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- 激しいめまいと難聴を起こすメニエール病【医師監修】
更年期以降に気を付けたい病気の症状・対処法を医師が解説します。メニエール病はぐるぐる回るような回転性の激しいめまいが特徴。40~60代の女性に多く、強いストレスがあると発症しやすくなるため、更年期障害で心身ともに疲れているときは要注意です。
メニエール病と更年期障害のめまいの違いは?
更年期になると自律神経のバランスが乱れる影響で、めまいや立ちくらみ、フワフワ感といった症状が起こることがあります。
こうしためまいの中でも、ぐるぐると目が回るような回転性めまいの場合には、「メニエール病」が疑われます。
19世紀にフランス人の医師プロスパーメニエールが報告したことから名付けられたメニエール病は、回転性めまいに加え、「難聴」や「耳鳴り」といった症状も伴うのが特徴です。
めまいや耳鳴り、難聴などの症状があらわれるのは、耳の奥、内耳にあるリンパ液が増えすぎることで、三半規管の働きが障害されることが関係していると考えられています。
メニエール病では、なぜこうした状態になるのか詳しい原因はわかっていません。ただ、過労や睡眠不足、精神的な強いストレスがあるときに発症しやすいため、更年期における心身のさまざまな不調が影響しているのは確かなようです。
メニエール病の場合、めまいの症状がとても激しく、めまい発作がいきなり起こると非常に強い不安におそわれます。
メニエール病そのものは命に関わる病気ではありませんが、早期に治療したほうがよいので、できるだけ早く耳鼻科やめまい外来などの専門医、あるいはかかりつけの婦人科を受診してください。
グルグルめまいのときは、とにかく安静に
診断がつけば、薬での治療と日常生活の注意で症状は改善されます。医師の指示を守って、処方された薬をきちんと服用しましょう。
メニエール病は漏れ出たリンパ液で内耳がむくんでいるのが原因なので、めまいの治療には利尿薬がよく使われます。耳の中の余分な水分を出すことで症状が改善されます。
この特徴から、診断のために利尿薬が使われることもあります。めまいや耳鳴りなどの症状があるときに利尿薬を服用し、症状が軽減する場合はメニエール病の可能性が高いと判断できます。
メニエール病のめまい発作は、一度治まっても何度もくり返し起こるという特徴があります。発作が起こったときは、ふらつきや転倒の危険があるので注意しましょう。めまいが起こったときは横になるか、椅子に座って安静を保ちます。
生活上の注意点としては、規則正しい生活を心がけ、過労や睡眠不足にならないようにしましょう。自律神経の乱れがあると、めまいの症状が悪化するといわれています。
また、内耳のむくみを悪化させないように水分の摂取を控える人がいますが、これはいけません。しっかり水分を摂り、入浴や適度な運動で汗をかくほうが効果的です。
めまいがある程度落ち着いたら、安静にしすぎず、少しずつ体操やウォーキングなどで汗を流すようにしましょう。
また、塩分の摂り過ぎは内耳のむくみを悪化させるので、減塩食を心掛けましょう。
めまいには漢方薬もおすすめ
漢方薬は医療の現場でメニエール病やめまいの治療にも用いられています。漢方薬は自然由来の生薬成分が穏やかに働くので、一般的に西洋薬よりも副作用が少ないとされているのもメリットといえるでしょう。
漢方薬は心とからだのバランスを整え、さまざまな不調を根本的な解決へと導くものです。
東洋医学では、めまいの原因の考え方として次の3つが挙げられます。
(1) 余分な水分によるもの
(2) 血流によるもの
(3) 体内の水分と血流の両方が関連しているもの
(1) 余分な水分によるもの
体内に停滞した水分が脳や耳、リンパ液の循環に影響をおよぼすことによって、めまいや耳鳴りを引き起こすという考え方です。めまいのほかに頭痛やむくみ、尿トラブル、下痢が起きたり、胃腸障害がでることもあります。このようなときには体内の余分な水分を排出する漢方薬を使用します。
・五苓散(ごれいさん)
体内の水分代謝を調節します。低気圧頭痛やめまいに用いられます。
・苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
立ちくらみのような浮遊感や耳鳴りのような症状を伴っためまいに用いられます。
(2) 血流によるもの
血流が滞ると、のぼせを伴うめまいが生じやすくなります。なお、貧血や冷えを伴うタイプのめまいは血流だけでなく水分代謝も滞っていることも多いため、(3)で説明します。
・釣藤散(ちょうとうさん)
脳内の血液循環を改善します。めまい以外に頭痛や耳鳴り、目の充血がある場合に用いられます。
・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
血流を改善する三大婦人薬の一つです。更年期症状やしみ、肩こりなどの血流の滞りが原因で生じる症状を伴うめまいに用いられます。
(3) 体内の水分と血流の両方が関連しているもの
水分代謝と血流の両方が関与しているめまいには、次のような漢方薬を用います。
・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
血流や水分代謝を改善する三大婦人薬の一つです。貧血や冷えのある方のめまいに用いられます。
・苓桂朮甘湯合四物湯(りょうけいじゅつかんとうごうしもつとう)
血流不足や水分代謝を改善します。動悸や立ちくらみを伴うめまいに用いられます。
漢方薬を選ぶときに重要なのは、その人の状態や体質に合っているか、ということです。うまく合っていないと、効果を感じられないだけでなく、場合によっては副作用が生じることもあります。
どの漢方薬が自分に合うのかを見極めるためには、プロの力を借りるのがおすすめです。「あんしん漢方」などのオンライン漢方サービスに、一度相談してみるのもいいでしょう。
漢方に詳しい薬剤師が一人ひとりに効く漢方薬を見極めて、お手頃価格で自宅まで郵送してくれます。
難聴は悪化しやすいので、定期的に通院を
メニエール病によるめまいは、薬での治療や生活上の注意で改善されますが、耳鳴りや難聴はしばらくの間、経過を診てもらうことが大切です。というのも、めまいが治っても耳鳴りや難聴は長く残り、徐々に悪化することがあるからです。特に、めまい発作をたびたび起こす人はその危険が高いので注意します。
耳鳴りや難聴が残ると不快感が強いだけでなく、その後の生活にも大きく影響します。めまいの症状が治った後も医師の指示を守って定期的に通院し、耳の状態を確認してもらうことが大切です。
なお、メニエール病は片耳だけに発症することが多いのですが、まれに両耳に発症する人もいます。この場合は手術が必要なこともあります。
監修者プロフィール:横倉恒雄さん(横倉クリニック)
よこくら・つねお 医学博士。医師。横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長。東京都済生会中央病院に日本初の「健康外来」を開設。故・日野原重明先生に師事。婦人科、心療内科、内科などが専門。病名がないものの不調を訴える患者さんにも常に寄り添った診療を心がけている。著書『病気が治る脳の健康法』『脳疲労に克つ』他。日本産婦人科学会認定医 /日本医師会健康スポーツ医/日本女性医学学会 /更年期と加齢のヘルスケア学会ほか。
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