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公開日:2025年03月03日
成功の軌跡を描くドキュメンタリー映画が完成
東京大学出身ながら世界的に活躍する異端のピアニスト・角野隼斗さん。演奏だけでなく、「かてぃん」の名でYouTubeを通じてクラシックを広め人気を博しています。これまでの軌跡を描いたドキュメンタリー映画が完成し、ユニークな生き方に注目が集まります。2記事中1本目。
――映画の中でこれまでの歩みが紹介されていますが、東大を出て研究者になる道とピアニストとして行く道の分岐点があったとすれば、それはどこだったでしょう?
角野隼斗さん(以下、角野隼斗)
情報理工学を専攻していた大学4年生のとき(2018年)にピティナ・ピアノコンクールで優勝したのが大きな転換点でしたが、そこから音楽1本で行こうと決心するまでに1年半くらいかかりました。
大学院に進み論文も書いて卒業が決まりましたが、気付いたら生活のほとんどが音楽になっていました。自分の一番ユニークになれる場所はどこだろうと考えたとき、最初は音楽と学問の両立かと思いましたが、音楽だと感じYouTubeを始めました。
クラシックをベースに即興や編曲をする人は当時いなかったので、これはやる価値があると思うようになりました。2020年3月に大学院を卒業したタイミングで、完全に音楽1本になりました。
――学生時代にピアニストの道を迷われた理由は何でしょうか?クラシック音楽の世界だけでは狭いと感じましたか?
角野隼斗
クラシックの世界が狭いとは思わなかったですが、クラシック音楽は50年前、100年前と変わらないことを続けているので、今さら自分に何ができることはあるのかと悩んでいた時期もあります。
だからこそ「今しかできない、自分しかできないこと」をいつも考えるようになりましたね。
――3年間の密着取材を経て完成した今回のドキュメンタリー映画。撮ろうと思ったきっかけを教えてください。
角野隼斗
映画を作らないかとオファーを受けたのは2年ほど前(2023年頃)で、そのときは「う~ん」と渋っていました。わざわざ日常を映画にする必要があるのか疑問に思ったので。
でも2024年夏に武道館コンサートが決まり、それが記録に残るのはいいことだなと思い、オファーを受けました。
当時ニューヨークでの生活も始まって環境も変わり、海外での時間が多くなっていく、その変遷が見られるのも面白いと思いました。
――完成したご自身の映画をご覧になっての感想は?
角野隼斗
2021年のデビュー当時と今では、考え方は変わっていないと思います。でも何だかしゃべり方が子どもっぽいし、(映画で食べている)カップラーメンも今はそんなに食べないですし。その違いがわかるのは、興味深いですね(笑)
人には見せない部分も監督の視点で映してもらえたのは、僕のやっているYouTubeやコンサート活動とは違う表現でいいなと思いました。
――最初に返事を渋ったというのは、寝起き姿など素の自分を見せたくないと思ったからですか?
角野隼斗
いえいえ、見られるのは全然構わないけれど、本当に面白いのかどうか……そんなものをお見せして、申し訳ない気持ちでした。
面白い作品にするには日常生活だけではなく何かドラマが必要でしょうが、ちょうど武道館公演が決まり、クライマックスのイベントができてよかったです。
――幼少の頃、ピアノ教師のお母様・美智子さんから教わって以来、ずっとピアノを続けていますね。やめたいなとか他の遊びをやりたいと思ったことはありませんか。
角野隼斗
特になかったですね。小学校の頃は毎年コンクールに出ていたので、夏は練習で忙しくしていました。
練習が嫌だなと思ってもピアノをやめたいとは思わなかったです。ステージで弾くのがとても楽しかったので、それがモチベーションになっていたんだと思います。
中学生の頃は、特にまじめにクラシックをやっていたわけではなく、むしろ他のジャンル、ポップスやジャズなどを弾いていました。
――(受験校の)開成中学・高校、そして東大理科Ⅰ類、東大大学院という学歴と音楽、どちらも達成するのは難しいことですが、その両立の秘訣は何でしょうか。脳と時間の使い方でしょうか?
角野隼斗
どちらも、大切ですね。その時々のタイミングで切り替えてきたのだと思います。大事な本番前にはピアノだけに集中し、受験直前には勉強だけに集中する。マインドを変えるというか……どこに比重を置くかの問題ですね。
卒業まではそれで成立していましたが、2019年に研究とピアノの両立について考え悩んだ結果、結局無理だと思い研究をやめました。どこかで両立できなくなる日が必ずやってくるんですね……。
――(映画で)ピザを食べながら、ニューヨークに来てマインドを変えなきゃいけないと語っていましたが、自分をどのように変えたかったのでしょうか?
角野隼斗
2018年に半年間、研究のためフランスに留学しましたが、怖さや不安が多く、あまりなじめなかったんです。寮生活でも、人の輪に入れなくて。
自分をアピールする際、日本では言わなくてもわかってくれる感覚がありますよね。友達や夫婦間でも。しかし、それは日本特有の感覚です。
海外ではそういう部分が違うこともあります。2022年頃から徐々に海外生活に慣れ、自分も変化して適応しなければと思うようになりました。
――ご自身の中にそのような葛藤の時期があったのですね。
角野隼斗
そうですね。そもそも、なぜ世界に出る必要があるのか、それはユニークさを追求するために日本国内だけでなく、世界においても求められるからです。
いまニューヨークにいると、他の人と違わなければならないということを強く意識させられます。そのような環境では、自分のマインドも自然に変化しますね。
1995年生まれ、千葉県出身。2018年、東京大学大学院在学中にピティナ・ピアノコンペティション特級グランプリを受賞。21年にプロとしてデビュー。ショパン国際ピアノコンクールではセミファイナリストに選ばれた。パリ、ウィーンなどでの海外公演を行い、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールでデビューを飾る。24年日本武道館で前人未踏の1万3000人動員のクラシックコンサートを開催。2025年11月にニューヨーク・カーネギー大ホールでソロデビュー予定。
2024年7月の日本武道館。その圧倒的なパフォーマンスで、見る者すべてを魅了した。ピアニスト・角野隼斗は、なぜこれほどの人気を得ることができたのか?ピアノ演奏、容姿、学歴、そしてYouTubeでの人気…。彼のこれまでの3年間の軌跡と、海外での演奏活動に挑む姿を映し出したドキュメンタリー作品。
取材・文=金田千里、写真=小倉啓芳、ヘアメイク=川口陽子、スタイリスト=金野春奈(foo)、編集=鳥居史(HALMEK up編集部)
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