「更年期の不調対策&セルフケア」番組一覧
2024.12.012024年05月19日
更年期から選び取る軽やか人生#1
医師に聞く「更年期って何?」我慢しない人生の始め時
更年期になると体の不調が出て、メンタルが落ち込むこともある。「更年期ってどうすればいいの?」と不安に思っている人も多いのではないでしょうか。更年期に起こる心身の変化を理解し、前向きに生きるヒントを産婦人科医の高尾美穂さんに伺う特集です。
高尾美穂さんのプロフィール
医学博士・産婦人科専門医。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。東京慈恵会医科大学大学院修了後、同大学附属病院産婦人科助教、東京労災病院女性総合外来などを経て、2013年から「イーク表参道」副院長を務める。婦人科外来に携わるほか、スポーツ庁国立スポーツ科学センター 女性アスリート育成・支援プロジェクトのメンバーとして、女性アスリートのサポートも行う。ヨガの指導者資格も持つ。著書に『いちばん親切な更年期の教科書【閉経完全マニュアル】 』(世界文化社ホールディングス)、『心が揺れがちな時代に「私は私」で生きるには』(日経BP刊)
更年期とは、閉経によるダイナミックな体の変化
更年期とは閉経をはさんだ前後5年間ずつの、10年間のことを指します。日本の女性が閉経を迎える平均年齢は約50歳なので、一般的には45歳から55歳ごろが更年期にあたります。この時期の女性は、男性に比べて劇的な大きな変化が訪れるのです。
「『更年期』という言葉そのものに、何かネガティブな響きを感じます。でも今は更年期の不調に対してできることはたくさんあります。それなのに何も対策をせずに、まるで手放しでジェットコースターに乗っているような、無防備な状態の女性が多いのです」と話すのは、産婦人科医の高尾美穂さん。
そもそも、なぜ更年期に劇的な変化が起きるのでしょうか。原因として第一に挙げられるのは、卵巣が働かなくなること。考えてみたら、一つの臓器がまったく働かなくなるなんて、命を終えるとき以外に考えられないこと。もちろん男性には経験するはずもないことです。
「昔は卵巣が機能を失い、閉経を迎える時期と寿命はほぼイコールでした。でも今は長生きできる時代になり、卵巣が働かなくなってから数十年も生き続けなければならなくなりました。だから『ビフォア更年期』、『更年期(特に閉経前後の2年)』、『アフター更年期』と長い目で女性の人生を捉えることが望ましいわけです」
女性ホルモンのことを正しく知ろう
「いってみれば卵巣は“期間限定でしか働かない臓器”」と高尾さん。
卵巣の機能が低下すれば、女性ホルモンのエストロゲンやプロゲステロンが分泌されなくなっていきます。女性ホルモンは、自律神経の働きを安定させたり、コラーゲン産生を促したり、血管、骨、関節、脳などを健康に保ったりといった役割を果たし、いわば「体のお守り」です。卵巣機能が低下した結果、心身ともにさまざまな不調が出るのはある程度仕方がないことなのでしょうか……。
「実は、女性ホルモンの分泌量が減ることそのものよりも、ホルモン分泌の急激なUP・DOWNがあることの方が女性を苦しめます。つまりホルモンの浮き沈みの波をなだらかにして、“低め安定”の状態にしてあげればいいのです。疲れやすくなる更年期はいわば、人生の曲がり角。しっかり対策をして、急カーブを曲がるときには生きるスピードをゆっくり落とし、安全に曲がり切ることが必要になってきます」
更年期の不調を「我慢」してしまいがちな女性たち
更年期を慌てず騒がず、穏やかに過ごしたい。でも、中にはつらい症状に苦しむ人もいます。それなのに、「私だけじゃないから」「少しの間、我慢すれば……」と無理をしている女性が多いと高尾さんは指摘します。
「どんなにつらい更年期症状があったとしても、命に関わるわけではありません。だからこそ我慢してしまう女性が多いのです。生理痛も、PMS(月経前症候群)も、産後うつも、まったく同じで、『その時期をやり過ごせば大丈夫』と思って我慢してしまう。でもその我慢する時間って、もったいないと思いませんか」と高尾さんは言います。
更年期の年代の女性はこれまで、子どもや夫の世話、親の介護など、自分以外のことに時間を割いてきた人が多いはず。なおかつ仕事では責任ある立場に置かれることもある年代。こうした自己犠牲型の人ほど、更年期症状が強くなりがちだと言います。
「誰かの役に立ちたいという気持ちはとても素敵ですが、裏を返せば人のことばかり優先して、自分のことをあまり大事にしてこなかったとも言えるのです。特にメンタルの不調は、意外と自分では気付けないもの。気付いたときには更年期症状がかなり進んでいたということも珍しくありません」(高尾さん)
更年期からは我慢しない!生き方を見直すきっかけにしよう
我慢一択だったひと昔前と違って、更年期に対してできることはたくさんあります。婦人科を受診するハードルもかなり下がってきました。更年期症状は、生活習慣の工夫、セルフケア、婦人科治療などで対処できるし、ホルモン補充療法や漢方薬など、薬に頼るのもアリ。選択肢は自分自身にあるのです。
「閉経後は『女性ホルモン』というお守りがなくなる分、それまでにはなかったさまざまな健康の問題が出てきます。でも必ずあなたに合った対策があるので、やれることはやってみること。更年期の曲がり角を過ぎた先には、穏やかな地平線が広がったようなきれいな景色が待っています。アフター更年期を楽しく健康に過ごすためにも、更年期をきっかけに今までの生き方を見直していきませんか?」
次回は、更年期とアフター更年期で体にどんな不調や変化が現れるのか、症状を中心にお伝えします。
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