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医師監修│症状が重い人・軽い人がいるのはなぜ?
更年期を軽くする方法│症状別の対策と避けたい行動
横倉クリニック
横倉恒雄
公開日:2022.11.03
更新日:2024.05.20
つらい更年期の症状を軽くする方法や避けたい行動を、医師監修のもと詳しくご紹介します。40代半ば~50代半ばの10年間にあたる更年期は、身体的にも精神的にもさまざまな不調が現れる時期。日々のケアでつらい更年期症状を乗り切りましょう。
2人に1人の女性が更年期を理由に「昇進を辞退」
更年期に見られる「更年期症状」はつらいもの。
更年期の代表的な症状であるホットフラッシュ(ほてり・のぼせ・発汗)などの身体症状に加えて、「イライラする」「不安、憂鬱になる」「記憶力が低下する、物忘れをする」といった精神症状など、さまざまな症状が見られます。
更年期症状や更年期障害は、仕事を持つ女性の働き方にも大きく影響する要素です。
NHKが公表したアンケート調査の結果によれば、2人に1人の女性が更年期障害の症状を理由として「昇進を辞退したことがある」という結果が出ています。
仕事だけでなく、家事でも以前しなかったようなちょっとしたミスをしたり、これまで当たり前にできていたことができなかったり……。歯痒さや悔しい思いを感じている女性も少なくないようです。
しかし、更年期はいつまでも続くわけではなく、必ず終わるときがきます。つらい更年期の症状や更年期障害を乗り越えるためにも、対策を知っておきましょう。
更年期とは
更年期は、女性が経験する「思春期・性成熟期・更年期・ 老年期」という4つのライフステージのうちの一つです。
個人差はあるものの、女性は50歳前後の年齢で閉経を迎えます。この時期を挟んだ40代半ば~50代半ばの10年間が、一般的に「更年期」と呼ばれています。
更年期の時期になると、これまで長い間分泌され続けていた女性ホルモンの分泌量が大きく減少。これによって、心や体にさまざまな変化が起こるのです。
更年期障害・更年期症状にならない方法はある?
更年期に現れるさまざまな症状を更年期症状といい、日常生活に影響するほど重い更年期症状がある場合は「更年期障害」と呼ばれます。
程度や現れ方には個人差が大きいものの、更年期症状は女性に必ず起こるものでもあります。そのため、完全に防ぐことは難しいといわれています。
ただし、「更年期症状を軽くする工夫」はできます。女性は30代後半頃から少しずつ女性ホルモンの分泌量が低下していくため、早めに対策を始めるのがおすすめです。
更年期の要因は?症状が重い人、軽い人の差って?
更年期にさまざまな症状が起こる最大の原因は、女性ホルモンの減少とそれに伴うゆらぎです。それに加えて性格や環境のストレスも影響しているため、重い人、軽い人で差が生じます。
【更年期の原因】
- 女性ホルモンの減少、ゆらぎ
- 性格や気質
- 環境的な要因
「もしかして更年期障害かも?」と思ったときはセルフチェックをして、確かめてみましょう。
更年期の症状を軽くする方法
ここからは、更年期の症状を軽くするための方法をご紹介します。
1:症状に合わせた対策を取る
更年期には、さまざまな症状が現れます。人によって症状の現れ方や程度は異なるため、気になる症状に合わせて対策を取るといいでしょう。
ホットフラッシュ
ホットフラッシュは女性の6割ほどが経験するといわれる更年期の代表的な症状で、ほてりやのぼせ、発汗などが見られます。
ホットフラッシュの予防・改善としては、下半身を温めるのがおすすめです。入浴やヨガ、ウォーキングといった運動で新陳代謝を活発化させると、予防につながります。
動悸
更年期には、激しく体を動かしたわけでもないのに急に胸がドキドキしたり、少し歩いただけで息が切れるなどの症状が見られることがあります。
動悸を感じたときには、まずはゆっくりと腹式呼吸してリラックスしましょう。日頃の対策としては、1日の生活リズムを見直し、自律神経を整えることが症状緩和につながります。
だるさ
更年期には、女性ホルモンの急激な減少によって自律神経が不安定になり、疲れやすくなることでだるさや慢性的な疲労感が起こることも。睡眠不足や精神的な要因も、だるさにつながります。
