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- 自律神経を整えるアイデア12と自己診断で不調改善
交感神経と副交感神経の状態は、4パターンに分類できるそう。【超健康状態】【のんびり状態】【ストレス状態】【お疲れ状態】あなたはどのタイプ? セルフチェックリストとともに、今すぐできる自律神経の整え方と「スゴ伸びストレッチ」も紹介します!
監修者のプロフィール
順天堂大学医学部教授 小林弘幸さん
こばやし·ひろゆき 1960(昭和35)年、埼玉県生まれ。順天堂大学医学部卒業、 同大学院医学研究科修了。 ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、 アイルランド国立小児病院外科での動務を経て、 現職。自律神経研究の第一人者として、トップアスリートや文化人のコンディジョニング、パフォーマンス向上の指導に携わる。 日本体育協会公認スポーツドクター。日本初の便秘外来を開設し、腸内環境を整える食事や運動などの生活習慣の指導にも取り組む。 『スゴ伸び』(小学館集社プロダクション刊)、『眠れなくなるほど面白い 図解 自律神経の話: 自律神経のギモンを専門医がすべて解説! 』(日本文芸社刊)など著書多数。
「自律神経」の働きと仕組み
自律神経は2種類あり、活発になる時間帯が異なります。
自律神経は全身の「調整役」。乱れるとさまざまな部位に不調が現れます。体が重い、気分が憂鬱……そんな不調は自律神経のせいかもしれません。ハルメク世代は自律神経の機能が低下しがち。まずはその仕組みを解説します。
副交感神経の働き・役割
- 血管 ⇒ 拡張する
- 気分 ⇒ リラックス
- 瞳孔 ⇒ 閉じる
- 唾液 ⇒ 増える、サラサラする
- 筋肉 ⇒ ゆるむ
- 心拍数 ⇒ 減る
- 胃腸 ⇒ 活発に動く
交感神経の働き・役割
- 血管 ⇒ 収縮する
- 気分 ⇒ 緊張・興奮する
- 瞳孔 ⇒ 開く
- 唾液 ⇒ 減る、ネバネバする
- 筋肉 ⇒ 緊張する
- 心拍数 ⇒ 増える
- 胃腸 ⇒ 動きが抑制される
外出自粛中、どんな心身の不調がありましたか?
新型コロナウイルス感染拡大防止のための外出自粛中、どんな心身の不調がありましたか? ハルメク編集部が2020年5月に実施したアンケートでは、外出自粛中の生活で生じた、さまざまな不調が浮き彫りになりました。最も多かったのは体重増加で、他にも気分が沈む、やる気が出ないといった心の不調、肩や首のこり、睡眠の質の低下、疲れやすさなどが上位を占めました。
1位 体重増加(97人)
2位 気分が沈みがち(86人)
3位 肩や首がこる(83人)
4位 やる気が出ない(78人)
5位 不安や緊張を感じる(77人)
6位 寝つきが悪い、夜目覚めてしまう(68人)
7位 だるい、すぐに疲れる(67人)
8位以下は腰痛、目の疲れ、イライラ、おなかが張る、頭痛と続きます。
(複数回答。2020年5月実施。ハルメクアンケートにて外出自粛期間中に心身の不調があったと答えた、55歳以上の女性230人が対象)
「これらは自律神経の乱れによって起こる代表的な症状。コロナ禍によるストレスで自律神経のバランスが崩れ、全身の血流が悪くなったり、腸の働きが低下したりして、いろいろな不調が出てきたと考えられます。また、夏場は暑さによる不調も増えます」と順天堂大学医学部教授の小林弘幸(こばやし・ひろゆき)さんは説明します。
体の隅々に張り巡らされた自律神経は、交感神経と副交感神経からなっています。交感神経はいわばアクセル役で、体を活動モードにする働きが。この神経が優位になると血管がキュッと縮んで、血圧や心拍数が上がり、気分も高揚します。一方、副交感神経はブレーキ役で、こちらが優位になると血管が拡張して血圧や心拍数が低下し、気分はリラックス。体が休息モードに切り替わります。
