更年期?PMS?怒りっぽさが続くときの対策も解説

些細なことでイライラする!考えられる病気・原因は?

大和行男
監修者
こころと美容のクリニック東京
大和行男

公開日:2023.07.31

「些細なことでイライラする」「怒りっぽくなった」50代以降こんな症状が続く場合は、病気のサインの可能性も。易怒性や易刺激性、イライラ症状がある場合に考えられる病気、イライラしたときの対処法を解説します。悪化の可能性もあるため我慢は禁物です。

些細なことでイライラするのは病気のサイン?

些細なことでイライラするのは病気のサイン?

何か嫌なことがあったときや、自分の思い通りに行かないときに、イライラしたり、不機嫌になったり、憂鬱な気持ちになることは多かれ少なかれ誰でも経験したことのある感情です。

一時的にイライラを感じるのみであれば、問題のないことが多いでしょう。

しかし、「些細なことでイライラするようになった」「イライラが収まらない」「カッとなりやすくなった」「ちょっとしたことで怒ってしまう」と感じる場合は、なんらかの病気が原因になっている可能性も考えられます。

更年期に差し掛かる50代以降は、心にも体にも大きな変化が起こります。不調がある場合は早めに原因を確かめて、適切に対処しましょう。

イライラとは?(易怒性・易刺激性)

「イライラする」とは、怒りやすい状態・緊張が高まった状態・神経が高ぶり刺激に対して非常に敏感な状態などのことです。

医学的には、普段では怒らないような些細な刺激でも反応して怒りっぽくなることを「易怒性(いどせい)」、ちょっとしたことでも不機嫌になったり気分が落ち込んだりと感情に反応することを「易刺激性(いしげきせい)」といいます。

自律神経の交感神経が優位になっており、緊張が強くなっている状態です。

イライラが強くなると、相手への怒りや攻撃、自分を責める、自分を殴る、大声で叫ぶ、泣き喚くといった症状が出ることがあります。

イライラが起こる原因

イライラが起こる原因

ここでは、イライラが起こる原因についてご紹介します。

精神的なストレスが強い

さまざまな要因によって受ける精神的なストレスが強いと、イライラにつながります。ストレスは大きく「外的なストレス」と「内的なストレス」に分けられます。

  • 外的なストレス……仕事や忙しさ、緊張状態が時間続く、さまざまな人間関係でのストレス など
  • 内的なストレス……理想と現実のギャップ、自分の考え方の癖、自分を責める、葛藤 など

自分ではストレスを自覚していない場合や、細々したストレスが積み重なってイライラにつながっている可能性も考えられます。

ストレスを受け止める余裕がない

自分に余裕があれば、ストレスがかかったとしてもある程度は対処できるものです。

しかし、睡眠不足、疲労、空腹など「体調の影響」、PMSや更年期障害、甲状腺の不調、内臓の不調、ケガによる不調など「病気やケガなどによる不調」や「精神疾患」などの原因により、自分にストレスを受け止めるだけの余裕がなくなると、イライラしやすくなります。

また年を重ねることで感情を抑え込むエネルギー量が低下してしまい、感情のコントロールが難しくなってしまうこともイライラしやすくなる理由の一つと言えます。

ホルモンバランスの乱れ

ホルモンは、体のさまざまな機能を調整する役割を持っています。

女性の場合、生理前や更年期に女性ホルモンの影響でイライラしやすくなることが知られていますが、男性も年齢を重ねるにつれて男性ホルモンの分泌量が少なくなって起こる「男性更年期障害」によってイライラが起こることがあります。

病気

些細なことでイライラしたり、怒りっぽくなったりする症状がひどい場合や、ずっと収まらない場合は、なんらかの病気が原因になっている可能性も考えられます。

悪化してしまうことのないよう、早めの対処が大切です。

イライラの症状が現れることがある病気

イライラの症状が現れることがある病気

ここからは、イライラの症状が現れることがある病気について解説します。

月経前症候群・月経前不快気分障害

生理が始まる2週間前くらいから現れるイライラや頭痛、腹痛、乳房の痛み、気分の落ち込み、不安感などの症状のことを「月経前症候群(PMS/Premenstrual Syndrome)」といいます。

