【医師が解説】50代女性のうつの症状と認知症リスク
2024.01.222024年04月05日
更年期からの女性が気を付けたい病気
医師が解説!「50代うつ」の予防と治療法
「50代うつ」の原因・予防・治療について、医師がわかりやすく解説します。女性の「うつ(鬱病)」発症は40代でグンと増え、50代を過ぎても患者数が多い状態が続きます。「もしかしたら、うつかもしれない」そんな方は要注意です。
認知症リスクにも…「50代うつ」の症状をチェック
更年期以降の女性に多い「うつ(鬱病)」。気持ちが落ち込んだり、やる気が出なかったりするのは、誰にでもあることですが、症状が2週間以上続き、日常生活にも支障が出ているなら「うつ」かもしれません。
うつの治療に詳しい、川村総合診療院院長の川村則行さんは、「50代以降の女性の場合は、人間関係のストレス、特に子どもや夫など家族の悩みが原因で、うつになる人が多い」といいます。
うつには大きく9つの症状があります。
▼うつ症状の9項目
1.気分が落ち込む、悲しい
2.興味がわかず、楽しめない
3.疲れやすく、気力がわかない
4.食欲不振、または食欲過多
5.眠れない、または寝過ぎる
6.自分に価値がないと思う
7.頭が回らない、集中できない
8.そわそわする、または動作が遅い
9.死にたいと思ってしまう
最初の2項目のどちらか1つでも該当し、残りの項目も合わせて、全部で5項目以上に当てはまる状態が2週間以上続いた場合、うつと診断されます。
うつになると、もの忘れが増えますが、治療せずに放置しているとさらに状況が悪化してしまうそう。
「うつが長い間続くと、将来、認知症リスクが上がるという報告もありますから、放置せず、受診してきちんと治すことが重要です」
うつ予防のポイント:「やめる」習慣・「変える」習慣
川村先生は「“考え過ぎ”は、うつにつながるため、要注意です」といいます。その他、悩み過ぎ、物事をつい悪い方向に捉えてしまうマイナス思考などに心当たりのある方は、特にうつになりやすいタイプといえます。
問題には解決できるものとできないものがあります。「考え過ぎないためには、自分で解決できないことを諦めるのが一番。その問題が解決可能かどうか、まずは考え過ぎないための習慣を身につけましょう」と川村さん。
うつの予防として効果的なのが、リラックスするための「やめる」習慣と、他人との付き合い方を「変える」習慣を日常生活に取り入れること。少しずつでも意識を変えていくことが、心の安定につながります。
うつ治療のポイント:季節&田んぼに例えて考える!
もし、うつになってしまったら、どうやって治療していくのでしょうか。
うつは、薬を飲んだからといってすぐに治るという病気ではありません。人によっては治療に何年もかかる場合もあります。川村さんは、発症から治るまでの期間を、“冬”から“実りの秋”までの5段階に分けて、田んぼに例える「田んぼ理論」を提唱しています。
治療開始の“冬”は最もつらい時期。田んぼが荒れて、稲、すなわち神経伝達物質を作れなくなった状態です。代表的なうつ症状9項目のうち5つ以上に該当し、仕事や家事もできず、「本当に治るの?」と悲観的になりがちです。
しかし“春”を迎えると、患者が自覚するうつ症状は1~4項目に減って、「もしかしたら治るかも」と少し希望が見えてきます。調子がよくなる“初夏”から“夏”にかけては、考え方や行動の仕方を修正して、うつになりにくい自分を作る心理療法にも取り組みます。
そして、最終段階の“実りの秋”には、田んぼに稲がたわわに育ち、うつの治療は完了となります。
50代女性にとって、うつは身近な病気ですが、予防・治療できる病気です。「もしかしたら、うつかもしれない」そう思ったら、早めに対処するよう心掛けましょう。
教えてくれたのは…川村総合診療院院長の川村則行さん
※この記事は2019年8月号「ハルメク」に掲載された内容を再編集しています。
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