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50代女性の多くが抱える悩み、だるさ、不眠、こり、めまいなどの何となくの不調。更年期障害と自己判断していませんか? もしかしたら「自律神経失調症」かもしれません。まずは18項目のセルフチェックをしてみましょう。楽になる呼吸法も解説します。
50代女性が注意すべき「自律神経失調症」
新型コロナウイルス感染症がいつ収束するともわからない中、精神的ストレスを溜め込む人は増え続けているといわれています。特に50歳以降の女性は、更年期に入り心身のバランスを崩しやすい年代でもありますので、注意が必要です。
『1日誰とも話さなくても大丈夫 精神科医がやっている猫みたいに楽に生きる5つのステップ』(双葉社刊)という本では「コロナ禍におけるメンタルも含めた体調不良の対処法」について解説しています。この本の取材をした際に、著者である鹿目将至(かのめ・まさゆき)先生から、「自律神経失調症」についても、いろいろとお話を聞かせていただきました。
鹿目先生は精神科医として、日々、「自律神経失調症」に悩む人たちを診察するプロですが、先生いわく、50代女性は「自律神経失調症」に悩む人が少なくないとのこと。
何を隠そう、私も“注意世代”の一人で、さまざまな不調を経験している最中ですので、今回は50代以上の女性が注意すべき「自律神経失調症」について、改めてお話を伺ってきました。
自律神経失調症とは?鹿目先生、教えてください!
【鹿目医師】鳥居さん、お久しぶりです。本の出版以来ですね。今日はどうされましたか?
――先生、その節はお世話になりました。実は私、最近、血圧が乱高下するようになって、肩こり、頭痛もひどいんです。そこで、近所の内科の先生に診てもらったら「自律神経失調症だから様子を見るように」と言われて帰されたんです……。
【鹿目医師】それは大変でしたね。僕でお役に立てるなら、何なりと!
――では、早速ですが改めて教えてください。自律神経失調症ってどういう症状があるんでしょう?
自律神経失調症のセルフチェック
【鹿目医師】自律神経失調症として体に出る主な症状には「体のだるさ・頭痛・頭重感・めまい・ふらつき・動悸・肩や首のこり・のぼせ・手足の冷え・不眠・下痢や便秘、腹痛・息苦しさ」などがあり、気持ちに出る主な症状には「抑うつ・憂うつ・不安感・恐怖感・焦り・パニック」といったものがあります。また、いろいろな症状が同時進行するケースも珍しくないです。
自律神経失調症のセルフチェックリスト・自己診断
- めまいや耳鳴りがする
- 肩こりや頭痛がひどい
- 目が疲れやすい
- 口が乾きやすい
- 喉が詰まるような感覚がある
- 手足が痺れる
- 顔だけ、あるいは手足にだけ汗をかく
- 胸がドキドキしたり、ザワザワしたりする
- 下痢や便秘を繰り返す
- 寝つきが良くない
- ぐっすりと眠れている気がしない
- 疲れやすい
- やる気が起きない
- イライラする
- 突然、不安感に襲われる
- 憂うつになることが多い
- 仕事や家事に集中できなくなった
- 日中でもボーッとしてしまうことが増えた
これらの症状に複数当てはまることがあれば、自律神経の乱れや体の不調が考えられます。まずは生活習慣を見直し、ストレスの少ない環境を心掛けましょう。また症状が続くようであれば、早めに医療機関を受診しましょう。
自律神経失調症の原因は?
――確か、自律神経失調症のことを車のアクセルとブレーキに例えて説明してくださっていましたよね?
【鹿目医師】そうです、そうです!憶えていてくださり、光栄です(笑)
まず自律神経は、自分の意志や意識で働かせることができない神経で、心臓と血管をコントロールして血の流れを維持してくれているものなんです。体の中では意識しなくとも、心臓は動き、食べ物を消化し、体温を調整していますよね。これは、すべて自律神経のおかげです。血流、血圧、心拍、発汗、体温などをコントロールしてくれています。
さらに、細かく言うと、自律神経には交感神経と副交感神経があります。
交感神経は、体をアクティブにするアクセルの役割を持ち、副交感神経は体をリラックスさせる、いわばブレーキのような役割を持っています。それがバランスよく機能して、体を適切にコントロールしているわけです。
――なるほど。つまり、私はアクセルが暴走しているから、眠りが浅くて、肩や背中が痛く、心臓のあたりがソワソワしたり、急に不安になったりするってことなんですね?
