ばね指におすすめのストレッチは?

【医師監修】ばね指の原因・症状・治療法をチェック!

青木孝文さん
監修者
医療法人財団順和会 山王病院 外科部長
青木孝文

公開日:2021.02.21

更新日:2024.02.29

40代~60代の女性に多い病気「ばね指」。男女比は女性が圧倒的に多く、家事などで複雑な動きをすることから、バランスが崩れることが大きな原因だと考えられるそう。「ばね指」の症状や治療法をわかりやすく解説。予防に役立つストレッチも始めましょう。

【医師監修】ばね指の原因・症状・治療法をチェック!
【医師監修】ばね指の原因・症状・治療法をチェック!

指がパチンと跳ね上がる、ばね指の症状とは?

ばね指の症状とは:腱鞘の炎症により腱が引っかかり指が痛む

ばね指とは、骨と筋肉をつなぐ腱の周りを囲んでいる腱鞘(けんしょう)が炎症を起こし、痛みや腫れが生じて、ついにはカクカク引っかかるようになった病気(指の腱鞘炎)のこと。

「指の腹の中を通っている紐のような『腱(けん)』が筋肉の収縮に合わせて動くことで、私たちは指を曲げることができます。手の平には指の先端まで伸びている1本の長い腱と、真ん中まで伸びている短い腱(途中で2本に分かれています)、合わせて2本の腱がありますが、手を動かすうちに長い腱と短い腱が擦れて、炎症を起こすことがあります」と、青木さん。

腱を包む筒状の通り道・腱鞘が炎症を起こして腫れると、腱鞘の中で腱が引っかかるようになるそう。

「この腱鞘の炎症が、ばね指の要因です。特に、就寝中に中指の根元にある腱鞘の中で腱が引っかかってしまうと、朝起きたときに指が曲がったまま戻らないという症状が現れます。無理矢理曲がった指を伸ばそうとすると、指がばねのようにパチンと跳ね上がることから、ばね指と呼ばれるようになりました」

ばね指は、弾発指(だんぱつし。弾発=ばね)、スプリングフィンガー、スナッピングフィンガーなどと呼ばれることがありますが、これらはすべて俗称とのこと。

「腱鞘が炎症を起こして腫れてしまい、腱の通り道が狭くなり、腱が動くたびに引っかかったり固まったりする、狭窄性腱鞘炎(きょうさくせい・けんしょうえん)が、ばね指の正式な名前です」

ばね指の主な原因は指の使い過ぎ!診断基準は?

ばね指の主な原因は指の使い過ぎ!診断基準は?

ばね指が発生する仕組みは詳しくわかっていませんが、多くの場合、指の使い過ぎによって起こると考えられています。

「ゴルフクラブを強く握る、鍋やフライパンを強く握るなど、指をぎゅっと握る動作をすることが多い人がばね指になりやすい傾向があります。しかし一方で、パソコンのキーボードをずっと叩いているとなりやすいのかというとそうでもないことが多く、指の使い過ぎだけがばね指の原因とは言えません。専業主婦でばね指になる人も多いので注意が必要です」

ばね指の診断は、基本的に、患者さんが問診で申告した症状によって決まるそう。

「指が曲がったまま戻らない、指が痛い・腫れているなど、ばね指の診断は患者さんの症状によって決定します。医師によっては、超音波検査で診断することもあります」

青木さんが患者さんを診察している所感として、ばね指は中指・薬指・親指に起こる頻度が高いそう(※ばね指の統計はさまざまな結果があり、人差し指が多いとする論文もある)。

「薬指はモノを握るときに無意識に力を入れやすい指、中指は長さが最も長く腱の移動距離が長い指、親指は他の指と違って単独で動く指であり、それぞれ負荷がかかりやすい指であるといえます」

ばね指に似ている病気「ドケルバン病」との違いは?

ばね指に似ている病気「ドケルバン病」との違いは?

