医師監修│命に関わる重大な病気が潜むしびれに要注意

更年期のしびれの原因は?片側だけの場合は危険?

横倉恒雄さん(横倉クリニック)
監修者
横倉クリニック
横倉恒雄

公開日:2022.09.16

更新日:2024.05.21

更年期のしびれは、更年期症状(更年期障害)の一つです。しかし、片側にのみしびれがある場合は、糖尿病、脳血管障害(脳梗塞、脳卒中)などの大きな病気が隠れている可能性も。医師監修のもと、しびれについて詳しく解説します。

更年期は手足のしびれが起こることがある

更年期になると、女性ホルモンが急激に減少することで自律神経の調節機能が乱れ、自律神経失調症と似た症状が起こることがあります。

手足のしびれやピリピリ感は、更年期症状の一つです。更年期症状の現れ方は人によって異なり、ほとんど気にならないほど軽い人もいれば、日常生活に支障が出るほど症状が重く「更年期障害」と診断される人もいます。

なお、更年期症状は女性だけではなく、男性にも見られます。男性更年期でも、手足のしびれやピリピリ感をはじめ、頭痛や肩こり、疲労感、疲れが取れない、不眠、のぼせやほてり、汗をかきやすくなる、手足の冷えなどが起こります。その他、性的機能症状として性欲が落ちる、精力減退、EDなども見られるようです。

ただし、体の片側にしびれが起こっている場合、更年期に関連するものではなく、脳血管障害など命に関わる病気が隠れている可能性もあるため、注意が必要です。

更年期でしびれが起こる原因

更年期でしびれが起こる原因

ここからは、更年期でしびれが起こる原因について解説します。

エストロゲン(女性ホルモン)の減少による更年期症状

更年期になると、女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌量が急激に減り、ホルモンバランスが大きく変化します。

エストロゲンは女性の健康や美容を支えるホルモンであり、分泌量の急激な減少によって体はダメージを受けます。自律神経が乱れて血行不良、筋肉の緊張が起こり、手足のしびれにつながっていくのです。

エストロゲンが減少すると皮膚が薄くなり、乾燥しやすくなるため、刺激に敏感になってしびれを感じやすくなるともいわれています。

東洋医学では、「気(生命活動のエネルギー源)」「血(全身に栄養を届ける血液)」「水(血液以外の体液)」のバランスが重要とされています。自律神経が乱れて「気」が滞ると「血」の流れが悪くなり、しびれなどが起こるといわれているようです。

しびれが更年期症状によるものの場合、以下のような症状が見られます。

  • 手足のしびれ
  • 手足の感覚が鈍くなる
  • 皮膚の表面にピリピリ感がある
  • 自分の意思とは無関係に手指が動く

更年期症状は手足のしびれの他にも、急に汗をかく、のぼせやほてり、めまい、吐き気、イライラする、憂うつな気持ちが続くなどの症状が見られます。これらの症状は、更年期によるものかもしれません。

腱鞘炎

腱鞘炎とは、腱と腱鞘がこすれ合い、指の付け根などに炎症を起こす病気のことです。炎症によって、しびれや腫れ、熱感、痛みなどが起こります。

指がばねのようになったり、カクカクとひっかかり真っ直ぐに指を伸ばせなくなったりする「ばね指」や、手首が強く痛む「ドケルバン病」は腱鞘炎の一種です。

腱鞘炎はスマートフォンの長時間利用や、手首の使い過ぎによって引き起こされ、手首に負担がかかりやすい仕事や作業が多い人、キーボード操作などでよく指を使う人に見られます。

