50代前後に気を付けたい女性の病気「甲状腺」3

見違えるほど良くなる!甲状腺疾患の治療方法は?

見違えるほど良くなる!甲状腺疾患の治療方法は?

公開日:2022年03月05日

見違えるほど良くなる!甲状腺疾患の治療方法は?

甲状腺の病気第3回目は、代表的な甲状腺疾患「バセドウ病」「橋本病」の治療方法をお伝えします。金地病院の山田恵美子医師は「甲状腺の病気は薬でコントロ―ルしやすく、治療を続けることでほとんどの病気が治りますよ」と話します。

山田 惠美子
監修者
山田 惠美子
監修者 山田 惠美子 金地病院 院長

取材・監修:山田惠美子さんのプロフィール

取材・監修:山田惠美子さんのプロフィール

やまだ・えみこ 1975年、東京女子医科大学医学部卒業。同大学病院内分泌科(現内分泌センター)を経て、91年より現職。当病院は甲状腺疾患専門病院として、多くの先端的な検査や治療機器を導入し、地域に根差したきめ細かい診療を実践している。

甲状腺機能亢進症(代表的な病気:バセドウ病)の治療

甲状腺機能亢進症(代表的な病気:バセドウ病)の治療

バセドウ病の治療方法は3種類あって、過剰に分泌している甲状腺ホルモンの量を正常値に導きます。

薬物療法 

バセドウ病の薬物治療には抗甲状腺剤が使われます。この薬は過剰に分泌している甲状腺ホルモン量を抑える効果があり、世界中に2種類しかありません。

一つはメルカゾールで、副作用が強く、服用後に白血球数が減り、死亡例もあるという報告もみられます。しかし、この薬が長年使われてきたのは、大きな効果があるからです。医師は白血球を2週に1度検査して、病気のコントロールに努めています。徹底的な管理のもとに処方されますので、安心して服用してください。

メルカゾールには催奇形性があるので、妊娠を希望する方にはもう一つの薬、チウラジールを使います。こちらは効き目が弱い代わりに妊娠中の人にも使用できるという利点があります。

【薬物療法の長所】

  • 外来通院で医療ができる、
  • どの病院でも可能
  • 治療法が簡単
  • 薬によっては妊娠・出産、授乳が可能

【薬物療法の短所】

  • 治療期間が長くなる
  • 副作用がある
  • 再発しやすい

【薬物療法が向く人】

  • 甲状腺の腫れが小さい人
  • 薬を規則的に服用できる人

アイソトープ治療

アイソトープ治療とは、甲状腺組織がヨウ素を取り込む性質を利用し、放射線を放出するヨウ素(131Iカプセル)を服用して、甲状腺の内部から放射線を照射します。甲状腺の細胞を減らすことで、甲状腺ホルモンの正常な分泌が回復します。しかし、細胞が減ることから甲状腺機能低下症の発生が多く、その場合は甲状腺ホルモン剤を長期にわたって服用する必要が出てきます。

アイソトープ治療は、次のような患者さんが適応例と考えられます。
(1)19歳以上で、他疾患の合併があるため、手術が難しい例
(2)抗甲状腺薬で副作用が出現し、服用の中断が必要になった例
(3)抗甲状腺薬を中止した後に再発した例
(4)手術後にバセドウ病が再発した例
(5)抗甲状腺薬で十分コントロールできない例

などです。

一方、治療に不適応なケースは妊婦、または現在妊娠の可能性がある女性、6か月以内に妊娠する可能性がある女性、6か月以内にパートナーの妊娠・出産を希望する男性、授乳中の女性となっています。

【アイソトープ治療の長所】

  • 治療が簡単
  • 治療費が安い
  • 再発がない

【アイソトープ治療の短所】

  • 甲状腺機能が低下することがある
  • 特殊な設備が必要なので、この治療ができる病院が少ない
  • 妊活中の人、妊婦、授乳中の人はできない

【アイソトープ治療が向く人】

  • 薬で治りにくい人
  • 手術で再発した人
  • 合併症がある人

6か月以内に妊娠の可能性がない19歳以上の人

手術療法(甲状腺の一部を摘出) 

