負の感情を生きる力に変える!寝る前の少しの習慣とは

更新日:2025年04月13日 公開日:2023年03月30日

鈴木秀子さんの「心の平和の育て方」#1

シスター・鈴木秀子さん|負の感情を生きる力に変える

シスター・鈴木秀子さん|負の感情を生きる力に変える

50年以上にわたり、カトリックのシスターとして多くの方の悩みに向き合ってきた鈴木秀子さんに「心に平和を育てながら生きる方法」について伺う全3回の企画。今回は、悩みや苦しみなどの負の感情を力に変える、心の持ち方についてです。

鈴木秀子(すずき・ひでこ)さんプロフィール

鈴木秀子さん

1932(昭和7)年、静岡県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。文学博士。聖心会シスター。ハワイ大学、スタンフォード大学で教鞭をとる。聖心女子大学教授を経て、国際コミュニオン学会名誉会長。『機嫌よくいれば、だいたいのことはうまくいく。』(かんき出版刊)等著書多数。

心にたまった汚濁を言葉にして流し切る

心にたまった汚濁を言葉にして流し切る

※インタビューは2022年4月に行いました。

「重い病気にかかりました。治るように祈ってください」「死にたいほど悩んでいます。どうしたらいいでしょう」……。私の元へは、こうした相談が毎日のように届きます。

コロナ禍では、直接お会いすることはほとんど叶いませんでしたので、手紙などは極力すべてに目を通し、必要なものはお返事を書き、原本は専用の箱に収め、毎朝祈りを捧げます。

みなさんに共通するのは、「助けてほしい」という切なる願いです。一方で、不思議な共通点もあります。

ある方は、「生きていく気力がありません」という悩みを便箋40枚、50枚と書き綴り送ってこられました。しかしその手紙の最後は、「読んでくださってありがとう。私もこれからしっかり生きていきます」と、見違えるように爽やかで前向きな1行で締めくくられているのです。

またあるときは、折り合いの悪い義母の介護に悩む女性の相談を受けました。私の信条は、ひたすら「傾聴」に徹し、相手の想いをまず受け止めること。40分ほど延々と、義母からの嫌がらせへの愚痴を聴いていたところ、彼女はふと「でもね、私も悪いんです」と、おっしゃったのです。

すかさず私が「なぜそう思うのですか?」と聞くと、「私も姑に意地悪をしていた」「似た者同士だから、嫌なところが目に付くのかも」と、自分の気持ちを整理し始め、最後には「スッキリしました」と話して笑顔で帰って行かれました。私はほとんど何も言っていないのですよ(笑)。

お二人とも、心にたまった汚濁を言葉にして流し切ることで、解決策と希望という“清水”を、魂の奥底から引き出したのです。人は悩みも苦しみもするけれど、深い部分に「自分で苦難を乗り越える力が備わっている」と感じずにはいられません。

今のつらい経験が、未来の自分を支えてくれる

今のつらい経験が、未来の自分を支えてくれる

さらに言えば、苦しみを“成長に変える”力すら、私たちは持ち合わせているのです。新約聖書にこんな一節があります。

あなたがたを襲った試練で、世の常でないものはありません。神は真実な方です。あなたがたを耐えられないような試練に遭わせることはなさらず、試練と共に、それに耐えられるよう、逃れる道をも備えてくださいます。
(日本聖書協会『聖書協会共同訳 新約聖書』コリントの信徒への手紙一10章13節)

つまり、「苦しみがあるところには、それを乗り越えるだけの力や助けが与えられている」という意味です。すべての苦しみには意味があり、乗り越えれば人は一段と成長できる。それを信じることが、私のもう一つの信条でもあります。

今まさに苦しみの渦中にいる方は、そんなふうに到底思えないかもしれません。しかし思い返してみると、「あのつらい経験が、今の自分を支えてくれた」と思えることが、みなさんにもありませんか?

