第一関節の腫れ・変形・痛みに注意

【医師解説】へバーデン結節とは?原因と痛みの治療法

公開日:2020/10/22

更新日:2020/12/07

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以前は「へバーデン結節の治療法はない」と言われていましたが、最近は痛みに効果的な治療法が確立されつつあります。慢性痛治療の専門医・奥野祐次さんに、へバーデン結節の原因と痛みを改善する最新治療について聞きました。セルフケアの方法も紹介します。

へバーデン結節とは?
へバーデン結節とは?

指の第1関節が変形する!? へバーデン結節とは?

へバーデン結節とは

へバーデン結節とは、手の指の第一関節(爪のすぐ下にある関節。DIP関節)に腫れ・変形・痛みなどの症状が出る病気です。

へバーデン結節の推定患者数は3000万人といわれており、年齢が高いほど罹患率は高くなります。

50代では28.6%、60代では35.3%、70代では50.5%、そして80代では59.1%と、高齢者の2人に1人はへバーデン結節を発症している(もしくは、過去に発症していた)計算になります。

「最近は特に、テレビや雑誌などでへバーデン結節について、見聞きする機会が増えました。クリニックにも、へバーデン結節の疑いで受診する患者さんが増えています。タレントのキャシー中島さんなど、有名人の告白により知名度が上がった影響もありますが、痛みの解消に有効な治療法が出てきたのも大きな要因だと感じます」

そう話すのは、オクノクリニック院長の奥野祐次さん。

「以前は痛みの症状で受診しても『加齢だから仕方ない』などと言われることが多かったのですが、最近はへバーデン結節を治療できるクリニックが増えたため、結果として世間での認知度が上がっていると考えられます」

 

要注意!へバーデン結節の症状チェックリスト

へバーデン結節

奥野さんによると、へバーデン結節を発症する指の本数や順番については、個人差があるそう。

「へバーデン結節になるのは、基本的に人差し指・中指・薬指・小指の4本で、親指がなるのは非常にまれです。1本だけで終わる人もいれば、数本の指が同時にへバーデン結節になる人もいます。第1関節の腫れとレントゲン所見によって診断します」

痛みの強さにも個人差があり、ほとんど痛みを感じない・痛みを感じるのは短期間という人がいる一方で、安静にしていても痛みを感じる・10年以上痛みが続く人もいるそう。

「へバーデン結節になった人に『どのくらいの期間痛みが続きましたか?』と質問したところ、『10年以上続いた』と答えた人が半数以上であったという調査結果もあります。いつ治るかわからない、というのがへバーデン結節のつらさです」

へバーデン結節になると、日常のちょっとした動作で痛みが出ます。次のような症状があれば、へバーデン結節かもしれません。

痛みがひどく日常生活に支障をきたしている場合は、ペインクリニックや手外科の専門医がいる整形外科を受診しましょう。

へバーデン結節チェックリスト

  • 指の第一関節に小さなこぶ(結節)ができている
  • 指の第一関節が腫れている
  • 指が曲がったまま、または第一関節が左右にずれたように変形している
  • 手の指を動かすと第一関節が痛む
  • 指先にしびれがある
  • 指先に水や紙、パソコンのキーボードなどに触れると激痛が走る
  • ペットボトルやびんのふたが痛くて開けられない
  • 指が痛くて手を握れない
  • 指がこわばって動かしにくい
  • 朝起きたとき、指に違和感がある

※3つ以上該当する項目があれば、すでにへバーデン結節を発症している、もしくは今後なる可能性が高い状態といえます。

 

へバーデン結節と関節リウマチの違いは?症状が似た病気

へバーデン結節と関節リウマチの違いは?

