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8時間寝なきゃダメ?50代女性はどのくらい寝てる?
ベストな睡眠時間とは?日本人の平均&良い睡眠の条件
RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック 院長
白濱龍太郎
公開日:2022.07.04
更新日:2024.03.22
50代女性の平均睡眠時間は、他のどの世代の男女より短いことを知っていますか? 更年期などの影響により、眠りに変化が起きるタイミング。どうしたら良質な睡眠をとれるのでしょうか? 大切な3つの条件などについて、専門家監修のもと詳しく解説します。
日本人は睡眠満足度が最下位!
日本人は、世界的に見ても睡眠の満足度が低いことで知られています。
ヘルスケア製品や医療関連機器などの電気機器関連機器メーカーである『フィリップス』が世界13か国、1万3000人を対象に行った大規模な「世界睡眠調査(2020年)」によれば、睡眠に満足している人は49%という結果に。
さらに、日本は13か国の中でも睡眠満足度が最も低く、32%で最下位。反対に睡眠満足度が高かったのは、インド(76%)やブラジル(60%)です。
また、経済協力開発機構(OECD)の調査によると、日本の睡眠時間は加盟33か国の中でも最下位の、7時間22分。33か国の平均は8時間27分なので、平均値よりも1時間以上も睡眠時間が短いことがわかっています。
50代女性は睡眠の悩みを抱えることも
20代や30代、40代など働き盛りの場合、睡眠の問題といえば「睡眠不足」があります。しかし、50代になると無理をすることも減ってくるため、今度は「不眠」に悩む人が増える傾向にあるようです。
不眠には主に、以下の4つの症状があります。
- 寝つきが悪い
- 眠りが浅く、すっきり目覚められない
- 夜中に目が覚めてしまう
- 早朝に目が覚めてしまう
NHK文化放送研究所世論調査部の2020年の調査によると、50代女性の平均睡眠時間は6時間36分で、他のどの世代の男女よりも睡眠時間が短いことがわかっています。
これには、更年期の影響による不眠が考えられるでしょう。
更年期になると、女性ホルモンの分泌量が急激に変動するため、自律神経が乱れ、交感神経(昼間、活動中に活発になる)と副交感神経(夜間、リラックスしているときに優位になる)のバランスが悪くなり、不眠や眠りの質が落ちるなど、睡眠に関する悩みが生じやすくなります。
睡眠の大切さって?睡眠の3つの役割
睡眠には、人間が健康的に生きていくために欠かせない大切な3つの役割があります。
- 疲労回復
- 記憶の整理・定着
- 修復や成長
ここからは、それぞれの役割について見ていきましょう。
疲労回復
寝ているときは、「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」が約90分周期のサイクルで繰り返されています。ノンレム睡眠とは「脳が完全に休んでいるが、体は寝ている状態」のことです。
脳は、このノンレム睡眠のときに疲労回復を行っており、脳内に溜まった老廃物をクリーニングすることで、脳にしっかり栄養が届くようにしています。
ノンレム睡眠のとき以外の時間は、脳は常に働いている状態。働き通しの脳を休ませるためにも、ノンレム睡眠を取ることが重要です。
記憶の整理・定着
レム睡眠のときには、記憶の整理が行われます。レム睡眠とは「脳は起きているが、体は眠っている状態」のこと。ちなみに、夢を見るのはこのレム睡眠のときに起こります。
人間は、1日に膨大な情報を受け取りますが、これを整理するのがレム睡眠です。すべての情報のうち、記憶しておかなければならない重要な記憶と、そうではないものを仕分けして、記憶の整理や定着を行います。
修復や成長
睡眠時には、成長ホルモンが分泌されています。成長ホルモンは骨や筋肉を発達させる他、傷の修復を促す効果もあります。
肌のハリやツヤ、内臓の回復にも影響するため、大人にとっても成長ホルモンは重要なものです。
ベストな睡眠時間は何時間?
気になるのが「人間の最適な睡眠時間は何時間?」ということですが、睡眠時間の絶対的な基準はありません。なぜかというと、睡眠は一人ひとりの体質、年齢、性別などに影響されるためです。
厚生労働省の研究班がまとめた「睡眠障害対処 12の指針」によれば「睡眠時間は人それぞれ、日中の眠気で困らなければ十分」としており、時間にこだわるよりも、自分に合った睡眠時間を取ることが大切とされています。
6〜8時間が目安だが、個人差がある
ベストとされる睡眠時間の目安としては、さまざまな研究結果から「6〜8時間前後」がいいとされています。
ただし、1日の睡眠時間が短い「ショートスリーパー」の人もいれば、長時間眠らないと頭がすっきりしない「ロングスリーパー」の人も存在します。
「最低でも◯時間は眠らないと」など、睡眠時間を気にし過ぎるとそれがプレッシャーになり、睡眠の質が低下したり、眠れなくなってしまったりする可能性も。
自然に眠れて、日中も眠気で困ることがないほどの時間が自分に合ったベストな睡眠時間といえるでしょう。
睡眠時間は長過ぎても短過ぎてもよくない
睡眠不足はさまざまな疾患の発症に影響することがわかっていますが、かといって長時間眠ればいいというわけではありません。
過去、アメリカでは睡眠に関する大規模な調査が行われました。110万人を超える男女を約6年間追跡して調査したところ、睡眠時間が7時間の人が最も死亡率が低く、長生きしたという結果が出ています。
しかし、7時間を越え、睡眠時間が8時間、9時間、10時間と長くなるにつれて死亡リスクは上昇。睡眠時間は長過ぎても短過ぎてもよくないため、自分に合った睡眠時間を取ることが大切です。
加齢に伴い睡眠時間は少なくなる