これら2つの神経は互いにバランスを保ちながら、血液の流れや内臓の働き、体温調節、免疫、代謝などをよい状態に保っています。ところが、ストレスや運動不足、生活習慣の乱れなどが加わると両者のバランスが乱れ、心身の不調が起こりやすくなるのです。
自律神経の状態のセルフチェックをしてみよう
小林さんは、交感神経と副交感神経の状態を上の4パターンに分類しています。
右上【超健康状態】交感神経も副交感神経も高い
血流がよく、病気になりにくい、疲れにくい、太りにくい、気分が安定している
右下【のんびり状態】交感神経が低く、副交感神経が高い
血流が悪い、やる気が出ない、だるくなりがち、日中も眠い、太りやすい
左上【ストレス状態】交感神経が高く、副交感神経が低い
血流が悪い、イライラしやすい、緊張が強い、ぐっすり眠れない、便秘がち
左下【お疲れ状態】交感神経も副交感神経も低い
血流が非常に悪い、疲れやすい、気分が沈みがち、不眠や肩こり、頭痛など不調が起こりやすい
最も良いのは交感神経と副交感神経の活動量が高く、バランスもよい状態。病気になりにくい、いわば“超健康状態”です。
「ただし、ストレスの多い現代人でこの状態にある人は、むしろ少数派。50代、60代のハルメク世代では、交感神経と副交感神経の活動量が低下し、バランスも崩れた“お疲れ状態”が多いようです」と小林さん。お疲れ状態に陥ると血流が悪化し、疲れやすい、肩がこる、よく眠れない、気分も滅入りがち……と、さまざまな不調が起こりやすくなります。
この他、交感神経が優位な“ストレス状態”だと、イライラ、不眠、便秘などの不調が。半面、副交感神経が優位な“のんびり状態”では、だるい、やる気が出ないといった症状が出てきます。さて、あなたの自律神経は今、どの状態にあるでしょうか。
「自律神経を整えるには、腸をいたわる食事、ストレス対策、適度な運動の3点が重要。簡単な方法を続けるだけで確実によい方向に変わっていきますよ」(小林さん)
自律神経を効果的に整えるには、「食事」「ストレス対策」「運動」の三本柱で対策を。小林さん直伝、今日からすぐに始められる簡単な自律神経強化法を紹介します!
自律神経を整える食事とは?
こんな悩みのある人に特におすすめ
- 体重が増えた
- おなかにガスがたまる
- 便秘ぎみ
「太りやすいのは、腸の働きが悪くなって便通が滞り、代謝が低下しているから」と小林さん。腸内環境を改善し、副交感神経を活性化させて腸の働きを改善しましょう。免疫力アップも期待できます。
自律神経を整えるアイデア1:食物繊維と発酵食品をしっかりとる
食物繊維には便を柔らかくする「水溶性食物繊維」と、便のカサを増やして腸の運動を促す「不溶性食物繊維」があります。「水溶性食物繊維は排便をスムーズにするので積極的にとって。一方、ゴボウなどの不溶性食物繊維は、便秘の方が多くとるとおなかが張って便が硬くなるので注意。ヨーグルトなどの発酵食品もおすすめです」(小林さん)
自律神経を整えるアイデア2:腹七分目で、よく噛む
「食べたいものを腹七分目で、よく噛み、楽しく食べる。これが太らないコツ」と小林さん。楽しく、よく噛んで食べると副交感神経が高まって腸の蠕動(ぜんどう)運動がよくなり、消化を助ける唾液の量も増加します。
自律神経を整えるアイデア3:朝起きたらコップ1杯の水を飲み、日中もこまめに水分補給
朝は太陽の光を浴びて、コップ1杯の水を飲むことから始めましょう。睡眠中に失った水分を補うと同時に、腸を刺激して蠕動運動も促してくれます。また日中もこまめな水分補給を。「脱水状態になると血液が濃くなり、自律神経の働きも低下して、夏バテを起こしやすくなるので気を付けて」と小林さん。
自律神経を整えるためのストレス対策とは?
