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- 女優・室井滋!大人になって知った故郷の魅力
映画「大コメ騒動」は、1918年(大正7年)に富山で実際に起った米騒動を描いた大痛快エンターテンメント。室井滋さんは、米騒動を起こした女性たちのリーダー、「清んさのおばば」を演じています。室井さんの故郷、富山が舞台の本作への思い、裏話など
映画「大コメ騒動」ではお婆ちゃんリーダー役に!
大正時代、米俵を担いで沖の船まで運ぶ仲士として働いていた富山の女性たち。日銭で米を買い、家族の食事を作っていたのに、米が不足し、価格も上がり、日銭で買えなくなってしまった。「米を旅に出すな~」と、声を上げた女性たちのリーダー、清んさのおばばを演じた室井滋(むろい・しげる)さん。強くたくましいリーダー役がピッタリで、富山弁を駆使して豪快に熱演しています。今でもよく故郷・富山に帰っているという室井さん。故郷への思いや富山の女性の特徴など、映画の裏話とともに地元愛について語っていただきました。
米騒動映画化の話を聞いて、「映画化なんてできるのか?」と思いました
―映画「大コメ騒動」、家族のために、米のために行動に移す富山の女性たちの強さに勇気をもらえました。室井さんは富山出身ですが、「コメ騒動」についてご存じでしたか?
室井滋さん(以下、室井滋)
もちろん知っています。魚津や滑川、水橋など海の見える場所にコメ騒動が発祥したことを表す記念碑がありますから。ただ、なんとなく知ってはいるものの、原因や実際どんなことが起こったのか詳しくは知らないんですよ。おじいちゃん、おばあちゃんもあまり話さないし、もしかして黒歴史だったのかもしれません。映画に出演することになり、私も初めて知ったことが多いんです。
―この映画の本木克英監督も富山出身ですよね。
室井滋
そうなんです。以前、本木監督の「ゲゲゲの鬼太郎」(2007年)に出演したとき、「コメ騒動を映画化したいんだけど、どう思う?」と聞かれたことがありました。私は「富山出身の監督が映画化した方がいいんじゃないですか?」とお答えしたんですが、今の富山と大正時代の富山は景色が全然違うし、大掛かりなものになるんじゃないか、でもそんな大作にできるのだろうかと思っていたんです。この映画の台本をいただいたときも、どれだけお金がかかるのかなと思ったりしたのですが、撮影現場に入ってみたら、いろいろ工夫されていて、ヴィジュアルの違和感もなく、ちゃんとコメ騒動を起こした母たちの気持ちに寄り添った作品になっていたので、さすが本木監督だなと思いましたね。
お年寄りの言葉を大切にする時代の物語
―清んさのおばばは迫力がありました。登場したときは怖い人なのかと思いましたが、実はとても頼れるリーダー。どのように役作りをされたのですか?
室井滋
台本を読んだときの印象としては、迫力があり、みんなに恐れられているけど、引っ張っていくリーダーシップ力のある女性だと思いましたね。周りの女性たちが清んさのおばばの言うことは聞くわけだから、そのためには怖いだけじゃなく、人間味のある魅力的な人物であること、優しさもあって人助けができる人物でないと人はついてこないと。そこは本木監督と話し合いを重ねました。
ああいうボリュームのある髪型と一風変わった衣装で、ひと目見たら忘れられないルックスにしたのは、私自身、大柄じゃないから、少しでも大きな存在だと見せるためでもあるんです。とはいえ、他の共演者ともバランスはどうだろうか、浮いていないだろうかとちょっと不安だったんですよ。でも映画を見たら、自然に溶け込んでいたので安心しました。
―コメ騒動を起こす女性たちは、年齢がさまざまですよね。お年寄りも若い人も一丸となって助け合って、家族のためにお米を取り戻そうとがんばっている姿は印象的でした。
室井滋
今の時代、若い人って年寄りの話を聞かないじゃないですか。昔はお年寄りが強い家がけっこうあったんです。富山で長く商売やっている家は、まだまだ年寄りでも現役で働いているので、若い人はわからないことを聞いたりして、年寄りの言うことは大事だという時代があったけれど、今は若い人に遠慮して、言いたいことも言えない年寄りが増えました。時代の流れなのかなあと思います。
私は両親が離婚し、祖母に面倒みてもらっていたので完全におばあちゃん子だったんです。だから清んさのおばばとして富山弁でセリフ言っていたら、祖母が話していたような富山弁をたくさん思い出しちゃって、いまや死語になっているような富山弁が口からバンバン飛び出しました(笑)。富山日報の記者役で立川志の輔さんが出演されているんですが、志の輔さんも富山出身なんです。私が古い富山弁を話していると「久しぶりに聞いたちゃあ、その言葉!」と笑いながら喜んでくれました(笑)。
大人になってからわかった、故郷の居心地のよさ
―お話を聞いていると、室井さんは故郷の富山が大好きなんだなあと感じます。ときどき帰ったりしているのですか?
室井滋
若い頃は「この立山連峰の向こうには何があるのだろう」と思ったものです。地元の濃い人間関係が煩わしくて飛び出したのですが、今は富山が恋しくて。食べ物はおいしいし、友達もいますから。上京したけど戻って行った友達も多いですね。私の両親は他界していますが、実家はありますし、墓守の役目もあります。富山でラジオの仕事も持っているので、けっこう帰っているんです。
子どもの頃はわからなかった富山の良さが今わかってきたところです。子どもの頃は、親が決めたエリアの中で生活しているので、地元なのに知らないことが多かったんですね。ほら、子どもは飲み歩いたりしないから(笑)。知っているようで知らなかったんだなあと思います。
もし女優じゃなかったら、とっくに富山に帰って行ったかもしれません。女優の仕事は東京が中心になるので住まいは東京ですが、やっぱり地元はラクチンですね。友達に会って、温泉につかって、大いに楽しんで、東京の家に戻るんですが、またすぐ富山に帰りたくなるんです。
「大コメ騒動」のような女性たちの実話がたくさんあるはず
―この映画では、富山の女性たちが元気でたくましいことがよくわかりました。実話だからこその迫力もあるし、勇気をもらえる映画ですね。
室井滋
「大コメ騒動」みたいに、女性たちが大勢集まって活躍する作品って、ドラマも含めてあまり作られなくなったと思うんです。昔は「スチュワーデス物語」とか看護士さんの物語とかけっこうあったのに。
私が少し前に出演していたドラマ「七人の秘書」(テレビ朝日)は、秘書たちが世直しをするドラマで、珍しかったと思う。もともと女性は、男性が決めたことにハイハイ言うだけじゃないわけで、「大コメ騒動」が実話であることでもわかりますもんね。きっと、埋もれている女性たちの実話がまだたくさんあると思います。
「大コメ騒動」
2021年1月8日全国ロードショー
監督:本木克英
出演:井上真央、室井滋、夏木マリ、立川志の輔、左時枝、柴田理恵、鈴木砂羽、西村まさ彦、内浦純一、石橋蓮司ほか
(C)2021「大コメ騒動」製作委員会
取材・文=斎藤香 写真=谷脇貢史 編集=鳥居史(ハルメクWEB)
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