【1】55歳主婦が溺れてた…セカンドパートナーの沼

2024年10月24日

このまま人生を終わらせたくない…【ユミの場合】

【1】55歳主婦が溺れた…セカンドパートナーの沼

55歳ユミの恋愛ルポ第1話。最近耳にすることが増えた「セカンドパートナー」という関係。不倫とは違うと言いつつ…ハマってしまう人も多い。普通の主婦が、このまま人生を終わらせたくない、もう一度女性として愛されたいと思うことは贅沢なのでしょうか?

「不倫」とは違う?「セカンドパートナー」という関係

 8x10 / PIXTA

「不倫」という言葉には、どこか後ろ暗さや罪悪感がつきまとう。それを払拭したいのか、最近少しずつ「セカンドパートナー」という言い方を目にすることが増えてきた。

本来、「セカンドパートナー」とは、肉体関係を伴わない、文字通り「配偶者ではない、2番目の精神的つながりのある伴侶」という意味だったのだが、今はその定義も崩れつつある。

「不倫じゃないのよ!ただのセカンドパートナーなの」と言えば、男友達の延長線上で、友達以上恋人未満というニュアンスも漂う。不倫する人にとっては、かっこうの言い訳となっているのかもしれない。

「気の合わない夫と、四半世紀もがんばってきたんです。50歳を超えたら、男女問わず友達が増えたほうが残りの人生は楽しくなるはず。そんなふうに思っていました。でも浮気したいとか恋人が欲しいとか思っていたわけではないんです……」

そう言うのは、ユミさん(55歳・仮名=以下同)だ。小柄でスレンダーな彼女は50代にしては若々しい。表情が少し曇っているのが気になった。

「期待される姉」にコンプレックスを抱き続けた子ども時代

 shimi / PIXTA

ユミさんは、ごく普通のサラリーマン家庭で育った。しかし、美人で勉強もできた2歳違いの姉に、子どもの頃からコンプレックスをもって育った。

「特に母は姉に夢中でしたね。『頭がいいから東大だって行けるかも!』と、せっせと塾に行かせ、高校時代は当時まだ珍しかった歯の矯正や、夏休みにカナダに短期留学させたこともありました。

父はエリートでもないし、母は姉が中学に入った頃からパートを始めたくらいだから、うちにそんなお金があったとは思えないんですが、姉にだけはお金をかけていましたね」

母に褒めてもらえないことで心には小さな傷がたくさんついていた。自分は自分でがんばればいい。そうわかっていても、傷は癒えるどころか増える一方だった。

家族との別離。癒やされぬ自己肯定感の低さ

 takeuchi masato / PIXTA

母の期待を一身に背負った姉は、東大ではないものの国立大学に合格した。しかしその後、心を病んでしまう。母を振り切ることができず、自分の意志と母の過干渉との間での葛藤が強すぎたのだろう。

ユミさんはそんな母と姉を見るのがしのびなくて、私立大学に合格すると家族にはあまり関わらないようになっていった。

「学生時代はいろいろなアルバイトをしましたね。当時、女性バンドのプリンセスプリンセスが流行っていて、いつも元気をもらっていました!サークルも合コンも忙しく、大学時代はあっと言う間に過ぎていきました」

そんな青春時代の中でも、彼女は常に「自分はここにいていいのか?」「価値が低いつまらない人間なのではないか」と心の中で自分に問いかけてしまう癖があったという。

それは育った環境の中で、彼女に根づいてしまった自己肯定感の低さなのだろう。

後に、セカンドパートナーという関係にハマってしまった原因となるのかもしれない。

バブル崩壊後入社組の見た地獄

ロストコーナー / PIXTA

バブルが弾けた後だったが、卒業後はなんとか中堅企業に就職することができた。

「景気が悪くて社内はギスギスしていましたね。私の上司がいきなり左遷されたことがあったんです。人格者で本当に素晴らしい人だったのに……。納得がいきませんでした」

大手の金融機関でさえ破綻するような世の中。そんな中でユミさんは何とか働いたが、給料は思うようには上がらなかった。

「がんばったけど、結局、女性は男性のように昇進することもできなかったし、職場は昭和的な雰囲気を引きずってました」

ちょうど人生が行き詰ったと感じていた頃……その後の彼女の人生を大きく左右する出会いがあったのだ。

亀山早苗
亀山早苗

東京生まれ。明治大学卒業後、フリーランスのライターとして雑誌記事、書籍の執筆を手がける。おもな著書に『不倫の恋で苦しむ男たち』『復活不倫』『人はなぜ不倫をするのか』など。最新刊は小説『人生の秋に恋に落ちたら』。歌舞伎や落語が大好き、くまモンの熱烈ファンでもある。

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