こんな悩みのある人に特におすすめ
- 気分が沈んで、やる気が出ない
- 不安や緊張を感じる
- 寝つきが悪い
ストレスで乱れがちな自律神経を整えるには、心身のリラックスが不可欠。「毎日のちょっとした工夫でよい状態に変えられますよ」(小林さん)
自律神経を整えるアイデア4:毎晩、 3行日記をつける
小林さんは20年近く日記をつけているそう。書くのは「今日一番イヤだったこと」「一番うれしかったこと」「明日の目標」の3点。「自分を客観視し、ストレスを明日に持ち越さないことで自律神経の乱れもリセットできます」(小林さん)。例えば「散歩中に転んだ」「夕日がとてもきれいだった」「しばらく会っていない友人に電話をしよう」など、内容はシンプルでOK。早速、始めましょう。
自律神経を整えるアイデア5:寝る90分前までに、ぬるま湯入浴を
自律神経を整えるにはぬるめのお湯に浸かるのがベスト。「休息モードの副交感神経への切り替わりがスムーズにいき、睡眠の質がよくなります」と小林さん。就寝の90分ほど前に入浴を済ませるようにすると、寝つきがよくなります。
自律神経を整えるアイデア6:ため息をつく
気持ちが沈むと、うつむきがちになって呼吸が浅くなります。「そんなときは積極的にため息を。はぁ~と息を長く吐くだけで自律神経のバランスが改善し、血流もよくなります」(小林さん)
自律神経を整えるアイデア7:空を見上げて「ま、いいか」
不安や心配事でくたくたになったときは、空を見上げましょう。そして「ま、いいか」とつぶやいてみて。丸まった背中が伸びると気道が開き、深い呼吸ができます。副交感神経の働きが高まって、リラックス効果大です。
自律神経を整えるアイデア8:顔や頭をタッピングする
緊張や疲労を感じたら、人さし指と中指、薬指の3本の指で顔や頭をトントンと軽くたたいてみましょう。「副交感神経を活性化させて血流を促し、緊張を和らげてくれます」と小林さん。頭頂部や頬、目や口のまわりなど、気持ちいいと感じる場所をやさしく触れる程度に。1回に30~60秒ほど続けましょう。
自律神経を整える運動方法
こんな悩みのある人に特におすすめ
- だるい、疲れやすい
- 肩や腰がこっている
- ぐっすり眠れない
自宅での時間が多くなると運動不足になって、生活のメリハリも低下しがち。屋内でも簡単にできる運動で、自律神経の働きを高めましょう。「新型コロナウイルスに負けないためにも、体を鍛えておくことが大切です」(小林さん)
自律神経を整えるアイデア9:だるいときこそ体を動かす
病気でもないのに体がだるい……。夏場は、そんな不調が多くなります。「だるいときは自律神経全体の働きが低下していることが多い。そんなときは、むしろ体を動かすのがおすすめ。筋肉を使うと血流がよくなって全身に酸素が行き渡り、老廃物や疲労物質も処理されます」と小林さん。家事やストレッチ、散歩などで体を動かしましょう!
自律神経を整えるアイデア10:肩を上げて、ストン!
肩こりがつらいときに試してほしいのが、肩の上げ下げ運動。胸を張って背すじを伸ばして立ち、息を吸いながら、両肩を耳たぶの方向に引き上げます。このとき、肩が前に出ず、後ろに引っ張られる意識で。そして一気に力を抜き、吐く息と一緒にストンと両肩と両腕を落とします。肩の緊張が取れ、気持ちも軽くなりますよ。
自律神経を整えるアイデア11:スクワットをする
足腰の筋肉を鍛え、下半身の引き締め効果も期待できるのが「スクワット」です。「下半身には全身の筋肉の約6割が集中していますから、スクワットをすると筋肉のポンプ作用で血液が運ばれ、全身の血流がよくなります。また、ゆっくり深く呼吸しながら行うことで副交感神経が活性化され、自律神経のバランスも整います。肩こりや腰痛、便秘の改善、ダイエット効果もありますよ」と小林さん。一度に5回程度、朝と夜に行いましょう。
1 両手を頭の後ろで組み、口から息をフーッと吐きながら、4秒かけてひざを曲げ、腰を落とす。ポイントは、背すじを伸ばし、胸を開くこと。重心はお尻に。ひざがつま先の前に出ないように。
2 鼻からスーッと息を吸いながら、4秒かけてひざを伸ばす。息を止めず、深い呼吸を意識する。かかとはしっかり床につけたままで行うこと。
自律神経を整えるアイデア12:スゴ伸びストレッチをする
スマホを見ているときなど、つい猫背になっていませんか。悪い姿勢が続くと筋肉がこり、体がゆがみ、内臓や血管も圧迫されて、いろいろな不調の原因に。そこで小林さんイチ押しなのが、「スゴ伸びストレッチ」。両腕を内側にねじり、手首をクロスさせて体を伸ばす方法です。
「肩甲骨がダイナミックに動き、体が1本のゴムになったようにグーッと伸びるので、気持ちいいですよ。呼吸筋が鍛えられて呼吸が深くなり、腸も刺激される。自律神経も整います」。朝と夜、毎日続けましょう。
1 腕をねじって左右の手のひらを合わせ、上に伸びる。ポイントは、ひじはなるべくまっすぐ伸ばし、耳の後ろに来るようにすること。※手首をねじるのが難しい人は、手のひらを合わせるだけでもいい。
2 ゆっくり息を吐きながら右へ左へと伸びる。側面の筋肉が伸びていることを意識する。
3 息を吐きながら前に後ろに伸びる。前屈ではお腹に力を入れ、背中を丸めずに。後屈では肩甲骨を内側に寄せる。
4 上半身を360度大きく回し、全方位に伸ばす。ひざは曲げない。腸が刺激されているのを意識する。呼吸は自分のペースで。
取材・文=佐田節子、イラストレーション=みやしたゆみ、構成=大矢詠美(編集部) ※この記事は、雑誌「ハルメク」2020年8月号を再編集しています。
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