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【医師監修】大量出血や月経不順は生理が終わる兆候?
更年期や閉経前の長引く・短い生理の原因と隠れた病気
針間産婦人科 院長
金子法子
公開日:2020.11.04
更新日:2024.03.24
年齢的にそろそろ更年期。でも個人差があるし、今の私はどんな状態? 更年期の目安となるのが生理の変化です。まずは「もしかして更年期?チェックリスト」を。月経異常の対処法や、考えられる病気など医師監修のもと、詳しく解説します。
監修者プロフィール
医療法人いぶき会 針間産婦人科院長 金子 法子
1989年川崎医科大学卒業後、同年山口大学産婦人科学教室入局。同大学病院、関連病院勤務を経て、1998年より実家である山口県宇部市の針間産婦人科副院長。2001年より現職。2016年第五回西予市おイネ賞全国奨励賞受賞。2017年山口県医師会功労賞受賞。日本産婦人科学会専門医。日本性感染症学会認定医。日本産婦人科学会女性のヘルスケアアドバイザー。敷居の低い産婦人科をモットーに、地域のかかりつけ医として、悩める全女性の良き相談相手となるべく、性教育や女性の健康教育の講演活動も精力的に行っている。二男一女の母でもある。
更年期や閉経が近づくと…月経はどう変化する?
更年期や閉経が近づくと、月経周期や経血量が変化することがあります。不規則な月経は、生理が終わり閉経する兆候かもしれません。
40歳を過ぎた頃からホルモンバランスの乱れが起こり始めるため、出血量が多くなる、いつもより生理の量が少ないなどさまざまな生理トラブルを感じることがあります。
ホルモン分泌が上手くいかず生理不順に
更年期に生理不順が起こる主な原因は、エストロゲンとプロゲステロンという2つの女性ホルモンを分泌していた卵巣機能が衰えてくることが原因であると考えられています。
ホルモン分泌がうまくいかなくなることで、子宮内膜が厚くなり、妊娠が成立しなければ月経血として剥がれるというサイクルがうまくいかなくなり、月経量が減ったり不正出血が長引いたりといった症状が起こるのです。
閉経前は生理が長引くこともある
閉経前には生理が長引くことがあり、これは「機能性出血」が原因と考えられます。機能性出血とは、卵巣機能の衰えによってホルモンバランスが乱れ、通常の生理期間ではないのに出血が起こることです。
人によっても症状はさまざまで、生理がだらだら長引いたり、いきなり経血量が多くなったり、鮮血が出たりすることもあります。
正常な生理の周期・日数はどのくらい?
では、正常な生理周期や日数はどのくらいなのでしょうか?
一般的には、正常な生理日数は3〜7日間で、平均すると5日間ほどであるとされています。生理周期は25〜38日となっており、最も多いのが28〜30日です。
生理はその時の体調や精神的なストレスにも影響されるため、生理予定日とずれることもありますが、2〜5日程度であれば問題ない範囲とされています。
よくみられる月経不順から閉経までのパターン
閉経までの流れは、人によって大きく違いがあります。だらだら出血が続く、月経周期が乱れるなどの月経不順が起こる人もいれば、これまでは順調に月経が来ていたのにある日突然止まる人もいます。
月経不順から閉経までのパターンでよく見られるのは、以下のようなものです。
- 30代後半〜40代前半
月経1、2日目の出血量は増えるものの、月経周期が短く(24日以下)になる - 40代半ば
ホルモンバランスが乱れることで機能性出血が生じる。一部が無排卵月経になる - 40代後半
月経周期が長くなるなど月経不順になる。経血量が増えたり、日数が長くなることもある。その後、月経周期が2〜3か月に一度に変化する - 50代以降
閉経する(月経が1年以上来ない)
無排卵月経とは、出血はあるものの排卵を伴わない月経のことで、多くの場合、無排卵であることを自覚することはありません。無排卵月経の場合、月経の期間が長引くことがあります。
月経が停止してから1年以上が経過すると「閉経」といわれており、平均して50歳で起こります。
更年期とは
更年期とは、一般的に閉経前後の5年間ずつの10年間のことを指します。更年期とはいつから始まり、どういった状態で起きるのでしょうか。
更年期はいつから始まる?年代は?
