ドラムに挑戦!自分の映画を見て初めて流した涙とは?

俳優・阿部寛!人生の再スタートや挑戦は何歳でもOK

公開日:2022.08.28

俳優・阿部寛さん主演の最新作「異動辞令は音楽隊」は、無骨な刑事が音楽隊で苦悩しながらも人生の再スタートを切る物語。本作でドラムに初挑戦した撮影裏話から俳優業との向き合い方など、伺いしました。

「ミッドナイトスワン」を見た後、内田監督から出演依頼が!

「異動辞令は音楽隊」は、草彅剛主演映画「ミッドナイトスワン」の内田英治監督作。

30年間犯罪捜査一筋の刑事、成瀬司(阿部寛)は、容疑者を締め上げる暴走気味の捜査で上層部に目をつけられ、音楽隊への異動を命じられてしまいます。最初こそ全く乗り気ではなかった成瀬ですが、隊員たちのサポートで、音楽隊の仕事に真剣に向き合うようになっていくのです。武骨な刑事が、仕事と音楽隊を両立しているメンバーの努力や初めて触れる楽器の魅力を通して、人生の再スタートを切る姿が感動的な作品です。

そんな成瀬を演じる阿部さんに本作のこと、俳優という仕事、そしてライフスタイルについてインタビューしました。

――成瀬司という刑事は阿部さんにぴったりの役だったと思いましたが、出演を決めた経緯について教えてください。


阿部寛さん(以下、阿部寛)
内田英治監督の「ミッドナイトスワン」を見た後に、出演依頼をいただいたんです。内田監督の映画に興味がありましたし、監督が描く警察の音楽隊というのも面白そうだとも思いました。

ただ、マーチングバンドの知識はなく、正直、音楽は少し苦手意識がありました。でも、練習をする過程で楽しいことも新たな発見もあるだろうし、それがうまく役に繋がっていけば、自分も変化していくのではないかと。何より、内田監督と一緒に新しい世界の扉を開くことができたら、きっといいものになるだろうと、出演を決めたんです。

ドラムの練習に悪戦苦闘しつつも夢中になる

――警察の音楽隊の世界は初めて見ましたが、阿部さん、実際にドラムを演奏していらっしゃいますよね。練習はいかがでしたか?

阿部寛
撮影の3か月前からドラムの練習を始めたのですが、やる前は、簡単にできるような気がしていたんですよ。でも実際にやってみると本当に難しい。全然できないまま時が過ぎていき「ゴールは遠いな」と途方に暮れる日々でした……。自宅でも練習をしようと、音の出ない練習用のドラムセットを購入して、必死に練習しました。ドラムの先生にも教えていただいたのですが、なかなか上達できず、ずっと暗闇の中でもがいている感じだったんです。

――映画では、あんなに華麗にドラムを叩いていたのに。意外です。

阿部寛
それが2か月経った頃、先生が「そろそろスタジオで本物のドラムで練習してみましょう」と言われたので、やってみたら、すごく手応えがあったんです。やっぱり本物は違いますね、音を出したとき、練習の成果が出ているのを感じたし、明らかにドラムの腕が進歩していたんです。ゴールが見えない中で、ずっと練習してきたからこその喜びがあり、やっぱり努力は無駄にはならないと実感しました。

――スタジオでのドラムの演奏は気持ちよかったですか?
 
阿部寛

そうですね。以前は、ドラムというのはバンドの中でも、力でリズムを刻むようなパワープレイの印象があったんです。でも、自分が叩けるようになり、音を聴けるようになると、ドラムはこんなに繊細な音を出す楽器なんだという発見がありました。まるで岩に水が一滴ポタンと落ちるような繊細さなんですよ。

そのあと、先生が世界でもトップクラスのドラマーの動画など見せてくれて、その細やかな演奏に感動し、俄然興味が湧いてきましたね。そこからまたドラムの練習も熱が入り、上達していきました。実は、映画の撮影が終わったあとも、ドラム熱は冷めず、ドラムセットが欲しいと思うほどだったんです。でも、演奏する場所がないので、まだ買っていません(笑)。

自分の映画を見て初めて流した涙

――阿部さんのドラムシーンも見どころですが、武骨ながらも刑事の仕事に情熱を燃やし、懸命に生きる成瀬をいう主人公も熱くて魅力的でした。成瀬に共感するところはありましたか?

阿部寛
成瀬はまさに昭和の刑事。容疑者に突撃していくやり方など、少々乱暴なのですが、彼は彼なりの正義を貫いているんです。でも、成瀬のやり方は令和の時代では通用せず、周囲に煙たがられて、音楽隊に異動させられるわけです。

成瀬の魅力は、いい意味で頑固であり、決して諦めないところ。納得できない異動でも、人生を変えていこうと思う気持ちが素晴らしいと思いました。こんな頑固な男にもアップデートする気持ちがあり、腐らず、実行していくパワーがあるんです。

人生は、自分自身を変えなくちゃいけない場面が、誰にでも必ずあると思うんです。しかし、自分なりのこだわりやプライドがあり、変化することは意外と難しい。それでも成瀬は振り返らず、前を向いて歩んで行った。そこはすごく共感できましたね。

――完成した映画をご覧になった感想は?

阿部寛
映画を観て、すごく感動したシーンがありまして。それは成瀬がドラムの練習をしに教会へ向かうシーンです。彼の足取りが軽やかなんですよ。撮影のときは全く意識していなかったんですが、映画を見たら、成瀬の変化が歩き方に表れていたんですね。そのシーンを見たとき、気づいたら涙が流れていたんです。

映画を観て感動して泣くことはありますが、自分が出演している映画で、こんな風に気持ちがたかぶって涙したのは、ほとんど初めてではないかと。自分でも驚きましたから。内田監督は、僕でも気づかなかった些細な変化も見落とさず、作品の中でいかしてくれたんだなと。本当に内田監督には感謝しかありません。

 

阿部寛(あべ・ひろし)

1964年、神奈川県生まれ。大学在学中にファッション雑誌のモデルからキャリアをスタート。映画「はいからさんが通る」(1987)で映画デビュー。以降、映画、ドラマ、舞台と多方面で活躍中。主な出演作は「テルマエ・ロマエ」(2012/第36回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞受賞)「ふしぎな岬の物語」(2014)/第38回日本アカデミー賞優秀主演男優賞)など。2022年の主演映画は「とんび」。ドラマは「すべて忘れてしまうから」(ディズニープラス配信:9月)、「続・遙かなる山の呼び声」(9月17日/BSプレミアム)。2023年は大河ドラマ「どうする家康」(NHK)への出演が決まっている。

 

「異動辞令は音楽隊」

(2022年8月26日公開)
原案・脚本・監督:内田英治
出演:阿部 寛
清野菜名 磯村勇斗
高杉真宙 板橋駿谷 モトーラ世理奈 見上 愛
岡部たかし 渋川清彦 酒向 芳 六平直政 光石 研 / 倍賞美津子 
(C)2022「異動辞令は音楽隊!」製作委員会

取材・文=斎藤香 写真=泉三郎 ヘアメイク=AZUMA(M-rep MONDO-artist) スタイリング=土屋シドウ 編集=鳥居史(ハルメクWEB)

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ハルメク365編集部

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