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専門家監修│自分に合った漢方で不定愁訴を改善!
更年期のつらい症状を漢方薬で緩和!特徴と種類を解説
横倉クリニック
横倉恒雄
公開日:2022.07.06
更新日:2023.11.23
つらい更年期障害(血の道症)、どう乗り越えていますか? ホルモン補充療法(HRT)以外にも、不定愁訴の改善に効果が期待できる「漢方薬」。専門家監修のもと、更年期障害に効く漢方薬などについて詳しく解説します。あなたにぴったりの漢方はどれ?
監修者プロフィール:横倉恒雄さん(横倉クリニック)
よこくら・つねお 医学博士。医師。横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長。東京都済生会中央病院に日本初の「健康外来」を開設。故・日野原重明先生に師事。婦人科、心療内科、内科などが専門。病名がないものの不調を訴える患者さんにも常に寄り添った診療を心がけている。著書『病気が治る脳の健康法』『脳疲労に克つ』他。日本産婦人科学会認定医 /日本医師会健康スポーツ医/日本女性医学学会 /更年期と加齢のヘルスケア学会ほか。
「更年期障害」の治療によく用いられる漢方
女性の体は、女性ホルモンの影響によって、ライフステージごとに大きく変化します。
日本人女性の閉経年齢は50歳前後といわれており、40代半ば~50代半ばの10年間を一般的に「更年期」と呼びます。更年期になると、閉経に向けて卵巣機能が衰えていき、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が激減します。
更年期は、このようなホルモンの大きな変動に体がついていけず、さまざまな症状が起こりやすくなることが特徴です。
更年期症状や更年期障害(漢方では「血の道症」と呼ばれている)のホットフラッシュ(ほてり、のぼせ)の他、冷えや寒気、動悸や息切れ、めまい、発汗、イライラ、不安、抑うつなどは「不定愁訴」といわれます。更年期には不定愁訴がいくつも現れるのが特徴です。
近年では、ストレスの影響によってホルモンバランスが崩れたことで30代や40代でも不調が現れる、プレ更年期障害も増えているようです。
漢方薬は、これらの不定愁訴の改善を得意としています。
更年期障害の治療法としてはホルモン補充療法(HRT)が有効ですが、乳がんや子宮がんの人や、血栓症の治療薬を飲んでいる人はホルモン補充療法を受けられません。このような場合に、漢方薬が使われます。
漢方薬による更年期障害治療の特徴
ここからは、漢方薬による更年期障害治療の特徴をご紹介します。
複数の症状に効果が現れる
西洋医学では、「痛みがある場合は、鎮痛剤を処方する」など対症療法が基本です。一方、漢方医学は西洋医学とは異なり、心と体全体の状態を改善することが特徴です。
血液の巡りや水分の循環をよくし、毒素や老廃物を排出することで自律神経や免疫力の改善を行うことで治療していきます。
漢方薬を使った治療で崩れたバランスを元に戻すことで、全身のバランスを整えます。これにより、一つの症状だけではなく複数の症状が同時に改善されます。
また、体質改善で肌ツヤがよくなったり、太りにくくなったりするなどのメリットもあります。
一人ひとりの体質・体格などを考慮して処方される
漢方薬は、一人ひとりの体質・体格などを考えた上で処方されることも特徴です。そのため、ぴったり合えばよく効きます。
しかし、処方された漢方薬が自分に合っていなかった場合は、なかなか症状が改善されない可能性もあります。このような場合には、他の漢方薬に切り替え、様子を見てみる必要があるでしょう。
漢方薬でも副作用が起こることがあるため、漢方薬を飲む場合は漢方に詳しい専門家に相談しましょう。
漢方医学で重要な「気・血・水」のバランス
漢方医学では「気・血・水(き・けつ・すい)」という考え方があります。
これらは人間の体を構成する基本的な要素であり、3つが互いに影響しながらバランスよく体の中を循環している状態が「健康」な状態です。
しかし、この気・血・水のバランスが崩れてしまうことがあります。ストレス、心労、不摂生、病気などによってバランスが崩れると、心や体に不調が現れたり、病気になったりと症状が現れます。
ここでは、気・血・水についてそれぞれご紹介します。
気(生命力・元気など)
