湯浅慶朗の一生自分で歩く足育塾・2

外反母趾の症状で足が痛い!その原因と改善方法3つ

公開日:2020.07.20

更新日:2024.02.15

女性に多い足の悩み外反母趾。「運動靴しか履いていなくてもなることがある」と、足指研究所・湯浅慶朗さん。大きく分けて5つのタイプがあり、足が痛い原因や骨・足指の変形、腰痛やひざ痛などの二次的障害と症状を改善する方法を解説します。

外反母趾のタイプはどれ?5つからセルフチェック!

外反母趾のタイプ

外反母趾(がいはんぼし)は原因によって、大きく以下の5つのタイプに分けられます。それぞれのタイプ別に症状の特徴をご紹介します。自分の症状がどのタイプの外反母趾か、セルフチェックしてみましょう。

1.靭帯性外反母趾

靭帯性外反母趾

最も一般的なタイプの外反母趾で、親指自体が大きく曲がってしまいます。足先のアーチ構造を支えている「横中足靭帯(おうちゅうそくじんたい)」という靱帯が緩むことで、親指が人差し指に向かって曲がってしまうのが原因です。

2.仮骨性外反母趾

仮骨性外反母趾

実際には曲がっていないにも関わらず、付け根の骨が異常に出っ張っていることで、親指が曲がっているように見えてしまうのが特徴です。日常生活の中で足の指をうまく使えていないことが原因で、後天的に生じる外反母趾のタイプです。

3.混合性外反母趾

混合性外反母趾

上で紹介した靭帯性外反母趾と仮骨性外反母趾が合併したタイプです。靭帯性外反母趾の症状が進行した結果、親指がうまく使えなくなり、仮骨性外反母趾も引き起こされた状態です。中高年以上の女性に多いのが特徴です。

4.ハンマートゥ性外反母趾

ハンマートゥ性外反母趾

生まれつき足の指が長過ぎる人に多い外反母趾のタイプです。指が長過ぎるのが原因で、指を足の裏側に丸めて、ハンマーのように縮こまった状態(ハンマートゥ)にして歩く癖がついてしまっているのが特徴です。指を伸ばして地面に着けることができません。

5.病変性外反母趾

病変性外反母趾

親指だけでなく、足指全体が変形・脱臼しているタイプの外反母趾です。関節が変形してしまうリウマチや、指の第一関節が太く変形したり骨自体が隆起したりするヘバーデン結節、事故などが原因です。病変性外反母趾は手術でしか治療できません。

 

外反母趾で足が痛い原因は骨の変形と筋肉の炎症

外反母趾の症状として多くの人が感じるのが、足の痛みです。外反母趾で足が痛い原因は、骨の変形と筋肉の炎症の2つです。

足が痛い原因1:骨の変形

外反母趾

外反母趾になると、足の親指が「く」の字に曲がります。すると、横に突き出した骨(突出部)が靴に当たって痛みが生じます。

私たちの体の中には、骨と皮膚が当たったときに衝撃を防ぐ「皮下滑液包」(ひかかつえきほう)という小さな袋がありますが、突出部が靴に当たって刺激されると、皮下滑液包に炎症(バニオン)が起きて水が溜まります。その結果、腫れや痛みを感じるのです。

また、突出部には親指につながる知覚神経が通っているため、圧迫されることで親指にしびれや痛みが生じることもあります。

足が痛い原因2:筋肉の炎症

外反母趾により親指の痛みが出ると、突出部が当たらない幅が広い靴を買い直そうと考えがちです。しかし大き過ぎて足に合わない靴は、靴の中で足が滑りやすくなるため、外反母趾を進行させる可能性が高くなります。

靴の中で足が滑ると、滑りを止めようとして自然に指先に力が入るため、「浮き指」や「屈み指(かがみ指)」という足指の変形が起こります。浮き指は立ったときや歩行時に足の指が地面に着かない状態、かがみ指は足指が曲がった状態(ハンマートゥと同じ)になることです。

浮き指
浮き指
かがみ指
かがみ指

足指の変形が起こると、しっかり踏ん張ることができず、足を正しい位置に保つことができません。その結果、靴の中で足が前滑り・横滑りして、親指の付け根部分が擦れて筋肉の炎症が起こります。さらに、足指の機能が低下すると、筋肉も落ちていきます。

足指の機能が低下すると、筋肉も落ちていく

筋力低下が起こると、足が回内(内側に倒れる)を引き起こします。足が内側に倒れると親指方向に体重がかかりやすくなるため、親指への負担(圧迫)が大きくなります。

外反母趾の痛みの原因

さらに、内側に倒れた足を立て直そうと、母指外転筋(親指を外側に開くための筋肉)や母指屈筋(親指を裏側に曲げるための筋肉)が過剰に使われるため、親指の付け根の外側や裏側に炎症が起こります。これらの筋肉の炎症も外反母趾の痛みの原因となります。

 

足の痛みがない人も注意!二次的障害も外反母趾の症状

外反母趾の症状は、足の痛みだけではありません。ある研究では、外反母趾の自覚があるにも関わらず、足に痛みがある人は46%だったという報告もあります。つまり、外反母趾の人の約半数は、足の痛みを感じないのです。

そのため、外反母趾を治療しない人も少なくありません。しかし、外反母趾を放置していると、関節の脱臼などを引き起こし、重症になって手術が必要となることも多々あります。

