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頭痛・めまい・汗などの更年期障害はいつから?
医師が解説!ツラい更年期障害を上手に改善する基本
直レディースクリニック院長
竹村直也
公開日:2020.10.18
更新日:2023.11.26
閉経を迎える、45~55歳前後の約10年間に起こる更年期障害。誰でもなりえるからこそ、知識を身に付けておくことが大切です。更年期障害の原因や症状、病院で行う検査や診断の方法から、更年期障害のセルフケア対策や治療法などをまとめました。
更年期について教えてくれたのは?
直レディースクリニック 院長 竹村 直也
2000年神戸大学医学部卒業 2008年神戸大学医学部大学院修了
兵庫県立こども病院、日高医療センター勤務の後神戸大学病院産科婦人科助教。淀川キリスト教病院産科婦人科部長、竹村婦人科クリニック勤務の後2020年5月直レディースクリニック開業。
資格;医学博士 産婦人科専門医 母体保護法指定医
更年期障害、どんな症状がある?
更年期とは、個人差はありますが、閉経を迎える45歳くらいから55歳くらいまでの約10年間を指すことが一般的です。女性ホルモンの減少により、ホルモンバランスが乱れ、体だけでなく自律神経や心の状態にも不調が起こります。
この更年期に見られる不調を「更年期症状」と言い、症状によって仕事や家事、日常生活に支障が出るような重い症状のことを「更年期障害」と言います。
更年期障害はいつからいつまで?
更年期障害には人によってさまざまな症状がありますが、それらは何歳から何歳まで見られるのでしょうか。先述した通り、閉経を迎える45歳くらいから55歳くらいまでの約10年間を更年期といいますが、それに則ると、閉経を迎える年齢くらいから更年期障害が見られるようになる可能性があります。
主な更年期障害の症状
更年期症状には実に多彩な症状があります。医学的には次の3つの分類から構成されます。
【更年期症状1】血管運動神経症状
血管の収縮や拡張に伴う症状のことをいいます。更年期症状のひとつである血管運動神経症状には顔のほてり、のぼせ(ホットフラッシュ)、発汗などがあります。
【更年期症状2】様々な身体症状
疲れやすい、めまい、動悸、頭痛、肩こり、腰痛、関節痛、足腰の冷えなどの身体症状があります。
【更年期症状3】精神症状
不眠、いらいら、不安感、抑うつ気分などの精神症状があります。
更年期障害がでる原因は?
更年期症状が表れる年齢や症状は人それぞれですが、更年期障害の原因にはどんなものがあるのでしょうか。なぜ更年期障害が起きるのか、その原因について解説します。
【更年期障害の原因】卵巣機能の低下
女性らしい体作りを助ける女性ホルモンのひとつ「エストロゲン(卵胞ホルモン)」は、健康維持に重要な役割を果たしているだけでなく、女性の体に大きな影響を及ぼしています。 更年期障害の主たる原因は、卵巣の働きが衰え、エストロゲンの分泌が急激に減少することです。これに加齢に伴う身体的変化、精神・心理的な要因、社会文化的な環境因子などが複合的に影響することにより症状がでることがあると考えられています。
更年期障害のセルフケア対策・対処法
更年期障害は、女性なら誰でも起こる可能性があります。では、更年期障害のセルフケア対策・対処法にはどんなものがあるのでしょうか。
【更年期のセルフケア対策1】食事療法
バランスのとれた食事をとりましょう。とくに、ビタミンEは血行をよくし、ホルモンバランスを整える作用があるといわれています。また、大豆イソフラボンは、女性ホルモンのひとつ「エストロゲン(卵胞ホルモン)」に似た働きをすることがわかっているので、積極的に取るといいでしょう。ただし高用量、長期間の大豆イソフラボン摂取により子宮内膜増殖症発症の増加が認められているので注意が必要です。
【更年期のセルフケア対策2】適度な運動
体と心のバランスを保てるように、日常生活にも工夫が必要です。無理のない程度に有酸素運動などを行うことで、自律神経の調整や気分のリフレッシュになるでしょう
【更年期のセルフケア対策3】好きなことをする
友人とのおしゃべりや趣味に没頭するなど、自分が好きなことをするのも、心と体によい影響を与えます。自分が楽しいと思えることでストレスを解消し、上手に更年期障害を乗り越えていくことが大切です。
【更年期のセルフケア対策4】外出を楽しむ
心と体に不調を感じてしまうと、ついつい家に閉じこもりがちになります。ひとりで考えすぎず、家族や友人と話したり、買い物や散歩、旅行などを楽しみましょう。
【更年期のセルフケア対策5】十分な休養と睡眠を心がける
更年期障害は、心と体の両方に症状がでます。不調を感じたときは無理をせずに肩の力を少し抜いてみるなど、十分な休養と睡眠を心がけ、生活習慣を変えてみましょう。
病院で行う更年期障害の検査や診断の方法は?