でも、先生?これらは最近の症状ですが、実はここ何年も、頭痛やほてり、手足の冷えで、なんか不調だなって日々が続いています。
これは更年期障害だろうと自己診断していたのですが、正直、自律神経失調症との違いがわかりません。
【鹿目医師】うんうん、これは複雑なので、わからなくても当然ですよ。まず自律神経失調症について説明すると、これは一般的には有名な言葉ですが、実は医学専門書にはこの言葉は載ってないんです。現状では、明確に数字として表れる検査はありません。でも、患者さんには不快な症状がある。つまりこれは「検査をしても異常がないのに、自律神経系の複数の症状を訴える状態」を指しているんです。
一方、更年期は閉経に伴う前後10年のことを指します。自分が更年期に入っているかは、血液検査で卵巣機能の状態やホルモンの変化などで調べられるんですよ。ただ、これは年齢に伴う生理的変化なので病的変化ではないんですね。更年期に無症状の方もいますから、検査結果はあくまで参考資料です。閉経前後の年齢であって、日常生活に支障が出るほどの症状が現れている場合、更年期障害といえるでしょう。また、閉経後にしばらくすると症状の改善が得られるという点も更年期障害の特徴の一つです。
それで、女性にはどうしても閉経という自然現象がありますから、個々の違いはありますが、さまざまな自律神経失調症状が現れる場合があるんです。これは女性ホルモンの分泌が低下するのが原因です。
ただ、自律神経失調症も、更年期障害も、どちらも主に症状を表すものであって、正式な病名とは言い難いです。自律神経の不調の起因が、女性ホルモンの低下か、他のストレスか、もしくはその両方と考えるとわかりやすいかもしれないですね。
――まったく、ありがたくない話ですね(笑)。でも、だから更年期障害の症状と自律神経失調症の症状はよく似ているってことなんですね。
【鹿目医師】そうです。更年期障害の症状に自律神経が関係しているのが理由です。ちょっと専門的になりますが、自律神経も、女性ホルモンの分泌量も脳の視床下部というところが関係しています。
閉経すると、卵巣にある卵胞からのエストロゲン(女性ホルモン)がほとんど分泌されなくなります。しかし、脳は視床下部から下垂体を通じて、女性ホルモンを出すように命令し続けます。でもその期待には応じられないので、脳は大混乱。その影響を受けて、自律神経の調節の乱れが起こるって仕組みです。
――自律神経失調症と更年期障害の違いがわかったような気がします。でも、両方つらいです!何が悪かったんでしょう?まあ、不摂生という心当たりはたくさん、ありますが(苦笑)
【鹿目医師】いやいや、鳥居さんが悪いわけじゃないです!自律神経失調症は性別も年齢も関係なく、なる時はなるんですよ。
しかも、アラフィフ年齢以降は、心と体に変化が起こりやすい時期ですから。個人差はありますが閉経前後10年間は、先ほど言ったように、ホルモンバランスが乱れる時期なので、どうしても体調不良が起こりやすいんですね。
それに加えて、お子さんの受験や就活、老親の介護、ご自身の仕事、ご家族も含めた人間関係の悩みなど、精神的な重圧を感じることだらけになると思います。無理がきかなくなる年齢にもさしかかるので、いつも元気でニコニコ笑顔なんてできたら、逆にスーパーマンですよ。
――そうですか……。これは年代のせいで、なっても仕方ないことなんですね?でも私、よくなるんでしょうか?
【鹿目医師】大丈夫ですよ。心配いりません。
内臓の働きなどを調節してくれるのが「自律神経」でしたよね。この自律神経がバランスを崩して臓器にも悪影響を及ぼしているということですから、逆に言えば、自律神経を整えることによって、これらの症状を軽減することができるってわけです。
つまり、自律神経のバランスに気を使ってあげれば、更年期に感じやすい不快な症状もグッと楽になりますよ。
――ホントですか?希望が持てる!!
自律神経を整える深呼吸のやり方
――早く楽になりたいんですが、自律神経失調症を治すためには、まず、どんなことをやればいいんでしょう?
