湯浅慶朗の一生自分で歩く足育塾・4

外反母趾におすすめ!痛くない靴選びと履き方のコツ

公開日:2020.09.25

更新日:2023.10.28

「外反母趾の改善で大切なのは、靴の履き方・選び方」と、足指研究所・湯浅慶朗さんは言います。なんと、外反母趾でもパンプスを履いていいんだとか! 正しい靴の履き方3つのポイントや、おすすめの「ひも靴」の選び方のポイント6つをご紹介します。

外反母趾におすすめの靴と履き方のポイント
外反母趾におすすめの靴と履き方のポイント

著者プロフィール:湯浅慶朗

執筆者プロフィール:湯浅慶朗

ゆあさ・よしろう
足指研究所 所長
日本足趾筋機能療法学会 理事長

理学療法士。足指研究所所長。ハルメク靴の共同開発者。理学療法士として高齢者医療に携わるが、治らない現代医療のあり方に疑問をもち、病院を退職。妻のO脚改善をきっかけに足指の研究に入る。一生歩き続けられる体をつくる「ひろのば体操」や「YOSHIRO SOCKS」を考案し、東京大学との共同研究や学会発表も実施。NHK「ガッテン」などにも出演し、著書に『たった5分の足指つかみで腰も背中も一生まがらない!』(PHP研究所刊)など。

外反母趾の改善で大切なのは?靴の履き方と選び方!

外反母趾の改善

外反母趾は母趾(親指)が小指側に曲がっていく病気です。足の痛みの症状が有名ですが、頭痛や肩こり、腰痛などの二次的障害に悩んでいる人も多くいます。

外反母趾には5つの種類がありますが、足指の変形が原因となるタイプ(靭帯性外反母趾・混合性外反母趾・ハンマートゥ性外反母趾)は、継続的に自宅でセルフケアを行っていくことで、足の痛みの軽減や足指の変形の改善を目指すことが可能です。

これまで多くの外反母趾の患者さんを治療してきた経験から、外反母趾の症状の改善には、以下の4つが効果的な方法だと感じています。

外反母趾の改善の4つのポイント

  1. 足裏の筋力アップ
  2. 歩き方や姿勢の改善
  3. 足に合う靴選び
  4. 足指の動きを妨げない靴下選び

そのため、私の治療院では、足指ストレッチ「ひろのば体操」と、歩き方・姿勢の改善を促す足指矯正靴下「YOSHIRO SOCKS」を取り入れていますが、より効果を上げるために、正しい靴の履き方・選び方のアドバイスも行っています。

足指が変形する最大の原因が、間違った「靴の履き方」や「靴の選び方」により、靴の中で足が滑ることだからです。

外反母趾の原因と進行

  1. 靴の中で足が滑る
  2. 浮き指・かがみ指など足指の変形が起きる
  3. かかと重心の歩き方になることで、足指の機能不全が起こる
  4. 足指を使わない歩き方になり、足裏の筋力低下が起こる
  5. 足裏の筋力低下により、開張足になり母指内転筋が伸ばされる
  6. 母指内転筋が戻ろうとする力で親指が内側に曲がる(=外反母趾)

特に、靴の履き方が重要です。

下の写真を見てください。この人の外反母趾の原因は、靴が緩いことでした。その証拠に、靴ひもをしっかり結ぶようにしただけで、外反母趾が改善しました。

外反母趾

私は、患者さんに必ず自分の靴を持ってきてもらって、靴の履き方を見ています。すると、たいていの方が靴の履き方が間違っているのです。

どんなにいい靴でも、間違った履き方をしていては、足の悩みは解消されません。反対に、正しい靴の履き方を知っていれば、今履いている靴でも外反母趾の症状を改善できる可能性があります。

 

外反母趾を改善する!正しい靴の履き方3つのポイント

「靴の履き方なんて知ってるよ」と、みなさん思うことでしょう。でも、正しい靴の履き方をしている人は、意外と少ないものです。

靴の履き方で大切な3つのポイントをご紹介します。

靴の履き方のポイント1:靴べらを使う

靴の履き方のポイント

靴はかかとが命。靴のかかとには、足と靴を固定させる硬い芯(ヒールカウンター)が入っていますが、かかとを踏んで芯が曲がると、もう元には戻りません。

かかとが崩れた靴は、足首がふらついて安定しなくなってしまいます。毎回きちんと靴べらを使うと、かかとの崩れを防げるため、靴がぐっと長持ちします。

靴の履き方のポイント2:かかとトントンで密着させる

靴の履き方のポイント

靴を履くときは、かかとをしっかり合わせることが大切です。かかとを立てて靴でトントンと地面をたたき、かかとと靴を密着させます。かかとと靴の間に隙間がないのが理想です。

