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更新日:2024年03月11日 公開日:2020年08月16日
怒りや不安…苦しい感情をコントロールする方法(1)
若い時は穏やかだったのに、60歳を過ぎた頃からイライラして感情が抑えられない。「それには理由があり、何歳からでも改善できる」と、元自衛隊メンタル教官・下園壮太さんは言います。「7つの視点」という再考察のワークに取り組んでみましょう。
こんにちは、下園壮太(しもぞの・そうた)です。私は、陸上自衛隊で隊員の心のケアを行う「心理幹部」として、20年以上にわたって活動を行ってきました。
災害などが起こったときに、自衛官は現場で活躍することを期待されています。ただ、その任務は過酷であることが多く、また、訓練中の事故や同僚の自殺など、ショックな出来事に直面することも皆無ではありません。
そんなとき、私は隊員たちに、「苦しい気持ちは決して否定せず、まずは認めることが大事です」と一貫して伝えてきました。
彼らと同じように、みなさんも日々の生活の中で、苦しみや怒り、不安感など、さまざまな感情に振り回されることがあるかもしれません。しかし、それらの感情はすべて、あなたを守るために存在している、ということを理解すると、感情をスムーズに整えられるようになってくるものです。
私たちの心は、「感情」と「理性」という二つの要素から成り立ち、いずれも私たちがよりよく生きるのを手伝ってくれています。問題を客観的に考察し総合的視点で捉えるのが「理性」です。
一方、「感情」は、ある特定のテーマをより直感的、迅速に解決しようとします。ただ、感情は原始人的な価値観で我々を守ろうとしてしまうという特徴を持っています。
例えば、自分が誰かに襲われはしないか、飢えて死んでしまうのではないか、という極端な発想を広げやすいのです。トラブルやショックな出来事が起こると、瞬時に立ち上がり、主の権利や安全を守ろうとするのが「感情」です。
ただし、「感情」の反応はどうしても極端に出てしまいがちなので、「理性」がそれにブレーキをかけようとする。怒りに対しては「どうしようもないじゃない」、悲しみに対しては「結果は変わらないのだから忘れるしかない」、不安に対しては「考えるだけ無駄だよ」というふうに──。
しかし、このような「理性」による“言い聞かせ”は若いときには有効でも、年齢を重ねるとともにうまく働かなくなり、「感情」の爆発を招いてしまうことすらあります。あんなに穏やかだった人がどうして? と周囲は驚くのですが、そこには年齢とともに起こる「エネルギーの低下」が関わっています。
若い頃には、例えば理不尽な上司がいても、「生活のために今は我慢するしかないな」と怒りを封じ込めることが可能です。これは感情を押さえ込むエネルギー量が潤沢にあるから。
ところが年齢を重ねると、筋力が衰えるように、このエネルギー量が低下してしまう。私が多くの人をカウンセリングしてきた経験で言うと、だいたい60代頃になると、このエネルギー量がぐんと低下して、感情のコントロールが難しくなってきます。
年を重ねるにつれイライラしがちになり、周囲の迷惑になるわがままな行動をとるようになる人がいます。これまでの人生では、自分の感情をただ力ずくの我慢だけでコントロールできていた。けれど、エネルギーの低下とともに、感情のコントロールが難しくなり、こうした行動に結びついてしまうのです。
その一方で、人生経験を重ねるうちにさまざまな価値観に触れ、論理を鍛え、冷静な行動ができるようになる人もいます。他人を認め、許せるようになる──いわゆる「丸く」なる人です。上手に丸くなることができる人は、感情をケアするための多様なスキルを身に付けることができた人だといえます。
ただ、どんな人でも年齢とともに、感情をコントロールするエネルギー量は減っていきます。だからこそ、これからは感情をケアするスキルを学び、技術を高めることが重要です。「感情ケア」が上手になれば、より穏やかに、毎日を過ごすことができるようになります。
「感情ケア」には、感情の持つ勢いの段階ごとに、さまざまなスキルがあります。
高ぶった感情に圧倒されている第1段階では、呼吸法やストレス源から心理・物理的に距離を取るスキルが必要です。そして、少し落ち着きを取り戻した第2段階では、感情にあえて“触れる”スキルが必要になります。嫌な感情を力ずくで忘れようとしたり、言い聞かせたりするのではなく、まずは感情の発信するメッセージをしっかり受け止めることで、感情は自然に収まっていきます。
その次のステップ、第3段階では、自分の感情を再考察してみます。感情は、その人の思考を一つの方向に偏らせる働きがあり、第2段階のスキルで偏った思考の癖は収まったとしても、それだけでは根本的な問題に対する答えは得られていないことが多いもの。冷静になった頭で、しっかり「論理」を働かせた答えを出すためには、少しコツが必要になります。それが、再考察のスキルです。
今回は、日常生活にも取り入れやすい、「7つの視点」という再考察のワークに取り組んでみましょう。このワークは、ある程度感情の勢いが収まってきたときに、トラブルを客観的に見直すためのものです。
感情は、「わかっているつもり」で結論を出していますが、少し冷静になった段階で強制的にいろいろな視点で考えてみると、思わぬ発見があり、感情が穏やかになっていくことが多いのです。
「7つの視点」とは、
という7つの視点で出来事を見直してみる作業のこと。
苦しいときは、どうしても「自分を防衛する視点」に偏りがちになりますが、それだけでなく、映画のようにあちこちに視点を飛ばし、出来事を描き直すのです。
1の「自分視点」とは、自分についての考察。人は疲れていると感情的になりがちです。おなかが空いていても、イライラしやすい。昨日嫌なことがあれば、今日の夫のひと言がやけに不安に感じるものです。
つまり、「感情」が「この不快感はあの出来事のせいだ!」と結論づけていても、案外「自分に原因がある」場合が多いのです。ですから、まずは自分をチェックしてみましょう。
自分は疲れていない? 何かショックな出来事はなかった? なぜ、あのひと言にこんなに反応してしまったの? 何かに傷ついたのかな……と。こんなふうに考察すると、イライラや不安が収まることがあります。
2の「相手視点」とは、相手の立場に立って、考えてみることです。感情は、自分を守ろうとするために相手の行動や意思を「悪意」の方向で決めつけていることが多いのです。
そこで、強制的に、相手の立場から相手の行動や思考を考え直してみます。すると、悪意以外の思考が見えてくることがあります。
この他の5つの視点も、感情的に固定していた思考をぐっと広げてくれるきっかけを与えてくれるものです。感情のケアの上手な人は、知らず知らずのうちにこうした多様な視点を駆使して、物事を見ているのです。
例えば、こんなことがあったとします。
「近所の犬が夜に吠えてうるさいな。なぜちゃんと管理してくれないの?」
これに対して、上の7つの視点で考えてみると、どうなるでしょうか。
ただ一つ、気を付けていただきたいのは、この7つの視点は、あくまでも第3段階でのスキルということです。まだ感情が高ぶっているときや、感情に十分“触れていない”ときに行うと、逆に感情的になってしまうことがあります。そんなときの「感情との距離のとり方」については、最初に学ぶことをすすめます。
メンタルレスキューシニアインストラクター。1982年、防衛大学校を卒業後、陸上自衛隊入隊。心理幹部として多くの隊員のカウンセリングを手掛け、2015年に退官。現在、講演や研修会を行う。近著に『自衛隊メンタル教官が教える 50代から心を整える技術 』(朝日新書)https://www.yayoinokokoro.net/
取材・文=柳本操
※この記事は、雑誌「ハルメク」2016年9月号に掲載した「こころのはなし」を再編集しています。
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