更年期の開始時期は個人差があります!多くの場合40代半ば頃から始まります。
日本人の閉経時期の平均は50歳前後で、閉経前後の約5年ずつが更年期となりますから、40代半ば~50代半ばの約10年間が更年期世代にあたります。
ただし、閉経時期には個人差がありますので、30代半ばから始まる人もいれば、50代半ばからという人もいます。30代で更年期を迎える方は「早発閉経」になり、早期の医療介入が必要になります。
更年期が起きる原因とメカニズム
なぜ更年期が訪れるのでしょうか? それには女性ホルモンが大きく関わっています。
女性ホルモンには、卵巣から分泌され、女性らしい体をつくり、子宮に作用して受精卵のベッドとなる子宮内膜を厚くする「卵胞ホルモン(エストロゲン)」と、卵胞ホルモンによって厚くなった子宮内膜を受精卵が着床しやすい状態に整える「黄体ホルモン(プロゲステロン)」があります。
この女性ホルモンは脳の指令によって分泌されますが、閉経時期前後になると、脳の指令に対し、卵巣が正常に反応せず、卵胞の消失や排卵の停止など卵巣機能が低下するため、分泌量が減少するのです。
女性ホルモンが上手く出せなくなった結果、当然ホルモンバランスが崩れ、自律神経が乱れます。いわば会社の社長さんがゲキを飛ばしても社員が働かない状況ですね。それによって起こるのが「更年期障害の症状」です。
更年期障害の症状の主なものには、のぼせやほてりなどの「ホットフラッシュ」や、頭痛、イライラ、うつ状態、不眠、など多岐にわたります。
また、更年期に入ったサインの一つとして、月経周期や経血量などの乱れも起こります。これは、卵巣機能の低下により、ホルモン分泌が不安定になるためです。経血量が増加したり、逆に経血量が極少量になったり月経期以外でダラダラと不正出血が起きたりします。
更年期は女性の誰もが迎えるものです。更年期障害の症状が現れたとしても、「自分だけどうして……」と不安になることはありません。きちんと正しい知識を持って、向き合っていくことが大切なのです。
プレ更年期とは
本格的な更年期が始まる前の「プレ更年期」というものも多く聞かれるようになりました。この項では、プレ更年期が始まる年代や原因、メカニズムをご紹介します。
プレ更年期はいつから始まる?年代は?
プレ更年期は、30代後半あたりから始まるのが一般的です。本格的な更年期を迎える40代半ば頃まで続きます。閉経は50歳前後とまだ先ですが、この頃になると、閉経に向けて女性ホルモンの分泌量が徐々に減っていきます。
プレ更年期の原因とメカニズム
プレ更年期の原因も、女性ホルモンの分泌に大きく関わっています。女性ホルモンは、肌や骨、血管、脳など、女性の体づくりに欠かせないホルモンですが、30代後半あたりから減少することにより、更年期症状に似た心と体の不調や、月経不順、経血量の減少が起こります。
もしかして更年期?チェックリスト
更年期の目安となるのが生理の変化です。更年期に入ると、最初のうちは生理周期が短くなり頻繁に起こるようになります。しばらくすると生理周期が長くなって生理の回数が減っていき、やがて生理がなくなって閉経(最後の生理から1年間生理がないこと)となります。
更年期により、生理周期や経血量にどのような変化が起こるのかを解説しますので、チェックしながら見てみてください。
- 生理周期が長くなる
- 生理周期が短くなる
- 経血量が多い
- 経血量が少ない
- 出血がダラダラと長引く(止まらない)
- 出血する期間が短い
- レバー状など、血の塊が出る
- 月経期間ではないのに、出血する
月経異常の種類と症状
ここからは、月経異常の種類と症状について解説します。自分が感じている症状と照らし合わせながらチェックしてみてください。
月経が長引く「過長月経」
過長月経は、8日以上だらだらと出血が長引き、なかなか終わらない生理のことです。視床下部、脳下垂体、卵巣などに異常があり、無排卵周期になっていたり、黄体ホルモンの分泌が十分ではなかったりすることが原因と考えられます。また、子宮筋腫など子宮の病気の可能性もあります。
期間や出血量が減る「過短月経・過少月経」
過長月経とは反対に、2日以内で終わる短い生理を「過短月経」といいます。この過短月経のときに併発するのが「過少月経」です。過少月経は、経血量が異常に少ないことです。ナプキンにうっすら付く程度の経血であれば、過少月経と判断してもよいでしょう。
過短月経・過少月経の原因となっているのは、女性ホルモンの分泌量が少ないことから、子宮内膜が薄い、または子宮の発育不全、ストレスや過度なダイエットによるホルモン異常が原因として考えられます。月経はあっても排卵のない無排卵月経になっている場合も多く、長期間放置していると不妊の原因になるので、お子さんを希望されている場合は特に注意が必要です。
