更年期障害の症状と対処法

更年期で自律神経のバランス乱れると起きる、めまい

横倉恒雄さん(横倉クリニック)
監修者
横倉クリニック
横倉恒雄

公開日:2018.07.02

更新日:2024.01.26

更年期になり、なんだか「ぐらぐら」「ふらふら」する……。病院で検査して耳や脳に異常がなかった場合は、自律神経の乱れが原因の「めまい」かもしれません。どのような治療法があるのでしょうか? また、日常生活でできる工夫について医師が解説します。

監修者プロフィール:横倉恒雄さん(横倉クリニック)

横倉恒雄さん(横倉クリニック)

よこくら・つねお 医学博士。医師。横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長。東京都済生会中央病院に日本初の「健康外来」を開設。故・日野原重明先生に師事。婦人科、心療内科、内科などが専門。病名がないものの不調を訴える患者さんにも常に寄り添った診療を心がけている。著書『病気が治る脳の健康法』『脳疲労に克つ』他。日本産婦人科学会認定医 /日本医師会健康スポーツ医/日本女性医学学会 /更年期と加齢のヘルスケア学会ほか。

ぐるぐる?ふわふわ?めまいがしたら、まずは病院受診

めまいのほかに、耳鳴りや難聴を伴うことも

更年期になると、女性ホルモンの分泌が減ることで、ホルモンバランスが変化し、自律神経の乱れからめまいが起こりやすくなります。また、加齢に伴い耳の中の感覚器の働きが衰える影響もあって、立っていられないほどの強いめまいを起こすことがあります。

めまいが起こると、「何か悪い病気かもしれない」と不安に思う人も多いもの。実際に、めまいには何らかの病気が隠れている場合もあります。

そこで、めまいや耳鳴りに関しては更年期障害の症状と考える前に、まずは他の病気の可能性がないか、病院を受診して医師の診断を仰ぐことが大切です。

このような症状をきたす代表的な病気には、メニエール病、良性頭位回転性めまい、前庭神経炎などがあげられます。年を重ねてくると耳に原因がある場合も多くなります。

これらの病気ではない場合は、更年期障害によるめまいの可能性が高くなります。更年期におけるめまいには、精神的ストレスや睡眠不足、低血圧などもかかわっていますが、一番多いのは自律神経の不調からくるめまいです。検査をしてもとくに病気の異常が見つからないため、原因不明のめまいは多くのケースで「めまい症」と診断されます。

めまい症の治療には、めまい症状を改善する薬である鎮暈剤(ちんうんざい)、ビタミンB12、循環改善剤、利尿剤などが使われます。耳鳴りに対しては、ストレスが原因と思われる場合は軽度の精神安定剤を使用することもあります。睡眠不足が直接の原因であることも多いので、睡眠薬を使う場合もあります。

めまいの起こり方もさまざまで、ぐるぐる回る「回転性めまい」もあれば、足元がふわふわする「浮動性めまい」、からだがぐらぐら揺れるような「動揺性めまい」などがあります。

耳に原因がある場合は回転性めまいが多いのですが、それだけで決めつけることはできません。めまいがするときは、耳鼻科やめまい外来などの専門医を受診するか、かかりつけの婦人科で相談しましょう。

めまいがするときはふらつきや転倒に注意

めまいがするときはふらつきや転倒に注意

耳が原因のめまいは繰り返し何度も起こることがあり、なかにはからだを動かすたびに起こるタイプもあります。そのため、ふらついて転倒しないように注意しましょう。

更年期の後半には骨がもろくなる「骨粗鬆症」が進んでいる人もおり、ちょっとした打撲や転倒で骨折する危険があります。めまいが治るまでは急に立ち上がったり、いきなり動き出したりしないことです。

めまいの症状が強いときは安静第一です。横になり、治まるのを待ちます。外出先などで急にめまいに襲われたときは、安全確保を最優先に。座れる場所に移動するか、転倒しないようにどこかにつかまるようにします。

耳鼻科の病気が原因の場合、病院で治療を受け、症状が落ち着いてきたら少しずつリハビリを始めます。めまいをわざと起こして、少しずつ慣れさせる「めまい体操」やトレーニング法などがあります。医師の指導に従い、リハビリしましょう。

