更年期以降のQOLを上げるホルモン補充療法HRT

2024年08月27日

更年期障害の症状と対処法・10

更年期以降のQOLを上げるホルモン補充療法HRT

浜中聡子さん(クレアージュ エイジングケアクリニック総院長)
監修者
浜中聡子
監修者 浜中聡子 クレアージュ エイジングケアクリニック総院長

「これって更年期障害?」という人のために、更年期障害の気になる症状・対処法を紹介する連載企画。今回のテーマは、更年期障害の治療で最も効果が高いのがホルモン補充療法、通称・HRTです。メリットとデメリットを医師が解説します。

ホルモン補充療法(HRT)はエストロゲンを補う治療法

更年期になって女性ホルモンの分泌が急激に減少すると、その変化に体がうまく反応できず、さまざまな不調が現れます。これが更年期障害です。

治療では一つ一つの症状に個別に対処することもできますが、根本的な原因にアプローチできる治療法があります。それが通称HRTと呼ばれる「ホルモン補充療法」です。その名の通り、減少した女性ホルモンを外から補うことで不調を改善します。

女性ホルモン薬を治療に使うとなると、「副作用で太る」とか「がんになりやすい」など誤ったイメージを抱いている人も多いのですが、HRTに用いられる女性ホルモン薬は長年にわたり使用されてきた実績があり、とても安全な薬です。

エストロゲン単体ではなくプロゲステロンを併用することで、発がんリスクも下がりますし、きちんと血液検査をした上で必要最低限の投与量に設定することで、安全な治療が可能になります。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                      
もちろん使用上の注意点はいくつかありますが、かかりつけの婦人科医の管理と指導を守れば問題ありません。

正しい知識をもたず、思い込みや誤解で「ホルモン薬は怖い」と切り捨てるのは損です。更年期障害で次から次へと現れる心身の不調に悩まされている人は、ぜひ検討してみるべき治療法です。

HRTは心と体の両方の症状によく効く!病気の予防にも

HRTは心と体の両方の症状によく効く!病気の予防にも

HRTがすぐれているのは、更年期障害によって現れる心身両面の症状に幅広く効果を発揮するという点です。更年期障害の治療の切り札と言われるのは、このためです。

更年期障害の代表的な症状でもある急なのぼせやほてり、大量の発汗といったホットフラッシュの症状には特に即効性があります。動悸、息切れ、手足の冷え、肩こり、腰痛といった血行不良に関連する症状も1か月前後と比較的早く改善されます。

皮膚や粘膜の潤いも回復するため、かゆみや腟の乾燥感、外陰部痛や性交痛、ドライマウスやドライアイも改善されます。尿失禁や頻尿の軽減にも効果があります。

女性ホルモンは脳内の神経伝達物質、セロトニンの分泌にも関わっているため、HRTを行うとセロトニンの分泌が改善され、気分の落ち込みや憂うつ感、イライラ、不眠など精神面の症状も軽快します。

ほかにも、それまで女性ホルモンによって守られていた部分がHRTによって再び保護されるようになるので、骨粗鬆症や動脈硬化、関節痛、認知症などの予防効果も得られます。

更年期障害がなくても、これらの病気の予防目的だけでもHRTを受ける価値は十分にあります。

HRTができない人・向かない人がいる

HRTができない人・向かない人がいる

このようにHRTには非常にすぐれた効果があり、健康な人なら問題なく行えるのですが、既往歴などによって注意が必要な人もいます。

まず、乳がんの治療中の人、または過去に乳がんの治療を受けた人はHRTの適応となりません。子宮体がんの治療中の人、原因不明の不正出血がある人も受けられません。

他にも肝臓に重い病気がある人、血栓塞栓症を治療中、または過去に経験したことがある人、重症の高血圧の人、心筋梗塞を起こしたことがある人も受けることができません。

絶対に禁止ではありませんが、60歳以上または閉経後10年以上経過している人、卵巣がんの既往がある人、子宮筋腫や子宮内膜症、子宮腺筋症の既往がある人、片頭痛やてんかん、全身性エリテマトーデス(SLE)の人などは慎重に検討し、条件付きで行うことになるので、かかりつけの婦人科医とよく話し合って決めることが大切です。

タバコを吸う人がHRTを希望する場合は、血栓ができやすくなるため本来は禁煙が望ましいのですが、短期間であれば使用できるエストロゲン製剤もあります。つらい症状があるときには婦人科で相談してみましょう。

監修者プロフィール:浜中聡子さん

浜中聡子さん(クレアージュ東京 エイジングケアクリニック院長)

クレアージュ東京エイジングケアクリニック院長。女性の頭髪に関する悩みから更年期・女性ホルモンといった悩みが専門分野。14年にわたり女性の髪の悩みに携わってきた女性専門・頭髪治療の第一人者として、心身ともに健康で充実した毎日を過ごすことができるよう、医療面からのサポートを行っている。

撮影=中西裕人 ヘアメイク=小島けさき モデル=桂智子

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HALMEK up編集部
HALMEK up編集部

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