子どもの独立後、寝室は別の夫と……

50代女性が10年のセックスレスを解消した方法は?

公開日:2020.02.25

更新日:2023.08.19

あっさり友達関係を続けたら……気付けばセックスレス歴10年

「家族」

セックスレスを打破したい。これからの人生を考えたら、もう一度、夫やパートナーと温かい関係になりたい。そう願う女性たちは少なくない。男性たちだって同じだろう。だが、「家族」になってしまったから、今さらロマンティックなことは恥ずかしくてできない。正面切って話す話題でもない。そう考えて怖じ気づいている人も多いはずだ。

そんな中、なんとか夫との関係を見直したいと動き出した女性たちがいる。

知り合ったのは大学時代。付き合ったり別れたりを繰り返しながら、28歳で結婚。それから27年間、2人の子どもたちが小さいときは協力し合い、大きくなってからは互いに干渉せず、共働きをしながらそれなりに心地いい距離を保ってきたというのは、ジュンコさん(55歳)だ。

長男は学生時代に家を離れ、長女も去年、一人暮らしを始めた。

「こうやって一人離れ、二人離れて、最後は夫婦だけになっていくんだねという話はしましたが、お互いにまだ年をとったと思っていないんですよね。それぞれ友達がいるし、ただの同居人になっています。これはこれでいいんだけど、私としてはもう一度、男女の関係に戻ってもいいような気がしていました。ただねぇ、今さらどうやってスキンシップを図るのか……」

気付けばこの10年間は完全にセックスレス。その前の10年間だって年に数えるほどしかしていないのではないだろうかと彼女は気付いた。

久しぶりに夫の手に触れてみたら

久しぶりに夫の手に触れてみたら

「夫は釣り好き、私はテニスや音楽。趣味も違うし接点がないんですよね」

二人が暗黙のうちに決めていたのは、日曜の夕食だけは一緒にとるということ。釣りから帰った夫が釣果を自慢した後、料理してくれることもある。

あるとき、夫の料理を食べたジュンコさんは、「おいしい」と言ってテーブルで向き合った夫の手に手を重ねた。

「どうしたんだよ、と夫は照れていましたけど、そのとき私、この時間が愛おしいなあと本気で思っていたんですよね。実はその前日、親友が離婚した話を聞いたばかりで……。この年で離婚するのもつらいじゃないですか。私は“ただの同居人”でいてくれる夫がありがたいと思ったんです」

久しぶりに夫のゴツゴツした手に触れてみたら、感触は悪くなかった。翌朝、先に家を出る夫がリビングを出ていくとき、彼女の手に触れた。「行ってきます」と言いながら。

「気持ちが伝わってきました。手に触れ合うって、なんだかいいなと思ったんです」

手に触れ合う、見つめ合う。これは愛情確認の第一歩なのではないだろうか。

スキンシップは嫌じゃないがセックスにはつながらず

スキンシップは嫌じゃないがセックスにはつながらず

すぐに手が触れ合うことが日常となったジュンコさん、ある日、夫と近所のスーパーに行くとき、さりげなく手をつないでみた。夫はむふふと笑ったという。

「ついでにちょっと夫に寄りかかりながら歩いてみました。すると夫が私の肩をぎゅっと抱き寄せたんです。近所の人がいましたけど、そのまま二人で歩いていきました」

とはいえ、寝室も別にして久しい夫婦、なかなかセックスへとはつながらない。ジュンコさんは自分自身が、夫とのセックスを望んでいるのかどうかも当時はわかっていなかった。

「老後を考えて、夫とより親密になっていたいという気持ちはあったけど、そのままセックスしたいかと言われると首を傾げるような状態だったと思います。そもそもあまりにも長いことしていないから、自分の性欲を把握していなかったし、セックスが現実的じゃなかったんですよね」

若い頃好きだった映画を二人で見て……ついに

若い頃好きだった映画を二人で見て

2か月ほどたった頃、夫が夜、「映画を見よう」と言い出した。若い頃二人で見た「カサブランカ」だ。当時だって古い映画だった。一緒に名画座で体を寄せ合って見たことを思い出した。

「リビングのソファで並んで見ながら、私は夫に寄りかかっていました。カサブランカは私が大好きな映画だから。夫が覚えていてくれたんだなと、うれしかった」

夫は彼女を抱きしめるようにして映画を見ている。映画が終わった瞬間、夫は彼女にキスをしてきた。そうっと、大事なものに触れるかのように。

「体が震えましたね。こういう生々しいことはしたくないという気持ちもあったから迷っていたはずなのに、夫の唇が愛おしかった」

セックスレス解消。月に何度か夫の寝室に通う日々

セックスレス解消

その日を境にセックスレスは解消した。今では月に何度か、彼女が夫の寝室に通う。夫主導のセックスではなく、彼女がしたいときに訪ねていくのがいいのだそうだ。

「セックスレスを解消した日、実は私、とても怖かったんです。夫が入ってきたとき、少し痛かった。思わず痛いと言ったら、夫は入れるのをやめて私を抱きしめ、『しなくてもいいんだよ』と言いました。そう言われるとしたくなる(笑)。そこで、もっとゆっくり愛撫をしてもらって無事にセックスできました」

それ以来、彼女は性交痛用にローションを常備しているが、あまり使用したことはないという。夫は彼女の様子を見ながらゆっくりと気持ちも快感も高めようとしてくれるからだ。

「つい先日、ピロートークで、『二人きりっていうのも悪くないわね』と言ったんです。そうしたら夫は私を抱き寄せて、『最近、結婚した頃のことをすごく思い出すよ』って。二人とも年をとったということなんですけど、知り合ってから35年くらいたつんですよね。

これからも一緒に年齢を重ねていけたらいいなとしみじみ思いました。恋愛感情とは違うけど、ただの家族や同居人とも違う、何か新しい感情が夫に対して生まれています」

照れまくりながらジュンコさんは言葉を紡いだ。長年、一緒にがんばってきたからこそ湧いてきた、新たな感情。これからはその気持ちを夫婦で育てていきたいと彼女はほほ笑んだ。

次回はアグレッシブな対応でセックスレスを解消した女性について紹介したい。
 

取材・文=亀山早苗

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※本記事は2020年2月掲載の記事を再配信しています

亀山早苗

東京生まれ。明治大学卒業後、フリーランスのライターとして雑誌記事、書籍の執筆を手がける。おもな著書に『不倫の恋で苦しむ男たち』『復活不倫』『人はなぜ不倫をするのか』など。最新刊は小説『人生の秋に恋に落ちたら』。歌舞伎や落語が大好き、くまモンの熱烈ファンでもある。

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