公開日:2020/09/23
簡単な肩こり解消ストレッチ「肩甲骨はがし」や予防方法を紹介します。肩こりの原因は、姿勢やストレスなどさまざま。放置すると頭痛にもつながるため、注意が必要です。首や肩の筋肉の緊張をほぐすためにも、適度な運動を心掛けましょう。
肩こりとは、首・肩・背中にかけて生じる、僧帽筋(そうぼうきん)などの筋肉のこわばりや痛み、不快感、疲労感のこと。
肩こりは日本人の国民病ともいえる症状で、厚生労働省の「国民生活基礎調査(2019年)」でも、日常生活で感じる自覚症状として、女性では1位、男性では2位となっています。特に中年以降は加齢による筋力低下が起こるため、注意が必要です。
肩こりの要因はさまざまですが、中でも多くみられるのが、筋肉疲労・不良姿勢・眼精疲労・運動不足・ストレスの5つです。その他、頚椎椎間板ヘルニアや狭心症や心筋梗塞、高血圧などの病気が肩こりの原因になる場合もあります。
肩こりの原因でもっとも多いのが、肩まわりの筋肉疲労によるものです。首や腕を支えるため、常に負担がかかっている肩は、疲労しやすい部位といえます。肩の筋肉に負担がかかり続けると、筋肉がこわばって血流が悪くなるため、肩こりにつながります。
肩こりの大きな原因の一つに、姿勢の悪さ(不良姿勢)があります。例えば、猫背や前かがみの人、首や背中が緊張するような姿勢で長時間作業したりする人は要注意です。姿勢が悪い状態を続けると、上半身の血行が滞ってしまうため、肩こりの原因になります。
同様に、ショルダーバッグなどで肩の片側だけに力がかかる状況や、冷房・冷えなども、血行不良による肩こりの原因になります
パソコンやスマホを長時間見るなど、目を駆使すると、眼精疲労を引き起こします。眼精疲労は、目の筋肉へ負担がかかった状態のこと。このときに首から肩にかけての筋肉もこわばるため、肩こりの原因になることがあります。
ストレスや緊張を感じると、自律神経の交感神経の働きが活発になります。交感神経が優位になると、筋肉が緊張して血流が悪くなるため、精神的なストレスも肩こりの原因といえます。
運動不足は、筋肉の緊張と血行不良のダブルパンチで、肩こりになりやすい状態といえます。肩こりに関係する筋肉はいろいろありますが、首の後ろから肩、背中にかけて位置する僧帽筋(そうぼうきん)がその中心。肩甲骨周りのストレッチ・筋トレが肩こり予防におすすめです。
肩こりは頭痛の原因になることも多いので、注意が必要です。肩こりによる頭痛は、緊張型頭痛がほとんど。首や肩まわりの筋肉の緊張をほぐしてあげることが大切です。
また、頭痛の他に、肩こりと合わせて吐き気やめまい、耳鳴りといった症状が出ることがあります。その場合、自律神経失調症など病気が原因の可能性もあるので、病院を受診することをおすすめします。
肩こりになる人・ならない人にはどんな違いがあるのでしょうか。
まず、肩こりになる人は、以下のような生活習慣がある人です。
一方、肩こりにならない人は、肩周辺の筋肉の緊張が少ない人だと考えられています。また、肩こりは西洋人よりも日本人に多く見られますが、その理由は、日本人は頭が大きい割に頭を支える肩や首の筋肉が華奢であるため、といわれています。
肩こり解消・予防のためには、ストレッチで肩甲骨や肩関節を動かして僧帽筋の緊張をゆるめると同時に、姿勢や運動不足の改善を心掛けることが大切です。
具体的な肩こりの解消方法を紹介する前に、まずはあなたの「肩こり度」を診断しましょう。次の項目で、あなたの状態に当てはまる数をチェックしてみてください。
多くの項目にチェックがついた場合は、肩こりになりやすい人である可能性が高いでしょう。
ひどい肩こりは、これからご紹介する方法で軽減していきましょう。ぜひ、試してみてください。
猫背など姿勢が悪い人は、正しい姿勢を心掛けることが大切です。頭のてっぺんを上方向にひっぱられている感覚で、力を入れず、自然に背筋を伸ばすといいでしょう。