こうして足と靴が密着したら、靴ひもやストラップ、マジックテープなどで固定します。

靴の履き方のポイント3:足に体重をかけて靴ひもを結ぶ

靴の履き方のポイント

かかと以外で靴の密着度を高めるポイントが、足の甲と靴の上部の隙間をなくすことです。

足の甲の高さは一定ではなく、座った状態よりも立った状態の方が、体重がかかるため低くなります。

座ったまま靴ひもやストラップで固定すると、立ち上がったときに甲の高さが下がるため、靴が緩くなる原因になります。

靴ひもを結ぶときは、片膝を立てて足に体重が乗るようにしてから、しっかり固定しましょう。

 

外反母趾を改善できる靴の選び方のポイントは?

靴の履き方の次に大切なのが、足に合う靴の選び方です。

足に合う靴選びのポイントは、サイズと形。特に「足にフィットしたサイズを選んでいるか」が重要です。

外反母趾で足の痛みを訴える人は、たいてい自分の足のサイズより大きめの靴を履いています。足に当たらない緩い靴が楽なのだと思いますが、実はそれが大間違い。

サイズが大きい靴で歩くと、靴の中で足が前滑り・横滑りして安定しません。

靴の中で足が滑ると、滑りを止めようとして自然に指先に力が入るため、「浮き指」や「屈み指(かがみ指)」という足指の変形が起こります。

こうして足指が変形すると、足のアーチ構造を支えている筋肉が落ちるため、症状がさらに進行していきます。

外反母趾を改善できる靴の選び方のポイント

靴との出合いが自分の健康を左右すると思って、ご自分の靴が足に合っているか、今一度チェックしてみてください。

 

外反母趾におすすめの靴:ひも靴(革靴・スニーカー)

外反母趾におすすめの靴

続いて、外反母趾におすすめの靴の種類と選び方のポイントを紹介します。靴が足に密着するほど、足が安定し、外反母趾の痛みを軽減できます。

外反母趾におすすめの靴の選び方!3つのポイント

  1. かかとが硬い
  2. 足をしっかり固定できる
  3. 横幅が狭い

靴の中で足が滑ることを防ぐためにも、外反母趾の人には、しっかり足を固定できる「ひも靴(紐靴)」がおすすめです。

ひも靴の選び方のポイント1:ヒールカウンターが硬い

靴のかかとに入っている芯(ヒールカウンター)には椅子の背もたれと同じ役割があります。背もたれのない車で運転したら体はすぐに疲れますよね。かかとが柔らかいと、足がぐらつき、靴の中で足が安定しないので、外反母趾の痛みを助長してしまいます。

革靴かスニーカーに関係なく、かかとのまわりが硬く、しっかりしていることが大切です。ヒールカウンターが硬めで、長いものを選びましょう。

ひも靴の選び方のポイント2:簡単にねじれない硬い靴底

ひも靴の選び方のポイント

歩くときは、体重の2〜3倍の負荷が靴にかかります。足の筋力が低下した外反母趾の人が柔らかい靴を履くと、足がすぐグニャッと曲がり、傾きやすくなります。靴が簡単にねじれないように、靴の背骨にあたる「シャンク」という芯が靴底に入っているものが良いでしょう。

ひも靴の選び方のポイント3:靴ひもを通す穴は5つ以上

ひも靴の選び方のポイント

靴ひもには靴と足を一体化させるテーピングの役割があります。ハトメ(ひもを通す穴)が多いほど靴の中で足が滑りにくくなり、指が曲がらない環境を作れます。

ひも靴の選び方のポイント4:靴ひもは平紐がおすすめ

ひも靴の選び方のポイント

靴ひもの形状や素材によっても、足の安定性や外反母趾の痛みが変わってきます。靴ひもの形には、大きく分けて「丸紐」と「平紐」があります。丸紐は足の甲を点で支え、平紐は面で支えるので、平紐の方がよりしっかり足を固定できます。

素材は化学繊維と純綿があります。純綿は化学繊維より伸縮性がない分、ずれにくく、耐久性があります。

ひも靴の選び方のポイント5:サイズは中敷に乗って選ぶ

ひも靴の選び方のポイント

靴のサイズは、メーカーによってまちまちです。同じメーカーでも、靴のシリーズによっても違います。

サイズ表記だけで決めるのではなく、靴の中から中敷を取り出して乗り、足指がはみ出さないようかチェックしてください。足指が中敷からはみ出していたら、靴が窮屈な証拠。親指から小指まで全部乗っていて、つま先に指一本分の余裕があることが大切です。