へバーデン結節とよく似た病気に、関節リウマチがあります。進行の仕方や症状が似ているため「リウマチ科を受診して検査したが結果は陰性。実はへバーデン結節だった」というケースも多いようです。

「関節リウマチは、関節の炎症と進行性の関節破壊が特徴で、朝起きると手がこわばる・指痛み・指が腫れるなどの症状があります。しかし、関節リウマチは自己免疫疾患の1つで、まったく別の病気です」

へバーデン結節と関節リウマチの違いは、腫れや痛み、変形が生じる部位にも現れるそう。

「関節リウマチは、手に症状が出る場合、第二関節・第三関節に症状が出ます。また、手首やひじ、足など、手の指以外の関節にも症状が出ます。へバーデン結節は、手の指の第一関節のみです」

指に痛みが出る病気:ブシャール結節・母指CM関節症・ばね指

「へバーデン結節以外にも、指に痛みの出る病気はあります。代表的なのが、第二関節に痛みの出る『ブシャール結節』と、親指のつけ根に痛みが出る『母指CM関節症』です。また、腱鞘炎の一種である『ばね指』も手指に痛みが出る疾患です」

このうち、ブシャール結節と母指CM関節症は、痛みが出る原因がへバーデン結節と同じ、指の変形性関節症(変形性指関節症)です。へバーデン結節よりも発症リスクは低いものの、ブシャール結節とへバーデン結節の両方を発症する人もいます。

その他、手の指の関節に痛みを起こす病気には、乾癬(かんせん)性関節炎や甲状腺疾患などがあります。それぞれ特徴があるため、専門の医療機関で検査することが望ましいです。

 

へバーデン結節の痛みの原因1:女性ホルモンの減少

女性ホルモンの減少

奥野さんによると、指の第一関節の変形の発生率は、男女で差がないそう。しかし、痛みの出方には大きな男女差があるそう。

「へバーデン結節で痛みを訴えるのは、圧倒的に女性が多いという特徴があります。ペインクリニックを訪れるへバーデン結節の患者さんは、10対1かそれ以上の割合で女性が多いのです」

同じ確率で男性も変形しているはずなのに、どうして女性ばかりが強い痛みを感じるのでしょうか。

その理由は、へバーデン結節の痛みのメカニズムにありました。

「へバーデン結節の直接の原因は、明らかになっていません。指の使い過ぎや加齢、食生活、体質の遺伝など、複数の要素が複雑に絡みあっていると考えられています。しかし、近年の研究で、女性ホルモンがへバーデン結節の痛みと深く関わっていることがわかってきました」

女性ホルモンには、「エストロゲン(卵胞ホルモン)」とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類がありますが、へバーデン結節に関係するのはエストロゲンの分泌量です。

「エストロゲンには、腱や関節を包む滑膜(かつまく)の炎症や腫れを抑える作用があります。更年期になり卵巣の機能が低下すると、エストロゲンの分泌量が減少します。すると、腱や滑膜の炎症、腫れが常態化し、手指にこわばりが生じます。これが、へバーデン結節の一因です」

また、エストロゲンは、痛みを軽減する働きもあるため、分泌量が減少すると、痛みを感じやすい状態になります。更年期障害による疲労や睡眠不足も、へバーデン結節の痛みを感じやすくなる原因です。

 

へバーデン結節の痛みの原因2:モヤモヤ血管

モヤモヤ血管
出典:オクノクリニック

「さらに、エストロゲンは、血管の内側の壁を修復する働きもしています。エストロゲンの分泌量が減少し、血管壁の修復作業がスムーズに行われないと、異常な血管が生まれやすくなります」

奥野さんは、この異常な血管のことを『モヤモヤ血管』と呼んでいるそう。そして、へバーデン結節の長引く痛みは、モヤモヤ血管が原因だと言います。

「正常な血管は規則正しく整然と並んでいますが、モヤモヤ血管はグシャグシャとした塊のような状態なので、栄養分や酸素を正常に運ぶ役割はありません。しかし、人体の構造上、血管が増えると、神経線維も一緒になって増えていきます」

モヤモヤ血管のまわりに増える神経線維は、脂肪細胞に包まれず裸のままなので、少しの刺激にも過敏に反応するそう。

「モヤモヤ血管に血液が流れることで、周りにある神経線維からの絶えず痛みの信号が送られている状態が、長引く痛みにつながっているのです」

▼参照:五十肩の原因にもなるモヤモヤ血管!奥野さん監修記事をチェック
五十肩とは?治療法と簡単ストレッチを医師が解説!

