公開日:2020/08/19
閉経の前後5年を指す更年期。女性ホルモンの分泌が低下することで、体に変化が起こります。生活に支障をきたすほどの更年期障害となる症状を起こすことも。もしかして更年期?と思ったときのチェックリストと知っておくべき更年期の基本知識をお伝えします。
月経が完全に停止することで、目安としては1年間月経がないことを確認して、最後の月経があった年齢を閉経年齢とみなします。
血液検査の結果で診断する場合の目安は、FSH(卵胞刺激ホルモン:「エストロゲンを分泌せよ」という脳からの指令を送るホルモン)値40mlU/mL以上、かつE2(エストラジオール:卵胞ホルモン・エストロゲンのこと)値20pg/mL以下で、閉経と診断されます。
【出典】
松崎利也,他:医学と薬学72(5): 931~941,2015
エストロゲンは女性の体のさまざまな臓器や機能に働きかけ、多くの役割を担っています。女性は小児期から思春期になると、女性ホルモンの1つであるエストロゲンの分泌が高まって初経(初潮)を迎えます。
さらに20代から40代前半頃まで、妊娠や出産に適した性成熟期になります。その後、50歳前後で月経が完全になくなる閉経を迎える頃には、エストロゲンの分泌は不安定になりながら急激に低下します。
エストロゲンは妊娠・出産のためだけでなく、女性の体のさまざまな臓器に働きかけて、健康を維持するために役立っています。閉経前の5年間と閉経後の5年間を合わせた、約10年の期間を「更年期」といいます。更年期にはエストロゲンの分泌量が減り、心と体の不調が更年期障害として現れます。
特に閉経前には、脳からの「エストロゲンを分泌せよ」という指令のホルモンFSH(卵胞刺激ホルモン)が分泌されても、卵巣が十分なエストロゲンを分泌できないことで、自律神経のバランスを崩しやすく、月経異常、ホットフラッシュ(顔のほてり、のぼせ)、異常発汗、めまいなどの更年期症状を感じ始めます。
更年期にはどんな症状があるのでしょうか?このデータは、更年期外来を受診した女性の主な症状です。更年期外来を受診した40歳~59歳の日本人女性345名が訴えた主な症状(週1回~ほぼ毎日という回答が多い順)
【出典】
TerauchiM.etal:EvidBasedComplementAlternatMed.2014,ArticleID593560,1-8,2014
更年期による症状によって、日常生活に支障をきたすようになった状態が「更年期障害」です。更年期障害の診断や、治療の効果はどのように判定されるかご存じですか?
下記が、更年期外来などの医療機関で使用される「更年期症状評価表」です。「もしかして私も更年期障害ではないかしら?」と思ったら、ぜひチェックして、更年期外来で相談しましょう。
※21項目それぞれの症状の程度を、「強」「弱」「なし」のチェックをつけてください
【出典】
日本産科婦人科学会 生殖・内分泌委員会:日産婦誌、53(5)、883-888、2001
また、上記のほかにも、一般的に以下の症状を感じる場合もあります。
更年期では、女性ホルモンの分泌が急激に減少します。その変化に体がうまく反応できず、さまざまな不調の症状が現れます。のぼせやほてりなどのホットフラッシュ、頭痛、めまい、耳鳴り、うつ気分、イライラなど、更年期の症状はさまざまですが、この症状が生活に支障をきたすほどになることを「更年期障害」といいます。
症状自体は8~9割の人が感じますが、そのうち更年期障害とされるのは3割ほどの人。
では、更年期障害はどのように治療すればいいのでしょうか。
一つ一つの更年期の症状に個別に対処することもできますが、女性ホルモンの分泌量の急激な低下という根本的な原因にアプローチできる治療法が、HRTと略される「ホルモン補充療法(HormoneReplacementTherapy:HRT)」です。その名の通り、減少した女性ホルモンを外から補いコントロールすることで、パニックを起こしている自律神経や情動の暴走を抑えることで、不調を改善します。
完全に閉経すると、エストロゲンの量が急激に低下して、不眠、倦怠感、憂うつ、記憶力の低下、皮膚の乾燥、性器のかゆみや炎症、性交障害、高血圧、脂質異常症、動脈硬化、骨粗しょう症などを訴える人が増えます。
このようにエストロゲンは、生殖機能以外にも、脳機能、自律神経、皮膚代謝、脂質代謝、骨代謝、心臓や血管の機能などに作用しているために、閉経でエストロゲンが欠乏すると、さまざまな不調を感じるようになるのです。
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