医師監修│太りやすい更年期に痩せる人はなぜ?

更年期で痩せる人と太る人の違いって?原因と対処法

横倉恒雄さん(横倉クリニック)
監修者
横倉クリニック
横倉恒雄

公開日:2022.06.30

更新日:2024.06.09

更年期で痩せる人と太る人にはどんな違いがあるの?一般的に閉経後は太りやすく、この記事の体重増加は「更年期太り」と呼ばれることも。一方で、更年期に痩せる人もいます。それぞれの原因や対処法を医師監修のもと詳しく解説します。

監修者プロフィール:横倉恒雄さん(横倉クリニック)

横倉恒雄さん(横倉クリニック)

よこくら・つねお 医学博士。医師。横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長。東京都済生会中央病院に日本初の「健康外来」を開設。故・日野原重明先生に師事。婦人科、心療内科、内科などが専門。病名がないものの不調を訴える患者さんにも常に寄り添った診療を心がけている。著書『病気が治る脳の健康法』『脳疲労に克つ』他。日本産婦人科学会認定医 /日本医師会健康スポーツ医/日本女性医学学会 /更年期と加齢のヘルスケア学会ほか。

一般的に、閉経後は太りやすいといわれる

更年期とは、閉経を挟んだ前後5年間のことです。日本人女性の閉経の平均年齢は50歳〜51歳であるため、45歳〜55歳頃の10年間が更年期にあたります。

更年期は、卵巣機能の低下によって、これまで分泌されていた女性ホルモンの「エストロゲン」の分泌量が急激に減少します。

この大きな変化に体がついていけずに起こるのが、更年期症状や更年期障害と呼ばれるさまざまな症状です。更年期に見られる症状には身体的な症状と、精神的な症状があります。

更年期の大きな変化は、体重にも影響します。一般的に、閉経後は太る人が多く、更年期は女性の人生の中でも太りやすい時期であるといわれています。

更年期で痩せる人と太る人の違いって?

更年期に起こる体の変化によって太る人が多いものの、中には痩せる人もいます。更年期で痩せる人と太る人で違いがあるのは、食事や運動、生活リズムなど毎日の習慣の違いによるものと考えられます。

更年期に起こる症状にはさまざまなものがあり、症状の強さや現れ方も個人差が大きいです。このような症状の現れ方も、体重の増減に影響すると考えられます。

更年期で太る原因と対処法

更年期で太る原因と対処法

更年期で太る人は、以下のような共通点があることが多いようです。 

  • 普段から運動する習慣がない、あまり外出しない
  • 食事の量や内容が若い頃とあまり変わらない
  • 更年期症状のイライラで食べ過ぎてしまうことがある など

ここからは、更年期で太る原因と対処法をご紹介します。

更年期で太る原因

政府統計ポータルサイトe-Statが公開する「国民健康・栄養調査 (2019年)」によれば、30歳〜39歳女性の平均体重は54.3kg、40歳〜49歳女性の平均体重は55.6kgとなっており、女性は更年期に差し掛かると、体重が増加する傾向にあることがわかっています。

更年期で太る原因は、主に以下の3つです。

筋肉量、基礎代謝量の減少

人は加齢によって筋肉量が減少しますが、筋肉量が減ると、それに伴って基礎代謝量も低下します。

基礎代謝とは、無意識に行っている生命活動で必要になるエネルギーのことで、まったく動かない状態でも消費されます。

若い頃は基礎代謝が高く、何もしなくてもカロリーが消費されていきますが、年を重ねるごとに基礎代謝が下がるため、若い頃と同じ食生活を繰り返していると、太りやすくなるのです。

女性ホルモンの減少

更年期になると、女性ホルモンであるエストロゲンの急激な減少が起こります。エストロゲンは脂質代謝に影響しており、コレステロールを適切に調節する機能や、中性脂肪の蓄積を阻害する機能があります。

そのため、閉経してエストロゲンの分泌量が低下すると、血液中の悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が上昇しやすくなり、肥満、脂質異常症、動脈硬化などになりやすくなります。

自律神経の乱れによるイライラ

更年期になると、女性ホルモンのバランスだけではなく、自律神経も乱れやすくなります。そのため、イライラしやすくなる、興奮しやすくなるなどの精神的な症状が現れることがあります。