PMSの中でも、イライラや怒りっぽくなる、不安や気分の落ち込みが強いなど、精神症状が強い場合は「月経前不快気分障害(PMDD/Premenstrual Dysphoric Disorder)」と診断されることも。

原因については完全には明らかになっていないものの、重い症状が続くと生活や仕事、人間関係にも支障が出ることがあります。PMDDの治療にはSSRIというセロトニンを増やす薬剤を用います。

現れる症状は似ているPMSと更年期ですが、「周期があるかないか」という点で違いがあります。PMSの場合は1か月単位の周期性がありますが、更年期症状には周期性はみられません。

更年期障害

更年期障害とは、更年期にみられる不調(更年期症状)の症状が重く、日常生活に支障が出てしまうような状態のことです。

更年期というとホットフラッシュ(ほてり、のぼせ)や発汗、むくみ、動悸、息切れなどの症状をイメージする人が多いかもしれませんが、イライラ、不安感、抑うつ症状、不眠など精神的な症状も多く見られます。

更年期症状は症状の現れ方が人によって大きく異なり、軽い人もいれば、寝込んでしまうほどつらい人も。つらい症状を感じている場合は「更年期だから」と放置せず、早めに病院を受診することが大切です。

甲状腺機能亢進症(バセドウ病)

甲状腺機能亢進症(バセドウ病)といった甲状腺の病気も、イライラにつながることがあります。

甲状腺機能亢進症では、血液中の甲状腺ホルモンが過剰になることで交感神経の感受性が高まり、イライラしやすくなります。その他にも、動悸や発汗、暑がりになる、手足が震える、疲れやすい、食欲増加などの症状が起こることが多いです。

うつ病などの精神疾患

うつ病などの精神疾患があると、ストレスを受け止める余裕がなくなり、些細なことでイライラしたり、怒りっぽくなったりすることがあります。

イライラが見られる病気としては、以下があります。

  • うつ病
  • 双極性障害(躁うつ病)
  • 適応障害
  • 不安障害
  • 強迫性障害(OCD)
  • 境界性パーソナリティ障害
  • 解離性障害
  • 統合失調症
  • 発達障害
  • 摂食障害 など

認知症

認知症の多くを占めるアルツハイマー型認知症では、怒りっぽくなる症状が見られることがあります。

認知機能が低下し、物忘れなどが起こると、それに対しての不安や焦燥感が生じ、イライラや不機嫌につながることも。すぐに怒鳴る、攻撃的な発言をするなどが見られることもあります。

依存症

依存症とは、アルコールやタバコ、ギャンブルやゲームなど、特定の物質や行動に対してのコントロールがうまくできなくなる病気です。

依存症では、特定の物質や行動ができないときに離脱症状として、イライラや気分の落ち込み、落ち着きの無さといった症状が起こることがあります。

高次脳機能障害(社会的行動障害)

脳の病気やケガによって脳がダメージを受けると「怒りっぽくなった」「ずっとイライラしている」「こだわりが強くなった」「物覚えが悪くなった」という、これまで見られなかった症状が起こることがあります。これを、高次脳機能障害といいます。

人間の脳は、「感情をコントロールする」「集中する」「記憶する」といった高度な機能を持っていますが、この機能が障害を受けると、易怒性や易刺激性が引き起こされることがあります。

外見では判断しにくく、本人も気づかないことがありますが、「脳の病気やケガの後で性格が変わった」という場合は高次脳機能障害の可能性が考えられるでしょう。

自分のイライラが病気かチェックするには?

自分のイライラが病気かチェックするには?