首の病気

頚椎症や頚椎症性神経根症など、加齢の影響により首の骨が変形する病気でも、神経が圧迫されてしびれが起こることがあります。

これらの病気では、顔を上に向けた状態で首を左に傾けると左手のしびれが強く、右に傾けると右手のしびれが強くなることが特徴です。

手根管症候群

手根管症候群とは、手首から手のひらの真ん中に走っている正中神経が圧迫されることで起こる病気です。親指から小指にかけてしびれや痛みが起こります。

手根管症候群は女性に多く、妊娠・出産期や更年期などのホルモンバランスの乱れ、手の使い過ぎなどで正中神経が圧迫されると、手の指にしびれや痛みが生じます。

悪化すると細かな作業が難しくなり、日常生活に支障が起こる可能性も。患部を安静にすることが大切で、薬を使って炎症を緩和する治療法が一般的です。

ヘバーデン結節やブシャール結節

更年期以降は、手指のトラブルを訴える女性が多くなります。手指の関節の変型やしびれ、痛み、腫れが指の第一関節に起こる「ヘバーデン結節」や、これらの症状が指の第二関節に起こる「ブシャール結節」が原因となって、しびれが起こっている可能性も考えられるでしょう。

直接の原因は明らかになっていないものの、加齢や食生活、指の酷使、遺伝などの要素が複雑に絡み合って発症すると考えられています。

さらに、近年の研究では、女性ホルモンがヘバーデン結節やブシャール結節に深く関わっていることがわかってきました。

女性ホルモンのエストロゲンは、腱や関節のまわりにある滑膜を守る役割を果たしています。しかし、更年期になるとエストロゲンが減少してしまうため、腱や関節に炎症や腫れが起こり、手指のしびれやこわばり、痛みが起こるのです。

更年期のしびれの対処法・解消法

更年期のしびれの対処法・解消法

ここからは、更年期に起きるしびれの対処法・解消法をご紹介します。

原因となっている病気の治療

手足のしびれの原因が、腱鞘炎や手根管症候群、ヘバーデン結節、ブシャール結節である場合は、これらの病気の治療を行うといいでしょう。

鎮痛剤、ステロイド注射、ビタミンB12、神経障害性疼痛治療薬などを使った薬物療法、テーピングなどによって治療します。薬物療法では症状が緩和しない場合や、悪化する場合は、手術を行うこともあります。

血行の改善

血行不良が原因となり、手足のしびれにつながっている可能性もあります。その場合、血行を改善して、血液の滞りを防ぐといいでしょう。

マッサージや、血の循環を改善するビタミンE、血管を良好な状態に保つビタミンCなどの栄養をしっかり摂取することも血行の改善につながります。

体を冷やさないようにする

体を冷やすと血行が悪くなってしまい、血液や筋膜が硬くなり、神経が圧迫されやすくなります。

入浴を、夏場はシャワーで済ませることが多いかもしれませんが、湯船につかって体の芯から温めると血行の改善につながります。熱過ぎるお湯ではなく、38~40℃ほどのぬるま湯がいいでしょう。

また、夏場はエアコンで冷え過ぎてしまうこともあるため、羽織るもので体温調節をしたり、体を冷やす食べ物を控えたりすると、冷えを防げます。

筋肉を緩める

足のしびれがある場合は、お尻の筋肉が緊張している可能性があります。また、鎖骨や肩甲骨の周囲の筋肉が緊張すると、手がしびれることも。

筋肉を緩めるため、ヨガやストレッチを取り入れるのもおすすめです。

適度な運動

適度な運動を取り入れて体を動かすようにすると、血行の促進につながります。

適度な運動はしびれや感覚異常、イライラ感、骨密度の維持や向上、筋力の向上、血中脂質や骨機能などに効果があるといわれています。

また、運動には達成感や爽快感、ストレス発散、リラックス効果の他、睡眠のリズムを整える作用など、多くのメリットがあります。

エクオールを摂取する

更年期症状のしびれの初期症状には、エクオールの摂取がおすすめです。エクオールとは、大豆イソフラボンに含まれるダイゼインが腸内細菌によって代謝されてできる物質で、女性ホルモンに似た働きをします。

