50代前後の女性が気を付けたい病気特集

50代前後の女性がチェックしたい病気リスト12

松村 圭子
監修者
成城松村クリニック 院長
松村 圭子

公開日:2022.03.05

更新日:2023.05.18

50歳前後に訪れる閉経を迎え、女性の体は大きく変化します。更年期症状が現れるだけでなく、さまざまな病気のリスクが高まります。「この年代に気を付けたい病気特集」の第1回は、年を重ねてから気を付けたい病気を医師に教わります。

取材・監修:松村圭子さんのプロフィール

取材・監修:松村圭子さんのプロフィール

まつむら・けいこ 
広島大学医学部卒業。広島大学附属病院などの勤務を経て現職。日本産科婦人科学会専門医。若い世代の月経トラブルから更年期障害まで、女性の一生をサポートする診療を心がけている。西洋医学のほか、漢方や各種点滴療法なども治療にとり入れ、近年は、自身の食事を見直す中で女子栄養大学食生活指導士2級の資格を取得。著書に『これってホルモンのしわざだったのね 女性ホルモンと上手に付き合うコツ』(池田書店刊)や『医者が教える女性のための最強の食事術』(青春出版社刊)など多数。

閉経で体は変わる!50歳前後こそ健康の見直しを

閉経で体は変わる!50歳前後こそ健康の見直しを

女性は50歳前後になると閉経を迎えます。更年期症状を自覚するかどうかは人によって異なりますが、更年期には多くの方がほてりや発汗など、今までに見られなかった不調を感じたり、体型や肌、髪など、外見にも変化の兆しが見えてきます。

その原因は40代後半頃から、女性の体をガードしていた女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に減少していくからです。それに伴い、自律神経失調症状や精神的な不調など、さまざまな更年期症状が現れるようになります

エストロゲンはコラーゲンの生成にも関わっているので肌つやが悪くなったり、育毛発毛の力も衰えたり、手足のこわばりや関節痛、泌尿器系の不調が起きることがあります。

生活習慣病・骨粗鬆症・認知症のリスクが上がる

閉経後は生活習慣病・骨粗鬆症・認知症のリスクが上がる

閉経した後に続く長い人生では、特に「骨」「血管」「脳」に関するリスクが高まっていきます。悪玉コレステロールの値が高くなり、血管の老化が進み、動脈硬化から心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすくなります。

しかも、エストロゲンは脳の認知機能にも影響しますから、物忘れがひどくなり認知症のリスクが高まります。

エストロゲンの減少は骨密度の低下や骨質の劣化を招きます。その結果、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)になりやすくなり、骨折の危険性が高まります

また、更年期症状と思っていたら、「病気」だったということもあります。50歳は人生の折り返し地点、体のガードが弱くなる年齢になったと捉え直して、乳がん、卵巣がんなど女性特有の病気や、女性のがんのなかで死亡数が多い大腸がん、症状が更年期症状に似ている甲状腺疾患などのリスクにもしっかりと備えましょう。

50歳前後で、気を付けたい婦人科系の病気

50歳前後で、気を付けたい婦人科系の病気

子宮や卵巣に発生するさまざまな病気は、婦人科を受診することで早期発見の道につながります。実は、現代女性の婦人科系の病気は増加傾向にあります。その一因には、初潮(初経)年齢が早まっていること、出産回数の減少と月経回数の増加があるといわれています。

その結果、子宮や卵巣に大きな負担がかかっていると考えられ、月経回数の増加は、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮体がん、卵巣がんの発生に影響しているといわれます。閉経後に不正出血がだらだらと毎日続く場合は、子宮体がんの可能性を考えましょう。

子宮筋腫は、閉経後は徐々に縮小されます。しかし過多月経、貧血などの症状が強く出ている場合は治療が必要になります。一方、子宮頸がんは、若年化してきており、30~40代に最も多い病気です。進行がんは60代以降に多いので気を付けたいところ。

また、がんの中で女性の罹患率が一番高い乳がんも、出産・授乳経験のない人の方が、発症リスクが高いことがわかっています。検診は2年に1回、必ず受けましょう。

死亡数の多いがんにも注意

女性がかかるがんの中で罹患率が一番高いがんは乳がんですが、最も死亡数が多いのは、大腸がんです。2位が肺がん、3位がすい臓がんになります。大腸がんは一般のがん検診で検査を受けられますし、肺がん、すい臓がんの場合は、人間ドックやがんの専門病院などを受診することで発見が可能です。