へバーデン結節の治療法は?5分でできる動注治療も登場

へバーデン結節の治療法は、保存療法として消炎鎮痛薬や局所のテーピングをするのが一般的で、急性期は少量の関節内ステロイド注射も有効です。

ただし、こうした対症療法はへバーデン結節の原因を根本的に解決するものではなく、一次的な効果しか期待できません。

痛みや変形がひどくなり、日常生活に支障をきたす場合は、手術療法も検討します。手術は、結節を切除する方法(関節形成術)や関節を固定する方法(関節固定術)があります。

手術により変形した指の形は大きく改善しますが、術後しばらく患部を固定する必要がある・傷口の痛みが続くなどの負担があり、関節固定術では関節が曲げられなくなるデメリットもあります。

そこで、奥野さんのクリニックでは、痛みの改善を目的とした、運動器カテーテル治療を応用した動注治療を実施しています。

動注治療は約5分で終わる上、採血時のような傷しかつかないので、ばんそうこうを貼って治療後すぐに帰宅できるのが大きなメリットです。

最新治療!動注治療の方法とメリット

へバーデン結節の最新治療:動注治療のビフォーアフター
出典:オクノクリニック

動注治療は、運動器カテーテル治療を応用して、より短時間で簡便に行えるようにしたもの。

運動器カテーテル治療とは、血管の中に柔らかいチューブ(カテーテル)を通して、痛みのある患部の血管に直接薬剤を注入できる治療法です。

運動器カテーテル治療でひざや股関節の変形性関節症の痛みが大きく改善したことから、奥野さんはへバーデン結節の治療に応用したいと考えたそう。

「モヤモヤ血管のような異常な血管は、正常な血管に比べると退縮しやすいという特徴があります。薬剤で一時的にモヤモヤ血管の血流を止めることで、モヤモヤ血管とまわりの神経線維が減少→へバーデン結節の痛みを軽減できる、という仕組みです」

しかし、手の痛みをカテーテルで治療するには、足の付け根など、手から離れたところから長いカテーテルを挿入して手まで到達させる必要があるため、時間がかかるのが欠点でした。

「へバーデン結節の動注治療では、点滴で用いる細いチューブを手首の動脈に挿入し、抗生物質でできた粒子を投与します。これにより、治療が約5分で済むようになり、患者さんの負担を大幅に軽減できました」

動注治療は1か月~1か月半の間を空けて2回行うのが基本、とのこと。ただしこれは、ほとんどの人が2回で痛みが改善することが多いから、という理由によるもの。手術と違って、動注治療は体への負担が少ないので、必要に応じて回数を増やすこともできるそうです。

 

へバーデン結節を予防・改善するセルフケア

へバーデン結節は進行性の病気なので、いったんモヤモヤ血管が減っても、指を酷使するなど、生活習慣によっては再発するリスクもあります。そのため、自分でできるセルフケアで、症状の悪化防止・再発防止に努めることが大切です。

ここでは、へバーデン結節を予防・改善するセルフケアの中で、特に奥野さんがおすすめする3つの方法をご紹介します。

へバーデン結節のセルフケア1:テーピング

へバーデン結節のテーピング

モヤモヤ血管への血流をゆるめると、神経線維への刺激が抑えられるため、痛みを緩和できます。

奥野さんによると、痛みのある第一関節から少し手前(第二関節側)の範囲を覆うように、グルッと1周テープ(ばんそうこう、セロハンテープ、マスキングテープなど)を巻くだけでも効果があるそう。

「たったこれだけですが、夜巻くと次の日の日中の痛みが軽くなると多くの患者さんが言います。指先の色が変わるほど強く巻く必要はありません。第一関節が動きにくいように固定するだけで、十分痛みの改善に効果があります。まずは夜の間だけ、2週間ほど巻いてみましょう。テープによる肌のかぶれなどがなければ、日中も巻いていて問題ありません」

