ばして(反らせて)いくストレッチもおすすめ。

「指の第一関節→第二関節→指の付け根→手首までゆっくり反らせていくと、血が通ってきて背中まで温まってくる感じがしますよ」(岡尾さん)

根本原因にアプローチする食材7選

根本原因にアプローチする食材7選
プロモリンク / PIXTA

冷えのぼせの改善では、食事による内側からのケアも有効です。岡尾さんによると、「陰気(熱を冷ましたり潤したりする力)」を補う食材を日常的に取り入れることが、冷えのぼせの根本原因へのアプローチになるのだとか。そこで岡尾さんに、薬膳の視点でおすすめの食材を教えてもらいました。

1.山芋
漢方では「山薬(さんやく)」といい、腎が弱い人が使う漢方薬にも配合されています。とろろはもちろん、カレーやポテトサラダでじゃがいもの代わりに使ってもおいしくいただけます。

2.ゴマ
熱を冷ましたり潤したりする「陰気」を補う食材。ご飯やおかずにふりかけるだけで手軽に取り入れられます。

「我が家では、ゴマすり器に入れたゴマをテーブルに常備していて、いろいろな料理にふりかけて使っています。こうすると習慣化しやすくなりますよ」(岡尾さん)

3.はちみつ

根本原因にアプローチする食材7選
 guphary / PIXTA

気を補うと同時に、潤いを与える作用もあるはちみつ。ほんのりとした優しい甘さは、緊張を取り除くのにも役立ちます。料理や飲み物で、砂糖の代わりに使うのもおすすめです。

4.お酢
酢は、血の巡りをよくしてくれる代表格の食材。漢方では、腎の働きを補うのに黒い色が良いとされているので、苦手でなければ黒酢を選ぶとよいでしょう。

5.大根
薬膳では冷やす性質があり、気を下降させる作用もある大根。冷えのぼせ特有の、上昇した熱を下ろす効果が期待できます。みそ汁の具や煮物、大根おろしなど、好みの調理法で取り入れればOK。ちなみに、岡尾さんのおすすめは、冬の喉のケアにも役立つ「大根飴」です。

「大根をさいの目切りにして、はちみつでひたひたに浸けたら冷蔵庫で寝かせます。6時間ほど置くとシロップが上がってきますから、それを大さじ1杯くらい取って、白湯で薄めて飲むといいと思います」(岡尾さん)

6.柚子茶

根本原因にアプローチする食材7選
セーラム / PIXTA

柚子などの柑橘類には、上昇した気を下ろす働きがあります。柚子茶は市販のものでもいいですし、搾った柚子の果汁にはちみつを加え、お湯を注いだものでもOKです。

柚子茶を自分で作る場合は、皮ごとスライスした柚子を消毒したガラス瓶に入れ、はちみつをひたひたになるまで注ぎます。3日ほど置けば、おいしい柚子茶が楽しめますよ。

7.ローヤルゼリー
ミツバチ産品のローヤルゼリーは継続して飲用することで、手足の冷えが改善されたり、更年期特有の肩こりが軽減したという報告があります。更年期のアンバランスな冷えを和らげる助けになりそうです。

突然の冷えのぼせの対処法

突然の冷えのぼせの対処法
Luce / PIXTA

更年期の冷えのぼせは、効果的な温め方や陰気を補う食材を取り入れることで、症状を和らげられる可能性があります。とはいえ現代の冬は、外は寒いけれど室内はのぼせるほど暖房が効いていることが多いので、突然の症状に悩まされることも……。

そこで覚えておきたいのが、冷えのぼせが起こったときの対処法です。岡尾さんおすすめの対処法は以下の3つです。

1. 首元やこめかみを濡れタオルで冷やす
顔が熱いからと言って、冷たすぎるもので急に冷やすと、気血の巡りが悪くなります。軽く濡らしたタオルやハンカチを、首元やこめかみに優しく当てて熱を逃がしましょう。

その際に常温の水を一緒に飲むと、体を潤して熱を鎮める助けになります。熱が落ち着いたら、白湯のような温かい飲み物で水分補給を。

2.呼吸を整えてクールダウン

突然の冷えのぼせの対処法
玄武 / PIXTA

深くゆっくり呼吸することで、ほてりが和らぎやすくなります。岡尾さんが教えてくれた呼吸法は以下の通りです。

<ほてりを和らげる呼吸法>

  1. まず息を吐き切る。
  2. 鼻から息をたっぷり吸う(1で息を吐き切ることで自然とたっぷり新鮮な空気を吸い込めます)
  3. 口をすぼめて、口から長く息を吐く。

さらにおすすめなのは、この呼吸法を仰向けで行うことです。仰向けになるだけで自然と腹式呼吸になり、呼吸がより整いやすくなります。

寝る前や、日中のリラックスタイムの習慣にするのもおすすめです。

3.下半身を同時に温める
冷えのぼせは、東洋医学でいう「上熱下寒」の状態のため、下から温めるのが有効な対処法。特に温めたいのは、下腹と腰(骨盤まわり)です。カイロでへそ下や腰を温める他、日中も腹巻を使うと効果的です。

岡尾さんは、更年期の冷えのぼせについて、「冷えと熱の両方を合わせ持つもので、温めればいいわけでも、冷やせばいいわけでもない複雑な状態です。暖房のきいた室内の熱をサーキュレーターで循環させるイメージで対処してもらえたら」と話します。

上手な温め方や陰気を補う食材、対処法などを取り入れて、悩ましい冷えのぼせを遠ざけていきましょう。

■取材協力:山田養蜂場 健康科学研究所

教えてくれたのは……岡尾知子(おかお・ともこ)さん

鍼灸師、国際中医師、国際薬膳師。雑誌、新聞、WEBなどで健康に関する情報発信を積極的に行っている。本草薬膳学院講師、つぼみ堂はりきゅう院院長、ロータス薬膳教室主宰。著書に『はじめての薬膳生活』『からだがよろこぶ野菜の事典と薬膳レシピ』(ともに法研)がある。

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