病気でなければストレス解消&食事など生活習慣の改善を

病気が原因でないならストレス解消が効果的

病院で検査して耳や脳に異常がなかった場合は、更年期障害による自律神経の乱れやストレスによる心因性のめまいが考えられます。まずは、食事や睡眠など、生活習慣を見直してみましょう。不安やイライラがあると症状が悪化するので、まずはストレス解消が第一です。

めまいに悩む人は、生真面目で我慢強い性格の人が多いとされています。体調が悪いのに無理をして家事や仕事をこなし、そのストレスがめまいとなってあらわれるのです。

しばらくの間、仕事や家事はできるだけ減らし、休養を優先します。自分の好きな趣味やスポーツを楽しみ、ストレスを発散させましょう。

体調がよければ、半身浴や足湯で全身の血行を促すのも効果的。ヘッドマッサージをしたり、いい香りをかいだり、おいしいと感じられる食事をとったり、日常生活の中で、できるだけ五感で心地よさを感じる機会を増やしていくことが脳を元気にしてあげるポイントです。

食事は、疲労回復や神経の働きを助けるビタミンB1やB12を積極的に取ります。B1はレバーや豚肉、玄米、大豆などに、B12はレバー、しじみやあさり、牡蠣、さんま、さばなどに多く含まれています。

貧血でめまいやふらつきが起こりやすい人は、レバーや牛の赤身肉、しじみやいわし、小松菜や大根の葉など鉄分の多い食品を取りましょう。

繰り返す更年期のめまいには、漢方治療もおすすめ!

繰り返す更年期のめまいには、漢方治療もおすすめ!

更年期のめまいを根本から解消していきたいのなら、漢方治療がおすすめです。医薬品としても効果を認められている漢方薬は、更年期の不調改善の薬物療法として日本産婦人科学会でも推奨されています。

漢方医学ではめまいの第一の原因は「体内の水分の滞り」と考えます。そのため、更年期のめまいに対しては体内の水分を整える漢方薬が用いられています。

また、漢方薬の効果はめまいの症状を抑えるだけではありません。不調改善に加え、根本的な体質改善を目的とするため、めまいだけでなく、感情の抑うつや動悸などのさまざまな更年期症状に効果を発揮するのです。

つまり、漢方薬を飲むことで根本から体質を整えていけるため、めまいだけでなく更年期の不調全般を和らげる効果が期待できます。

更年期のめまいにおすすめの漢方薬

以下に、更年期のめまいにおすすめの漢方薬をご紹介します。

  • 苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう):体力がなく、めまい、ふらつき、のぼせ、動悸などがあって、尿量が減少している人に用いられます。
  • 加味逍遥散(かみしょうようさん):体力があまりない人で、肩がこる、めまいや頭痛がするなどのほか、のぼせや発汗、イライラ、不安など、不定愁訴といわれる多様な心身の不調に広く用いられます。
  • 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):体力が中程度以上で、赤ら顔、のぼせやすいのに足が冷え、下腹部が張る感じがする人向きの漢方薬です。月経異常、更年期障害のほか、頭痛、肩こり、めまいなどに用いられます。

漢方薬をのむときの注意点

漢方薬をのむ時に気をつけたいのが、「自分に合うものを選ぶこと」です。一口にめまいといっても、人によって原因や症状、体質は異なります。自分に合ったものを選ばなければ、効果を感じられないだけでなく、副作用が起こる可能性もあります。

気軽に自分に合う漢方薬が知りたい方には、「あんしん漢方」のオンライン相談を試してみるのもひとつの方法です。相談内容をもとに、薬剤師がAIを駆使して一人ひとりの体質を判定。効く漢方を処方して、お手頃価格で自宅に郵送してくれます。忙しい方や、手軽に試してみたい方におすすめです。

TOP写真(撮影=中西裕人 ヘアメイク=小島けさき モデル=桂智子)、それ以外のイメージ写真=PIXTA

※この記事は2018年7月の記事を再編集して掲載しています。

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ハルメク365編集部

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