脳や体の疲れには睡眠が大切

【医師監修】疲労回復の方法や対策を解説!

公開日:2020/11/16

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脳や体の日々の疲れを回復して元気に暮らしたい…。そもそも疲労とは何なのか?疲れが発生するメカニズムや疲労回復に有効なことを、東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身さんに教えていただきました。

疲労回復の方法と対策
疲労回復の方法と対策

疲労感は、脳が発するアラーム

人間の体は、痛みや発熱などで私たちに異常を知らせてくれます。それと同じように「疲労」または「疲れ」は、休息をとった方がいいと教えてくれるアラームのようなもの。
つまり、疲労は「このまま仕事や運動を続けると、体に悪い影響をもたらしますよ」と告げるサインなのです。
 

疲れが発生するメカニズムとは?

では、どのように「疲労」や「疲れ」が発生するのでしょうか。近年の研究で、疲れが発生するメカニズムが少しずつ明らかになっています。

そもそも疲労とは?

疲れ発生のメカニズム1:すべての疲労は脳が原因

通勤や通学で同じ距離を歩く場合でも、「季候のよい春先」と「真夏の炎天下」では疲労度が大きく異なります。運動量は同じなのに疲労度が違う理由、それは体温を安定させることにかかる負担の違いといえます。炎天下では体温の上昇を抑えるため、少し歩くだけでもすぐに汗をかき、「はぁはぁ」と熱い吐息で放熱しようとします。

これを100分の1秒単位で休みなく制御しているのが「自律神経中枢」、すなわち脳なのです。

実際、自転車を4時間こぎ続ける試験でも、筋肉の疲労はほとんど検出されず、肝機能や腎機能にも大きな変化はありませんでした。その一方で、呼吸、心拍、血圧などは運動開始からわずか1秒で変化が表れ、数分後には発汗も観察されました。これら循環、呼吸、体温を無意識に常時制御しているのが「自律神経中枢」で、そこが運動による疲労を起こしていたのです。

疲れ発生のメカニズム2:活性酸素が神経細胞をサビさせる

運動時は体温上昇や酸素不足が起きやすく、「恒常性」の維持、すなわち生命維持に必要な体の状態や機能を保つのは大変です。そのため、自律神経中枢を構成する神経細胞はフル回転で働き、酸素を大量に消費しています。

そして、その分だけ活性酸素が細胞内に出現してしまいます。これは、デスクワークなどの精神作業においても同じです。精神作業では脳の前頭葉(主に脳の神経細胞)を酷使します。細胞は使えば使うほどに活性酸素を発生させ酸化ストレスの状態にします。

この活性酸素が脳の自律神経細胞を酸化させ、錆び付かせてしまうのです。錆び付いた細胞で構成される組織は本来の機能が果たせなくなります。これこそが「疲労の正体」だったのです。

疲れ発生のメカニズム3:摂取エネルギーの不足で疲労は起きない

今でも、「疲労」と聞くと「ガス欠」、すなわち車のガソリン計がゼロを指すようなエネルギーの枯渇状態をイメージする方も多いと思います。また「乳酸が疲労の原因」と信じている方も少なくないのではないでしょうか。

結論から申し上げると、豊かな日本に暮らす私たちのエネルギー自体が枯渇して疲労を起こすことはありません。日本においてエネルギー不足で疲れていたのは遠い昔の話。国が貧しくて栄養や摂取カロリー不足で細胞が活動できない時代には、うなぎもステーキも抗疲労物質だったといえます。

しかし、みなさんがダイエットに夢中になっている飽食社会においては、食べて疲労を回復することは時代錯誤といえます。疲労はエネルギー不足ではなく、神経細胞の酸化ストレスによる疲弊によって起こっているのです。

また、仕事や運動によって心身が疲れるのは、決してエネルギー不足や乳酸が問題ではないのです。ちなみに乳酸は、疲労を起こすことはなく、むしろ傷ついた筋肉の細胞を修復し、脳においてはエネルギー源となる有用な物質であることが判明しています。

 

疲労回復の方法は、良質の睡眠しかない

疲労を克服するには、次の2点しかありません。

  • 日中に疲労を軽減させること
  • 睡眠中に前日までの疲労を回復させること

食事や運動、仕事など日常生活の中で自律神経の負荷を減らし疲労を軽減させることはできます。しかし、いったん起こってしまった疲労、すなわち自律神経の神経細胞のサビを落とすことができるのは、「質の良い睡眠」しかありません。

質の良い睡眠とは、朝、目覚めた際に前日までの疲労が回復しているような睡眠を指します。

以下のいずれかに該当するようであれば、それは睡眠の質が悪いサインです。

あなたの睡眠の質が悪くないかをチェック

  1. 十分に寝たはずなのに体がだるい
  2. 目覚めてから4時間たった時刻にも眠気がある
  3. 電車に乗るとすぐに寝落ちしてしまう
  4. 就寝時、布団に入ると5分以内に眠ってしまう
  5. 休日は平日より2時間以上長く寝てしまう

よく、寝つきが良いことを自慢する人がいますが、布団に入って5分以内に眠っている人は睡眠が足りていない証拠、すなわち寝落ちしているだけです。心当たりのある方は睡眠を見直す必要があります。

良質な睡眠を奪ういびきが慢性疲労の原因に

実は、睡眠の質を悪化させている最大の原因が、「いびき」です。いびきは、睡眠中に舌根が後方に落ちて気道を狭窄させることで生じる摩擦音です。肺を風船、気道をストローに例えると細いストローで風船を膨らませているようなもの。6時間の睡眠中、4000個以上の風船を一晩中、懸命に膨らませている計算になります。