新陳代謝アップや血流改善作用のあるビタミンB1、ホルモンバランスを整え血行を促すビタミンE、抗酸化作用や抗ストレス作用があるビタミンCを積極的に摂取して、だるさや疲れを和らげましょう。
また、考え過ぎずに「更年期の症状だから仕方ない、時期がくれば元気になる」と割り切って休むのも一つの方法です。
吐き気、胃腸の調子が悪い、食欲不振
更年期は自律神経が乱れることで、胃腸の不調も起こりやすくなります。個人差はあるものの、中には頻繁に吐き気や食欲不振の症状を感じる人もいるようです。
リラックスを心掛けて生活し、食欲がないときは栄養価の高いものを摂取して栄養を補給しましょう。
自律神経やホルモンバランスを整えるために、エストロゲン作用のあるサプリメントの服用、医療機関の受診を検討しましょう。
耳鳴り
更年期の自律神経の乱れは、耳鳴りにつながることもあります。
ストレスが耳鳴りの原因になることもあるため、ストレスをため過ぎず、定期的にストレス発散することが大切です。また、蒸しタオルで耳を温めて血流を促すと、耳鳴りの改善が期待できます。
しびれ
更年期には、皮膚が薄くなる、乾燥しやすくなる、血流が悪化することなどが原因でしびれが起こる場合があります。しびれが見られる場合は、体を動かしたり、しびれが出ている部分をマッサージして、血行を促しましょう。
血管を丈夫に保つビタミンCや、血流を良くするビタミンEといった栄養素を積極的に取り入れるのもおすすめです。
冷え
冷えはもともと女性に多く見られる症状ですが、更年期にはさらに症状がつらくなる人も多いようです。
冷え対策は、体を温めることと体を冷やさないことが基本。服装に注意する、体を冷やす冷たい食べ物や飲み物は避ける、ストレッチや運動で体を温めるなどの対策で、体を冷えから守りましょう。
手指の痛み・こわばり
更年期には、女性ホルモン減少の影響で手指の痛みやこわばりが起こることもあります。
症状がひどくない場合は、入浴やマッサージで体を温めてケアしましょう。ただし、痛みが強い場合や腫れがあるときは温めると悪化してしまうこともあるため、注意が必要です。
症状が続く場合は放置せず、クリニックを受診して適切な治療を受けましょう。
2:基本のセルフケア「食事・運動・睡眠」
更年期のセルフケアの基本は「食事・運動・睡眠」を整えることです。
これらを改善することで、更年期症状を緩和したり、悪化を予防したりすることにつながります。すべて一気に取り組むのが難しい場合は、まずは一つ一つ改善していきましょう。
3:更年期に多いストレスと向き合い、解消する
人間の体は、ストレスを受けるとさまざまな「ストレスホルモン」を分泌します。
ストレスホルモンには多くの種類がありますが、イライラの原因になる「コルチゾール」、血管を収縮させることで血圧を高くする「カテコールアミン」、長時間労働など疲れたときに増加する「ノルアドレナリン」などが代表的です。
これらのストレスホルモンが呼吸器系や循環器系、消化器系、免疫系に影響を与えることで疲労感、動悸や息切れ、食欲不振などの症状につながり、結果的に更年期の症状を悪化させることになります。
また、ストレスホルモンはエストロゲンやテストステロンといったホルモンのバランスを乱すため、老化現象を早めてしまうともいわれています。
◆女性に多い更年期のストレス
- 子どもの受験や就職、結婚
- 子育てが終わったことで夫婦の時間、夫と向き合う時間が増える
- 女性としての自信の低下や喪失
◆男性に多い更年期のストレス
- 仕事でのプレッシャーやリストラ
- 夫婦の危機、離婚といった家庭内の問題
- 男性としての自信の低下や喪失
上記は、更年期に差し掛かる40代半ば~50代半ばの女性・男性に多いとされるストレスです。この他にも、更年期は自分の健康上の不安や親の介護、死別などストレスの要因となるライフイベントが起こる時期でもあります。
更年期に見られるストレスは男女によって違う部分もあるものの、「今の自分や、自分のこれからの生き方」にかかわるという点は共通しています。
人生100年時代といわれる現代では、更年期以降をいかに健康に過ごすかが大切。更年期は、自分の人生を見つめ直し、これからを考えるためのいい機会ともいえます。
これからのよりよい人生のために自分に合った趣味や活動を見つけたり、夫婦の信頼関係を見つめ直し新たな信頼関係を構築していくことで、ストレス解消につながるでしょう。
4:エクオールの摂取
