更年期女性の「めまい」を自分で治す、改善する!#1

2つの「めまい」に気を付けて!症状別チェックと原因

公開日:2023.09.25

つらいめまいを「一時的なものだから…」と諦めていませんか?原因を知れば、自分で改善可能!専門医の石井正則さんにお話を伺う全3回の企画。まずは、更年期の女性で発症率の高い「良性発作性頭位めまい症」と「メニエール病」の症状と原因についてです。

教えてくれた人:石井正則(いしい・まさのり)さん

教えてくれた人:石井正則(いしい・まさのり)さん

JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科診療部長。東京慈恵会医科大学院卒業と同時に米国ヒューストン・ベイラー医科大学留学。東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科准教授などを経て、現職。『ストレスマネジメントでめまい・耳鳴り・難聴を自分で治す本』(二見書房刊)など著書多数。

めまいの主な引き金は「ストレス」と「運動不足」

めまいの主な引き金は「ストレス」と「運動不足」

突然、目がぐるぐる回る、動けない、吐き気を伴う……。めまいは、体が発する警告。50代以降のハルメク世代が特に気を付けたいのが、「良性発作性頭位めまい症」と「メニエール病」です。

コロナ禍以降、めまいを訴える女性が増えている。そう指摘するのはJCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科の石井正則さんです。

「めまいはもともと女性に多いですが、コロナ禍での生活環境の変化、運動不足、ストレスも発症の引き金になっているようです。また更年期もめまいが起こりやすい時期ですから、50代以降の方は注意が必要ですね。特に多いのは、『良性発作性頭位めまい症』と『メニエール病』です」と石井さん。

こんな人は「めまい」を起こしやすい!

□ストレス過多
□睡眠不足
□運動不足
□更年期以降

「めまい」と深くかかわりがあるのは「耳」!

「めまい」と深くかかわりがあるのは「耳」!

50代以降の世代に特に多い「良性発作性頭位めまい症」と「メニエール病」。実はめまいは、「耳」と深くかかわっています。それぞれのめまいの症状と原因をチェックしてみましょう。

「良性発作性頭位めまい症」の症状をチェック

□寝返りなど頭を動かしたときに突然、ぐるぐる回るようなめまいが起こる
□吐き気を伴うこともある
□耳鳴りや難聴は起こらない
□めまい発作は数秒~数分以内におさまる
□症状は数日~数週間で自然と改善する

良性発作性頭位めまい症を起こすのは「耳石の剥がれ」

良性発作性頭位めまい症は、寝返りを打ったり、起き上がったりして体を動かしたとたん、ぐるぐる回るような激しいめまいに数秒~数分間見舞われます。中には吐き気を伴う人もいます。

原因は、耳石の剥がれ。耳の中には体の傾きや重力を感知する耳石器という器官があり、耳石と呼ばれる小さな粒が密集しています。この耳石が剥がれて三半規管の中に入り込み、めまいを引き起こします。

「耳石は骨の成分と同じなので骨が弱い人ほど剥がれやすい。女性ホルモンが減る更年期以降は骨がもろくなるので、発症リスクが上がります。運動不足の方も骨が弱いので気を付けてください」と石井さん。

良性発作性頭位めまい症を起こすのは「耳石の剥がれ」

三半規管の根元にある耳石器から耳石が剥がれ落ち、“浮遊耳石”となって三半規管に入り込んで神経を刺激。その結果、平衡感覚が乱され、回転性のめまいが起こります。

「メニエール病」の症状をチェック

□突然、ぐるぐる回るようなめまいが起こる
□めまいと一緒に耳が詰まった感じ(耳閉感)や耳鳴り、難聴もある
□吐き気や嘔吐も伴う
□めまい発作は数十分~半日ほど続く
□ストレスや睡眠不足を感じている

メニエール病の原因は「内耳のむくみ」

一方、メニエール病は、突然、耳が詰まった感じがして低音部の難聴や耳鳴りが起こり、同時にぐるぐると回るようなめまいに襲われます。吐き気も伴い、嘔吐を繰り返すことも。

そんな状態が数十分から半日程度続き、あまりのつらさから救急車を呼ぶ人もいるそう。その後も再発を繰り返すたびに難聴がひどくなっていきます。

原因は内耳のむくみです。内耳の中のリンパ液が過剰に増えて水ぶくれ状態になり、神経を刺激して、めまいを起こします。

「メニエール病の患者さんは几帳面でまじめな人が多く、ついがんばり過ぎてしまう。発症の背後にあるのが心身のストレスです。ストレスがあるとなぜ内耳がむくむのか不明でしたが、実はめまい発作の直前に自律神経のバランスが大きく乱れていることが明らかになりました」と石井さんは話します。

自律神経には、活動時に優位になる交感神経と休息時に優位になる副交感神経があります。石井さんらは、めまい発作の直前に交感神経が異常に興奮し、その結果、内耳の血管が縮んで血液内の成分がしみ出し、むくみにつながることを突き止めました。研究結果は2022年春、国際学術誌に掲載され、注目されています。

「メニエール病の方は、めまいの他にも肩こりや冷え性、しもやけ、下痢と便秘を繰り返す過敏性腸症候群などを抱えていることが多い。これらも全部、交感神経の異常興奮によるものです。症状は『これ以上我慢できない』という体からの悲鳴。生活を見直すことがとても重要です」と石井さんはアドバイスします。

メニエール病の原因は「内耳のむくみ」

内耳の中にあるリンパ液が過剰にたまって、「内リンパ水腫」と呼ばれるむくんだ状態になり、神経を刺激。むくみの程度がひどいほど、症状も激しくなります。

PPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)を知っていますか?

急に立ち上がる、激しい動きの画像を見るなど、体の動きや視覚刺激をきっかけに起こるふらつき感が3か月以上続くのがPPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)。2017年に定義された新しいめまいの概念です。

「精神的な要因もあり、治療は精神科や心療内科などと協力して進めます」と石井さん。

一方、先に説明してきた「良性発作性頭位めまい症」も「メニエール病」も、運動や生活習慣などでセルフケアすることが可能です。次回以降は、めまいを改善する4つの運動習慣と、日常生活の中でこまめに行いたい改善方法について詳しく伺います。

取材・文=佐田節子 イラストレーション=チチチ 構成=大矢詠美(ハルメク編集部)
※この記事は雑誌「ハルメク」2022年10月号を再編集し、掲載しています。

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