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- 更年期障害に似た症状のバセドウ病や橋本病に注意
更年期以降に気を付けたい病気ついて、医師が解説します。バセドウ病は甲状腺の働きが活発になりすぎる病気で、大量の汗をかいたり、疲れやすくなったりします。一方、橋本病は甲状腺の機能が低下する病気で、気分の落ち込みやだるさなどの症状がみられます。
どちらも甲状腺ホルモンの分泌が乱れる病気
甲状腺はちょうど、のどぼとけの辺りにある、蝶が羽を広げたような形の臓器で、甲状腺ホルモンを分泌しています。甲状腺ホルモンは体内の新陳代謝などに関わる重要なホルモンで、その分泌が乱れるとさまざまな症状があらわれます。
バセドウ病と橋本病は、自己免疫反応によって甲状腺の機能に異常が起こる病気です。バセドウ病はホルモンを分泌する働きが亢進され、甲状腺ホルモンが増えすぎてしまいます。一方、橋本病は逆にホルモン分泌が低下し、甲状腺ホルモンが極端に不足してしまう病気です。どちらも女性に多い病気で、20代〜50代の幅広い年齢層にみられます。
バセドウ病では新陳代謝が活発になりすぎるため、体温が高くなって暑がるようになったり、発汗が増えたりするのが主な症状です。そわそわ、せかせかして気分も落ち着きません。食欲旺盛になり、たくさん食べてもやせる人がいる一方、どんどん太る人もいます。
中には、甲状腺が腫れて大きくなってくるため、首の前側が腫れたように厚ぼったく見える人もいます。また、バセドウ病では「眼球突出」といって目が飛び出てくる症状が約3割の人に見られるといわれています。こうした見た目の異変で気づく場合もあるでしょう。
橋本病の主な症状はバセドウ病と対照的です。無気力になり、頭もぼんやりとして忘れっぽくなります。寒がりになり、皮膚が乾燥してカサカサになります。抜け毛が増える人もいます。
更年期障害の症状とよく似ているので注意
更年期の女性は年齢的にバセドウ病と橋本病にかかりやすい心配があるだけでなく、これらの病気の症状が更年期障害ととてもよく似ていてまぎらわしいため、いっそう注意しなければなりません。
バセドウ病の暑がりや大量の発汗といった症状は、更年期障害のホットフラッシュとそっくりです。また、橋本病による寒がりや皮膚の乾燥、抜け毛も同様です。症状だけで勝手に自己判断すると見過ごしてしまう危険があります。
また、こうした症状を訴えて病院にかかっても、初診でホルモン検査が行われることは少なく、「年齢的に更年期障害でしょう」などと診断されることもしばしばあります。
勤務先で定期的に健康診断を受けている人でさえ、ホルモン値の検査はほとんど行われていないので気づきにくいのです。
こうした状況にならないためにも、かかりつけの婦人科があると安心です。定期的にホルモン検査を受けておけば、病気を見逃すリスクが低くなります。医師もふだんの状態をよく知っているので、更年期障害による症状かどうか判断しやすくなります。
どちらも薬物療法で症状は改善できる
バセドウ病は抗甲状腺薬という薬で治療します。橋本病の場合は薬で不足している甲状腺ホルモンを補います。薬によってホルモンの分泌が正常な状態に近づけば、症状は徐々に治まってきます。
なお、どちらもホルモンの病気なので、更年期障害の治療で女性ホルモン補充療法(HRT)が受けられないのではと思うかもしれませんが、心配はいりません。
HRTを行う前には、女性ホルモンだけでなく、各種のホルモン検査で全身の状態を確認することになっています。甲状腺ホルモンについてもきちんと調べるので問題がありません。検査を行ったうえで適切にHRTを行います。
こうした相談を気軽にできるようになるためにも、かかりつけの婦人科をもつようにしたいものです。
甲状腺の疾患に漢方薬を使うことも
漢方薬は医療の現場で甲状腺疾患への治療にも用いられています。漢方薬は自然由来の生薬成分が穏やかに働くので、一般的に西洋薬よりも副作用が少ないとされているのもメリットといえるでしょう。
漢方薬は心とからだのバランスを整え、さまざまな不調を根本的な解決へと導くものです。
バセドウ病におすすめの漢方薬
漢方医学では、バセドウ病は癭病(えいびょう)の一種と考えます。気や血(けつ)の巡り、水分代謝の乱れにより首の前に腫れものができると考え、それらの改善を図ることでバセドウ病の根本治療を目指していきます。西洋薬と併用されることも多いです。
- 炙甘草湯(しゃかんぞうとう)
疲労感や手足のほてりなどがある方の動悸や息切れに応用されます。
- 柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
神経が高ぶりイライラや不安などがある方の動悸などに応用されます。
橋本病におすすめの漢方薬
漢方医学では、甲状腺機能や免疫系に働きかけて、改善を目指します。漢方において橋本病は、甲状腺機能が低下しており、活力が低下した状態(気虚・ききょ)と考えられており、活力低下の原因となっている体質の改善も目指していきます。西洋薬と併用されることもあります。
- 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
疲労感や倦怠感、胃腸虚弱などを伴う場合に応用されます。
- 十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)
倦怠感や食欲不振、貧血などを伴う場合に応用されます。
- 芎帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん)
倦怠感や手足の冷え、月経不順などを伴う場合に応用されます。
漢方薬を選ぶときの注意点
漢方薬を選ぶときに重要なのは、その人の状態や体質に合っているか、ということです。うまく合っていないと、効果を感じられないだけでなく、場合によっては副作用が生じることもあります。
どの漢方薬が自分に合うのかを見極めるためには、プロの力を借りるのがおすすめです。「あんしん漢方」などのオンライン漢方サービスに、一度相談してみるのもいいでしょう。
漢方に詳しい薬剤師が一人ひとりに効く漢方薬を見極めて、お手頃価格で自宅まで郵送してくれますよ。
監修者プロフィール:横倉恒雄さん(横倉クリニック)
よこくら・つねお 医学博士。医師。横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長。東京都済生会中央病院に日本初の「健康外来」を開設。故・日野原重明先生に師事。婦人科、心療内科、内科などが専門。病名がないものの不調を訴える患者さんにも常に寄り添った診療を心がけている。著書『病気が治る脳の健康法』『脳疲労に克つ』他。日本産婦人科学会認定医 /日本医師会健康スポーツ医/日本女性医学学会 /更年期と加齢のヘルスケア学会ほか。
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