ばね指と症状が似ている病気に「ドケルバン病(ドケルバン腱鞘炎)」がありますが、要因となる腱の位置が違うそう。

「ドケルバン病は、親指の手首に近い『指を伸ばす腱(短母指伸筋腱、長母指外転筋腱)』が引っかかる病気です。同じ親指でも、ばね指の場合は手の平にある『指を曲げる腱(屈筋腱)』が要因となります。また、ドケルバン病は親指だけですが、ばね指はすべての指で発症する可能性があります」

手の平の皮膚の下にある手掌腱膜(しゅしょうけんまく)が固くなる「デュプイトラン拘縮(こうしゅく)」という病気の症状も、たまにばね指と間違えられることがあるそうです。

「デュプイトラン拘縮は、だんだんと指が縮こまってきて、引きつれてしまう病気です。ばね指のように、パチンと跳ね上がることはないことで区別できます」

患者の男女比は1:9!40代~60代女性に多いばね指

患者の男女比は1:9!40代~60代女性に多いばね指

「ばね指は40代~60代の女性に多い病気です。患者さんの男女比は1:9ないし2:8で女性が圧倒的に多いです。中年女性に多いことから、最近は女性ホルモンのホルモンバランスが関係しているという説もありますが、私自身は女性は家事などで手指の複雑な動きをすることが多く、指を曲げる・伸ばすの動きのバランスが崩れることが大きな原因だと感じています」

指の健康のためには、指を曲げる・伸ばすという動きのバランスが大切です。

しかし「もともと人間の指は曲げる力の方が強いこと、一日の中で意識的に指を伸ばす機会はあまりないこと、年を取って力が弱くなることなどの要因が複雑に組み合わさることで、指の曲げる・伸ばすのバランスが崩れると、ばね指になりやすくなるのではないか」と青木先生は言います。

一方で、ばね指は遺伝や他の手の病気との関連性は薄いそう。

「ときどき『母親がばね指で自分もなりました』という方がいるのですが、現時点で明確に遺伝の影響があるというデータはありません。また、ヘバーデン結節関節リウマチなど、他の手の病気になった人が、ばね指になりやすいというデータもありません」

ばね指治療は痛み止め&腱鞘内注射が基本!重症は手術も

ばね指治療は痛み止め&腱鞘内注射が基本!重症は手術も

ばね指の治療は「痛みを減らすこと」と「指への負担を減らすこと」の2つのポイントで進められます。

「ばね指の場合、痛み止めの飲み薬を飲んでもあまり効果がありません。患部に湿布をする、塗り薬を塗るなどが治療の基本となります。何度も指が引っかかる場合には、腱鞘の狭くなった場所に、痛み止めとステロイド剤を混ぜたものを注射します(腱鞘内ステロイド注射)」

こうした保存療法で症状が長引く場合には、手術療法(腱鞘切開術)に移行することもあるそう。

「手術は腱の通り道を切り広げるものです。慣れている先生なら、局所麻酔の日帰り手術で、15分程度で終了します。手術は保険が適用され、3割負担の場合、7000~8000円程度の負担で済みます」

症状の改善&ばね指の予防におすすめのストレッチ方法

症状の改善&ばね指の予防におすすめのストレッチ方法

腱鞘切開術はばね指の最も確実な治療法で、再発はまずありません。ただ、腫れやしびれなどの後遺症が出る可能性や術後のリハビリが必要になることもあるそう。

「治療方針は医師によっても違いますが、私はストレッチで指を広げることをおすすめしています。早い人だと、1か月で効果が出ます。そして、約7割の人がストレッチをすることで、ばね指の症状が改善しています。実際、ストレッチをするようになってから、手術をするばね指の患者さんは減りました」

ばね指の症状を改善するためには、指にかかる負担を軽減することが大切です。

「家事や仕事など、日常生活の中で指には気付かぬうちに疲労がたまっています。ばね指の場合、夕方から夜にかけて痛みや腫れが出てきて、睡眠時に症状が悪化することがほとんど。入浴時にストレッチで疲労をリセットすることが大切です」