108人の女性を対象として尿中のエクオール、ダイゼイン、ゲニステイン量を計測する調査(日本更年期医学会雑誌 15 :28-37,2007)を行い、同時に更年期症状についてアンケートを行ったところ、更年期症状が重い人と軽い人とでは「エクオールの量」に大きな違いがあることがわかっています。
更年期症状が重い人と軽い人とで、尿中のダイゼインとゲニステインの量に大きな差はなかったものの、症状が重い人の場合、明らかにエクオールの量が少なかったそうです。
エクオールとは、大豆イソフラボンに含まれるダイゼインが腸内細菌に代謝されてできる物質を指します。ただし、すべての人が体の中でエクオールを作れるわけではなく、日本人の場合は2人に1人はエクオールを生み出せません。
自分がエクオールを作り出せるかどうかは、市販の検査キットで検査可能です。
エクオールはホットフラッシュや首こり、肩こりといった更年期症状のほか、肌のシワ、骨密度の減少抑制、悪玉コレステロールの減少に効果を発揮するといわれています。更年期症状の対策としてエクオールのサプリメントを取り入れるのも一つの方法です。
5:漢方薬を取り入れる
更年期の不調の改善には、日本産婦人科学会も推奨している漢方薬もおすすめです。更年期障害の原因となる、ホルモンバランスや血流、自律神経の乱れを整えることで、漢方薬は症状を改善していきます。
根本から改善したい方やホルモン治療や向精神薬などの治療に抵抗を感じる場合には、使ってみてはいかがでしょうか。
また、漢方薬は自然の生薬の組み合わせで作られており、心と体全体の乱れたバランスを回復させる働きを持つので、多彩な症状を訴える更年期女性に対しては特に有効とされています。
更年期の不調に悩む方におすすめの漢方薬をご紹介します。
更年期の不調改善におすすめの漢方薬2つ
・加味逍遙散(かみしょうようさん)
イライラやホットフラッシュの改善が期待できる漢方薬です。肩こりや不眠が気になる方におすすめです。
・温経湯(うんけいとう)
冷え症で虚弱なタイプの更年期障害に用いられる漢方薬です。手足のほてりや唇の乾燥が気になる方におすすめです。
漢方薬を選ぶ際の重要なポイントは、その人の状態や体質に合っているか、という点です。どの漢方薬が自分に向いているのかを見極めるためには、専門家に力を借りるのがおすすめです。
かかりつけの漢方医がいない場合には、お手頃価格で漢方を自宅に届けてくれる「あんしん漢方」などのオンライン漢方サービスを取り入れてみてはいかがでしょうか。
更年期症状の悪化につながる避けるべき行動
過度なダイエットや喫煙は、卵巣機能に悪い影響を与え、更年期症状を悪化させる要因になります。
タバコを吸っている人はできる限り禁煙し、ダイエットをする場合は無理な食事制限をしないことが大切です。
つらい更年期症状は我慢せず病院へ
更年期症状を軽くするセルフケアを試しても改善しない場合は、我慢せずに婦人科や更年期外来、女性外来を受診し治療を受けましょう。
病院では、以下のような治療を行います。
- ホルモン補充療法(HRT)
- 漢方治療
- 向精神薬
- プラセンタ など
更年期はあなたのせいじゃない!無理しないことが大切
更年期には、心にも体にもさまざまな症状が起こることがあります。しかし、これらの変化は更年期の影響によるもので、仕方のないこと。自分を責める必要はありません。
不調があっても更年期の症状であると割り切って、休めるときには休むことが大切です。
更年期症状を軽くする方法を試してみても症状が改善しない場合、悪化する場合は他の病気が隠れている可能性もゼロではありません。早めに病院を受診して、つらい症状を治療しましょう。
監修者プロフィール:横倉恒雄さん(横倉クリニック)
よこくら・つねお 医学博士。医師。横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長。東京都済生会中央病院に日本初の「健康外来」を開設。故・日野原重明先生に師事。婦人科、心療内科、内科などが専門。病名がないものの不調を訴える患者さんにも常に寄り添った診療を心がけている。著書『病気が治る脳の健康法』『脳疲労に克つ』他。日本産婦人科学会認定医 /日本医師会健康スポーツ医/日本女性医学学会 /更年期と加齢のヘルスケア学会ほか。
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