医師・鎌田實さんからのメッセージ

人生を面白く生きるために…何歳になっても大事なことって変わらないんだよ

人生を面白く生きるために…何歳になっても大事なことって変わらないんだよ

公開日:2026年03月09日

人生を面白く生きるために…何歳になっても大事なことって変わらないんだよ

77歳の医師・鎌田實さんの『17歳のきみへ』は若者に向けた本ですが、「人と比べない、自分を生きる」「人生の壁を壊す言葉を持とう」などの言葉は、ハルメク世代の心にも刺さります。今こそ、そのメッセージに耳を傾けてみてください。

鎌田實(かまた・みのる)さんのプロフィール

1948(昭和23)年、東京都生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業。諏訪中央病院名誉院長。地域と一体になった医療や食生活の改善・健康への意識改革の普及に携わる。ウクライナ避難民支援にもいち早く着手する。

僕たちは、毎日小さな決定を繰り返している

僕たちは、毎日小さな決定を繰り返している

みなさんの多くは、これまで夫や子どものことを優先して自分のことは後回しにして暮らしてこられたでしょう。でも夫が退職し、子どもの手が離れた今、あらためて考えてみると、自分が本当は何をしたいのかわからない……。

もし、あなたがそうして立ち止まっているとしたら――これは日本人には多い特性なんだけど――「自分がしたいことを自分で決められない」状態なんです。

でも本当は、僕たちの日常生活は小さな決定の連続でできていて、朝7時に起きるのも、あなたが「朝は7時に起きよう」と決めたから。あなたが着ているその服も「今日はこの色の服を着よう」と決めたから。ただ、その決定をなんとなく、無意識のうちにしているわけです。

だから、その小さな決定を言葉に表す習慣をつけていくと、「自分が何をしたいのか」ということがどんどん明確になっていく。

なんとなくではなく「私はこの服の肌触りが好きだから着るんだ」とか「今日は図書館へ歩いて行こう」と言葉にして行動する。それが身についていくと、「親の家をどうするか」とか「がんになったときにどんな治療を受けるのか」といったもっと大きな決定も、自分の考えで行うことができます。

人生を面白く生きるのに必要なのは「ちょうどいいわがまま」

僕は、『17歳のきみへ』T7という本の中で、これから社会に出ようとする少年少女のために「自分の人生の主人公になるには、自分で決定しなければ」というメッセージを書いたんだけど、これは実はどんな年齢の人にも当てはまるんです。

僕は17歳の頃「大学受験に失敗したらすし屋になる」と父親に宣言しました。僕は「人生を面白く生きる」と決めていたから、そういう発想をした。77歳の今もその決意は変わらなくて、面白く生きるためならどんなことにでも僕はチャレンジします。

でもまわりを見ると、思い切って何かに挑戦することを躊躇する優柔不断な人が多い。みんなもっと、一回だけの人生をどう面白く生きるか、ということに対して貪欲になった方がいいんじゃないかな。

貪欲になり過ぎるとまわりも辟易としてしまうけれど、「ちょうどいいわがまま」は必要なんですよ。今まで家族のためにと思って過ごしてきた人は特に、ね。

じゃあ「ちょうどいいわがまま」ってどの程度なんだろう。それを考えるときに大事なのが「越境して考える」ということ。自分がどう感じるかだけでなく、夫はどう感じているんだろう、娘や息子は? と考える。

自分という境界を越えて、他者ににじり寄って考える。さらに言えば、日本ではこう考えるけど、アメリカでは、中国では、ロシアでは、ウクライナではどうだろう、と考えてみる。

そうすると自分の考えの輪郭がはっきりしてくるし、一方でまわりの人を気遣えるようにもなる。自分の行動範囲も広がるし、人間関係に面白い化学変化が起きて、人生はどんどん面白くなっていきますよ。

力になる言葉を自分の中に持っておく

力になる言葉を自分の中に持っておく
「面白く生きるには、やっぱり健康な方がいい。今僕は77歳で77kgのバーベルを上げてます。筋力は大事だからね」

僕たちは言葉で生きているんです。自分の思いは言葉にしないと伝わりません。

例えばコップに半分入った水を見て、「もう半分しかないのか」と言うのか、「まだまだ半分ある」と言うのかで、まわりの人たちの反応は変わるし、人生の面白さも激変します。だから、元気になる言葉、前を向ける言葉を自分の中に持っておくことが大事。

30歳を過ぎてから知ったのですが、僕の生みの母は僕を生んだ後、父と離婚し、父が再婚した女性は僕のことを要らないと言ったそうです。養子の僕を育ててくれた両親は貧乏で、育ての母は重い心臓病で入退院を繰り返していました。

育ての父は、そんな状況にもかかわらず僕を拾って育ててくれた。この父に「大学になんか行くな」と言われ、僕は激高して父の首に手をかけてしまったこともありました。でも父は最終的には僕に「好きなように生きていい。でも貧乏な人や弱い人のことを、絶対に忘れるなよ」と言ってくれた。

貧乏と妻の病気という二重苦にもかかわらず、彼らは僕を育ててくれました。父の人生を思うとき「にもかかわらず」という言葉が浮かびます。逆境にあるときでもこの言葉を思うと、前向きな気持ちに反転できるんです。

面白く生きることは、巡り巡って世界平和にもつながるんです

今、世界中で争いや分断が起きています。僕らに一体何ができるんだろう――そう考える人も多いでしょう。僕はあまり難しく考えることはないと思っています。

僕は「面白く生きる」という延長線で、ウクライナの避難民の支援に出掛けましたし、能登半島地震の後には医療支援にも入りました。その前向きな行動や思いは、きっとまわりにもいい影響を及ぼしていると思っています。

みなさんも貪欲に、「にもかかわらず」、面白いことにチャレンジしてください。あなたのその行動はまわりの人たちの気持ちも前向きにするでしょうし、さらには巡り巡って世界の平和にもつながっていくはずです。

あなたにも読んでほしい鎌田さんの新刊

『17歳のきみへ 人生で大事なことは、目には見えない』集英社刊/1650円

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これから社会に出る子どもたちの生きるヒントになるようにと書かれた一冊ですが、どんな年代の人が読んでも前向きな気持ちになれるような、鎌田さんのアドバイスが満載です。

世界の平和のために鎌田さんが作った絵本

『アハメドくんのいのちのリレー』集英社刊/1980円

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イスラエル兵に撃たれたパレスチナの少年。父親は息子の臓器を敵味方関係なく移植を希望する人たちに提供した――鎌田さんからの「にもかかわらず」生きることのメッセージ。

取材・文=岡島文乃(ハルメク編集部)、撮影=中川まり子

※この記事は、雑誌「ハルメク」2025年8月号を再編集しています。

HALMEK up編集部
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