【上】阿川佐和子!男性2人の純愛映画で感じたエゴ
2023.02.112023年02月12日
映画「エゴイスト」で感じたLGBTQへのメッセージ
【中】阿川佐和子!性的マイノリティについて思うこと
映画「エゴイスト」に主人公の母親役として出演している阿川佐和子さんに、LGBTQや多様な性のあり方について、さまざまなお話を伺いました。
映画「エゴイスト」が持つ、差別や偏見を変えていく力
――映画「エゴイスト」はゲイの男性2人の愛と家族の物語で、メッセージが強く押し出されている作品ではないにせよ、LGBTQについて考えるきっかけを与えてくれる映画だと思いましたが、阿川さんはどう思いましたか?
阿川佐和子さん(以下、阿川佐和子)
LGBTQについては私も不勉強なところがあり、語るのが難しいのですが知らない世界や物事について、人間は身を守るために最初は壁を作ったり、慣れるまでに時間がかかったりすると思うんです。それは人、物、ルール、いろんなものが当てはまると思います。偏見もその一つで、よくわかっていないし、知らないから、視界に入れないし、なかなか認めようとしないのではないでしょうか。
――確かにそういう側面があると思います。
阿川佐和子
LGBTQの方たちの中には、自分のセクシュアリティについて家族にも話せないという悩みを抱えている方がまだ多いと思います。でも世の中はいろんな人が集まって形成されているんです。
背が高い人がいれば、低い人がいるし、痩せた人が好き、太った人が好き、いろんな好みがあります。そんな中で、女性が好きな女性がいたり、男性が好きな男性がいたり、男女ともに恋愛する人もいれば、しない人もいたりする ことは同一線上にあると思うんです。ただ自分の周りに居ないと、なかなか慣れず受け入れられない。
でもこの映画の浩輔と龍太の物語は、この世界で生きる2人の男性の恋愛として描かれているので、そういった偏見に風穴を開けてくれそうな気がします。
試写の後、スタッフが涙したゲイの人からの言葉
――映画を見た方の反応はいかがでしたか?
阿川佐和子
「エゴイスト」にはゲイの方が多く関わっているのですが、出演を依頼した方の中には「家族に自分のセクシュアリティについて話をしていないので出演できません」と言う方もいたんです。
でもその中の一人の方が試写を見た後「今度は母親と一緒にこの映画を見ようと思います」とおっしゃってくれて……。もうスタッフ全員泣きました。これは、映画「エゴイスト」への最高の賛辞ではないかと思います。
視覚障害の友人から得た気付き。箸休めみたいな人生を送りたい
――マジョリティ、マイノリティ関係なく、「普通」 に捉えればいいんですよね。
阿川佐和子
あと、少数派であることを気にせず、自分の楽しみを見つけると人生は色づきますよね。
私の友人に、4歳のときに視力を失った人がいるのですが、とても素敵な文章を書くんです。「あなた、実は見えているんじゃない?」って言いたいくらい、鮮やかに描写するんですよ。
彼女は目が見えないために、社会に貢献できないし何の役にも立たない人間だとふさぎ込んでいた時期もあったそうなのですが、あるとき「小鳥の鳴き声を聞く」と言うバードリスニングの楽しみを見つけたんです。そして小鳥の声を聴き比べて、いろいろな種類の小鳥の存在を知り「小鳥は、神様の箸休めだ」と思ったそうです。
小鳥は体力もスピードもないから荷物を運んだりできず、たださえずっているだけ。でも小鳥のさえずりが世界から消えたら、地球はどれほど味気ないつまらないものになるだろうと。箸休めが、胃を休ませ、次の料理への食欲増進の手助けをするのと同じように、小鳥のさえずりは、人生につかの間の休憩を与え、次の活動を助けてくれる。自分は目が見えないけど、箸休めみたいな人生を送りたいって。
私はその言葉にすごく感動して、友人の檀ふみに「私も箸休めのような人生にする」と話したら「いい言葉を覚えたわね。でも箸休めもおいしくないとしょうがないのよ」と言われて、嫌味な奴だと思いましたけどね(笑)。
阿川佐和子(あがわ・さわこ)
東京都出身。作家・エッセイスト。TBS「情報デスク Today」「筑紫哲也のNEWS3」「報道特集」でキャスターを務める。エッセイ、小説など作家としても人気があり、エッセイ『ああ言えばこう食う』(檀ふみと共著)で第15回講談社エッセイ賞を受賞。他『ウメ子』で第15回坪田譲治文学賞、『婚約のあとで』で第15回島清恋愛文学賞など数々の文学賞を受賞。『聞く力―心をひらく35のヒント』は2012年のベストセラーになった。現在はテレビ朝日「ビートたけしのTVタックル」に出演中。
「エゴイスト」
(2023年2月10日より全国ロードショー)
監督:松永大司
原作:高山真「エゴイスト」(小学館文庫)
出演:鈴木亮平、宮沢氷魚、阿川佐和子、中村優子、和田庵、ドリアン・ロロブリジーダ、柄本明
取材・文=斎藤香 写真=岡田直記 編集=鳥居史(ハルメクWEB)
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