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- 【医師が解説】50代女性のうつの症状と認知症リスク
50代以降の女性が気を付けたい「うつ病」。仕事や人間関係のストレスが原因で発症し、長い間続くと将来認知症になるリスクが上がると言われています。まずは、代表的なうつの症状9つに当てはまるかチェックしてみましょう。最先端診断法も紹介します。
取材先:川村則行さんのプロフィール
かわむら・のりゆき。川村総合診療院院長。1961(昭和36)年生まれ。東京大学医学部医学科卒業。同大学院博士課程(細菌学)修了。国立精神・神経センター心身症研究室長などを経て、2011年開業。臨床分子精神医学研究所所長。近著に『うつ病は「田んぼ理論」で治る』(PHP研究所刊)
40代で「うつ病」発症!!50代女性も要注意
うつ病をはじめとした「気分障害」(躁うつ病も含む)は、男性より女性に多く発症します。年代別に見ると、女性の発症は40代でグンと増え、50代を過ぎても患者数が多い状態が続きます。
うつになると、不安や集中力の低下、不眠などの症状が出てきます。
気持ちが落ち込んだり、やる気が出なかったりするのは、誰にでもあることですが、症状が2週間以上続き、日常生活にも支障が出ているなら「うつ」かもしれません。
50代うつの原因は人間関係のストレス!認知症リスクも
「50代以降の女性の場合は、人間関係のストレス、特に子どもや夫など家族の悩みが原因で、うつになる人が多いですね。子どもが独立して巣立った寂しさや、夫と死別して一人暮らしになった孤独感を訴える人もいます」
こう話すのは、うつの治療に詳しい、川村総合診療院院長の川村則行さんです。
うつの症状というと、憂うつな気分や気力の低下などを思い浮かべますが、意外に多いのが、眠れない・疲れやすい・食欲がないといった体の症状とのこと。
「痛みがしつこく続く、耳鳴りやめまいがなかなか治らないという背景に、うつが隠れていることもあります」と川村さん。
また、うつになると頭が思うように働かず、もの忘れも増えるため、「もしや認知症では?」と心配する人もいるといいます。
「もの忘れは、脳の前頭葉の働きが低下するのが原因です。うつが長い間続くと、将来、認知症になるリスクが上がるという報告もありますから、放置せず、受診してきちんと治すことが重要です」
うつの症状と最先端の診断法をチェック!
うつには大きく9つの症状があります。まずは今の状況を、以下のチェックリストで確認してみましょう。
- 気分が落ち込んだり、悲しくなったりする
- 物事に対して興味がなくなり、楽しめなくなる
- 疲れやすく、気力がわかない。何をするのもおっくうに感じる
- 食欲がない、あるいは食べ過ぎてしまう
- なかなか眠れない、あるいは眠り過ぎてしまう
- 自分には価値がない、周りに申し訳ないと思ってしまう
- 頭が思うように回らない、物事に集中できない
- そわそわして動き回る。あるいは動作や話し方がゆっくりになる
- 生きていても仕方ない、死にたいと思ってしまう
さて、いくつ当てはまりましたか? 最初の2項目の両方、またはどちらか1つに該当した上で、残りの項目も合わせて、全部で5項目以上に当てはまる状態が2週間以上続いている場合、うつと診断されます。
血液検査でわかる!うつの最先端診断法
こうした症状のチェックや問診に加え、川村さんが診断に用いているのが血液検査。川村さんが独自に開発した診断法で、今、注目されています。
「うつの診断は、現状では医師の主観や経験に頼っているため、誤診も少なくありません。そこで体の病気と同じように血液中の物質を指標にして客観的な診断ができないかと考えました」
うつになると血液中のPEA(リン酸エタノールアミン)という物質が減るため、血液検査でPEA濃度を測定することで、うつを客観的に診断できるそう。さらに、治療効果の確認や薬のやめどきもわかるといいます。
なお、この血液検査は、日本国内では川村さんのクリニックでのみ実施されています(※2020年4月1日からは有料予約診察枠で実施)
うつの予防には「考え過ぎ」を防ぐことが大切!
そもそも、なぜうつになるのでしょうか。
「うつの患者さんの脳の中では、神経細胞が炎症によるダメージを受け、神経伝達物質が足りなくなっています」と川村さん。
脳の神経細胞の間で情報のやり取りをしているのが、神経伝達物質。たくさん種類がありますが、うつの症状に関わる神経伝達物質は、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンの3つです。セロトニンは気分を安定させ、不安や恐怖を軽くします。ノルアドレナリンは思考力や集中力、意欲に、そしてドーパミンは気分の高揚や幸福感などに関係しています。
これらの神経伝達物質が不足すると、不安や意欲の低下、楽しみの喪失などのうつの症状が現れます。私たちの感情は脳内の物質によって大きく左右されているのです。
「ストレスを抱えて思い悩んだり、過去のつらい経験を何度も思い出したり、マイナス思考でくよくよしたりしていると、神経伝達物質がどんどん使われて、減っていきます。“考え過ぎ”は、うつにつながるため、要注意です」
次回は、うつの予防につながる「考え過ぎないための7つの習慣」をご紹介します。
取材・文=佐田節子 イラストレーション=落合恵 構成=大矢詠美(ハルメク編集部)
※この記事は2019年8月号「ハルメク」に掲載された内容を再編集しています。
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