私が出会ってきた中には、病を得たことで人間不信だった自分を振り返り、聖人のように穏やかになって亡くなった経営者の方がいました。また東日本大震災で愛する息子を失いながら、彼への愛情を誇りに、震災孤児を支援する活動を始めた女性もいました。

そこへ至るまで、どんなにかつらい涙を流したことでしょう。彼らの姿は、「どんな苦しみもいつか必ず受け止められ、自分にとっての恵みに変えられる」ことを、私に信じさせてくれます。

寝る前に最低3つの「ありがとう」を感じ唱える

寝る前に最低3つの「ありがとう」を感じ唱える

またシスターという立場から、“看取り”のお願いを受けることもあります。以前沖縄の病院で、まだ30代くらいの女性の臨終に立ち会いました。病室には、意識がもうろうとした女性を囲むように、5人の子どもとご主人が立っていました。

子どもの一人はまだ抱っこの赤ちゃんです。女性は声にならない声で、一人一人子どもと夫の名前を呼び、「ありがとう」とほほえみかけ、静かに亡くなりました。家族にとって、どれだけこの若いお母さんが大切で、必要だったことか。

しかしどんな最新の医療設備も立派な医師でも、このお母さんを救えず、その命を再びつくり出すことはできないのです。こうした経験をするたび、人はただ生きているだけで尊く、命はかけがえのないものだと痛感します。

人は、周囲よりよい地位につくことや、経済的に恵まれることに重きを置きがちです。それゆえ自分を他者と比較して、悩みや苦しみが生じます。そんな方こそぜひ、「今ただ生きていること」の恵みを感じてください。方法は簡単です。

寝る前に最低3つは、「当たり前と思うことに感謝」してみてください。「ごはんがおいしく食べられた」「手足がきちんと動いた」など何でもいいのです。年齢を重ねれば、気力も体力も衰えます。だからこそ、できなかったことを嘆くのではなく、今日できたことを喜びましょう。

「ありがとう」と繰り返し唱えると、不思議とモヤモヤが晴れ、スッと眠りにつけますよ。

「自分とのけんか」をやめて幸せの波動を広げる

「自分とのけんか」をやめて幸せの波動を広げる

私も今年90歳を迎え、シスターとして50年以上、本当にたくさんの方の話を伺ってきました。そして今心から思うのは、「心穏やかに機嫌よく」生きることの大切さです。自分を飾らず、何かにとらわれてイラつくこともなく、いつも自然体でいる。そういう人には何かあっても誰かが助けの手を差し伸べてくれ、大抵のことはうまくいくのです。

何かとイライラしがちという方は「自分の中のけんかをやめる」ことから始めてみませんか。人は思い通りにいかないことがあると、「なぜあなたはこんなこともできないの」と責めてくる“理想の自分”(頭)と、「でもしょうがなかったのよ」と言い訳をする“本音の自分”(心)がけんかを始めます。

ついには「全部あの人のせいだ」と責任転嫁を始め、人間関係も悪化してしまいます。

頭と心のけんかが始まったら、まず水を1杯飲んで冷静になって、「自分は今こう思っているんだな」と、双方の話を否定せずによく聞きます。その後は、大股で歩いたり体操をしたり、普段開けない戸棚を開けて風通しをよくしたり、体を大きく動かしましょう。

人を支えているのは、頭と心と「体」ですから、体を動かすことで無心になり、強制的にけんかをストップさせられるのです。まず自分に寄り添う習慣を身につけていけば、自分の機嫌も取れるようになってきます。

そして心の中に平和がある人は、周囲に幸せの輪を広げることができます。みなさんの中には、最近のウクライナ情勢に心を痛め、何もできないもどかしさを感じている方も多いでしょう。

募金など具体的な支援ももちろん大切ですが、身近で苦しんでいる人に手を差し伸べるだけでもいいのです。誰かに希望を与えられれば、その人も「自分は周囲の人に何ができるだろう」と考える余裕ができます。