病院で行う更年期障害の検査や診断の方法には、どのようなものがあるのでしょうか。
更年期障害は何科の病院にいくべきか?
更年期障害の症状には、他の病気が原因で起こる症状と似ているものもあります。辛いと感じている原因が更年期障害によるものなのか、医師の診断を受けることが大切です。まずは婦人科、更年期外来や女性外来の受診を検討してみるのもいいでしょう。
【更年期障害の検査・診断1】問診
月経の有無をはじめ、閉経から経過した期間や過去や現在の病歴、いつからどんな症状に悩まされているのかなどを詳しく問診します。また、治療法の希望も確認します。
【更年期障害の検査・診断2】血液検査
問診後、更年期障害が疑われる場合、血液検査を行い、血中の女性ホルモン量などを調べます。更年期障害以外の病気がないかも一緒に確認します。更年期障害に似た症状を起こす疾患として甲状腺疾患や亜鉛欠乏症、うつ病などがありこれらも調べてもらうとよいでしょう。
【更年期障害の検査・診断3】婦人科検診
次に、子宮筋腫や子宮内膜症、子宮がん、乳がんなどのチェックを行います。閉経後、骨粗しょう症にかかる女性が多いので、予防のための骨量の測定など、全身の検査を行うところが多いでしょう。
更年期障害の治療法は?
更年期障害と診断されたら、症状に応じて治療を開始します。更年期障害には、下記のような治療法があります。
【更年期障害の治療法1】ホルモン補充療法
ホルモン補充療法とは、年齢により低下した女性ホルモンを補う治療法です。 ほてりやのぼせ、発汗など、自律神経の乱れが原因の不調をはじめ、更年期障害による症状への効果が期待できます。ただし合併症や既往症などによりこの治療法が適さない場合もあります。
【更年期障害の治療法2】漢方療法
漢方療法を勧められることもあるでしょう。めまいや頭痛、手足の冷えの改善に役立つ「当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)」、のぼせやホットフラッシュなどへの対処をサポートする「桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)」、不眠やイライラをやわらげる「加味逍遙散(カミショウヨウサン)」などの漢方薬を服用することで、血液やリンパの流れなど体全体を整えるとされています。
【更年期障害の治療法3】プラセンタ療法
安全なヒト胎盤(プラセンタ)から抽出した注射液があります。45歳から60歳までの更年期障害に対して保険適応があります。
ホルモン補充療法と併用する場合は保険適応にならないので注意が必要です。週に1-2回注射し体調改善が期待されます。ただし人間の体の一部分から作られた医薬品ですので、この注射をしたことのある方は今後献血ができなくなります。
【更年期障害の治療法4】生活習慣改善・カウンセリング
薬による治療と並行して、食事療法や運動療法、生活習慣の改善指導やカウンセリングが行われる場合もあります。大豆イソフラボンやポリフェノールがホットフラッシュを改善することが知られておりこれらを含むサプリも効果的でしょう。更年期障害のなかには、不安やうつ状態、不眠などの心理的な問題が原因で症状を悪化させている場合もあるため、心のケアも積極的に行います。
更年期障害への対策・上手な付き合い方は
更年期障害と診断された場合でも、いつか改善するだろうと我慢してしまう人も多いといいます。しかし、我慢をするのは辛いものです。更年期障害は、適切に対処することで症状がやわらぐこともあります。ここからは、更年期障害への対策・上手な付き合い方についてご紹介します。
【更年期の付き合い方1】我慢しすぎない
更年期障害の症状が出て心や体が辛いのに、我慢しなければならないと考えている女性は非常に多いのが現実です。更年期障害の症状は、真面目で頑張りすぎる人が出やすい傾向にあるともいわれています。
婦人科などでカウンセリングをすることで、「頑張らなくてもいいんだ」ということに気付き、周りに相談したり、我慢を手放すだけでも症状が軽くなることがあります。
【更年期の付き合い方2】日常生活は無理をしない
更年期障害の症状が表れる年齢は心身の不調が出やすく、多少のことなら乗り切れていた人でも、体力や抵抗力が落ちてダウンしてしまうことも。自分の体調やできることを理解し、日常生活を見直していくといいかもしれません。
【更年期の付き合い方3】治療を行う
更年期障害の症状は、適切な治療を行えば軽減することができるでしょう。辛い症状は我慢せず、自分にふさわしい治療を受けましょう。
治療方法にはさまざまなものがありますが、どのような治療を行うのかは、症状の程度や医師によります。複数の治療を組み合わせて行うこともありますので、どんな症状でも「更年期ぐらい」と放置せず、早めに検査を受けましょう。
更年期を前向きに過ごそう!
更年期にあらわれる不調や不安は人それぞれ違います。その症状や程度も千差万別です。自分のためにも、家族のためにも我慢をせず、身近な人に相談したり、医師の診察を受け、前向きに乗り越えましょう。
※この記事は2020年10月の記事を再編集して掲載しています。
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