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- 隠れた国民病!手指のしびれ・痛みとは?
手がこわばる、ペットボトルが開けにくいなど、手指のトラブルを抱えていませんか? 更年期を境に女性ホルモンのエストロゲンが急減し、しびれや痛み、変形などに悩む女性が多くなります。健康状態のチェック方法や原因などについて解説します。
教えてくれたのは…… 富永喜代(とみなが・きよ)さん
富永ペインクリニック院長。医学博士。日本麻酔科学会認定指導医。93年より聖隷浜松病院などで麻酔科医として勤務。2万人の臨床麻酔実績をもつ。2008年、愛媛県松山市に富永ペインクリニックを開業、手指の痛みに特化したヘバーデン結節外来を開設。オンライン診療を利用し全国から患者が殺到。『女性のつらい指先の変形・痛みは自分で防ぐ!改善する!』(PHP研究所刊)など著書累計80万部。
40代以降に増える手指のトラブル…9割は女性!
「手指のしびれや痛み、変形を訴える人は40代以降に増え始め、約9割は女性です」
こう解説するのは、富永ペインクリニック院長で、手指の症状に特化した「ヘバーデン結節外来」を開設している富永喜代さんです。富永さんの外来には「手指が痛くて包丁を握れない」「関節の変形が気になって、人前で常に手を隠している」など切実な悩みを持つ女性たちが訪れます。
あなたの手指の健康状態をチェック!
まずはあなたの手指の健康状態をチェックしてみましょう。以下の8個の項目について、心当たりはありませんか?
□包丁で硬い野菜が切りにくくなった
□ペットボトルのふたが開けられない
□フライパンを振ると手指が痛い
□朝、手がこわばって動かしにくい
□お皿やコップをよく落とす
□洋服のボタンがとめにくい
□つまみや取っ手をひねるのがつらい
□手指の関節が赤く腫れている
一つでも当てはまると、手指の病気が始まっている可能性があります。
手指のトラブルが生じる要因
女性ホルモンの急減
閉経を境に女性ホルモンのエストロゲンが急減すると、手指の関節や腱の老化が進むと同時に、血管が硬くなり血流が悪化。手指のしびれや痛み、変形の要因になります。
関節や骨、筋肉の衰え
加齢とともに「骨量の減少」「関節の摩耗」「筋肉の衰え」が進むと、手指の痛みや変形が生じやすくなります。
糖尿病などによる血流悪化
高血糖や高血圧は血流を悪化させ、神経障害の一つとして、指先のしびれや痛み、感覚が鈍るといった症状を生じさせます。
首の不調
手指の神経の起点は首にあります。慢性的に首がこっていると、頸椎部分で神経が圧迫されて血流が悪化し、手指の症状につながります。
手指の使い過ぎ
調理や針仕事などで手指を使い過ぎることや、同じような動作を長年繰り返すことが、痛みや変形の一因になることも。
遺伝的な素因
母親や祖母に手指の痛みや変形が生じていた場合、体質が遺伝する可能性があります。
「50代以下の女性では、手指のつらい症状には、女性ホルモンが関係していると考えられます」と富永さん。
血液中に分泌された女性ホルモンのエストロゲンは、全身にある受容体から筋肉、骨、脳といった各組織・臓器に取り込まれ、それぞれ重要な働きをします。
「手指においても、関節や腱のしなやかさを保つ、炎症を抑えるといった働きをするため、50歳前後の閉経を境にエストロゲンの分泌量が急減すると、関節や腱の老化が進み、炎症も起きやすくなり、更年期世代の女性は痛みなどの症状が引き起こされるのです」(富永さん)
50代からの女性に多い手指の病気
ヘバーデン結節
手指の第1関節にコブ(結節)ができ、腫れたり曲がったりする症状。水ぶくれができることも。指先を動かすと痛みやしびれを感じ、症状が進むと安静時にも痛むように。
ブシャール結節
ヘバーデン結節と同じ症状が手指の第2関節に起こります。
ばね指
手指の使い過ぎで腱や腱鞘に炎症が起こり、指が動かしにくくなります。無理に指を動かすとガクンと跳ねるような「ばね現象」が起こることからこの名称に。
母指CM関節症
物を握ったり、親指をひねったりすると、親指の付け根の関節に痛みが生じます。親指の付け根のあたりが膨らんできて、親指の動く範囲が狭くなることも。
手根管症候群
手根管(手の内側にあるトンネル状の空間)の内圧が上がり、神経が圧迫されることで手指に痛みとしびれが生じます。
これらの症状に心当たりのある人は一度、医療機関で診てもらいましょう。
自分を責めずに今からできる対処を
調理の仕事や手芸などの趣味による指の使い過ぎや遺伝的な体質も、手指の痛みや変形の要因になります。
「とはいえ、指をよく使う人や、母親や祖母の指が変形していた人のすべてが手指の症状に悩まされるわけではありません。同様に、更年期でエストロゲンが急減しても、手指の症状が出る人と出ない人がいます。
つまり痛みや変形が起こるのは誰のせいでもありません。手指を使い過ぎたから……などと自分を責めたりせず、今できる対処をしていきましょう、と私はいつもお話ししています」(富永さん)
手指の痛みや変形を放置していると、ヘバーデン結節などを発症します。「こうした症状で病院に行くと、たいてい『安静にして指を使わないように』と言われますが、それでは生活できませんし、積極的な症状改善にもなりません」と富永さん。
そこで次回は、手指の痛みや変形を自分で改善できるマッサージ法を紹介します。
取材・文=五十嵐香奈(ハルメク編集部) イラストレーション=ツキシロクミ
※この記事は雑誌「ハルメク」2021年1月号を再編集し、掲載しています。
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