また、足の痛みがない外反母趾であっても、親指に力が入らず、地面を踏み込めなくなるため、負荷がかかる腰やひざなど、足から離れた場所に痛みが現れることがあります。こうした症状のことを、二次的障害と呼びます。

外反母趾は転倒や腰痛・肩こりの原因にも

以前出演した番組で行った実験では、足指が使えていない人は正常な人に比べて、1歩歩くごとに、ひざに3kg相当の負荷が余分にかかっていました。また外反母趾になると、前方に踏ん張る力が弱くなり、「転倒」のリスクも高まると研究者たちが警鐘を鳴らしています。

さらに足の指(特に親指)に体重がうまく乗っていないと、重心が後ろ側に移動するため、バランスを保とうと無意識に猫背のような姿勢になります。すると、頭の重さを支えるために、首から腰にかけての筋肉に余計な負荷がかかり、頭痛や肩こり、腰痛などにつながります。

外反母趾の症状で本当に問題なのは、実はこうした二次的障害なのです。二次的障害は、全身に慢性的な痛みや不調を引き起こします。足の痛みがないからといって外反母趾を放置するのは間違いです。

運動靴でも外反母趾になる!靴選びなど改善方法3つ

運動靴でも外反母趾になる

では、外反母趾の症状を改善する方法は、具体的にどんなことなのでしょうか?

外反母趾はほとんどの場合、足に合わない靴による「靴の中での足の滑り」が根本的な原因です。まずは、今履いている靴を見直すことが最優先です。

足に合わない靴というと、ハイヒールなど、かかとが高くてつま先が細い靴を想像する人が多いようですが、靴の形状以上に足にフィットしたサイズを選んでいるかが大切なポイントです。

実際、ヒールのない運動靴しか履いていなかったにも関わらず、外反母趾になってしまったケースは増えています。かかとが安定せず足が滑るジッパーや折り返しのないマジックテープの靴は、足指を曲げてしまう原因になります。同じ運動靴でも、しっかり足を固定できる紐靴がベターです。外反母趾におすすめの靴と履き方のポイントをチェックしておきましょう。

なお、運動靴の中敷きには土踏まずを上げるものなどもありますが、足のバランスを崩すのでおすすめしません。中敷きは平らなものがおすすめです。

靴選びと同時に、足指の機能を改善することも、外反母趾の予防には大切です。そこで、私の治療院では、足指体操「ひろのば体操」と足指矯正靴下を取り入れています。

 

体験談:足に合う靴&足指体操で外反母趾の症状が改善

私の元に治療に訪れたTさんは、外反母趾用の靴を履いていましたが、左右の足とも「かがみ指」になり、症状が悪化していました。

そこで、より足にフィットする紐靴に変えてもらうと同時に、足指の変形を改善すべく、ひろのば体操と足指矯正靴下(YOSHIRO SOCKS)を生活に取り入れてもらいました。

すると、1か月で足の痛みが軽くなり、外反母趾のことを忘れてしまうくらいになりました。そして2か月後、外反母趾による親指の変形がほとんどなくなったのです。

外反母趾の症状改善

このように、軽症のうちに継続的に自宅でセルフケアを行うことで、足の痛みや足指の変形などの外反母趾の症状は改善できます。次回はいよいよ、ゆあさ式足指体操「ひろのば体操」のやり方をご紹介します。

著者プロフィール:湯浅慶朗

執筆者プロフィール:湯浅慶朗

ゆあさ・よしろう
足指研究所 所長
日本足趾筋機能療法学会 理事長

理学療法士。足指研究所所長。ハルメク靴の共同開発者。理学療法士として高齢者医療に携わるが、治らない現代医療のあり方に疑問をもち、病院を退職。妻のO脚改善をきっかけに足指の研究に入る。一生歩き続けられる体をつくる「ひろのば体操」や「YOSHIRO SOCKS」を考案し、東京大学との共同研究や学会発表も実施。NHK「ガッテン」などにも出演し、著書に『たった5分の足指つかみで腰も背中も一生まがらない!』(PHP研究所刊)など。

執筆・写真=湯浅慶朗 構成=竹下沙弥香(ハルメク365)


湯浅さん監修!ハルメク「ずっと自分の足で歩ける靴」新発売

ずっと自分の足で歩ける靴

大人の女性の毎日のために、ハルメクが長い時間をかけて開発を続けたシューズブランドがついに誕生しました。その名も「ずっと自分の足で歩ける靴」。 理学療法士・湯浅慶朗さん監修のもと、足の筋力に働きかけ、歩きやすい足をサポートする、まったく新しいシューズブランドです。

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【参照文献】
1)Cho NH,Kim S,Kwon DJ et al:The prevalence of hallux valgus and its association with foot pain and function in a rural Korean community.JBJS 2009;91(B)494-498 
2)Toshirou O,Reiko K et al:Activity of Dairy Living in Patients with Hallux Valgus;JTHS 2000;vol.3(3):159-162 

湯浅慶朗

ゆあさ・よしろう 理学療法士。足指研究所所長。ハルメク靴の共同開発者。一生歩き続けられる体をつくる「ひろのば体操」や「YOSHIRO SOCKS」を考案し、東京大学との共同研究や学会発表も実施。著書に『たった5分の足指つかみで腰も背中も一生まがらない!』(PHP研究所刊)など。

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