気(き)は、生命力や元気など生命活動のエネルギーのことで、目には見えませんが、3つの要素の中でも最も重要とされる要素です。
気の減少は、消化吸収能力の低下につながり、全身に栄養が巡らなくなってしまいます。
気は通常、頭から手足の方に流れていますが、これが逆流するとイライラやのぼせ、めまい、頭痛などが起こります。
血(血液や血流)
血(けつ)は、血液やその流れのことです。血流が滞ったり、機能や量が不足したりすると倦怠感、肩こり、冷え性、疲労感などが起こります。
水(涙、リンパ液など血液以外の水分)
水(すい)は、涙やリンパ液など、血液以外の水分のことです。本来であれば必要な量が存在しているはずの水が、ある部分に偏ると、むくみやめまいなどの症状につながります。
漢方では体質の違いが更年期障害に影響すると考える
更年期になると、女性であれば誰もに女性ホルモンの減少が起こります。しかし、すべての女性がつらい更年期障害・更年期症状を感じているとは限りません。
更年期障害の症状が重くつらい日々を過ごす人もいれば、不調は感じるものの日常生活に支障はない人、あまり不調を感じない人など、個人差が大きいことも更年期に現れる症状の特徴の一つです。
漢方では、この違いは「体質」が影響していると考えています。気・血・水の状態は一人ひとり異なります。これが体質の違いです。
気・血・水のそれぞれが不足している状態を「気虚(ききょ)」「血虚(けっきょ)」「陰虚(いんきょ)」といい、気・血・水の流れが悪くなっている状態を「気滞(きたい)」「瘀血(おけつ)」「水滞(すいたい)」といいます。
体質タイプ別の更年期障害の主な症状
ここからは、体質タイプ別の特徴と、更年期障害の主な症状をご紹介します。
気虚タイプ・気滞タイプ
「気虚タイプ」は、気が不足している状態です。エネルギー不足によって倦怠感、疲れ、食欲不振、寒気などを感じることがあります。体力がなく、免疫力低下によって風邪をひきやすい状態です。
「気滞タイプ」は、気の巡りが滞っている状態です。自律神経のコントロールがうまくできず、イライラ、不安、憂鬱などが起こります。
【気(気虚・気滞)にかかわる症状】
ホットフラッシュ(ほてり、のぼせ)、発汗、顔が赤くなる、イライラ、精神不安、憂うつ、頻尿、頭痛、食欲不振 など
血虚タイプ・瘀血タイプ
「血虚タイプ」は血液が不足している状態で、貧血気味、めまい、しびれ、痙攣などが見られます。肌のかさつき、白髪、抜け毛が気になることもあるようです。
「瘀血タイプ」は、血の巡りが悪く、体に栄養素が行き渡らない状態です。血流が滞った場所に肩こり、頭痛、関節痛が起こることがあります。また、シミや肌荒れ、クマなどの肌トラブルが現れることもあります。
【血(血虚・瘀血)にかかわる症状】
手足の冷えや寒気、手足のしびれ、手足の脱力感、動悸・息切れ、焦燥感、不安感、不眠、頭痛、頭重、月経の乱れ、貧血、高血圧 など
水滞タイプ・陰虚タイプ
「水滞タイプ」は、水分が体内に停滞し、水分の代謝が悪い状態です。余分な水分が体の中にたまっていることで、むくみや冷え、汗をかきやすい、頭や体が重たい、だるいなどの症状があります。
「陰虚タイプ」は、体内にうるおいがない水分不足の状態です。のぼせやほてり、口の渇きがあり、便秘や乾燥肌、からぜきが見られることもあります。
【水(陰虚・水滞)にかかわる症状】
吐き気(悪心)、嘔吐、めまい、耳鳴り など
更年期障害・更年期症状に効果のある漢方薬の種類
更年期障害の治療に漢方薬を用いる場合、健康保険が適用されます。
ドラッグストアで販売されている更年期障害のための漢方薬としては「命の母A(第2類医薬品)」がよく知られています。
命の母Aには、女性に使う漢方の三大処方といわれる加味逍遙散(かみしょうようさん)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)に処方されている女性に必要な生薬がバランスよく配合されており、体質や体格を選ばずに使えることが特徴です。また、不足しがちなビタミン類も配合されています。
ここからは、更年期障害・更年期症状に効果のある漢方薬をご紹介します。
加味逍遙散(かみしょうようさん)
加味逍遙散(かみしょうようさん)は、体力が中程度以下で、ホットフラッシュ(ほてり、のぼせ)、肩こり、疲れやすい、肩こりがある、不安やイライラがある、不眠症などの症状がある場合に用いられる漢方薬です。