更年期症状に似ている病気も

更年期症状に似ている病気も

気を付けたいのが甲状腺疾患、リウマチ、メニエール病といった病気です。症状が更年期症状によく似ているため見逃されることがあり、何年も症状が続いてようやく気付く人もいるほどです。自己判断で更年期症状と決めつけず、婦人科で病気のリスクがないかを診てもらいましょう。

毎年、同じ時期に健康診断を受ける

これらの病気の可能性があることを知らされると、不安に駆られる人がいるかもしれません。しかし、種々の検査をしても異常がなく、更年期症状と診断された場合は、誰でも経験する自然な加齢現象と捉えましょう。更年期はその現象に体が慣れていくための時期なのです。ただ、病気が潜んでいる可能性も捨てきれませんので、毎年、同じ時期に必ず健康診断を受けてください。それが病気の早期発見の一番の近道です。

例えば自分の誕生月に受けようと、ルールを決めるのも一案です。厚生労働省は、胃がん・肺がん・大腸がん・乳がん・子宮頸がんの5つのがんに対し、定期的にがん検診を受けることを推奨しています。この他に子宮体がんや骨密度も、かかりつけの婦人科クリニックで、できれば年に1度検診を受けることをおすすめします。

健康づくりのコツは「運動」「食」「心の持ち方」

閉経で体は変わる!50歳前後こそ健康の見直しを

最後に、私(松村圭子医師)の経験を踏まえて、更年期以降の健康づくりのコツを簡単にお伝えしたいと思います。キーワードは「運動」と「食」そして「心の持ち方」です。

実は46歳の頃、疲労感、倦怠感に襲われる日々が続き、何を食べてもおいしくないという時期を経験しました。そこで外食中心の生活をやめて、一から栄養と料理を研究、女子栄養大学の通信教育で食生活指導士2級や、食生活アドバイザー2級を取得しました。以前は市販のカット野菜のサラダを食べて満足するくらいのレベルで、栄養の知識はあっても料理は大の苦手。でも、体の不調がきっかけで手作りの料理を楽しむようになり、いつの間にか倦怠感はすっかり消え、以来、更年期症状は全く出なくなりました。その経験は今、診療にも役立っています。

更年期以降、70代80代になっても心掛けてほしいことは、骨や血管を意識した食事・運動です。ウォーキングで骨に刺激を与え、太陽を浴びてビタミンDを作り、たんぱく質、カルシウムをしっかり摂りましょう。健康寿命を延ばすためにも大事です。

更年期には理由もなく悲しくなったり、落ち込んだりしがちです。そういうときは自分の好きなことに打ち込むことをおすすめします。好きな歌手を応援したり、いろいろな資格を取ったり、ワクワクしながら楽しめる、自分にとっての“ときめき”を探してみてはいかがでしょう。   
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50歳前後の女性が気を付けたい病気リスト12

それぞれの病気について、病気の解説や対策、治療法について掲載しています。気になる病気について、より詳しくチェックしてみてください。

動脈硬化

動脈の血管が硬くなって弾力が失われた状態を動脈硬化といいます。加齢や血液中の脂質の異常、肥満、運動不足、喫煙、ストレスなどが原因といわれます。動脈硬化が進行すると心筋梗塞や脳血管障害のリスクが高まります。LDL(悪玉)コレステロールや血圧を適切に管理し、食生活を始めとした生活習慣の改善に努めましょう。
詳しくは>>「動脈硬化」を予防する、食事のポイントとは?

認知症

認知症とは「正常な精神機能が慢性的に減退・消失することで、日常生活・社会生活を営めない状態」のこと。記憶障害のほか、判断力の低下や言語障害なども起こります。予防には日頃から脳に刺激を与え、食事からは認知機能対策に効果的なDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)、大豆製品を積極的に摂るなどの工夫が必要です。
詳しくは>>50代からの認知症予防!ボケ防止のためにできること

骨粗鬆症

骨がもろくなり、骨折しやすくなる骨粗鬆症は、閉経による女性ホルモンの減少で発症しやすくなります。予防には自分の体重で骨に刺激を与える“垂直かかと落とし”などの運動を続けましょう。食事からは、骨の健康に不可欠なタンパク質やカルシウム、ビタミンDをバランスよく摂ることが大切です。
詳しくは>>骨粗鬆症を予防!骨の健康度チェックと日常生活の対策

