シスター渡辺和子さんが考える「明日」
『置かれた場所で咲きなさい』老いと向き合う言葉とは
『置かれた場所で咲きなさい』老いと向き合う言葉とは
更新日:2025年05月17日
公開日:2020年03月02日
葛藤が生じるのでテレビは見ません

私は今、30代から80代までのシスター8人と、修道院で共同生活を送っています。私の一日は、毎朝5時に起きて散歩をすることから始まります。それからメディテーション(瞑想)をして神様とお話をして心の姿勢を正し、その後に他のシスターたちとお祈りをささげます。
朝食はパンと果物、コーヒー。大学に出勤するときは前の晩のおかずの残りを詰めたお弁当を持参しています。夕食は修道院の当番がお料理して、みんなそろってとることになっています。
夜9時にベッドに入るまでのあいだは、趣味の読書をしたりお手紙を書いたりして過ごすのですが、最近は目がだんだんと弱くなってきましたので、読書量もめっきり減りました。
修道院にはテレビもありますが、私はテレビは見ません。ラジオを聴きながら過ごしています。テレビは「もうちょっと見ていたい」という衝動に駆られ、そういう私の弱さとやらねばならないこととのあいだで葛藤が生じるわけです。
シスター同士とはいえ、共同生活をしているといろいろあります。食卓の塩の位置が、いつもと違うだけで気にする方もいらして。それぞれ育ってきた環境や好みが違うわけですから、やむをえないですね。夫婦間にもいえることでしょうが、共同生活をうまくやっていくには、一人ひとり別人格だと思うことが大事だと感じます。
老いる自分へ、「今日が一番若い日」と言い聞かせる
自分で申し上げるのもお恥ずかしいですが、私は若い頃割とおしゃれで、背も今よりずっと高かったんです。ところがこの年になるまでに圧迫骨折を3度もしてどんどん身長が縮んで。私は「美人薄命とは本当ですか」と神様に申し上げたんですよ。でもお返事がなかなかいただけなくて(笑)。
老いるということは哀れなものと考えられがちです。昔はしてさしあげていたことが、今度はしていただく側になる。そういう自分がとてもふがいなく感じるようになってきます。
でも「これが人間だから当然のこと」と割り切ってしまえば楽になるものです。そこで見栄を張って若作りしたりあらがったりするからつらくなる。今日より若くなる日はないわけですから「今日が一番若い日」と自分に言い聞かせて過ごすことにしています。
若いときは試験で1番になることを目指していましたが、今は謙虚さでの1番を目指しています。「人見るもよし、人見ざるもよし、我は咲くなり」。そういうプライドをもって生きていきたいと思っています。
戦争はしてはいけない。戦争は国を疲弊させる

私は政治的なお話はあまりしないようにしていますが、はっきりと申し上げられるのは、戦争はしてはいけないということです。父は「国を守るために軍備は充実していないといけないが、戦争はしてはいけない」という考えを強くもっていました。それゆえに、戦争に突き進もうとする皇道派の人たちに殺されたわけです。
父は長いこと外国におりましたから、戦争をすると勝っても負けても国が疲弊するということをよく知っていました。私も戦時中、機銃掃射の攻撃を受けて逃げ惑った経験があります。戦争は絶対にしてはいけない。外交問題は、話し合いで解決されるべきだと思っています。
日本は小さな国ですが、私たち日本人は賢さや技術力、勤勉さなど素晴らしい力を持っています。残念なのはその部分が失われつつあり、無機質なものになびいてしまっていること。
これからこの国を担う若い人にはしっかりと声をあげていただき、平和な日本であり続けてほしいと願っています。
渡辺和子(わたなべ・かずこ)
1927(昭和2)年、北海道生まれ。聖心女子大学を経て、上智大学大学院修了。63年、36歳の若さでノートルダム清心女子大学の学長に就任。のち、ノートルダム清心学園理事長。数々の著書があり、中でも2012年に上梓した『置かれた場所で咲きなさい』(幻冬舎刊)が200万部のベストセラーに。2016年12月30日、89歳で死去。
取材・文=小林美香(編集部)撮影=篠塚ようこ
※この記事は、雑誌「ハルメク」2014年3月号を再掲載しています。
※雑誌「ハルメク」は書店ではお買い求めいただけません。詳しくは雑誌ハルメクのサイトをご確認ください。
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