自律神経の乱れによるイライラで過食してしまう、甘いものを食べ過ぎてしまう、食欲にムラが出るなども太る原因として考えられるでしょう。

自律神経の乱れが起こると女性ホルモンのバランスもさらに崩れ、それが代謝に影響し、太りやすい状態をつくり出すという悪循環に陥ってしまうこともあります。更年期は、太りやすい条件が揃っている時期といえるでしょう。

更年期で太った場合の対処法・健康的に痩せる方法

ここからは、更年期に太った場合の対処法と健康的に痩せる方法をご紹介します。

定期的な運動を習慣にする

更年期太りによって体重が増えてしまった場合は、定期的な運動を習慣にするといいでしょう。運動を続ければダイエットになるだけではなく、筋肉量をつけることにつながり、健康維持にもプラスに働きます。

なお、筋肉量を維持するためだからといって、激しい運動をする必要はありません。激しい運動は継続が難しく、また、ケガにつながる可能性もあるため注意が必要です。

簡単にできて、続けやすい運動としておすすめなのが、ウォーキングです。ウォーキングは全身運動なので、全身を引き締める効果が期待できます。なお、ウォーキングの場合も無理はせず、自分のペースで始めることが大切です。体力や体調を考慮して適度な運動を取り入れるといいでしょう。

更年期によるめまいや吐き気などが心配でウォーキングに出掛けられない人は、自宅で踏み台を使った踏み台昇降もおすすめです。

食事を工夫する

代謝のいい体づくりのためには、三食バランスのいい食事を取ることが大切です。筋肉をつくる材料になるタンパク質や、女性ホルモンのエストロゲンと似た構造のイソフラボンを摂取するといいでしょう。イソフラボンは、大豆製品に多く含まれています。

食べる順番も大切で、副菜→主菜→主食の順番で食べるようにすると、血糖値の急上昇を防ぎ、炭水化物や脂肪を吸収しにくくなります。

健康的なダイエットのためにも、無理な食事制限は避けましょう。食事を抜くダイエットはストレスによる反動でリバウンドしてしまったり、栄養不足によって心身の不調を悪化させてしまったりする可能性があります。

漢方薬を服用する

漢方薬は医療機関で処方される以外にも、市販薬で小包装から購入が可能です。そのため、試しやすいのでおすすめできます。

更年期で太ってしまう方には脂肪の吸収を抑え、燃焼・代謝を上げる作用を持つものや、脂肪と老廃物を便と一緒に排出する漢方薬を選びます。逆に、痩せてしまう方には血流を改善して体中に栄養を行きわたらせる漢方薬から選びます。

血液や水分の循環を改善させることは、免疫力や代謝を上げることにつながります。
代表的な漢方薬をいくつかご紹介します。

  • 大柴胡湯(だいさいことう)……脂質の代謝を上げ、余分な脂肪を減らします。便秘を改善し、ストレスでつい食べてしまう人に向いています。
  • 防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)……お腹まわりの脂肪を燃焼して排出するといわれており、便通も改善します。お腹まわりが気になり始めた人に向いています。
  • 防己黄耆湯(ぼういおうぎとう)……冷えがあり、ぽっちゃり系の水太りの方のむくみや関節痛などを改善します。汗をかきやすい人にもおすすめです。

漢方薬もお薬です。副作用が心配でしたら、体質や症状に合わせて専門家が無料相談したうえで、選んで配送してくれる全国対応のサービスを使用してはいかがでしょうか。

漢方薬の他、更年期の女性におすすめなサプリメントもあります。

漢方薬は、体全体の体質改善を促し、症状に対して総合的なアプローチを行えることが特徴です。一方、サプリメントは健康維持・促進を目的に服用する栄養補助食品のことで、症状の治療や改善ではなく、症状を和らげる効果が期待されています。

更年期で痩せる原因と対処法

更年期で痩せる原因と対処法

更年期で痩せる人は、以下のような共通点があることが多いようです。

  • 普段から習慣的に運動を続けている
  • 食べる順番や栄養バランスを意識している
  • 食欲不振になっている、胃の調子がよくない など

ここからは、更年期で痩せる原因と対処法をご紹介します。

更年期で痩せる原因

更年期は太りやすいとされていますが、中には痩せる人もいます。ここからは、更年期で痩せる場合に考えられる理由を解説します。

自律神経の影響

更年期障害になると、自律神経の働きが乱れてしまうことがあります。胃は自律神経の影響を大きく受けることが知られており、例えば、ストレスによる神経性胃炎は自律神経の乱れにより胃酸の過剰分泌が起こることが原因です。