手術療法は、上記の薬物療法、アイソトープ治療よりも古くから行われてきた方法で、治療成績もこの2つの療法より良好な結果が期待できるといわれています。

甲状腺ホルモンを過剰に分泌している、その甲状腺自体を切除します。術後は継続的な甲状腺ホルモン薬の服用が必要となりますが、永久寛解率(治癒率)が高いとされています。

【手術療法の長所】

  • 早期で確実に良くなる
  • 再発が少ない

【手術療法の短所】

  • 入院が必要
  • 手術の傷あとが残る
  • 医師の技量によって術後の経過に差が出る

【手術療法が向く人】

  • 薬の副作用がある人
  • 薬で治りづらい人
  • 甲状腺の腫れが大きい人、甲状腺腫瘍を合併している人

甲状腺機能低下症(主に橋本病)の治療

甲状腺機能低下症(主に橋本病)の治療

甲状腺ホルモン補充療法

バセドウ病と異なり橋本病の治療には薬物療法しかありません。

ただし橋本病と診断されたとしても、甲状腺機能が正常な場合、薬は必要ありません。しかし病気が進行し、甲状腺の機能が低下して甲状腺ホルモンが不足するケースもあります。

そういう場合は服用が必要になる可能性もあるので、橋本病の患者さんは半年に1度は必ず診察を受け、医師とともに病状の経緯を確認しましょう。

甲状腺機能低下症と診断されたら、生涯、甲状腺ホルモンを補充するための甲状腺ホルモン剤の服用が必要になります。1日1回、適量のホルモン剤を補充し続けることで、機能の低下による症状は抑えられ、元気に暮らせるようになります。副作用は一切ないのでご安心ください。

橋本病の食事の注意

前回「甲状腺疾患の症状、早期発見する方法、予防法は?」でも説明しましたが、橋本病と診断された人は、ヨードが多く含まれる昆布の摂取は控えた方がいいといわれています。ヨードは甲状腺ホルモンをつくる材料になるミネラルで、食べ物や飲み物から摂取します。

不足しても過剰になっても、甲状腺機能に影響します。橋本病の人がヨードを大量にとると、甲状腺の腫れが増大したり、甲状腺機能がさらに低下する恐れがあります。最近はコロナ禍で、ヨードの入ったうがい薬が多用されていますが、それもなるべく控えた方がいいでしょう。

甲状腺の腫瘍の治療

甲状腺の腫瘍の治療

基本的に腫瘍の治療は手術以外になく、以下の場合に手術の適応となります。
1.    良性でも腫瘍が大きく食道や気管への影響がみられる例
2.    腫瘍が悪性、あるいは悪性の疑いがある例
3.    腫瘍(結節)から甲状腺ホルモンが過剰に作られている例

腫瘍が小さくて良性の場合は、定期的に検査を受けていただき経過を観察します。また、良性の腫瘍で増大傾向がある場合、甲状腺ホルモン剤を飲むとその腫大が抑えられる可能性がありますので、薬の服用をすすめ、経過を見る治療方法もあります。

手術には、甲状腺をすべて摘出する全摘術、甲状腺の約2/3以上を切除する亜全摘術、片側の甲状腺(右葉あるいは左葉)を切除する葉切除術などがあります。手術の方法はがんの場所や、大きさ、転移の有無などによって決まります。甲状腺をすべて摘出すると、甲状腺ホルモンが分泌されなくなりますので、生涯甲状腺ホルモン剤の服用が必要になります。がんの状態によって再発のリスクが低いと考えられる場合は、全摘術ではなく、葉切除術を選びます。

甲状腺の病気は、きちんと検査を受け、その症状に適した治療をすれば、支障なく日常生活を送れるようになります。自分にはどういう治療が必要なのか、医師と相談しながら、気長に病気と付き合っていきましょう。

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宇津木理恵子
宇津木理恵子

東京生まれ。医学・健康専門のフリー取材記者。日本医学ジャーナリスト協会会員。医学書院(株)にて、婦人科専門誌『臨床婦人科産科』の編集制作などを担当、1982年に独立。以来、女性及び患者の立場から、医師への疑問に対する回答を、読者向けに平易に解説することを旨として執筆活動を行ってきた。