手の指を伸ばすストレッチ方法

青木さんがおすすめするのは、手をグーッと広げて指を伸ばすストレッチです。

「曲げる筋肉と伸ばす筋肉のバランスをとるために、お風呂に入ったときに、指をしっかり握る→しっかり伸ばす、という動きを繰り返しましょう。早くパカパカと動かすのではなく、ぎゅっと力を入れてそれぞれ2~3秒待つのがポイントです」

1.   親指を中に入れて(痛みが強い時は外側にしても良い)グッと力強く手を握ります。そのまま2~3秒待ちます。

手の指を伸ばすストレッチ方法:親指を中に入れてグッと力強く手を握ります

2.    親指と小指の間の距離を最大限に広げて、指と指の間を開きます。手の平を横に伸ばすイメージを強く持って指をしっかり伸ばしましょう。そのまま2~3秒待ちます。

 手の指を伸ばすストレッチ方法:親指と小指の最大距離を広げて、指と指の間を開きます

3.    「1」と「2」を何度か繰り返しましょう。

指の関節のマッサージ方法

「指の第二関節(PIP関節)周辺が痛い人は、指の関節の横を通っている、指先を伸ばすための腱(伸筋腱)が固くなっている可能性が高いため、指の関節まわりをマッサージするのもおすすめです」

「指の根元を2~3回ぐりぐりっとしたら、関節あたりに移動してグリグリ。最後は爪の生え際をグリグリ……と、指の根元から先端まで移動しながらマッサージしてください」

1.    関節が痛い指の根元を反対の手の親指・人差し指の指先で挟んで、その指先を互い違いになるように左右に3~5回動かす

指の関節のマッサージ方法:関節が痛い指の根元を反対の手の親指・人差し指で挟んで左右に3~5回動かす

2.    指の第二関節を「1」と同じようにグリグリと回すようにマッサージする(ここが一番痛いですが、がんばりましょう)

指の関節のマッサージ方法: 指の第二関節を「1」と同じようにクルクルと回すようにマッサージする

3.    指の先端も同様に、グリグリとマッサージする

指の関節のマッサージ方法:指の先端も同様に、クルクルとマッサージする

冷えや乾燥も痛みの原因!寒い冬は首まわりにも注意を

冷えや乾燥も痛みの原因!コロナ禍は首まわりにも注意を

ばね指の予防には、指を使い過ぎないこと、指を曲げる・伸ばす動作のバランスを取ることが大切ですが、青木さんによると、寒い冬はその他にも注意すべきポイントがあるそう。

「ばね指の症状を悪化させないために、冬の間は特に指先を冷やさないこと、皮膚の乾燥を防ぐことが大切です。就寝時に手袋をする、ハンドクリームなどを使って手のマッサージをするのもおすすめです」

また、寒いからと家でじっとしていることで、首まわりの筋肉が固まっている人が増えているそう。

「手先に症状が出ていても、首や肩まわりの筋肉の固さが根本原因であることが多々あります。首まわりの筋肉が硬直すると、筋肉の周辺を通って指先まで通じている神経を通じて、手に痛みや痺れが出るためです。ラジオ体操や柔軟体操などを心掛ける、姿勢が悪いことに気付いたら背筋を伸ばして深呼吸するなど、首まわりの筋肉を意識的にほぐしましょう」

ばね指もその他の手の不調も、ストレッチやマッサージにより予防できる場合があります。

運動量が減っているな、と感じたときは意識的にストレッチで筋肉を伸ばすように心掛けましょう。

教えてくれたのは、青木孝文(あおき・たかふみ)さん

医療法人財団順和会 山王病院 整形外科部長:青木孝文さん

あおき・たかふみ 医療法人財団順和会 山王病院 整形外科部長。国際医療福祉大学 臨床医学研究センター教授。専門は、関節疾患、手の疾患、足の疾患、末梢神経障害、脊椎疾患。日本手外科学会認定手外科専門医。

取材・文=竹下沙弥香(ハルメクWEB)

※この記事は2021年2月の記事を再編集して掲載しています。


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