更年期障害の症状と対処法

更年期:顔がほてるが手足が冷える人は「冷え取り」を

横倉恒雄さん(横倉クリニック)
監修者
横倉クリニック
横倉恒雄

公開日:2018.07.02

更新日:2024.08.25

更年期の気になる症状・対処法を医師が解説する連載企画。今回のテーマは「更年期の冷え」。顔はほてっているのに手足や腰が冷えてつらい、という症状に悩まされている人も多いはず。食事や手足の体操などで冷え取りをして、体の内側から温めましょう。

更年期はほてりと冷えが同時に起こる「冷えのぼせ」に注意

更年期はほてりと冷えが同時に起こる「冷えのぼせ」に注意

更年期には女性ホルモンの減少によって自律神経のバランスが乱れ、血行不良になったり、体温調節がうまくできなくなったりします。その影響でのぼせやほてり、大量の発汗に悩む人がいる一方、とにかく全身が冷えてつらいという人も多く見られます。

冷えは手足などの末端部分、おなかや腰などが中心ですが、季節に関係なく起こります。なかには夏でもカイロが手放せないほど、からだの芯から冷え切っている人もいます。また、顔や上半身はほてっているのに、手足だけが冷たい「冷えのぼせ」も少なくありません。

これほどまでに冷えが悪化するのは血行不良に加え、筋肉が減ってくることも影響しています。もともと女性は男性よりも筋肉の量が少ないうえ、更年期になると女性ホルモンの減少と加齢によってさらに筋肉がやせて減ってしまいます。そのため、熱の産生量も減り、からだが冷えるのです。

ただし、更年期世代の冷え=更年期障害とは限りません。甲状腺ホルモンの分泌が低下する甲状腺機能低下症や橋本病、貧血、心臓病や腎臓病などが潜んでいる危険もあります。

まずはかかりつけの婦人科を受診して検査を受け、これらの病気を除外しておくことが大切です。

冷えはむくみや頻尿、不眠などの原因になる

冷えはむくみや頻尿、不眠などの原因になる

冷えはそれだけでも不快な症状ですが、冷えがあることによって別の症状も引き起こされます。その一つが、むくみです。

冷えによって体内の水分代謝が悪くなり、とくに下半身がむくんできます。そして、むくみが生じることで、さらに冷えも悪化します。むくみがひどくなると足が重くなり、だるさも増します。

冷えは頻尿の原因にもなります。手足などからだの末端が冷えている人は、その部分の血管が収縮して血流が悪くなっている一方、からだの中心部に血流が集中しています。それを減らそうとするために尿量が増えるのです。また、冷えそのものが自律神経を刺激するため、尿意が頻繁に起こるようになります。

昼間の頻尿も外出先などでいつもトイレを気にしなければならず苦痛ですが、夜間の頻尿は睡眠の妨げになります。夜中に何度もトイレに起きることになり、十分な睡眠がとれなくなるのです。
 

体を温める生活習慣:入浴・食事・運動で冷えを防ぐ!

冷えを改善するには、まず冷えやすい部分を温めるのが第一。靴下の重ね履きや保温性の高い下着など、着込むことで冷えを防ぎます。カイロや湯たんぽ、座布団型のヒーターなどで温めるのも効果的です。

入浴は体を温めるのに最適です。お湯の温度が熱すぎると長く浸かっていられないので、38〜40℃のぬるめのお湯に、半身浴なら20分を目安に浸かります。じんわり汗をかく程度まで浸かると湯冷めしにくく、体の芯まで温まります。

入浴剤を使う場合は、炭酸ガスが出るタイプが温め効果も高くおすすめです。炭酸ガスは毛細血管から入り込み、血管を拡張させて血行を促す作用があり、筋肉疲労や冷えを改善します。

からだの内側から温めるには食品選びも大切です。最も温め効果が高いのは、しょうが。すりおろして常備しておき、紅茶やみそ汁などに加えると手軽に摂れます。

また、かぼちゃやにんじん、ごぼうなどの冬野菜はからだを温める作用があるので積極的に食べましょう。

逆に、トマトやきゅうり、レタス、なすなどの夏野菜はからだを冷やす作用が強いので控えます。

血行を促して冷えを改善するには、適度な運動も欠かせません。

手首や肩をぐるぐる回したり、かかとを上げ下げしたりする軽い体操をこまめに行いましょう。ウォーキングや軽めのジョギングで下半身、とくにふくらはぎや太ももの筋肉を鍛えると、徐々に代謝が上がって冷えが改善されるようになります。

更年期の冷えには、漢方治療もおすすめ!

生活習慣を改善しても冷えが改善しづらい場合は、漢方治療もおすすめです。
西洋薬には冷え症の治療薬として有効なものが少ないですが、漢方薬なら冷えを改善する効果をもつものが多く存在します。
更年期の冷えは熱を作る機能が落ちていることが原因ですが、漢方薬はそうした冷えに対し体質からの改善を得意としているのです。

冷えに悩む女性におすすめの漢方薬

  • 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
    痩せて体力のない方で、めまい、立ちくらみ、頭重、肩こり、腰痛、足腰の冷え、しもやけ、むくみ、しみ、耳鳴りなどにも使われます。月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害などによく用いられます。
  • 当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)
    体力がない方で、冷え症、手や足の先の冷え、下肢の冷えがひどい人のしもやけ、下腹部痛や腰痛、下痢に用います。冷え症の女性の月経痛にも用いられます。
  • 温経湯(うんけいとう)
    虚弱なタイプの方で、月経不順や月経困難症、更年期障害などの婦人科系の不調によく用いられます。冷え症で、手足がほてり、唇が乾燥しているような人に向いています。

漢方薬をのむときの注意点

漢方薬は自分にあったものを選ぶことが大切です。自分の体質に合っていなければ、よい効果が見込めないだけでなく副作用が起こることもあります。

自分に合う漢方薬を見つけるためにも、購入時には、できる限り漢方に詳しい医師、薬剤師等にご相談ください。

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監修者プロフィール:横倉恒雄さん(横倉クリニック)

横倉恒雄さん(横倉クリニック)

よこくら・つねお 医学博士。医師。横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長。東京都済生会中央病院に日本初の「健康外来」を開設。故・日野原重明先生に師事。婦人科、心療内科、内科などが専門。病名がないものの不調を訴える患者さんにも常に寄り添った診療を心がけている。著書『病気が治る脳の健康法』『脳疲労に克つ』他。日本産婦人科学会認定医 /日本医師会健康スポーツ医/日本女性医学学会 /更年期と加齢のヘルスケア学会ほか。

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