卵巣がん

卵巣がんは初期には自覚症状がなく、発病後、だいぶ経過して腫瘍が大きくなったり、腹水が溜まるなどの症状で気付くことがほとんどです。病状の進行が速く、約半数はIII期(リンパ節へ転移)・IV期(他臓器へ転移)の状態で発見されるため、サイレントキラーとも呼ばれます。卵巣がんが疑われる場合は、エコーやMRIなど画像検査での確認が必要になります。

子宮体がん(子宮内膜がん)

子宮体がんは、子宮の内側の子宮内膜から発生するがんです。50~60歳代に最も多くみられます。閉経期・閉経後にだらだらとした出血が続くケースは体がんの可能性があります。出血が続いたら、早めに婦人科を受診しましょう。

子宮頸がん

子宮頸部に発生する頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が発病の引き金になります。25~34歳の女性では乳がんに次いで罹患率が高いとされていますが、進行がんは60歳代以降で多くなります。年に1度は必ず検診を受けましょう。
詳しくは>>子宮頸がんとは?症状やセルフチェック・検診について

子宮筋腫

子宮筋腫はこぶし大以下の大きさで症状がなければ、治療は必要としません。しかし大きいもの、増大傾向がみられるもの、症状を伴い生活に支障が出る場合には婦人科専門機関での治療が必要になります。
詳しくは>>貧血・過多月経なら要注意!子宮筋腫はどんな病気?

乳がん

乳がんは婦人科ではなく、外科、乳腺外科で診療が行われる病気です。乳腺に発生し、女性の罹患率が最も高いがんです。早期には自覚症状はほとんどありません。進行とともに、乳房のしこりや痛み、乳頭からの分泌物などの症状が現れます。40代以降で罹患率が高くなり、最も多い年代は60代です。
詳しくは>>乳がんはどんな病気?高リスクな人の危険度チェックも

大腸がん

大腸がんは、日本人女性のがん死亡数の1位のがんですが、実は「早く見つけたら治るがんの筆頭格」。死亡数が多い要因には、女性の大腸がん検診の受診率が低いことが挙げられます。よく『便に血が混じったのは痔のせい』と自己判断する人がいますが、出血の原因を知るには検査が必要です。
詳しくは>>50代女性が知っておきたい!大腸がんのリスクと予防

甲状腺疾患

甲状腺の病気には、血液中の甲状腺ホルモンが、過剰に分泌される“甲状腺機能亢進症(代表的な疾患がバセドウ病)”と、減少する“甲状腺機能低下症(主に橋本病)”があります。この両者は自己免疫疾患の仲間で、ともに多彩な症状が出るため、更年期障害をはじめ、うつや認知症などと間違われやすいので要注意。甲状腺ホルモン検査で簡単にわかります。
詳しくは>>他の病気と間違えやすい「甲状腺の病気」に注意

関節リウマチ

更年期には関節の痛みが起こることがよくあります。この場合、自己免疫疾患の関節リウマチが原因の可能性があり、起床時に手足のこわばりが長く続き、関節の痛みや腫れの程度が強いときは検査が必要です。日本では人口の0.5~1%がかかる比較的頻度の高い全身性免疫疾患で、男女比は1:3~4の、女性に多い病気です。
詳しくは>>関節リウマチとはどんな病気?症状と日常生活のケア法

メニエール病

更年期症状のめまいは、体がふわふわと浮いたような感じになるタイプが多いです。しかし、天井がぐるぐる回るような回転性のめまいは、耳鼻科系のメニエール病が原因かもしれません。めまいに頭痛が加わる場合は、まれに脳神経系の異常の場合があります。めまいが頻繁に起こるときは専門医を受診しましょう。
詳しくは>>激しいめまいと難聴を起こすメニエール病【医師監修】

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参考文献

宇津木理恵子

東京生まれ。医学・健康専門のフリー取材記者。日本医学ジャーナリスト協会会員。医学書院(株)にて、婦人科専門誌『臨床婦人科産科』の編集制作などを担当、1982年に独立。以来、女性及び患者の立場から、医師への疑問に対する回答を、読者向けに平易に解説することを旨として執筆活動を行ってきた。

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