理学療法士が教える「足指つかみ」で姿勢改善・3

2週間で背筋が伸びる!「足指つかみ」のやり方は?

公開日:2022.02.22

更新日:2024.01.28

ひざや腰の痛み、年のせいだからと諦めていませんか? 「足指つかみ」で改善した例が続々と! 理学療法士の湯浅慶朗さんの著書『たった5分の「足指つかみ」で腰も背中も一生まがらない!(PHP研究所刊)』から具体的なやり方と効果をご紹介します。

著者プロフィール:湯浅慶朗

執筆者プロフィール:湯浅慶朗

ゆあさ・よしろう
足指研究所 所長
日本足趾筋機能療法学会 理事長

理学療法士。足指研究所所長。ハルメク靴の共同開発者。理学療法士として高齢者医療に携わるが、治らない現代医療のあり方に疑問をもち、病院を退職。妻のO脚改善をきっかけに足指の研究に入る。一生歩き続けられる体をつくる「ひろのば体操」や「YOSHIRO SOCKS」を考案し、東京大学との共同研究や学会発表も実施。NHK「ガッテン」などにも出演し、著書に『たった5分の足指つかみで腰も背中も一生まがらない!』(PHP研究所刊)など。

腰にも効く!? 足指つかみでどこがよくなる?

足指つかみでどこがよくなる?

前回までに、良い姿勢・悪い姿勢の基準や、体の歪みの原因は足にある人が少なくない、ということを説明してきました。

そして、その足指の問題を解消するために、おすすめするのが「足指つかみ」です。「足指つかみ」の原理は単純明快で、「足指を広げて伸ばそう」というものです。

1日5分間この体操に取り組み、それを毎日続けることで、足指が広がって伸び、自在に動かせるようになって、踏ん張りが利くようになります。

踏ん張れるようになると、地面をつかみ、蹴り上げる「あおり歩行」がうまくできるようになり、歩くことで足の筋肉を鍛えることができます。

その結果、足裏のアーチが戻るとともに、ずれていた重心も中心に戻り、安定するようになります。そして、良い姿勢「ニュートラルポジション」が自然にとれるようになると、姿勢が正されて、腰まがりや背まがりも少しずつよくなるのです。

このプロセスでおわかりのように、「足指つかみ」は、足指の機能回復、わかりやすく言うと、“リハビリ”のために行うものです。足指の変形がある人、足指がうまく動かせない人は、最初に“リハビリ”をしなければならないのです。

そして、“リハビリ”によって足指の機能が元に戻ったら、しっかり地面を踏みしめ、力強く地面をつかみ、蹴り上げられるように、足の筋肉を鍛える必要があります。順番は「1.足指の機能回復→2.足の筋肉強化」です。 

「足指つかみ」を効果的に行うための注意事項

「足指つかみ」を効果的に行うための注意事項

まずは「足指つかみ」を安全に正しく行うために、以下の注意事項を確認してください。

  • 毎日続けることが大事です。1日5分間でいいので、がんばって続けましょう。効果が実感できなくても、すぐに諦めずに続けてみてください。また、効果が出てもすぐにやめずに、続けることをおすすめします。
  • 「足指つかみ」は自分でやることが重要です。股関節が開かない、ひざが曲げられないという人も、最初は時間をかけながら、体操ができる姿勢をとれるようにしましょう。
  • 「足指つかみ」は基本的には自分でやるものですが、どうしてもできない場合は、誰かに手伝ってもらっても構いません。ただし、自分でやる場合と比べ、効果は半減します。
  • 「足指つかみ」は、足の筋肉をゆるめるのが目的なので、ゆっくり、やさしくやるのがコツです。力を入れると逆効果になりますから注意してください。
  • 「足指つかみ」には正しいやり方があります。正しい指の入れ方、曲げる方向など、説明通りに実践してください。間違ったやり方で進めると、筋肉や関節を痛める可能性があります。
  • 「足指つかみ」は床の上でも、イスに座ってでもできます。
  •  力を入れすぎたり、長時間やりすぎたりして、どこかに痛みや違和感が生じたときは、中止してください。正しいやり方で取り組めば、痛みは出ないはずです。もう一度、正しいやり方を確認して再開しましょう 。

さっそく「足指つかみ」をはじめましょう!