自律神経が乱れることで胃の痛み、胃のもたれ、胸やけが起こり、食欲が低下すると、痩せる原因になります。

女性ホルモンの減少によって消化器官が影響を受ける

食道や胃、腸などの消化器官はホルモンや神経によってコントロールされているため、女性ホルモンが低下すると、消化器官も影響を受けます。

また、女性ホルモンのエストロゲンは粘膜をつくるのにも影響しているため、減少すると胃粘膜が弱り、食欲不振になる人もいるようです。

更年期で痩せた場合の対処法

ここからは、更年期で痩せた場合の対処法をご紹介します。

病院を受診する目安は「6か月で5%以上の減少」

特にダイエットをしていないのに痩せてしまうと、病気が心配になることもあります。もとの体重から「6か月で5%以上の減少」が見られた場合、病院を受診しましょう。

たとえば、体重が50kgであれば「50(kg)×0.05(5%)=2.5」となり、6か月で2.5kg以上減少していれば一度検査してみるのがおすすめです。

体重減少の症状がある病気では、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)、胃・十二指腸潰瘍、糖尿病、うつ病、悪性腫瘍(がん)などがあげられます。

その他の症状、飲んでいる薬、ストレスをチェック

体重の減少の他にも、何か気になる症状や体調の変化を感じたことがなかったか、振り返ってみましょう。

また、何か薬を服用している場合は、副作用として「体重減少」「食欲低下」などがないかをチェックして、医師に相談してみましょう。

急な環境の変化やストレスが食欲に影響していることもあります。一時的な食欲低下ではなく、しばらく続くようなら病院を早めに病院を受診することが大切です。

三食しっかり食べる

健康的に体重を増やしたいと考えているのであれば、一日三食しっかり食べることが大切です。食事を抜くと栄養バランスが崩れやすくなり、一日に摂取すべきカロリーが不足してしまう可能性があります。

特定の食品を控えたり、逆に特定の食品ばかりを食べたりせず、さまざまな食品をバランスよく摂取しましょう。

肥満と痩せ、どちらの方がいいの?

肥満と痩せ、どちらの方がいいの?

一般的には、中年(40歳〜64歳)以降は男女ともに、肥満になると慢性疾患のリスクが高まり、健康寿命を縮めてしまう原因になることがわかっています。そのため、適度な運動とバランスのいい食事で筋肉量を保ちながら、肥満を防ぎ、若い頃の体重を維持することが推奨されています。

しかし、痩せ過ぎも健康を考える上ではよくない状態です。痩せ過ぎると、骨が脆くなる骨粗鬆症になってしまう恐れがあります。特に女性の場合、更年期によって女性ホルモンのエストロゲンが激減するため、注意が必要です。

エストロゲンは、骨の新陳代謝の際、骨からカルシウムが溶け出すのを抑える働きを持っています。閉経を迎えてエストロゲンの分泌が低下すると、骨密度が急激に下がってしまうのです。

また、骨が丈夫になるためには、ある程度の負荷が必要になります。痩せ過ぎて体重が減ると骨への負荷が足りなくなり、骨量の減少につながることもあります。

太り過ぎも痩せ過ぎもリスクがあるため、自分のBMI(Body Mass Index)を把握し、適正な体重を維持しましょう。BMIとはボディマス指数のことで、肥満度をあらわす体格指数です。計算式に体重と身長を当てはめて算出します。

更年期は心身の変化が大きい時期、自分を労ろう

更年期は、女性ホルモンの激減によって心身にさまざまな変化が起こります。更年期に太る人と痩せる人がいるのは、食事や運動など生活習慣の違いや、更年期症状の現れ方の違いなどが考えられます。

バランスのいい食事を心掛け、適度な運動をし、しっかり睡眠を取って規則正しい生活をすると、ホルモンバランスや自律神経の安定につながるでしょう。

更年期は、心や体に変化が起こりやすい時期。痩せるために極端なダイエットをしたり、太るために無理に食べたりせず、体を労ることが大切です。

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