更年期の性交痛はホルモン療法で緩和する?

医師に聞く!更年期の女性ホルモン&セックスの関係性

公開日:2020/03/04

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医師が解説! 更年期のホルモン変化と女性の健康・特有の悩みの関係性は? HRT・ホルモン療法で性交痛が緩和した体験談も紹介します。

更年期の女性ホルモン&セックスの関係性

医師が警鐘!更年期が終わっても要注意

更年期が終わっても要注意

日本の女性の平均閉経年齢は50.5歳といわれているが、個人差は大きい。40 代で閉経する人もいれば50 代後半まで月経がある人もいる。そしてこの閉経を挟んで、前後約5年間ずつの約10年間がいわゆる「更年期」と呼ばれる時期だ。

月経が乱れたりホットフラッシュがあったり、精神的に浮き沈みがあったり……。しかも、症状にも個人差があり、何事もなく更年期を終えてしまう人も少なくない。ただ、更年期さえ乗り切ればいいというわけではない、と言うのは「よしの女性診療所」院長・吉野一枝医師だ。

「更年期の心身不調が大きかった人は、その不快感がなくなることで、『あぁ、やっと更年期を乗り切った!』と少し気が楽になるかもしれません。ただ、実はその後、女性特有の疾患が増えますから、気を付けた方がいいことがたくさんあるんです」

女性の体は、女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲストロゲン(黄体ホルモン)の影響を一生通じて受けている。特に、女性の体を守る役目を果たしているエストロゲンは、年齢によって分泌量が大きく変化するのだ。

更年期障害というのは、エストロゲンの急激な減少によって起こるといわれている。それを乗り越えて老年期といわれる年齢に入っても、高脂血症や動脈硬化などの生活習慣病、骨密度低下による骨粗しょう症、骨盤底筋のゆるみによる臓器脱、性器の萎縮による膣炎、性交痛など……さまざまな問題が起こりうるのである。

女性ホルモンが減ったなら……ホルモン補充療法がある

ホルモン補充療法がある

「閉経して面倒がなくなった、バンザイ!」と、単純に喜んでいるわけにはいかないのが、女性の体。

「産む性」ではなくなっても、女性であることに生涯変わりはない。日本女性の平均寿命は87歳を越えているが、健康に過ごす時間を少しでも長くしておくためには、更年期を越えた後も体のメンテナンスをしていくことが重要になる。

エストロゲンが減った分、必要最低限のホルモンを補充すればいい。それがHRT療法(ホルモン補充療法)の考え方だ。

実は筆者は、長年にわたり低用量ピルを服用していた。妊娠の可能性があるうちはピルで避妊し、50歳になった頃を機に、ホルモン量を計りながらHRT療法に切り替えたのだ。

HRT療法といっても、エストロゲン薬剤には経口剤、貼付剤、ジェル剤などさまざまな形状のものがある。貼付やジェルなどの薬剤は皮膚からの経皮吸収なので、胃腸や肝臓の弱い人でも使うことができる。また、人によっては、子宮体がん発生を抑制するために黄体ホルモン剤を一緒に使用することもできる。

HRT療法の自己中断で……性交痛が発生

HRT療法の自己中断で……性交痛が発生

筆者も「減った女性ホルモンは足せばいい」そんな単純な理由から、懇意にしている婦人科医にかかりジェル薬剤を使っていたのだが、一時期、多忙で通院の間が空き、ホルモン補充しない時期ができた。

薬剤のホルモン量なんて微々たるもの、特に影響はないだろうとたかをくくっていたら、ある朝起きると手の指が少しきしむ感じがあった。

そんな症状が続き、心なしか疲れやすい。さらにはセックスのとき膣の奥が痛む性交痛を感じるようになった。こんなことはいまだかつてなかったのに……、と妙な焦燥感に襲われた。

婦人科医に駆け込みその話をすると、じっくり症状を聞いてくれ、再び処方されたホルモン薬剤ジェルを使うようになった。すると、嘘のように手指のきしみは気にならなくなり、膣奥の性交痛もなくなった。