立つときの正しい姿勢は、耳・肩・大腿骨の大転子(股関節横あたりの少し外側に出ている骨の出っ張り、股関節の外側の出っ張り)・ひざ横・外くるぶしが縦一直線に並ぶイメージです。以下のような点を意識すれば、肩に負担がかかりにくく、キレイな姿勢を保つことができるはずです。
筋肉疲労や血行不良による肩こりを解消するには、肩周りの筋肉をストレッチやマッサージでほぐすことが有効です。特に、肩甲骨の動きが悪い人は肩こりが悪化しがち。定期的にストレッチするようにしましょう。
緊張や精神的なストレスにより、肩に力が入ってしまうと、肩こりになりがちです。仕事などで緊張やストレスを感じたときには、好きな音楽を聴いたり、温かい飲み物を飲んだりして、リラックスするよう心掛けてみてください。
また、力が入った肩をリラックスさせる簡単な方法をご紹介しておきます。気付いたときにやってみると、肩が楽になりますよ。
肩こりに関係する筋肉は、僧帽筋や肩甲骨の奥にある肩甲挙筋(けんこうきょきん)、菱形筋(りょうけいきん)などが主なものです。筋トレでこうした肩まわりの筋肉を鍛えることは、肩こりの解消につながります。適度な運動を取り入れてみてください。
マッサージや整体院などでも温熱療法を取り入れているところがありますが、家庭でも肩周りを冷やさないよう、入浴時は湯船にしっかり浸かって血行をよくしましょう。湯船の適温は38〜40度で、10分以上浸かるようにしてください。
交互浴とよばれている、お湯(40〜42度)と水(17〜20度)を交互にかける方法も、血行を改善する効果があります。
肩こりの症状を改善するためには、肩甲骨まわりの筋肉をほぐすことが大切です。肩こり解消におすすめのストレッチが「肩甲骨はがし」です。「はがし」という名前ですが、実際には、肩甲骨まわりの筋肉をほぐすことをいいます。
また、生活習慣を改善することでも肩こりを予防できます。なるべく肩こりにならないよう、以下のようなポイントに注意しましょう。
立つ姿勢・座る姿勢など、正しい姿勢を心掛け、首や肩に負担をかけないように注意します。
パソコンで作業するときは、画面から50cm程度目を離し、目線より少し下になるように調整するのがおすすめです。スマホは顔から30cm程度離し、真正面よりやや下に目線がくるように持ちましょう。ストレートネックの予防にもつながります。
同じ姿勢を長時間続けないようにしましょう。デスクワーク中などは、ときどき肩や首を回すなどのストレッチをすることで、首や肩の緊張をほぐせます。
肩こりには冷えが大敵です。肩まわりが冷えると血行不良につながり、肩こりの原因となってしまうからです。エアコンなどで肩や首を冷やさないためにも、カーディガンをはおったり、スカーフを首に巻いたりしましょう。
運動を続けることで、血流改善の効果が期待できると同時に、筋肉量の低下を防げます。日々の積み重ねが大切なので、毎日継続できる運動がおすすめです。ウォーキングや散歩、室内でのスクワットなど、軽い運動でも肩こりの予防に効果があります。
また、僧帽筋や肩甲挙筋など、肩まわりの筋肉を鍛える筋トレもおすすめです。ダンベルを両手に持って肩を上げ下げするなど、簡単な運動でも血行がよくなるので、肩こり解消・予防につながります。
肩こりはやっかいなものですが、ご紹介した解消法や予防法で軽減できます。ただし、ひどい肩こりが続く場合は、病気が原因の可能性もあるので病院を受診するようにしてください。
■肩こり解消について教えてくれたのは?
かわかみ整形外科クリニック 院長・医学博士
川上洋平さん
かわかみ・ようへい 神戸大学医学部卒業。米国ピッツバーグ大学に留学し、膝スポーツ疾患や再生医療を学び、北播磨総合医療センター、神戸大学病院、新須磨病院勤務を経て、患者さんにやさしく分かりやすい医療を提供する事を目的に、かわかみ整形外科クリニックを開業。日本整形外科学会専門医、日本リハビリテーション医学会認定医。英文論文執筆多数。
取材協力:かわかみ整形外科クリニック
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