「足指つかみ」でこわばった足の筋肉をほぐしていきます。STEP1~STEP4は、足指を自由に動かせるようになるための基本ステップです。

STEP1:いすに座り、片方の足を太ももの上にのせる。

足指つかみのやり方 STEP1:いすに座り、片方の足を太ももの上にのせる。

いすに座り、片方の足を太ももの上にのせます。このとき、足首が太ももから少し出るくらいの位置にのせ、すねと床が平行になるように、ひざを倒します。

床に座って行う場合は、床に足を伸ばして座り、片方の足を太ももの上にのせます。

STEP2:足指の間に手の指を入れる。

足指つかみのやり方 STEP2:足指の間に手の指を入れる。

足指の間に手の指を入れていきます。体を前に傾し、ひじをひざの上において、手で足を固定しましょう。

上の図(OK)のように、手指の付け根に1本ずつ足指の先を挟んでいきます。足指のつけ根に隙間をつくり、手指のつけ根に足指の先を挟みます。足指の根元まで手を入れてしまうとまげられなくなるのでNGです。

<POINT>
手指を足指の間にはさみ広げることで、普段あまり使われていない、足指の間にある筋肉「虫様筋」や「骨間筋」が鍛えられます。

STEP3:足指を甲の方へ反らす。

足指つかみのやり方 STEP3:足指を甲の方へ反らす。

足指の間に入れた手を軽くにぎり、足指を甲の方へ反らします。手首をまっすぐに保ったまま脇を開き、足首は反らさず、すねと足の甲が一直線になるようにします。

にぎるときは、足指のつけ根より少し上に手の指がくるように、やさしくにぎります。反らすときは、手指の根元で足指を押すイメージで。足指の関節が90度になるようにゆっくりと押すようにして、5秒間キープします。

<POINT>
「長母趾屈筋」「長趾屈筋」などの足の裏にある筋肉を伸ばします。

STEP4:足指を足の裏側に反らす。

足指つかみのやり方 STEP4:足指を足の裏側に反らす。

次は足指を足の裏側に反らします。手首をまげずに脇を閉じるようにして、足指を反らします。足の甲を伸ばすようにやさしく、ゆっくりと。手のひら全体で足裏を押し、5秒間キープします。

<POINT>
「長母趾伸筋」「短母趾伸筋」「長趾伸筋」「短趾伸筋」などの筋肉を伸ばします。

※STEP3、4を15回繰り返し、反対側の足も同様にして行います。

2週間の「足指つかみ」で、背すじが伸びる!

広げて伸ばした足指を床にしっかりとつくことで、体の重心を正しい位置に置くことができます。「足指つかみ」で体のゆがみが改善し、背まがり、腰まがりが解消した事例を紹介します。

症例1:背筋が伸び、ひざ・腰の痛みが改善

足指つかみで改善した症例1:80代女性のビフォーアフター写真

骨盤が後傾し、猫背の状態だった80代の女性は、「足指つかみ」を2週間続けたことで背すじが伸び、ひざや腰の痛みが改善しました。

症例2:背筋が伸び、ひざ・腰の痛みが改善

足指つかみで改善した症例2:60代女性のビフォーアフター写真

60代の女性は、一見、姿勢が良いように見えて、実は骨盤が前傾した反り腰の状態でした。「足指つかみ」を始めて2週間後には、お腹もへっこみ、腰や肩、首の痛みが改善しました。

原因にアプローチする「足指つかみ(ひろのば体操)」

原因にアプローチする「足指つかみ(ひろのば体操)」

私は初めから今のような治療をしていたわけではありません。高校の時にドキュメンタリー番組で歩けない患者さんを再び歩かせる仕事ぶりを見て感動を覚えたのが、私が医学の道を目指した動機です。