年を重ねると「前よりも睡眠時間が少なくなった」と悩む人も少なくありませんが、年齢とともに睡眠時間が短くなることは、誰にでも起こる自然な変化です。
全米睡眠財団のデータによれば、推奨される睡眠時間は生まれたときが最も長く、新生児(生後〜3か月)は14〜17時間。そこから成長するにつれて、必要な睡眠時間は減っていきます。
また、15歳では約8時間、25歳で約7時間、45歳で約6.5時間、65歳では約6時間と、年を重ねるにつれて、睡眠時間が少なくなっているというデータも報告されています。
さらに、高齢になると体内時計が変化することも、睡眠時間の減少に影響すると考えられています。ホルモン分泌、体温、血圧などの生体機能リズムは高齢になると前倒しになるため、これが睡眠に影響することで、早寝早起きになるのです。
眠りの深さも、加齢によって変化します。年を重ねると深いノンレム睡眠が減り、浅いノンレム睡眠が増えるため、夜中にちょっとした物音や尿意などで目覚めやすくなります。
睡眠時間は季節でも変化する
季節によっても、睡眠時間は変化することがわかっています。これは、日照時間に深く関連があると考えられているようです。
日が短くなる秋〜冬の時期は睡眠時間が長くなり、春から夏にかけては睡眠時間が短くなる傾向にあります。
良い睡眠に大切な3つの条件
睡眠は時間だけではなく、質やリズム・タイミングも重要です。
- 十分な睡眠時間(量)
- 安定した睡眠(質)
- 規則正しい睡眠リズム・タイミング
「良い睡眠」とは、この3つの条件が揃うことが大切です。たとえば、睡眠時間を長く取ったとしても質が悪ければ良い睡眠とはいえず、健康に悪影響が出ることもあります。
十分な睡眠時間(量)
十分な睡眠時間が取れているかは、睡眠の質と同じく非常に重要なポイントです。最適な睡眠時間の目安は6〜8時間といわれていますが、個人差もあります。
安定した睡眠(質)
良い睡眠のためには、「質」が重要です。布団に入ってからなかなか眠れない、夜中に何度も目が覚める、眠りが浅いなどの不眠の症状があると、睡眠の質の低下につながります。
また、じっとしていると脚がむずむず、ピリピリする「むずむず脚症候群」や、眠り出すと呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」も睡眠の質を下げる原因になります。
規則正しい睡眠リズム・タイミング
睡眠のリズムを規則正しいものにすることも、良い睡眠のために大切です。人間の体は体内時計によって、「夜は眠くなる」ように、また「朝に目が覚める」ようになっています。
しかし、体内時計は何もせずにいると24時間よりも少し長いサイクル(最新の研究では24時間11分といわれている)になるため、ズレが生じ始めます。このズレをリセットしてくれるのが、太陽の光です。
朝、太陽の光を浴びることで、体内時計をリセットできます。起床時間が遅れるとリセットのタイミングがずれ、睡眠のリズムがズレるため、規則正しくすることが大切です。
睡眠時間の健康への影響・リスク
睡眠時間は、健康に大きな影響を与えます。ここからは、睡眠時間の健康への影響やリスクについてご紹介します。
睡眠時間が短過ぎる(睡眠不足)リスク
睡眠時間が短過ぎる、睡眠不足の状態が続くと、糖尿病や高血圧のリスクを高めることが報告されています。
また、睡眠不足は免疫力にも悪影響を与えます。風邪をひきやすくなったり、風邪をこじらせて肺炎になるリスクが上昇するのです。
さらに、睡眠不足はインフルエンザワクチンなどワクチンの効力にも影響を及ぼすことがわかっており、睡眠不足の人は、睡眠が十分な人に比べて作られた抗体量が半分以下だったという報告もあります。
慢性的な睡眠不足は集中力や記憶力、判断力の低下にもつながります。思わぬミスや事故を招く原因にもなるため、注意が必要です。睡眠不足により、食欲などの意欲低下が見られることもあります。
睡眠時間が長過ぎるリスク
睡眠時間が長過ぎると、心臓病や記憶障害になるリスクが高まるという報告があります。また、体内時計のリズムが狂ってしまうことにもつながります。
寝過ぎると同じ体勢でいる時間が長くなるため、血行不良が起こり、肩や背中のコリ、腰痛につながることもあります。
睡眠は生活習慣病にも深い関係がある
昔から、生活習慣病の患者には不眠症や睡眠時無呼吸症候群の人が多いことが知られています。
睡眠障害があると、生活習慣病にかかるリスクを高めたり、症状を悪化させたりしてしまうことがあります。
睡眠時間の確保、体内リズムを整えることが大切
日本人は、世界的に見ても睡眠に対する満足度が低く、また、睡眠時間も短いとされています。50代女性は更年期などの影響もあり、睡眠に関する悩みを抱えることも少なくありません。
ベストな睡眠時間の目安は6〜8時間といわれていますが、個人差があります。必要な睡眠時間は加齢に伴って減少していくため、昔と比べて睡眠時間が少なくなるというのは、誰にでも起こると考えられる自然な変化です。
自分に合った睡眠時間は人それぞれ違うため、日中の眠気に困らない程度の質の良い睡眠が取れるように心掛けるといいでしょう。
取材先・監修者プロフィール:白濱龍太郎さん
しらはま・りゅうたろう RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック 院長。2002年、筑波大学医学群医学類卒業。東京医科歯科大学大学院統合呼吸器病学修了。東京共済病院、東京医科歯科大学附属病院を経て、13年にクリニックを開設。日本睡眠学会専門医。『誰でも簡単にぐっすり眠れるようになる方法』(アスコム刊)をはじめ著書多数。
※この記事は2022年7月の記事を再編集して掲載しています。
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