50代前後に気を付けたい女性の病気「甲状腺」1

他の病気と間違えやすい「甲状腺の病気」に注意

公開日:2022/03/05

更新日:2022/03/14

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甲状腺の病気は女性に多くみられ、発汗、イライラ、疲労感など、更年期症状や体調不良などとよく似た症状が現れます。そのため、病気の発見が遅れたり、気付かないまま過ごしているケースも。甲状腺の病気について専門医の山田惠美子さんに伺います。

取材・監修:山田惠美子さんのプロフィール

取材・監修:山田惠美子さんのプロフィール

やまだ・えみこ  
1975年、東京女子医科大学医学部卒業。同大学病院内分泌科(現内分泌センター)を経て、91年より現職。金地病院は甲状腺疾患専門病院として、多くの先端的な検査や治療機器を導入し、地域に根差したきめ細かい診療を実践している。

甲状腺ホルモンは体の元気の源です

甲状腺ホルモンは体の元気の源です

甲状腺はのど仏のすぐ下にある、蝶が羽を広げたような形をした小さな臓器です。脳の指令により甲状腺ホルモンを作り分泌する働きを担っていて、更年期以降減少していく女性ホルモンと違い、健常者の甲状腺ホルモンは、一生分泌され続けます。

甲状腺ホルモンは、脂質代謝や糖代謝など全身の新陳代謝にも大きく関わっており、脳、心臓、消化管、骨、皮膚など、多くの臓器や細胞の働きなどの新陳代謝を活発にして、私たちに元気をもたらす働きがあります。普段は意識することのない甲状腺ですが、体の健康を守る上で欠かせない大切な臓器です。

甲状腺ホルモンの分泌量はバランスが大事で、甲状腺の機能に異常が起こるとホルモン分泌が過剰になる“甲状腺機能亢進(こうしん)症“や、逆に足りなくなる“甲状腺機能低下症”になります。すると、疲れやすくなったり、気力や睡眠、体温調整に支障が出るなどさまざまな症状が現れます。これらの症状は、更年期症状に似ていることも多く、見逃されてしまうことがあるので注意したいところです。

また、ホルモンの分泌異常とは無関係に良性腫瘍や悪性腫瘍が発生することがあります。

甲状腺の病気は大きく3つに分けられます

甲状腺の病気は大きく3つに分類できます。腫瘍以外は自己免疫性疾患の一種です。

  • 甲状腺機能亢進症
  • 甲状腺機能低下症
  • 甲状腺の組織にできる腫瘍(結節、しこり、腫瘤ともいわれる)

20~50代女性に多い甲状腺機能亢進症とは?

(代表的な病気:バセドウ病)

(代表的な病気:バセドウ病)


甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンを過剰に作らせる甲状腺自己抗体ができ、ホルモンの分泌量が増えていきます。代表的な病気がバセドウ病で、20~50代に発症する人が多いです。発症割合の男女比は1対4と女性に多く、男性の場合は症状が重くなりがちです。

30~50代女性に多い甲状腺機能低下症

(代表的な病気:橋本病)

30~50代女性に多い甲状腺機能低下症


甲状腺機能低下症、その代表格は橋本病(慢性甲状腺炎)です。甲状腺に慢性的な炎症が起こり、甲状腺の組織を自ら作った甲状腺自己抗体が徐々に破壊するため、甲状腺ホルモンが不足した状態が続きます。バセドウ病と同様に、なぜ免疫の異常が起きるのかはわかっていません。

甲状腺疾患の中でも特に女性に多く、その発症男女比は男性6%、女性94%。年齢的には30~50代の女性が発症しやすく、更年期世代にも多くみられます。エネルギーが足りずに、心身ともに元気が出なくなるのが特徴です。更年期症状やうつ病、若年性認知症と勘違いする場合も多いです。

なお、甲状腺機能低下症イコール橋本病と誤解している人が多いのですが、そうではありません。

橋本病の人のすべてに甲状腺機能の低下がみられるわけではなく、慢性的に甲状腺に炎症が起きているだけの人や、一時的に甲状腺機能の低下がみられても、やがて回復する人もいます。

甲状腺の腫瘍ができる人もいます

甲状腺の腫瘍ができる人もいます

甲状腺の分野では、腫瘍より、結節と表現することが一般的です。甲状腺の腫瘍(結節)は自己免疫疾患とは違い、他の部位にできる良性腫瘍や悪性腫瘍と同じ仲間です。
甲状腺にできる腫瘍(結節)の95%は良性腫瘍です。ほとんどの場合、医師は経過を観察するために、定期的な検診を受けるように求めます。しかし、大きくて、周囲の臓器に影響を及ぼす場合は治療として摘出手術が必要になります。
一方、甲状腺の悪性腫瘍(甲状腺がん)は5%と少なく、その中の9割を占めるのが乳頭がんです。乳頭という名前でも、いわゆる乳がんとは関係ありません。顕微鏡で観察するとがん細胞が乳頭状に増殖しているので、この名前が付きました。甲状腺がんの特徴は、他のがんと比べて進行が遅く治療しやすいことで、経過が良好なものが多いといえます。

甲状腺の腫瘍(結節)の症状

実は甲状腺の腫瘍や結節があるケースでは、痛みなどの症状はほとんど出ません。腫瘍、結節の発見や、悪性か、良性かを診るためには、甲状腺の触診と超音波検査、穿刺(せんし)吸引細胞診などの検査が必要になります。

次回は、甲状腺機能亢進症と甲状腺機能低下症の詳しい解説、早期発見の近道などを解説します。

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宇津木理恵子

東京生まれ。医学・健康専門のフリー取材記者。日本医学ジャーナリスト協会会員。医学書院(株)にて、婦人科専門誌『臨床婦人科産科』の編集制作などを担当、1982年に独立。以来、女性及び患者の立場から、医師への疑問に対する回答を、読者向けに平易に解説することを旨として執筆活動を行ってきた。

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