しかし、エクオールはすべての人が生み出せるわけではなく、日本人の場合50%の人は体内でエクオールを作り出すことができません。

エクオールを自分で作り出せない場合でも、サプリメントや食品が販売されているため、これらを活用することでエクオールを摂取できます。

また、エクオールが含まれるサプリメントは、更年期の症状緩和に効果を発揮するといわれています。

漢方薬

更年期症状や更年期障害によるしびれの場合は、漢方薬による治療という方法もあります

手足のしびれの原因である冷えやむくみなど、末梢神経の血流が悪くなる原因を根本から改善する漢方薬を症状にあわせて選びます。

血流が改善すると、胃腸の機能も回復し、全身に栄養と酸素が届けられることで、疲れにくく、病気になりにくい体を手に入れられるなど、多くのメリットがあるでしょう。

 

更年期のしびれに用いられる漢方薬

 

  • 牛車腎気丸(ごしゃじんきがん):しびれがあり、体が冷えやすい、むくみなどの症状が見られる人に
  • 疎経活血湯(そけいかっけつとう):冷えて関節痛、腰痛や神経痛がある人に
  • 桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう):関節痛や神経痛、手足の冷えやこわばりなどがある人に

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片側に起こるしびれには注意が必要

体の片側のみがしびれる場合、更年期症状ではなく他の病気が隠れている可能性もあります。

  • 吐き気
  • 激しい頭痛
  • 筋力低下
  • 意識障害
  • 言語障害
  • 視野異常 など

手足のしびれとともに上記のような症状が見られる場合や、何もしていないのに手足がしびれる場合は、すぐに病院を受診して詳しい検査をしましょう。

片側がしびれる場合に考えられる病気

片側がしびれる場合に考えられる病気

ここからは、片側がしびれる場合に考えられる病気をご紹介します。

脳血管障害(脳梗塞、脳卒中)

しびれの中でも最も怖いといわれているのが、脳血管障害(脳梗塞、脳卒中)によって引き起こされるものです。

主に、片手や片足など体の片側にしびれが起こり、朝起きたときや運動中などに数分ほど感覚が鈍くなるような感じがすることが特徴です。

動脈硬化によって血管が詰まりやすくなり、脳への血液が足りなくなると一時的に手足のしびれや麻痺、言語障害(ろれつが回らない)などが起きることがあります。その他にも口のまわりのしびれ、頭痛やめまい、吐き気、感覚麻痺、ものが二重に見える、歩行困難、意識障害、筋力低下などの症状が見られます。

これは「一過性虚血発作」が原因となっていることが多く、脳梗塞や脳血栓症、脳腫瘍の前兆とも考えられるため、すぐによくなったからといって安心はできません。

軽いしびれだとしても念のため、病院で検査を受けるといいでしょう。

糖尿病(糖尿病性神経症)

糖尿病によって高血糖状態が続くと、血液の流れが滞ることで神経障害が起こり、しびれにつながります。ピリピリ、ヒリヒリ、ジンジン、チクチク、ズキズキするような感覚のしびれが多く見られるようです。

多発性単神経炎

血管炎(血管炎症候群)、サルコイドーシス、糖尿病、リウマチ、がんなどによって多発性単神経炎が引き起こされると、末端神経が阻害され、手足にしびれが起こることがあります。

しびれを感じた場合は早めに病院で検査を

しびれは更年期症状の一つとしてよく見られる症状ですが、脳血管障害など、重大な病気が隠れている可能性も考えられます。

どんなしびれの場合でも、自己判断せずに早い段階で病院に足を運び、医師の診察や詳しい検査を受けることが大切です。

監修者プロフィール:横倉恒雄さん(横倉クリニック)

横倉恒雄さん(横倉クリニック)

よこくら・つねお 医学博士。医師。横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長。東京都済生会中央病院に日本初の「健康外来」を開設。故・日野原重明先生に師事。婦人科、心療内科、内科などが専門。病名がないものの不調を訴える患者さんにも常に寄り添った診療を心がけている。著書『病気が治る脳の健康法』『脳疲労に克つ』他。日本産婦人科学会認定医 /日本医師会健康スポーツ医/日本女性医学学会 /更年期と加齢のヘルスケア学会ほか。

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