ひも靴の選び方のポイント6:横幅は4EよりDがおすすめ

ひも靴の選び方のポイント

横幅が広い靴を選びがちなのが、外反母趾の人の特徴です。足の筋力が低下したことで足の形が横に広がっている(開帳足)ため、それに合わせて幅広の靴を選んでしまうのだと思います。

しかし、あまり幅広の靴を選んでしまうと靴の中で足が横ブレを起こし、余計に外反母趾に負担をかけることになります。外反母趾の人の靴は、4E(幅広)よりD(幅細)がおすすめです。

ずっと自分の足で歩ける靴」を選んで、足の健康に気を付けましょう。

動画で解説!足を固定できる靴ひもの通し方・結び方

靴ひもをきちんと通して結ばないと、ひもが緩んでしまい、しっかり足を固定できません。足指が滑ると、屈み指など足指が変形する原因になるため、正しい靴ひもの通し方・結び方をマスターしましょう。

 

おしゃれで痛くない!外反母趾に優しいパンプスの選び方

外反母趾に優しいパンプスの選び方

一般的に女性用のパンプスは先が細く、ヒールがあるため、足に良くない靴だと考えられています。

ところが、私の患者さんの中には、パンプスを履いていても、外反母趾による足の痛みや足指の変形が改善するケースが少なくありません。

実は、パンプスでも外反母趾を改善できると私に教えてくれたのは、患者さんでした。

その患者さんは仕事柄、1日中パンプスを履かなければいけませんでしたが、足指のケアだけで外反母趾の症状が改善したのです。パンプスでも痛くない理由は「足に密着する靴選び」にありました。

ただし、ファッション性・デザイン性の高い女性用の靴選びは、ひも靴とは少し違う点もあります。以下のポイントをチェックしてください。

外反母趾に優しいパンプスの選び方

パンプス選びのポイント1:ヒールカウンターが硬い

かかとを支える芯(ヒールカウンター)が硬くて長いものを選びましょう。パンプスのヒールカウンターには、靴ひもと同じように足を固定する役割があります。できるだけ靴の中央付近まで硬いものであれば理想的です。

パンプス選びのポイント2:履き口が狭いもの

パンプスの履き口が狭ければ狭いほど、靴が足に密着するので足が安定し、外反母趾の痛みを緩和できます。

スニーカーや革靴と違って、足を固定するものがないパンプスは、ただでさえ前滑りしやすい形状です。さらに、外反母趾の人は開帳足なので、立って体重がかかると、足の横幅が本来のサイズより大きく広がる特性があります。

女性の足の横幅は、76~82mmというのが本来のサイズです。それ以上に横幅が広過ぎると、足に負担がかかるため、外反母趾の人がパンプスを選ぶときは、座って試着するのがおすすめです。

パンプス選びのポイント3:簡単にねじれない硬い靴底

ひも靴と同じく、シャンクと言われる鉄やプラスチック素材の芯が内蔵されているものを選びます。シャンクは土踏まずの支えにもなるので、できるだけ強固な素材のものがおすすめです。力を入れてねじっても、簡単にねじれないものを選ぶようにしましょう。

パンプス選びのポイント4:ヒールの高さは6cm以内

外反母趾で足に痛みがある人は、足の安定性を考えると、ヒールの高さは6cmまでがおすすめです。足指が矯正されて筋力がついていけば、8〜10cmのパンプスでも履くことができるようになります。

パンプス選びのポイント5:サイズはぴったりを選ぶ

かかとがパカパカするものは歩くときにパンプスがついてこないため、足指をぎゅっと曲げて靴が脱げないように歩く癖がついてしまいます。フィットしない靴は足が疲れやすく、外反母趾の痛みを助長してしまうことも。

正しいサイズを選ぶと、立った状態でパンプスを履いてかかとを上げたときに、パンプスが足についてくることがわかります。自分の足のサイズから+0.5mmまでの範囲で選びましょう。

次回は、湯浅さんが開発した足指ストレッチ・ひろのば体操の効果を写真レポートでお届け! 3週間で外反母趾の足の痛みを治す方法と歩き方のポイントも紹介します。

構成=竹下沙弥香(ハルメクWEB)

※この記事は2020年9月の記事を再編集して掲載しています。

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湯浅慶朗

ゆあさ・よしろう 理学療法士。足指研究所所長。ハルメク靴の共同開発者。一生歩き続けられる体をつくる「ひろのば体操」や「YOSHIRO SOCKS」を考案し、東京大学との共同研究や学会発表も実施。著書に『たった5分の足指つかみで腰も背中も一生まがらない!』(PHP研究所刊)など。

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