PMS(月経前症候群)や更年期障害による女性の不定愁訴改善に用いられる代表的な漢方薬としても知られており、更年期で見られるさまざまな身体的な不調、精神的な不調への効果が期待できます。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)は、体力のない人や痩せ型の人に向いた漢方薬です。体を温める、痛みを和らげる、ホルモンバランスを整えるなどの効果があり、一般的に女性に用いられます。
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)は、比較的体力があり、ホットフラッシュ(ほてり、のぼせ)、めまい、頭痛、肩こり、足冷えなどがある人の更年期障害に対して用いられる漢方薬です。
桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
桃核承気湯(とうかくじょうきとう)は、更年期によるイライラ、興奮、のぼせ、月経トラブルなどに効果があります。また、便通をよくする働きもあり、便秘解消にも使われます。
女神散(にょしんさん)
女神散(にょしんさん)は、体力が中程度かそれ以上の場合で、ホットフラッシュ(ほてり、のぼせ)やめまいがある人の更年期障害の神経症に使われている漢方薬です。
また、月経不順や、産前産後の神経症治療に使われることもあります。
柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)
柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)は、貧血や口の乾き、動悸・息切れがあり、神経が過敏な人の中でも、体力のない人の更年期障害、神経症の治療に用いられる漢方薬です。
風邪の微熱や寝汗などにも効果があります。
温経湯(うんけいとう)
温経湯(うんけいとう)は、体力が中程度以下で、手足のほてりや唇が乾くなどの症状や不眠、生理不順、頭痛、腰痛がある場合に用いられます。
水分の流れをよくし、体を温めてくれる効果があるため、冷え性や虚弱体質の人への効果が期待でき、一般的に女性向けの漢方薬です。
温清飲(うんせいいん)
温清飲(うんせいいん)は、体力が中程度で、ホットフラッシュ(ほてり、のぼせ)があり、皮膚の色ツヤが悪く、かさつきを感じる人の更年期障害や神経症に用いられる漢方薬です。
加味帰脾湯(かみきひとう)
加味帰脾湯(かみきひとう)は、心身ともに疲れている場合に処方される漢方薬です。
胃腸が弱い人におすすめで、不安感、神経症、ほてり、イライラに効果があります。また、寝付きが悪い、すぐに目が覚めてしまう、眠りが浅いなどの不眠症にも効果があります。
桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)
桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)は、抗炎症作用、鎮痛作用、血流促進作用があり、関節痛や神経痛など、関節が痛む場合や手のこわばりがある場合に使われます。
五積散(ごしゃくさん)
五積散(ごしゃくさん)は、疲れやすい人や貧血気味の人で、冷えのぼせを伴う更年期障害、生理痛などに使われる漢方薬です。胃腸炎や腰痛、関節痛にも効果があります。
更年期のつらい症状には漢方薬を!
更年期には、女性ホルモンのバランスが崩れることで自律神経が乱れ、気分の落ち込み、吐き気、のぼせ、イライラ、疲れやすい、不眠、めまいなどの症状が起こりやすくなります。
また、更年期でエストロゲンが急激に少なくなると、関節が腫れて、手がこわばる、体中が痛いなどの症状が見られることも。
漢方薬は、更年期障害のつらい不定愁訴の改善効果が期待できます。ホルモン補充療法が難しい人や抵抗がある人は、漢方薬がおすすめです。
ただし、漢方薬について、お近くの医療機関で出してもらえない場合や、処方してもらう前に市販で試してみたいけれど、どれを選んでよいか分からないという方には、スマホで症状や体質を無料相談したうえで、漢方薬を選択してくれる「あんしん漢方」などのサービスもあります。利用してはいかがでしょうか。
※この記事は2022年7月の記事を再編集して掲載しています。
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