シスター・鈴木秀子さんの「心の平和の育て方」#2

鈴木秀子|別れの悲しみを癒やす3つの心得

公開日:2023.03.30

更新日:2024.08.13

50年以上にわたり、カトリックのシスターとして多くの方の悩みに向き合ってきた鈴木秀子さん。「看取り」を通じて感じた、大切な人の死を受け入れ、生きる恵に変換する方法とは? 別れの悲しみを癒やす「3つの心得」について伺いました。

自分の命も、価値観も、平和も、普遍で確かなものはない

命も、価値観も、平和も、普遍で確かなものではない

※インタビューは2022年4月に行いました。

連日、ウクライナでの戦禍が報道されています。逃げ惑う人々に、不安そうな瞳で身を縮める子どもたち。そんな光景を胸が詰まる思いで見つめながら、どうしても、第二次世界大戦でのことを思い起こさずにいられません。

同時に、戦中戦後の経験こそが、今の私の生き方を決定づけたとも思い至るのです。

戦時中に私が住んでいたのは、伊豆半島の先、白浜という海の美しいところです。しかし、ちょうど東京方面への爆撃で行き来する米軍機の通り道にあたっていたせいか、焼夷弾が落とされて火事が頻繁に起こり、機銃掃射でそばにいた友達が撃たれ、亡くなったこともありました。

一瞬先には、自分にも死の運命が待っているかもしれない恐怖が、私の心に深く植え付けられたのです。

学校では、戦時中「日本は絶対に勝つ」と教えられ、奉られた天皇陛下の肖像の前を通るときは必ずお辞儀をするよう言われてきました。しかし、戦後いつものようにお辞儀をした生徒に向かって、教頭先生が「まだあんなことをしている馬鹿者がいる」と忌々しげに言い放ったのです。

教科書も、国家主義や戦意を鼓舞する内容は墨塗りをさせられました。当時、中学1年生という多感な時期だった私にとって、それまで大切だと教えられてきたことが一転、「不要なもの」と断じられたことは大きなショックでした。

自分の命も、価値観も、平和も、普遍で確かなものはないのだと、心にぽっかり穴が開いたような虚無感に襲われたことを、鮮明に覚えています。...

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