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- 乳がんはどんな病気?高リスクな人の危険度チェックも
女性のがんで最も多いのが「乳がん」です。罹患率は高くても死亡率は低めの病気だからこそ、早期発見をしてしっかり治療に取り組みましょう。乳がんのセルフチェックの方法や乳がんを予防する生活習慣や食事、最新の治療法まで3回に分けて解説します。
取材・監修者:木下貴之さんのプロフィール
国立病院機構東京医療センター副院長 木下貴之(きのした・たかゆき)さん
1988年、慶應義塾大学医学部卒業。米国テネシー大学留学、国立がん研究センター中央病院乳腺外科科長などを経て、2019年より現職。日本乳癌学会専門医・指導医、マンモグラフィ精度管理中央委員会読影認定医(A)、乳房再建エキスパンダー責任医師。早期乳がんに対するラジオ波熱焼灼療法の臨床試験の研究代表者。著書は『国立がん研究センターの乳がんの本』(小学館刊)など。
乳がんはどんな病気?なぜ増えているの?
女性にとって一番身近ながん。それが乳がんです。罹患者数は年々増え続け、日本人女性の11人に1人が発症。最も多い年代は60代で、次が40代。70代以降での発症も少なくありません。2019年、上皇后美智子さまが84歳で乳がんの手術を受けられたことも記憶に新しいところです。
なぜこんなに乳がんが増えているのでしょうか。国立病院機構東京医療センター副院長で乳腺外科が専門の木下貴之(きのした・たかゆき)さんは、こう説明します。
「乳がんの7~8割は、女性ホルモンのエストロゲンが大きく影響しています。初産年齢が高い、授乳経験が少ない、閉経が遅いなど、月経回数が多くエストロゲンにさらされる期間が長いほど、乳がんになるリスクが上がるのです。もともと日本人は人種的に40代などの比較的若年層での発症が多いのですが、晩婚や少子化といったライフスタイルの欧米化に伴って、閉経後の乳がんが増えているのが最近の特徴です」
乳がんの発症リスクをセルフチェック
乳がんには遺伝的な要因も関係しますから、乳がんになった血縁者がいる人も気を付けたいもの。また太っている人も注意が必要です。閉経後は卵巣からのエストロゲンの分泌は止まりますが、脂肪からエストロゲンが作られます。このため肥満だとエストロゲンが過剰になりやすいのです。
乳がんの危険度チェック
さて、あなたは大丈夫? 乳がんになる危険性がどのくらいあるか、まずはチェックしてみましょう。当てはまる項目が多い人ほど高リスクです。
- 初経が早い
- 閉経が遅い
- 初産年齢が高い、または出産経験がない
- 授乳経験がない、授乳期間が短い
- 肥満
- 過度な飲酒の習慣がある
- 身長が高い
- 乳がんにかかった家族がいる
乳がんの発症には女性ホルモンや食生活、遺伝などが関係します。乳腺症など良性の乳腺疾患にかかったことがある人も注意が必要です。
乳がんは早期発見が大事。罹患率は高いが死亡率は比較的低い
乳がんは罹患率こそ1位ですが、死亡率は5位。大腸がんや肺がんなどに比べると進行がゆっくりで、予後のよいがんです。
「乳がん検診などで早期に見つかる人が増え、現在、約半数は早期がんの段階で見つかっています。治療法も進歩し、乳がんは今や“治って当たり前のがん”ともいえます。早く見つけて適切な治療を受ければ、命に関わることはまずありません」と木下さん。
実際、乳がん治療後の生存率はかなり高いことがわかっています。しこりの大きさが2cm以下でリンパ節転移のないステージⅠ期なら、5年生存率は100%、10年生存率は96.1%。しこりが2cm以上でリンパ節転移のあるⅡ期でも、5年生存率は96%、10年生存率は86.3%と報告されています。
ただし、遠隔転移を起こしたⅣ期ともなると、10年生存率は15.9%に。発見や治療が遅れると、当然のことながら生存率もグンと低下してしまいます。
「早く手を打てば治せるがんだからこそ、治療が遅れるのは医師としても残念でなりません。早期発見の患者さんが増える一方で、『なんでこんなに進むまで』と絶句するようなケースもいまだにあります。しこりに気付きながら、親の介護で受診が遅れてしまったという患者さんもいました」(木下さん)
とにかく重要なのは、早期発見と早期治療! 次回は乳がん検診やセルフチェックについて紹介します。
取材・文=佐田節子 構成=五十嵐香奈(編集部) イラストレーション=田上千晶
※この記事は、2020年4月号「ハルメク」を再編集しています。
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