【鹿目医師】呼吸ですね。とにかく、調子が悪いなって思ったら、深呼吸しましょう。
呼吸を上手にやるだけで、気持ちを落ち着かせることができます。やり方は簡単です。吸う息と吐く息に意識を集中させて、ゆっくりと吸い、ゆっくりと吐く。腹式呼吸にしなくちゃ!とか考えなくていいですから、3秒吸ったら、3秒吐く。4秒吸ったら、4秒吐く。5秒くらいまでやれば、体は新鮮な空気で満ちあふれます。
現代人は戦闘態勢でいることが多いので、特に吐く息を丁寧にすることで、副交感神経の働きが高まるようにしてあげるといいですね。
朝日を浴びることも大事
――そういえばご著書には、呼吸法以外にも「こんな簡単なことでいいの?」という方法が39項目も載っていますよね。「朝起きたら、窓開けビタミンD」も印象的でした。朝起きて一番に窓とカーテンを開けて朝日を浴びることの大切さを、改めてやってみて実感しました。
【鹿目医師】意外と人間って簡単なことだけど、できていないってことが多いですからね。朝起きたら、太陽の光を浴びて、体をリセットしてくださいね。これだけで体はビタミンDを生成しますし、夜もグッスリ眠れるようになります。つまり自律神経も整うってことです。
運動、睡眠、食事の3点セットは自律神経の働きを維持するために重要なんですが、50代前後の方たちには、自分が心地よいと思うことを積極的に、そうでないことはなるべく無理をしないってことを申し上げたいです。
その上で、不調が続いて不安に思われたら、そのときが医者にかかる好機だと思います。
自律神経失調症の治療は、一番つらい症状の診療科へ
――何科にかかればいいんですか?やっぱり内科じゃなくて、精神科ですか?
【鹿目医師】もちろん、精神科も心療内科も自律神経失調症は得意分野ですから、来ていただいて構いませんが、敷居が高い場合は、まず、一番つらく困っている症状に合わせた診療科に行きましょう。血圧が心配だったので内科に行かれた鳥居さんの判断は正しかったと思いますよ。
耳鳴りなら耳鼻咽喉科、胃の不快感なら内科というイメージでOKです。
まずは気になる症状を、しっかりと検査し診察してもらうことが大事です。一番つらい症状が緩和することもあるでしょうし、先ほど申し上げたように「検査をしても異常がないのに、自律神経系の複数の症状を訴える状態」かどうかの確認もしやすくなります。その方がある意味、安心してメンタルヘルスを専門に扱う医療機関にかかれるかもしれません。
自律神経失調症は命に別条がないといっても、不快極まりないですからね。しかも、これを放置しておくと、うつ病やパニック障害に移行する場合もあるので、実は侮れない症状なんですよ。
いずれにしても、体の不調は「もっと私を労わって!」という体からのサインですので、ちゃんと聞いてあげるってことが大切です。
――ありがとうございました。次回は私の苦手な運動のやり方について教えてください。
鹿目将至(かのめ・まさゆき) さんのプロフィール
1989年、福島県郡山市生まれ。日本医科大学卒業。現在、愛知県豊橋市の松崎病院 豊橋こころのケアセンター勤務。2020年4月にプレジデントオンラインで発信した「激増中『コロナ鬱』を避けるための5つの予防法~精神科患者の9割以上がコロナ案件」が大反響を呼ぶ。
『1日誰とも話さなくても大丈夫 精神科医がやっている猫みたいに楽に生きる5つのステップ』(双葉社刊)鹿目将至(著)、 鳥居りんこ(取材・文)
コロナ禍で、心身の不調を抱える人が増加する日本。特に深刻なのは、「1日中家にこもって、誰とも言葉を交わさない人」のうつ。精神科医の著者が自ら取り組む、簡単かつお金のかからない効果絶大なテクニックの数々を紹介する一冊。
鳥居りんこ
とりい・りんこ 作家、教育ジャーナリスト、介護アドバイザー。1962年生まれ。自らの体験を基に幅広い分野から発信し、悩める女性の支持を得る。近刊に『神社で出逢う 私だけの守り神』(浜田浩太郎著・祥伝社刊)、取材・文を担当した「1日誰とも話さなくて大丈夫、精神科医がやっている猫みたいに楽に生きる5つのステップ」(双葉社刊)。「親の介護をはじめる人へ伝えておきたい10のこと」(ダイヤモンド・ビッグ社刊)。
※この記事は2020年12月の記事を再編集して掲載しています。
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