へバーデン結節のセルフケア2:魚中心の食事に変える

「東京医科歯科大学の研究で、高カロリー食がモヤモヤ血管を増やすことが明らかになっています」と奥野さん。痛みの症状がある人は、まずは3週間、炭水化物や脂質が多いメニューを控え、摂取カロリーを制限してみましょう。

また、脂質を取るときは「オメガ3系」を意識することが大切、とのこと。

「脂質はさまざまな脂肪酸がブレンドされてできており、どの脂肪酸が多いかによって4つのグループに分かれます。その中で、オメガ3系には炎症を抑える働きがあることがわかっています。オメガ3系は、魚の油やアマニ油、エゴマ油などに多く含まれます。イワシ・サバなど魚中心の食事を心掛ければ、オメガ3系を摂取しながらカロリーを抑えられますよ」

へバーデン結節のセルフケア3:エクオールを取る

「へバーデン結節に悩む女性に、ぜひ取ってほしいのが、エクオールです」と奥野さん。

エクオールとは、大豆イソフラボンから作られる成分のこと。大豆イソフラボンは、大豆のほか、豆腐やおから、油あげ、納豆、豆乳などにも含まれています。

「大豆イソフラボンを摂取すると、その成分の一つが腸内細菌によってエクオールに変換されます。エクオールは、体内で女性ホルモン・エストロゲンと似た働きをすることから、へバーデン結節の改善・予防効果が期待できます。ただし、体内でエクオールを作れる人の割合は、日本人の約50%といわれています。市販のエクオール配合のサプリメントもおすすめです」

その他、有酸素運動やストレッチで適度に体を動かすこと、ストレス解消を意識することも、へバーデン結節の痛みの改善につながるそう。

「へバーデン結節のように長引く痛みの場合は、痛いからといってまったく動かさないのは逆効果です。痛みが出ない範囲で運動するよう心掛けましょう。また、不安が痛みを増大させるケースもあります。好きなことをしているときは、脳内麻薬が出ることが知られています。趣味に没頭したり、友達と食事したり、快感を感じるひとときも大切にしたいですね」

へバーデン結節は、「治らない病気」から「治療が可能な病気」へと変わってきています。長年へバーデン結節の痛みに悩んできたという人も、ここで紹介した治療法・セルフケアを参考に、痛みの解消に向けて一歩踏み出してみませんか?
 

■教えてくれた人

奥野祐次さん

奥野祐次さん

おくの・ゆうじ 医療法人社団 祐優会 総院長。オクノクリニック 院長。1981(昭和56)年生まれ、慶應義塾大学医学部卒業。2008年より放射線科医としてカテーテル治療に従事。江戸川病院運動器カテーテルセンター・センター長を経て、17年オクノクリニック横浜センター南を開院。20年7月に5院目となる東京 表参道院を開院。2018・2019年「医師に信頼されている医師」米国ベストドクターズ社のBest Doctors in Japanに選出される。

取材・文:竹下沙弥香(ハルメクWEB)

■もっと知りたい■


雑誌「ハルメク」1月号の健康特集は手指の痛み・変形!

雑誌「ハルメク」2021年1月号:健康特集

雑誌「ハルメク」2021年1月号は「髪・首・手の潤い自宅ケア」特集号。

健康特集では、ヘバーデン結節外来を開設している富永喜代さんによる「自分でできる最新の改善法」をご紹介しています。あわせてチェックしてみてくださいね!

雑誌「ハルメク」2021年1月号


取材協力:慢性痛治療の専門医による痛みと身体のQ&A(オクノクリニック)

参考書籍:へバーデン結節の痛みはモヤモヤ血管が原因だった(ワニブックス・刊)

へバーデン結節の痛みはモヤモヤ血管が原因だった(ワニブックス・刊)

    

ハルメクWEB編集部

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