50代前後に気を付けたい女性の病気「甲状腺」2

甲状腺疾患の症状、早期発見する方法、予防法は?

甲状腺疾患の症状、早期発見する方法、予防法は?

更新日:2024年03月20日

公開日:2022年03月05日

甲状腺疾患の症状、早期発見する方法、予防法は?

発汗増加、疲れやすい、髪が抜ける、精神的なイライラ……。更年期やうつ症状だと思い込んでいませんか? 実際は甲状腺疾患「バセドウ病」「橋本病」なのに、誤診されることも。詳しい症状や早期に発見する方法、セルフチェックなどについて解説します。

山田 惠美子
監修者
山田 惠美子
監修者 山田 惠美子 金地病院 院長

甲状腺機能亢進症(代表的な病気:バセドウ病)の症状は?

甲状腺機能亢進症(代表的な病気:バセドウ病)の症状

甲状腺機能亢進(こうしん)症の代表的な病気、「バセドウ病」についてお話しします。この病気は、 甲状腺ホルモンを過剰に作り分泌されるので、体中の新陳代謝が必要以上に活発になります。その結果、全身の代謝に関わるありとあらゆる症状が出るといっても過言ではありません。

例えば、発汗増加、動悸や息切れ、疲れやすい、手指振戦、体重減少、筋力低下、精神的なイライラなどがみられます。これらは更年期症状や糖尿病、心臓病などの症状とも重なり、誤診されることがあるので注意が必要です。

甲状腺機能亢進症の主な症状

  • 甲状腺が腫れる
  • 疲れやすい
  • 不眠
  • イライラ感
  • 食欲の増加または低下
  • 体重が減少する、または増加する
  • 暑がりで汗をかきやすい
  • 微熱が続く
  • 脈が速い
  • 生理不順
  • 手足の震え
  • 口が乾く
  • 息切れする
  • 下痢、排便の回数が増える
  • かゆみがある
  • 脱毛症
  • 眼球が出てくる

病気の経過をみますと、甲状腺ホルモンを作り分泌が増加するため、エネルギーが出過ぎて疲れやすくなります。見た目はげそっとしているのに食欲が出て肥満になるかと思うと、食べても食べてもエネルギーを消耗して痩せる人もいます。

やがて、のどの下にある甲状腺が全体的に大きく腫れてきます。70%以上の人に手足の震えがみられ、男性の場合は、朝起きたときに全身が金縛りのように動かなくなる周期性四肢麻痺が起こることもあります。

女性には大きな悩みとなる眼球突出は約20~30%の人にみられます。気を付けたいのは喫煙習慣のある人で、眼球突出が起こりやすく、薬の効きも悪くなります。

なぜ眼球が出てくるかといいますと、左右の目のピント調整をしている、眼球を動かす筋肉が腫れたり、眼球の奥に脂肪組織が出てきて、眼球を押し出すからです。これにも免疫の働きに異常を起こす自己抗体が関係していると考えられています。特殊な薬で眼球が出ることを防ぐ可能性がありますが、眼球が出てしまった後だと、元に戻すことは難しいです。

甲状腺機能低下症(代表的な病気:橋本病)の症状は?

甲状腺機能低下症(代表的な病気:橋本病)の症状


甲状腺機能低下症の代表的な病気「橋本病」についてお話しします。甲状腺の働きが低下すると、全身の代謝が悪化し、むくみや冷え、月経異常、皮膚の乾燥、食べる量が少ないのに体重が増加する、などの症状が出てきます。

しかし、これらの症状が顕著に現れる人は少なく、ほとんどの人は症状があまり表面に出てこない“潜在型”です。それは、病気の進行がとても緩やかという特徴があるからです。

若い頃から病気がじわじわと進行し、40~50代になって、奥に隠れていた症状が表面化するケースが典型的です。女性では気分の落ち込みや体が重だるい、無気力、異常な眠気、記憶力の低下などが生じて、うつ病や認知症と間違われることもあります。

他にも疲れやすい、便秘、かすれ声、寒がり、動作が鈍くなる、筋力低下、全身のしびれなどが出てくることもがあります。「年のせい」にせず、年齢以上に老けたと感じたら病気を疑ってみてください。

血液検査では、コレステロール値が高い、肝機能の異常などを示すようになります。

甲状腺機能の低下は不妊や胎児の発育に影響し、流産や早産のリスクが高くなることがあります。不妊治療を受けてもなかなか妊娠しない場合や、50代の方で更年期障害と診断され、女性ホルモン補充療法などを受けても症状が改善しない方などは、甲状腺機能が低下している可能性があります。ぜひ検査を受けましょう。

甲状腺機能低下症の主な症状

  • 甲状腺が腫れる
  • 疲れやすい
  • 動作が鈍くなる
  • 眠い
  • 元気がなくなり、ぼーっとしている
  • 物忘れが増える
  • 体重が増加する
  • 寒がりで汗が出ない
  • 脈拍数が少ない
  • 顔や全身がむくむ
  • 生理不順
  • 皮膚が乾燥する
  • 声がかれる
  • 便秘
  • 脱毛症

Q:甲状腺の病気を早期発見するためには  

Q:甲状腺の病気を早期発見するためには  


一般の健康診断などでは、首の状態を検査する項目はありません。人間ドックのオプションに、甲状腺ホルモン検査を付けることで、潜在している甲状腺の病気を発見できる可能性が高くなります。