ところが、いざ現場で働き始めると理想と現実のギャップに悩まされました。病気はどんどん進行していき、それを食い止める医学的手段が見つからない。もちろん改善する人もいますが、中には治らないばかりか悪化してしまう人もいます。

治療を教科書通りに行っても、歩けるようになる人が少ないのです。

「なぜよくならないのか」「どうしたらいいのか」答えが見つからない日々が続き、自信も意欲も絶え絶えになっていたころ、ふと妻の足を見たことが転機となりました。地面に着くはずの足の小指が浮いているのです。

私は浮いた小指が着くように、ストレッチやマッサージを続けました。そして1週間ほど経ち、それまでひどいO脚だったひざがくっついたのです。さらには小指が地面に着くことで脚の内側に力が入ることもわかりました。

「これを追及していけば、たくさんの人を救えるかもしれない」そんな想いで、足指の機能について勉強を始めました。

しかし、教科書にも載っていない未知の分野、文献もありません。それでも答えは患者さんの足にあると信じ、足を診て、触り続けました。やがて足指をまっすぐに伸ばすだけで体が安定する人が続出したのです。

それが「Hand-standing(ハンドスタンディング)理論」の発見に繋がり、「ひろのば体操」や「YOSHIRO SOCKS」の開発にも繋がりました。

いつでも、どこでも、誰にでも、簡単に

いつでも、どこでも、誰にでも、簡単に!

私のところには「歩けない」「正座ができない」といった切実な悩みを抱えた患者さんが多くいらっしゃいます。ひざや腰、股関節などの痛みを訴える患者さんです。

専門医から「手術するしかない」「もう治療法がない」と言われて来られる方もいらっしゃいます。そういった方に、足指の機能を改善する「ひろのば体操(※ここで紹介した足指つかみの応用編)」に取り組んでいただいています。

「もう歳だから」とおっしゃっていた80代、90代の患者さんでも毎日続けていただくことで、痛みが消え、歩けるまでに改善された方もいらっしゃいます。

年齢を理由にして諦めてはいけません。病院で「治療法がない」と言われても諦めてはいけません。

足指を広げれば、何歳になっても体は変えられます。諦めなければ、人間はどんな状態からでも回復する能力をもっています。それは、私自身が、多くの患者さんから教えてもらった事です。

「自分の体は自分で変えよう」という気持ちがある限り、必ず症状は良くなっていくと私は信じています。夢と希望と勇気をもって、足指を広げる「ひろのば体操」で人生を変えていただければ嬉しく思います。

※本記事は、湯浅慶朗さんの著書『たった5分の「足指つかみ」で腰も背中も一生まがらない!』(PHP研究所刊)より一部抜粋して構成、2022年2月の記事を再編集して掲載しています。

■もっと知りたい■


湯浅慶朗さんの著書をチェック!

たった5分の「足指つかみ」で腰も背中も一生まがらない!
1430円(税込)※一般書店でのお取り扱いはございません

この連載の引用元である『たった5分の「足指つかみ」で腰も背中も一生まがらない!』(PHP研究所刊)では、足指研究所・所長の湯浅慶朗さんが体の土台となる足の機能に注目し、足病医学に基づいて考案した「ひろのば体操(足指つかみ)」や、足指の健康を保つ生活習慣を紹介しています。あわせてチェックしてみてくださいね(Amazonにて電子書籍も販売)。

湯浅慶朗

ゆあさ・よしろう 理学療法士。足指研究所所長。ハルメク靴の共同開発者。一生歩き続けられる体をつくる「ひろのば体操」や「YOSHIRO SOCKS」を考案し、東京大学との共同研究や学会発表も実施。著書に『たった5分の足指つかみで腰も背中も一生まがらない!』(PHP研究所刊)など。

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