一つ一つの行為が幸せの波動となって、ウクライナをはじめ、世界中に届くかもしれません。

大げさに聞こえますか?でも人と人とは必ずどこかでつながっていますから、不可能ではないのです。そんな“幸せ発信地”になることを、一緒に目指しませんか。

次回は、私がシスターを志した理由と、大切な人の「死」との向き合い方についてお話しします。

取材・文=新井理紗(ハルメク編集部)
※この記事は「ハルメク」2022年6月~8月号に掲載された「こころのはなし」を再編集しています。
 


シスター・鈴木秀子さんの「心の平和の育て方」

負の感情を生きる力に変える!寝る前の少しの習慣とは
「大切な人の死」を生きる恵にする3つの方法
誰かを癒やし、自分を磨く!「聞く力」で心に寄り添う

雑誌「ハルメク」
雑誌「ハルメク」

女性誌売り上げNo.1の生活実用情報誌。前向きに明るく生きるために、本当に価値ある情報をお届けします。健康、料理、おしゃれ、お金、著名人のインタビューなど幅広い情報が満載。人気連載の「きくち体操」「きものリフォーム」も。年間定期購読誌で、自宅に直接配送します。雑誌ハルメクサイトはこちら

みんなの コメント
ハルメクが厳選した選りすぐりの商品

驚きの軽さ&使いやすさ!

1本で7つの効果
薬用美肌ヴェール
1本で7つの効果
薬用美肌ヴェール

【PR】50代の尿トラブル大調査! なんと8割の方が……

50代で8割以上!?尿モレの悩み

ヒトに話しにくい尿トラブルの話…「私だけ?」とお悩みの方も多いのでは?50代ハルトモさん達にアンケートを実施し、実態を調査しました!

2025.04.10
認知症のご本人の財産や権利をどう守るか?

お金に困りたくない!

認知症になると、不動産の手続きや預貯金の引き出しが自由にできなくなります!事前に知らないと苦労する「法律」とは…

2025.04.08
【PR】飽き症でも、ゼロから英語が話せるようになったワケ

ゼロから英語が話せる!

飽き症さんでもOK!たった60日で英語が苦手な人でも英会話ができるようになると話題の「インド式英会話」をご存知ですか?無料体験セミナー実施中です!

2025.02.05
ご家族の認知症介護の進め方、向き合い方

もし親が認知症になったら…

家族が認知症になった時、介護や通院など一体何を準備すればいいのでしょうか?「もしも」の場合のスムーズな対応を解説!

2025.04.04
【PR】部分入れ歯のウソホント!?正しいケアって?

部分入れ歯のウソ・ホント!?

部分入れ歯が不安定・外れそうで怖い…そんなお悩みは「ケアの仕方」に原因が!?間違えている人が意外に多い、部分入れ歯の「正しい使い方」を専門家が紹介します!

2025.03.12
【PR】鼻への重量感・違和感のストレスから解放!

「ふわっ」と軽いメガネ♥

メガネがずり落ちる・鼻の頭が重いなど、メガネのプチストレスにサヨナラ!あっと驚く程つけ心地抜群のメガネをぜひお試しください

2024.12.17
「ひょっとして認知症かも」と心配になったらどうすればいい?(後編)

認知症の分かれ道!41%が…

認知症1歩手前「MCI(軽度認知障害)」と診断された場合、最大41%の方が健常な状態に戻ることが分かっています!認知症を「発症させない」ためにすべき事とは…?

2025.04.14
【PR】タイプで分かる!ライフスタイル別レンズ診断

タイプ別!ぴったりの眼鏡

「近くのものが見えづらくなった」と感じる人は眼鏡の変え時かも!ライフスタイル別におすすめの眼鏡レンズを無料で診断♪

2025.03.10
これだけ覚えておけばOK!海外旅行先で使う英会話10選&英会話学習法

海外旅行で「英会話」を楽しむ♥

海外旅行先で使う英会話10選&手軽に英会話力を伸ばす方法をご紹介!50代からの新しい趣味・学び直しにいかが?

2025.04.10
【PR】始めるなら相談できる「対面証券」がおすすめ

お金のこと、なんでも無料相談

資産運用、相続、ローンまで!お金の「よくわからない」をプロに気軽に相談できる♪

2024.12.17
おひとりさま女性のソロライフに備えよう!「おひとりさま老後」の資産運用

老後資金、こんなに要るの?

未婚に限らず、離婚・死別などで誰しも「おひとり様」になる可能性が。一人で生きていくための「お金の準備」は出来ていますか?

2025.03.18

ハルメクが厳選した選りすぐりの商品

【限定コラボ】職人技が光る!ハルメク×マエノリのセーター誕生秘話