また、バセドウ病や橋本病かしらと、疑わしい症状が気になったときは、甲状腺ホルモンの量を測定する血液検査を受けたいと申し出てください。甲状腺疾患専門医や内分泌内科ではもちろんですが、そうでないクリニックでも比較的受けやすい検査です。まずは、かかりつけ医に症状を相談してみましょう。

気になる更年期症状がある場合にも、産婦人科で検査を一緒に受けるといいでしょう。費用は診察料なども含めて、3割負担で5000円程度です。

バセドウ病や橋本病は家族・親類に複数の患者が存在する場合があり、近親者に病気の人がいるという方も、早めの受診をおすすめします。

甲状腺の病気は、命に関わるケースはまれですが、バセドウ病に心房細動(不整脈)を合併している場合、心不全や脳梗塞を起こすことがあります。また、悪性の甲状腺腫瘍の場合に反回神経麻痺(声の神経の麻痺)が進行し、声が出にくくなる症状が残る場合もあります。

甲状腺の病気をお持ちの方でしたら、このような合併症を未然に防ぐために、疑わしい症状があればなるべく早く専門医を受診しましょう。

甲状腺の腫れのセルフチェックを行おう

甲状腺の腫れのセルフチェックを行おう

また甲状腺機能亢進症、低下症ともに甲状腺が腫れる症状が出ることがあります。セルフチェックでは、入浴中にのどの周辺のしこりを発見できたという人もいます。また動脈硬化を調べるための頸動脈エコーを行っているときに、隣接している甲状腺に腫瘍が見つかったというケースがあります。

検査を受けることこそ最大の予防策といえるでしょう。そのためには、正しい知識を持って、普段からときどき、のどのあたりに手を当て、甲状腺に意識を向けることが必要かもしれません。

甲状腺の腫れの見分け方

 のどぼとけの下、鎖骨の上あたりの首の真ん中にある甲状腺に腫れがないか触って確かめてみましょう。甲状腺は小さく柔らかいため、正常なら皮膚の上から触ってもどこにあるかわかりません。腫れたり硬くなっていたりすると、手で触れられるようになります。

Q:予防法はあるの?

Q:甲状腺機能疾患の予防法はあるの?

甲状腺の病気を含む自己免疫性疾患は原因不明とされていますので、予防法はありません。

ただし、橋本病の場合「ヨウ素」の取り過ぎには注意しましょう。甲状腺ホルモンは、昆布やうがい薬などに含まれる微量栄養素・ヨウ素を材料に作られています。

日本人は世界で一番ヨウ素を摂取しており、橋本病の方が大量にとると、甲状腺が腫れたり機能が低下することがあります。私は橋本病の患者さんには、みそ汁のダシを取るときは昆布ではなく煮干しやカツオ節をおすすめしています。同じ海藻でも、昆布以外のひじき、わかめ、のり、寒天などはヨウ素が少ないので、海藻類を選ぶときには意識してみてください。

Q:甲状腺の病気が女性に多いのはなぜでしょう

Q:甲状腺の病気が女性に多いのはなぜでしょう

女性に多い理由は、十分にはわかっていません。バセドウ病や橋本病だけでなく、自己免疫疾患には膠原病や関節リウマチ、貧血、肝臓病など、多くの病気が知られています。これらの自己免疫疾患は女性に多い、だから甲状腺の働きを亢進させたり低下させたりする自己免疫疾患のバセドウ病や橋本病も女性に多いのだろうと考えられています。

では、なぜ自己免疫疾患は女性に多いのか、明確な答え出ていませんが、免疫学の一つの仮説として、女性の出産の仕組みに関係しているらしいといわれています。

私たちの体には、細菌やウイルスなどの異物が体の中に侵入してくると(侵入物を抗原という)、これらに抵抗する物質(抗体)を作って排除し、体を健康に保つ働きがあります。これを免疫機構といい、この抗体は普通なら自分の体を守るために働きます。しかし、何らかの原因で免疫の働きに異常が起こり、自分の細胞に対して自己抗体を作って攻撃してしまいます。

しかし、女性が妊娠した場合、胎児は女性にとって異物ですから、免疫システムの上では排除の対象となります。しかし妊娠中だけは免疫機能をすり抜けるという生命のメカニズムによって胎児は守られます。私たちの体には不思議な仕組みが備わっているのですね。

次回は、甲状腺の病気の治療について解説します。

取材・監修:山田惠美子さんのプロフィール

取材・監修:山田惠美子さんのプロフィール

やまだ・えみこ 1975年、東京女子医科大学医学部卒業。同大学病院内分泌科(現内分泌センター)を経て、91年より現職。当病院は甲状腺疾患専門病院として、多くの先端的な検査や治療機器を導入し、地域に根差したきめ細かい診療を実践している。

※この記事は2022年3月の記事を再編集して掲載しています。

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宇津木理恵子
宇津木理恵子

東京生まれ。医学・健康専門のフリー取材記者。日本医学ジャーナリスト協会会員。医学書院(株)にて、婦人科専門誌『臨床婦人科産科』の編集制作などを担当、1982年に独立。以来、女性及び患者の立場から、医師への疑問に対する回答を、読者向けに平易に解説することを旨として執筆活動を行ってきた。