些細なことでイライラしたり、怒りっぽくなったりする原因に病気が関係しているかどうかは、以下の点がチェックポイントです。

  • イライラが起こる状況
  • イライラが起こる周期・頻度
  • イライラやストレスの原因の有無
  • イライラ以外にも精神的な症状があるかどうか(無気力、依存、幻聴、幻覚、全能感など)
  • 身体的な症状(ほてり、めまい、痛みなど)やその他の症状(うまく話せない、注意散漫、記憶障害、不眠など)は見られるか
  • いつ頃症状に気づいたか
  • イライラによってどの程度生活に支障が出ているか
  • 持病はあるか、脳の病気やケガをしたことがあるか
  • 現在服用している薬やサプリメントの種類
  • 依存はあるか(酒、タバコ、ギャンブル、ゲームなど)
  • 大きなライフイベントや生活の乱れ、精神的にストレスを感じることはあったか
  • ストレス解消する環境や手段があるか

ただし、診断は医師でなければ行うことができません。

自己判断で放置すると悪化してしまう可能性もあるため、イライラする症状が続く場合は我慢せず、早めに心療内科や精神科、産婦人科、婦人科、更年期外来、脳神経内科などを受診することが大切です。

イライラするときの対処法

ここからは、イライラするときの対処法をご紹介します。

葉っぱの瞑想を行う

瞑想では、心を穏やかにすることで心身をリラックスさせる効果が期待できます。

葉っぱの瞑想は、心を落ち着かせる瞑想法です。浮かんできた想いを、小川に流れる葉っぱに乗せて流すイメージで行います。

ストレスフルな環境にいる場合には「ストレスを溜めないためないための心の持ち方・整え方」を実践してみるといいでしょう。

アンガーマネジメントを取り入れる

アンガーマネジメントとは、直訳すると「怒りの管理方法」という意味で、怒りや苛立ちといった感情について客観的に理解しコントロールするためのスキルです。

アンガーマネジメントを身につけると、怒りの感情を自分でコントロールできるようになります。怒りに振り回されてストレスをためたり、周囲に剥き出しの感情をぶつけたりすることがなくなるため、良好な人間関係の構築につなげられるでしょう。

アンガーマネジメントは、怒りの感情とうまく付き合うための心理トレーニング・心理教育として1970年代にアメリカで生まれました。企業でも注目されており、社員研修に導入されることも多いといいます。

アンガーマネジメントのやり方としては、「◯◯すべき」思考をやめる、その場から離れる、「6秒ルール」で怒りを鎮める、怒りに点数をつけるなどがあります。

ストレスを減らす工夫をする

些細なことでもイライラしてしまうときは、ストレスを減らす工夫をしてみましょう。

質の良い睡眠と十分な休息、適度な運動、栄養バランスの整った食事、趣味などによるストレス解消も効果的です。

また、現在置かれている環境がストレスの原因になっていると考えられる場合は、環境を変えたり、微調整したりすることも有効です。すぐに大きく環境を変えることは難しいかもしれませんが、できることから始めてみましょう。

市販薬の活用

ドラッグストアなどで販売されている市販薬や漢方薬の中には、イライラを抑える効果が期待できるものもあります。

ただし、市販薬や漢方薬にはかえってカフェインや麻黄などを含む薬剤もあるため、服用しても症状が改善しない場合や、イライラなどが原因でトラブルが生じている場合は、早めに病院を受診する必要があるでしょう。

原因となる病気の治療

病気が原因で「些細なことでイライラする」「怒りっぽい」という場合は、原因となる病気の治療が必要です。

イライラする症状が続く場合は、なんらかの病気が原因となっている可能性もあるため、我慢せず早めに病院を受診しましょう。

イライラが長引く場合は我慢せず病院へ

イライラしたり、不機嫌になったりすることは、生きていれば誰しもが経験することです。しかし、「些細なことでイライラする」「すぐカッとなってしまう」「ずっと怒っている」などが続く場合は、なんらかの病気が原因になっている可能性も考えられます。

放置すれば悪化してしまう可能性もあるため、我慢せずに病院を受診しましょう。診療科としては婦人科、心療内科、精神科がよいでしょう。

※効果には個人差があります。試してみて異変を感じる場合はおやめください。

監修者プロフィール:大和行男さん

大和行男さん

医療法人社団先陣会理事長、こころと美容のクリニック東京院長。資格は子どものこころ専門医、精神科専門医。お子さんから大人の方まで誰でもこころの診療を行っております。

https://www.kokoro-clinic.tokyo/
〒103-0027 東京都中央区日本橋3-3-3 八重洲山川ビル5階
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