月経期以外の出血「不正出血」
不正出血は、月経期間中以外のときに性器から出血することです。不正出血では、鮮血や茶色っぽい血が出たり、おりものに血が混じったりする場合があります。
不正出血の原因は、ホルモンバランスの乱れや子宮や卵巣の病気などが考えられます。子宮頸がんや子宮体がん、卵巣腫瘍といった重大な病気の可能性もあるので、不正出血が長引く場合は、ためらわずにすぐに婦人科を受診するようにしましょう。また、がんの早期発見のためにも、無症状でも年に1回のがん検診を受けることが大切です。
経血量が多くなる「過多月経」
過多月経は、経血量が異常に多いことをいいます。症状としては、出血量が増えたり、レバー状の血の塊のような経血が出たり、生理痛がひどいなどです。
一時間おきにナプキンを変えないと間に合わない、日中も夜用のナプキンをしている、またはタンポンとナプキンの併用が必要という方は、過多月経と判断してよいでしょう。慢性的な過多月経になり、重症貧血に陥っても気が付かないことなどもみられます。更年期世代は子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症など女性ホルモンに関係する疾患が見つかりやすいので、注意が必要です。
月経周期が長くなる「稀発月経」
稀発月経は、生理周期が39日以上と長くなることです。症状の現れ方としては、いつもの生理周期が急に長くなったり、緩やかに長くなったり、また以前の周期に戻ったりを繰り返す場合があります。
原因は、卵巣機能の働きが低下し、女性ホルモンの分泌量が乱れていることと考えられています。
生理がたびたび起こる「頻発月経」
頻発月経とは生理不順の一つで、生理周期がいつもよりも短くなり(24日以下)、生理の回数が多くなることをいいます。これは、更年期と思春期によく見られる月経不順です。
頻発月経が起こる原因は、以下の3つなどが考えられます。
- 女性ホルモンの分泌バランスが乱れ、卵巣刺激ホルモンが過剰に分泌されるため、卵子が排卵するまでの期間(卵胞期)が短くなる
- 女性ホルモンや卵巣刺激ホルモンの分泌異常やストレスなどにより、黄体期(排卵から生理が始まるまでの期間)が短くなるため
- 卵胞がうまく育たないなどの原因により、排卵がない(無排卵周期症)
生理が長引く・止まらないのは病気が原因の可能性も
不正出血は主に以下の4種類があります。
- 機能性出血:ホルモンバランスの乱れが原因で起こる
- 器質性出血:なんらかの病気が原因で起こる
- 中間期出血:排卵期に起こる
- その他の理由による出血:性交などの原因により膣内が傷ついた場合などに起こる
機能性出血は更年期以外にも起こります。また、更年期の機能性出血の場合は特に治療は必要なく、自然に閉経を待てることがほとんどです。
しかし、病気が原因の器質性出血の場合は早めに原因を調べて、適切な治療を行う必要があります。ここからは、月経異常がある場合に疑われる病気をご紹介します。
子宮頸がん・子宮体がん
子宮がんがあると、がん部分から出血することで、月経が終わったにもかかわらず出血が続くことがあります。子宮がんには「子宮頸がん」と「子宮体がん」の2つがあります。
子宮頸がんとは、子宮の入り口部分にできるがんのこと。近年20~30代の若い女性の子宮頸がんが増えています。主に性行為によってヒトパピローマウイルス(HPV)が感染することが原因であると考えられています。
子宮体がんは子宮の奥の部分である子宮内膜のがんです。相対的にエストロゲンよりプロゲステロンが多くなる状態が長く続く、更年期にさしかかる頃から増加します。
子宮筋腫・子宮腺筋症・子宮内膜ポリープ
子宮筋腫や子宮腺筋症、子宮内膜ポリープがあると、子宮内膜の変形が起こるため、経血量が多くなる、月経がだらだら長引くなどの症状が見られることがあります。
子宮筋腫とは、子宮の壁(筋層)の中に発生する良性腫瘍(こぶ)のことで、多世代にわたり多く見られます。大きさやできている場所にもよりますが、過多月経からくる貧血や腰痛、頻尿、便秘などの症状があります。
子宮腺筋症は子宮の筋肉内に子宮内膜に似た組織ができることで子宮全体が大きくなる良性の病気で、30代から40代に多く見られます。
上記の3疾患は、近年の女性の少子化、晩婚化により、一生の月経回数が昔に比べてましていることが一因となっています。
子宮内膜ポリープは子宮内膜の細胞が増殖することでできる良性腫瘍で、一部に悪性病変が混ざることも。閉経前後の不正出血の原因となる、比較的頻度の高い疾患です。
子宮頚管ポリープ
子宮頸部の組織が増殖し、指のように突き出た腫瘍を子宮頚管ポリープといいます。ほとんどが良性の腫瘍で、よく見られる病気です。
通常は無症状のことが多いですが、出血や膿のようなおりものが出ることもあります。