ホルモン量は微々たるものであっても、体に及ぼす影響を、まざまざと実感したものだ。ちなみにこれはあくまでも筆者の感想である。

ホルモン補充療法を怖がる女性は多いが……

ホルモン補充療法を怖がる女性は多い

「日本では健康目的としてのホルモン剤施術に関しては、欧米から40~50年は遅れているんですよ。低用量ピルが解禁になったのも、本当に遅かった。遅れているうえに、女性たちに正しい情報が伝わっていません。

HRT・ホルモン療法と聞くと、多くの女性たちが何となく怖いと言うんですが、実は何が怖いのかはわかってない。

あげく、更年期でつらくなっている自分を責め続けてメンタルを崩す女性までいる。女性が輝く時代を目指すなんていっているけど、健康あってこその活躍でしょう!」

吉野医師は、女性たちが自分の体の仕組みを知って大事にすること、医師側も更年期やHRT療法について最新の知識へのアップデートをして情報発信すべきだと話す。

思春期と更年期はホルモンの変動が大きな時期。女性たちも医療者側も、病気ではないからと軽んじてきたが、このところ、ようやく“女性医学”に光が当たるようになってきたそうだ。

そもそも、男性ホルモンは量が安定しており、年齢とともに減少していくとはいえ、緩やかな下り坂だ。だが女性ホルモンは、40代半ば以降に激減するので、不調がつらい場合、何らかの対処が必要になるのは当然なことなのだ。

膣から出血してガンを疑えど「萎縮性膣炎」

膣から出血してガンを疑えど「萎縮性膣炎」

「自転車に乗ったら膣から出血して、『子宮がんじゃないか』と慌てて来院する人は多いんですよ。でも、8割方は萎縮性膣炎。エストロゲンの減少によって自浄作用が弱まり、粘膜が乾いたり細菌が繁殖しやすくなって炎症を起こし、刺激に対して出血してしまう症状です。

そういう人に性交痛はないかと聞くと、ほとんどの人があると言うんです。痛いのに我慢してセックスする必要なんてないのにね」

また、子宮や膀胱、直腸など骨盤内にある臓器は、骨盤底筋群というハンモック状の靭帯・筋肉群が支えている。だが加齢によって骨盤底筋群が弱まると、これらの臓器がだんだん下がってきて尿漏れを起こしたり、もっと高齢になったとき膣から体外へ出てしまう「臓器脱」を引き起こすこともあるのだ。

膣が萎縮している状態では、多くの場合、骨盤底筋群も弱まっているのだ。こういったこともHRT療法によって症状が緩和する場合もある。

さらに今は、膣のアンチエイジングにレーザー治療ができるようになっている。レーザーを照射すると膣粘膜の繊維芽細胞が活性化されて新生コラーゲンが生成。ふっくらした厚みのある膣になることによって、膣萎縮による不快感が軽減されるのだという。

もちろん、定期的に「楽しいセックス」をしていれば、膣が極端に萎縮することを緩和することができる。とはいえ、ところがこれが50代以降の女性にとっては難しいことなのだ。

次回は、医師が語る「セックスレスへの対処法」について解説していこう。
 

吉野一枝 

吉野一枝
1954年東京生まれ。29歳で医学部を志し、3年間の予備校通いを経て帝京大学医学部入学。’93年東京大学医学部付属病院産婦人科に研修医として勤務。
2001年、臨床心理士資格取得。2003年、よしの女性診療所を開院。NPO法人女性医療ネットワーク副理事長。女性の気持ちに寄り添った診療をしてくれる医師として患者からの信頼が厚い。

取材・文=亀山早苗

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亀山早苗

東京生まれ。明治大学卒業後、フリーランスのライターとして雑誌記事、書籍の執筆を手がける。おもな著書に『不倫の恋で苦しむ男たち』『復活不倫』『人はなぜ不倫をするのか』など。最新刊は小説『人生の秋に恋に落ちたら』。歌舞伎や落語が大好き、くまモンの熱烈ファンでもある。

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