気道が狭窄すると、吸える酸素量が少なくなります。しかし、脳に酸素供給を止めるわけにいかないので自律神経は血圧や脈拍、血流を一生懸命に働かせようとがんばります。いびきをかいている状態は、睡眠中にも関わらず脳は運動しているようなもの。これでは当然、疲れが取れません。

また、いびきが悪化して無呼吸が起こるようになると、高血圧症、糖尿病の発症リスクを2倍以上に高めるだけでなく、死亡リスクも数倍に悪化することが知られています。

更年期以降の女性は要注意

特に女性では、更年期から女性ホルモンの低下が原因で寝息がいびきに変わることが多く見られます。女性の方は、いびきの音が小さいから目立つことは少ないですが、音が小さいのは肺活量が小さいから。逆に言えば、容易に脳の酸素不足が生じるリスクがあります。

さらに、女性はもともと低血圧や貧血体質の方が多いことから脳への酸素供給量が減少しやすく、その結果、眠っている間も自律神経は休むことなく働くため、慢性疲労の原因になっているケースも少なくありません。

いびきや無呼吸が心配な方は、全国の睡眠を扱うクリニックに行けば、3000円ほどの自己負担(健康保険3割負担の場合)で「簡易型PSG睡眠検査」を受けることができます。検査機器を自宅に持ち帰り一晩眠るだけでいびきや無呼吸がわかるので、ぜひ検査を受けてみてください。
 

 

入浴後の効果的なストレッチ方法

入浴は、体が温まって血行がよくなり、体内にたまった疲労物質を血流に乗せて排出しやすくなります。また、体が温かい方が、気持ちよく体を伸ばすこともできるので、入浴後のストレッチはおすすめです。気持ちよさも加わって快眠につながり、疲労回復に有効です。次のストレッチをそれぞれ3セットずつ、行ってみてください。

上半身のストレッチ

正座をして、ひざの前に手をつき、息を吸いながら背中を反らせます。次に、ゆったり息を吐きながら腕を前に伸ばし、額を床に。このまま10秒キープ。

お尻上げストレッチ

仰向けになってひざを曲げたら、足の裏と手の平で体を支えながら、胸からお尻まで体の軸が一直線になるように持ち上げます。このまま10秒キープ。
 

寝ながら腰ひねりストレッチ

仰向けになり、腕を肩の位置で広げ、手の平を下に。片方の脚を腰からひねって倒し、目線は倒した脚と逆方向に。10秒キープ。お尻とわき腹の筋肉が伸ばされ、快眠を助けてくれます。反対側も同様に。
 

疲労回復のために取りたい栄養成分:イミダペプチド

疲労の原因である神経細胞のサビを取り除くにはどうすればよいのか。過去、私も参加し、研究予算30億円をかけた「産官学連携疲労定量化および抗疲労食薬開発プロジェクト」において、23種類の抗疲労成分が本当に疲労に効果があるのか検証してきました。

その結果、かつて効果があるとされていたカフェインやタウリン、ビタミンCなどが、摂取可能な量の摂取では疲労に効果がないことが示されました。

細胞のさびを取り除くのに効果的なイミダペプチド

イミダペプチドとは、鶏の胸肉やマグロ、カツオに多く含まれる成分で、抗酸化作用があります。人が摂取すると、消化吸収されたイミダペプチドは体内で2種類のアミノ酸に分解され、脳や体内に運ばれます。

脳には有害物質の侵入を防ぐ「血液脳関門」と呼ばれるバリアーがあり、ここを通過できる物質は限られています。分子量の大きな物質は通れないのですが、アミノ酸に分解されたイミダペプチドは通過でき、脳内酵素の働きによって再び合成されるのです。つまり、人はもともと脳内にイミダペプチドを作る工場を持っていて、イミダペプチドを摂取して脳に“材料”を与えてやれば、再合成して長時間にわたり抗酸化力を発揮することできることがわかったのです。

イミダペプチドは、長距離を飛ぶ渡り鳥の羽の付け根や、広い範囲を移動する回遊魚の尾びれに豊富に含まれています。イミダペプチドは1日に200mgの摂取が必要で、鶏肉なら1日100g食べるとよいでしょう。

プロジェクトで実施した臨床試験では、イミダペプチド200mgを2週間摂取し続けたところ、76%の人に疲労軽減効果がありました。コンビニでも買えるサラダチキンがおすすめです。臨床試験で用いたイミダペプチドドリンク(日本予防医薬株式会社)のサプリメントも出ているので、併用するのが効果的です。

イミダペプチドは熱に強く、調理法によって成分量に変化はありませんが、煮た場合は煮汁にも成分が溶け出すのでスープも一緒に飲むことを心掛けてください。

 

■教えてくれたのはこの人
梶本修身さん
 

かじもと・おさみ  東京疲労・睡眠クリニック院長。医師・医学博士。元・大阪市立大学大学院医学研究科疲労医学講座特任教授。1962(昭和37)年生まれ。大阪大学大学院医学研究科修了。2003年から産官学連携「疲労定量化及び抗疲労食薬開発プロジェクト」統括責任者。主な著書に『すべての疲労は脳が原因Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』(集英社新書)など。
 


※参照 疲労定量化および抗疲労食薬開発プロジェクト

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