子宮内膜増殖症
子宮内膜増殖症では、子宮内膜が厚くなることで出血量が多くなったり、だらだら出血してなかなか生理が止まらないことがあります。異型のない場合はがんへの進行は少ないものの、異型がある場合は子宮体がんの前がん状態であると考えられる病気です。
原因としては、閉経前後の卵巣機能の低下や月経不順、肥満などが考えられます。
更年期の月経異常の対処法
更年期による月経異常が起こった場合、どのように対処すればよいのでしょうか。その方法をお伝えします。
更年期には、月経異常が起こりやすくなります。しかし、月経異常は子宮や卵巣などの病気のサインの可能性もあります。「更年期だから」と自己判断せず、月経異常が長引いたり、更年期特有の症状がつらい、不安があるのならば、婦人科を受診することをおすすめします。
1:基礎体温を測る
基礎体温を毎日測るようにすると、月経周期はもちろんのこと、排卵の機能の状態、閉経が近づいているのかどうかを読み取ることができます。また、婦人科を受診するときの診断基準にもなるのもメリットです。最近では、気軽にスマホのアプリでダウンロードできますので、婦人体温計という、基礎体温の変化をみるための体温計を購入し、日頃からチェックすることをおすすめします。
基礎体温は、低温期と呼ばれる体温が低いときと、高温期と呼ばれる黄体ホルモン(プロゲステロン)の作用によって体温が高くなる時期が繰り返されます。これを二相性といい、月経周期(月経初日から次の月経開始日までの日数のこと)が28日であれば、低温期と高温期はそれぞれ2週間となります。基礎体温に低温期と高温期の区別がつかない場合、排卵が起きていない可能性があります。更年期が近づいてくると徐々に卵巣の機能が低下します。そうなると、低温期や高温期の周期が短くなり、頻発月経などが起こることがあります。
また、低温期と高温期の区別がつきにくいグラフになっているのであれば、閉経が近づいているサインです。ちなみに閉経後の一般的な基礎体温は、低温期のみが続きます。ただし、たまに排卵することもあり、「もう妊娠しない」と思って避妊せず性交に至ると、予期せぬ妊娠に至り、その選択に悩むこともあります。
2:生活を見直す
更年期の月経異常は日常の生活を見直すことも対処法となります。日常の生活で見直したい点には、下記のようなものがあります。
- 質がよく、十分な睡眠をとる
- 適度な運動を心掛ける
- 偏った食事は避け、バランスのよい食事を目指す
- 過度なダイエットはしない
- 体を冷やさない
- リラックスできる時間をつくる
- ストレスを溜めないようにする
- 大豆・大豆製品を積極的に取る
- 鏡を見て、口角を上げて笑ってみる
- 大好きな友人と会い、楽しい話をする
- 心八分をめざす。完璧を求めない
- なんでもいいので、心がときめくものを見つける
などがあります。これらは月経異常だけでなく、その他の更年期障害症状も和らげる作用がありますから、できることからやってみてください。
3:婦人科・産婦人科など病院を受診する
不正出血の原因を自分で判断することはできません。月経の異常は、更年期のホルモンバランスの乱れによるものだけでなく、上記でご紹介したような病気が原因となっている可能性も考えられます。
- 経血量に関係なく、10日以上出血が続いている
- 少量の出血を頻繁に繰り返す
- 大量出血した
- 貧血や体調不良などの症状がある
- 40代前半で、生理が3か月以上来ていない
以上のような症状がある場合は、早めに婦人科や産婦人科などを受診しましょう。
自己判断の難しい長引く生理は早めの受診が大切
だらだらと出血が長引いて生理が終わらない、いつもより生理の量が少ない、レバーのような血の塊が出る、鮮血が出る、大量出血するなど、更年期の前後の月経異常は、女性なら誰にでも訪れます。
月経周期が乱れてきたことに動揺せず、「更年期」は「幸年期=もっと幸せになる時期」とポジティブにとらえて心身の変化を受容し、この時期を乗り越えたら、もっと素敵な未来が待っていると思いたいですね。
ただし、症状が長引く場合や異常が見られる場合は、病気の可能性もあります。不安もストレスにつながるので、気になる症状がある場合は早めに婦人科や産婦人科などの病院を受診しましょう。
更年期は、これまで家族や仕事のためにずっと走り続けた人生を、ゆっくりとした時間の中でふり返り、自分を見つめ直し、充電する時期かもしれません。訪れた心身の不調に対する診察、アドバイスを受けるためにも、ぜひかかりつけの信頼できる産婦人科医を見つけてください。更年期を迎えるすべての女性にエールを送ります!!
※この記事は2020年11月の記事を再編集して掲載しています。
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